この頃、夜12時になると、 正体不明の怪電波が乱れ飛ぶという 現象が続いていた。 この怪電波の正体を突き止めるべく、 すでにUGMは動き出していた。
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猛と涼子が、UGM戦闘機シルバーガルで、夜の山中を調査している。
UGM基地から、隊長のオオヤマが指示を送る。
猛「ポイントK3-S4での録音作業、終わりました」
オオヤマ「次、ポイントR1-B2」
猛「ポイントR1-B2に到着、直ちに作業を開始します」
オオヤマ「了解」
猛「センサー用意」
突如、シルバーガルが制御を失い、機体が大きく揺れる。
猛「原因不明の乱気流発生!」
涼子「矢的隊員、これじゃ怪電波のキャッチができないわ!」
猛「よし、強行着陸する!」
オオヤマ「矢的、危険だ! よせ!」
猛「大丈夫です!」
シルバーガルは無事に、着陸に成功する。
猛と涼子は、地上でも調査を続ける。
突然の土砂崩れが起き、崖から大量の土砂が降り注ぐ。
涼子「崖が!?」
猛と涼子は土砂崩れから生還し、UGM基地に帰還する。
副官のイトウ、隊員のフジモリ、イケダたち。
イトウ「危ないところだったな」
猛「すみません。それで、怪電波の内容はわかったんですか?」
イトウ「詳しいことはよくわからんが、解読器によると、怪獣から発信されたものに間違いない」
涼子「やっぱり……」
フジモリ「しかし、えらいことになりましたね。受信ブラウン管がキャッチした東京周辺に、合計14か所。つまり、14頭もの怪獣軍団が東京を狙ってるってことに!?」
イケダ「このことが公表されると、日本始まって以来の一大怪獣パニックが起こりますよ!」
イトウ「まったくだ。何しろ、いつ、どこから、どうやって攻撃してくるか、相手が14頭もいたんじゃ、見当もつかんからな」
オオヤマが現れる。
オオヤマ「いや、その心配は無用だ。これを見てくれ」
オオヤマが、猛と涼子の持ち帰ったデータを見せる。
オオヤマ「矢的隊員と星隊員が、命がけで録音してくれた怪電波の波長を、詳しく分析してみたところ、波長の特徴から見て、2種類に選別できることがわかってな」
猛「2種類に?」
オオヤマ「つまり怪獣は14頭でなく、2頭ということになる」
イトウ「では、他の電波は我々を混乱させ、パニック状態にさせるための、攪乱電波だったということに?」
オオヤマ「そういうことだ。しかし、2頭だからといって油断はできんぞ。攪乱電波を使うからには、相当高度な頭脳を持った怪獣に、間違いない」
イトウ「キャップ、広報のセラを呼んで、このことを公表したほうが」
オオヤマ「いや、もう少し様子を見よう。怪獣の奴、仲間と連絡をとってる可能性が大だからな」
猛「それじゃ今では、パニック防止のために伏せていた怪獣のことを」
オオヤマ「うむ。今度は一網打尽にするために、それまでは、たとえ地球防衛軍の一員のセラ隊員にも、このことは──」
猛「キャップ!」
広報班のセラが現れる。
一同は咄嗟に調査データを隠し、何事もなかったようなそぶりをする。
セラ「どうかしたんですか?」「何です、それ?」
セラ隊員にまで秘密にした怪電波の一件は、
思いがけないところから、
外部に知れる羽目になった。
猛と親しいツトム少年が、箱包みを手にして町を行きつつ、猛に行き合う。
ツトム「あっ、矢的さん!」
猛「おぉ、ツトムくんか」
猛「ほぉ、ラジオの組み立てセットか」
ツトム「お父さんにね、誕生日祝いに買ってもらったんだ」
猛「そういえばツトムくん、前から欲しがってたっけな」
ツトム「うん。将来、UGMの隊員になるためにも、メカに強くならなくっちゃ。矢的さんもそう言ってたじゃないか」
猛「まぁね」
ツトム「僕、矢的さんのような、立派な隊員になってみせるからね。きっと!」
その夜。
ツトムは自宅で、夜ふけまでかかってラジオを組み立てる。
ツトム「よし、やっと完成したぞ! 聞こえるかなぁ?」
電源を入れると、ラジオの放送が流れる。
ツトム「わぁい、聞こえたぞ!」
母の声「ツトム、何時だと思ってるの? 早く寝なさい!」
ツトム「はぁい!」
生返事をしつつ、愛犬ロクを傍らに、ラジオに聞き入る。
ツトム「寝ろったて、そう簡単には寝られないよなぁ、ロク」
