最近── 私は毎晩 同じ夢を見ていた 大きな巨神が鳥となり 悪魔と戦う夢──
そして今もあの“声”が あの“少年”の声が 私に呼びかけるのだ 請うように 導くように…
『となえよ── ラ・ムー…』 『フェード… フェード・イン』
『たのむ… 俺の…かわりに』
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主人公の女子中学生・囀 晶が、学友たちと共に通学路を行く。
友人「ええ~… それじゃその美少年が 毎日夢枕に立つっていうわけ? われらが陸上部のエース 囀 晶は タイムにしか興味がないのかと思っていたけど とうとう春が訪れたってわけか」
晶「はっはっは! ばーか そんなんじゃないわよ だいいち声だけで 美少年かどうかもわからないんだもん」
友人「ちぇ── 声優で言うと誰? かみやあきら?」
晶「よーし! お店までダッシュ! ビリのおごりだーっ!」
友人たち「きゃ~っ!」
私たちの街には──
巨大な 人の顔をした山があった──
それも ずっとこの街に住む私たちにとっては
見慣れた風景──
晶と友人たちが喫茶店で、その「人の顔をした山」こと、神面岩について話し込む。
「え? 違う違う あれは造りかけで挫折したテーマパークとかじゃないわよ 知ってるでしょ? 大昔にあった妖魔との戦争」
「え?」
「説明 そこからか…… 35年前── 人間じゃないもの── 妖魔が侵攻してきたの 当時あの中には人類の戦力だった“ライディーン”っていう巨大ロボットがしまってあって つまりこの辺はその基地だったわけね ほら この店 写真かざってあるじゃない?」
「はははは ナイナイ! これ特撮よ! マスコミの捏造よ! この前 そういうTV番組見たもん!」
「でも 教科書でも同じ写真 見たわよ!」
「だいいち妖魔って何? RPGじゃあるまいし」
「そうねえ 宇宙人はともかく 妖魔はねぇ?」
「宇宙人はアリなの!?」
「宇宙人はいるのよ! アポロ宇宙船だって ちゃんと月まで行ったんだから! うちのお父さん その目で見たって!」
「TVでだろ?」
晶 (話に聞いたことはある 35年前 妖魔の侵攻の後── 数年間 宇宙人の襲来が続いたのだという“異星人襲撃頻発期” その間は 人類の造った巨大ロボットがいくつもあり 地球を守っていたというけれど)
晶「(でも) このロボットたちはどこへ行っちゃったんだろう?」
「そこよ!」「今ないの おかしくない?」
「──そういえば その後 宇宙人が来ないってのも不自然かしらね?」
「う~ん」
「…… ま どっちでもいいか? 生まれる20年以上の前のことなんかさ」
「あ でも こういう話 男の子たちは好きだよね!」
壁にはライディーンの写真と共に、ライディーンのパイロットとして「ひびき 洸」の写真もある。
晶「この人もアキラっていうのか」
晶の脳裏に突如、1枚の羽根のイメージと共に、誰かの声が響く。
『ニ ゲ ロ』
晶「誰?」
友人「どうしたの? アキラ?」
謎の声「に・げ・ろ! 敵が──来る!」
晶「…て・き?」
店が激しく揺れる。
「きゃああっ!!」「な 何?」「何があったの?」「晶!」
ビルの陰から、巨大な何かが現れる。
晶「な?」
再び、巨大な衝撃音。
「きゃああっ!」
ビルの壁面を砕き、巨大な怪物が現れる。
瓦礫が地面に降り注ぎ、人々が逃げ惑う。
向かいのビルの向こうから、もう1体の怪物が現れる。
怪物同士が、戦いを始める。
晶は友人たちを連れ、店の外へ逃げ出す。
依然、謎の声が聞こえ続ける。
謎の声「逃げろ」
晶「何が 何が起こっているの?」
数機の戦闘機が、空を行く。
『市街に出現したモンスターは2匹! 激しく戦っています!』
「モンスターではない… 化石獣だ!!」
『は!?』
「あの戦いに決着をつけさせてはならない! 全機攻撃開始! あれは──妖魔の儀式なのだ! 敗れた化石獣の命を犠牲にして…… やつらは“何か”を復活させる気だ!」
友人たち「晶!」「どこへ行くの?」「どこへ逃げればいいの?」
晶「わからない… でも少しでも遠くへ!」
一同は息を切らしつつ、街を見下ろす丘の上へと避難する。
「あ あ あ 街が!」
怪物同士の争いが続く。
ビルが下敷きとなって、粉々に砕け散る。
「い いや… あの下にも… 人が… たくさん… そんな」
「あ あ」「勝負がついたよ!」
片方の怪物が倒れて、もう片方の怪物が、勝ち誇るように咆哮をあげる。
さらにその爪を、敗れた怪物の胴に食い込ませる。
「何を」
皮膚を引き裂き、体内から心臓をつかみ出す。
「きゃあっ!」「う? 心臓をくりぬいて?」「な 何を?」
その怪物が心臓を空に掲げ、大きく叫び声をあげる。
晶 (何かに? ささげているの?)
怪物が歩き出す。
友人「見てっ! 神面岩のほうへ行くよっ!」
晶 (あ ライディーン)
怪物の一撃で、神面岩が砕け散る。
中は空洞。
晶「(あ 何もない?) ふふ そうよね 私ったら何を期待していたのかしら」
脳裏に、何かの感覚が響く。
晶「え? 何?」
波の音。
晶が反射的に、ビル街とは反対方向の海に目をやる。
友人「どっ! どうしたの? 晶?」
晶「違うほうから? どうして? だけど? この感じは?」
見たこともない巨大な戦艦が、海中から浮上する。
「あ あ あ?」「あれは? 何?」「今度は… 何が起こるの?」
戦艦の艦体の中から、何かが現れる。
晶「あああ あれは? ?」
かつて妖魔と戦った巨大ロボット、勇者ライディーン。
晶 (あ・れ・は?)
謎の声「ライディーンを ライディーンを使え!」
晶「誰? 誰なの? どこにいるの?」
友人「晶?」
晶「夢に出てくる人なの? 本当にいるの? どうして私に話しかけるの? 何をしたいの?」
謎の声「ライディーンを駆れ!」
晶「え ええ?」
謎の声「敵を── 討て! 本当は── 俺がやらねばならないことなんだ! だが今は── 動けない! 動けないんだ!」
ライディーンが艦体から歩み出て、晶たちの方へ近づいてくる。
友人「晶! あのロボット こっちへ来るよっ」「逃げよう! 晶!」
謎の声「た・の・む! 俺の── かわりに! 君しか── いないのだ! た・の・む」
友人「晶?」
晶「もうひとつ── 教えて── あなたは 誰? 誰なの?」
謎の声「俺は洸だ ライディーンと運命をともにする者 ひびき洸──!」
晶「ひびき── 洸?」
ライディーンが腕を伸ばし、晶を掬い上げる。
友人「晶あっ!」
晶「あ あ あ?」
謎の声「そして これが ライディーン」
晶「勇者 ライディーン」
最終更新:2020年04月15日 18:19