時計が12時を回る。
ラジオからはニュースが流れている。
ツトム「どっかでいい音楽、やってないかなぁ?」
ダイヤルを回していると、奇妙な音が聞こえてくる。
ツトム「何だろ? この放送。変な音~」
ロクが突然、激しく吠えたてる。
ツトム「ロク? どうしたんだ、ロク?」
翌日、ツトムは猛を呼び出す。
猛「おぉい、ツトムくん!」
ツトム「あっ、矢的さん!」
猛「なんだい、話って?」
ツトム「それがね、昨夜、ラジオのダイヤルを回してたら、変な電波が聞こえてきたんだ」
猛「!? 変な電波?」
ツトム「うん。1520キロヘルツで、時間は夜中の12時頃さ。2分くらいで、すぐ聞こえなくなっちゃったけど。僕、初めは何かの雑音かと思ってたんだ。でも、ロクの奴が── あ、うちの犬の名前さ。そのロクがすごく怖がって、ベッドの下に隠れちゃってさ。あの電波は、普通の電波じゃないよ。UGMならわかるだろうと思って、それで矢的さんに電話したんだ。ねぇ、矢的さん、どういう電波なの?」
猛「ん? ……それよりツトムくん、そのことを誰かに話したかい?」
ツトム「うぅん」
猛「お母さんや、お父さんにもかい?」
ツトム「うん、まだ話してないよ。だって、夜中にラジオ聞いてたのがバレたら、叱られるだけだもん」
猛「そうか。大丈夫。あの電波は何でもないんだ。ただの放送局の試験電波さ」
ツトム「本当?」
猛「あぁ。だから、もう気にしなくていい。それから、このことは誰にも言わないでおくんだ」
ツトム「どうして?」
猛「どうしてって、その…… 変に噂が広がったりすると、後で面倒だからね。いいね、ツトムくん。じゃ、僕は仕事があるから。じゃ、またな」
その夜、猛が考え込んでいるところへ、涼子が顔を出す。
涼子「元気ないのね。どうかしたの?」
猛「……いくらキャップに口止めされてるからって、ツトムくんに嘘をついたのが、どうも気になってね」
涼子「優しいのね、猛さんて。でも、嘘といえば私たち、もっと大きな嘘をついてるじゃない」
猛「えっ?」
涼子「私もあなたも、本当は地球人じゃない。ウルトラの星から来た、ウルトラの戦士だってことを」
猛「それは……!?」
涼子「わかってるわ。地球人を助けるためには、私たちが地球人の姿を借りなくてはいけない。そうでしょう?」
猛「……」
涼子「でも、私たち、いずれはこの地球を出て行くのね。この美しい星、素晴しい人たちのいる、この地球を……」
猛「仕方がない。それが我々の宿命なんだ。だからこそ、地球人が自力で戦える時が来るまで、僕か君のどちらかが、最後まで戦って、戦い続けなければ。いいね?」
イトウが通りかかる。
イトウ「おい、2人とも何してる? そろそろ怪電波が聞こえてくる時間だぞ」
猛「あっ、すみません」
UGM基地で一同が、怪電波の調査を始める。
涼子「別の怪電波が。まるで、呼びかけに応えてるようです」
フジモリ「キャップが言った通り、怪獣が仲間を呼び寄せる合図かもしれませんよ」
イトウ「矢的、発信場所はわかったか?」
猛「はい、大方の見当は」
イトウ「どこだ」
猛「ポイントS3-93」
イトウ「キャップ、奥多摩の仁王山付近です」
オオヤマ「よし、夜が明け次第、調査に向ってくれ」
ツトムもまた、ラジオで怪電波を耳にしている。
ツトム「やっぱり、普通の放送じゃない。矢的さんは、僕に何か隠しているんだ。よし、一つ探ってみるか!」
イトウ「地上には別に、変わったことは無さそうだな」
猛「ちょっと待ってください!」
イトウ「どうした?」
猛「左22度の山林が、おかしな倒れ方を」
猛が地上の林を示す。
猛「あの状態から見ると、地面の下を、何か巨大な生物が移動したとしか思えませんが」
イトウ「一つ、探りを入れてみるか。地底ガス弾、発射!」
猛「了解!」
シルバーガルの砲撃が、地上に炸裂し、地面が大きく裂ける。
猛「怪獣が現れる気配は、ありませんね」
イトウ「すでにほかの場所に移動したかな」
猛「でも仲間を待ってるとしたら、ここから動かないと思いますが」
イトウ「よし、一旦、基地へ戻ろう」
猛「わかりました」
地中で微かに、巨大な目が覗いていることに、猛らは気づかない──
UGM基地。
オオヤマ「すると仁王山の山中に、怪獣が潜んでる可能性が強いわけだな」
イトウ「しかし、相手が地面の中では、攻撃の加えようがありません。といって、おびき出そうにも、有効な手立てが」
オオヤマ「そうか…… とにかく、もうしばらく様子を見てみよう」
ツトムが忍び込んで、その会話を密かに耳にしている。
ロビーにいるセラのもとに、ツトムが戻って来る。
セラ「ツトムくん、どこ行ってたんだい? 勝手にこの奥へ入ると、叱られるぞ」
ツトム「ちょっとトイレにね。さてと、帰るとするかな」
セラ「矢的隊員に会いに来たんじゃないのか?」
ツトム「でも忙しそうだから、また来るよ」
セラ「ツトムくん!?」
ツトム「仁王山に怪獣か! よし、僕だってUGMの卵だぞ! この手で怪獣を見つけてやる!」
ツトムは単身、仁王山の草原を訪れる。
ツトム「どこにいるんだ? 怪獣の奴。おぉい、出て来い!」
そばの草むらからハトが飛び立ち、ツトムが驚いて尻餅をつく。
ツトム「なんだ、ハトか。そうだ、怪獣の奴、電波を出してたっけ。だったら逆にこっちから電波を送れば、呼び出せるかもしれないぞ」
ツトムがラジオを操作して、電波の発信を試みる。
そばの大地が裂けて、地中より怪獣プラズマが、巨大な姿を現す。
ツトム「わぁっ!! で、出たぁ!!」
UGM基地で、電話が鳴る。
イケダ「はい、UGM。──あっ、少々お待ちください。先輩、ツトムくんのお母さんです」
猛「ツトムくんの? はい、矢的です。──いえ、別に来てませんが? ──わかりました、僕の方でも捜してみます」
涼子「どうかしたの?」
猛「ツトムくんが家を出たきり、戻って来ないそうだ」
セラ「あれ? ツトムくんならさっき、矢的隊員に会いに来て、すぐ、うちへ帰ったはずですよ」
猛「何だって!? ……まさか、僕たちの話を聞いたんじゃ!? キャップ、僕を仁王山へ行かせてください! ツトムくんに何かあったら、僕の責任です!」
オオヤマ「よし、行って来い」
イトウ「俺も行くぞ」
ツトムは、怪獣プラズマから逃げまどっている。
ツトム「助けてぇ──っ!!」
猛とイトウの乗ったシルバーガルが、上空に飛来する。
猛「チーフ、ツトムくんが! スカイダイブでツトムくんを助けに行きます。援護をお願いします!」
猛がパラシュートで飛び降り、ツトムのもとに降り立つ。
猛「ツトムくん、大丈夫か!?」
ツトム「あっ、矢的さん!」
猛「どうして、こんなところに来たんだ!?」
ツトム「だって僕、矢的さんに負けない、UGMの隊員になろうと思って」
猛「ツトムくん、とにかく早く、ここから逃げるんだ」
目の前の大地が裂けて、もう1頭の怪獣、マイナズマが現れる。
ツトム「別の怪獣だ!」
猛「あっ、危ない!」
猛が、自身を盾にして、ツトムを守る。
マイナズマの巨大な尻尾が、猛に叩きつけられる。
猛「うぅっ!?」
オオヤマ「何、2頭目の怪獣に矢的が!?」
イトウ「矢的隊員、かなり怪我をしている模様です」
オオヤマ「よし、すぐ応援をやる。フジモリ、イケダ、星、出動!」
一同「了解!」
ツトム「矢的さん!? 矢的さん、しっかり!」
猛「大丈夫だ…… くそっ!」
猛が必死に、マイナズマへ銃撃する。
猛「ツトムくん! 今の内に、あの岩穴に! 早く!」
ツトムが岩穴に逃げ隠れる。
猛「エイティ!」
猛が変身し、ウルトラマンエイティとなって、プラズマとマイナズマに立ち向かう。
エイティは怪獣2体を相手に、力強く戦いを繰り広げる。
しかし怪獣たちの攻撃が、猛の状態で負傷した箇所に直撃する。
エイティが大ダメージを負い、次第に劣勢となる。
さらにプラズマとマイナズマが、背中合せに合体し、一体化する。
2匹の怪獣が、まるでプラスとマイナスの磁石が
引き合うように合体するとは!?
ウルトラマンエイティは、意表を突かれた。
プラズマとマイナズマの強力な光線が、エイティに炸裂する。
エイティは必殺のサクシウム光線を放つが、プラズマたちに通用しない。
イケダ「あっ、エイティが危ない!」
イトウ「フジモリ、ウルトラマンエイティを助けるんだ!」
フジモリ「了解!」
フジモリのスカイハイヤー、イケダのエースフライヤーがエイティを援護する。
しかし、共に怪獣たちの攻撃の前に、墜落してゆく。
エイティが、バックルビームを放つが、やはりプラズマたちには通じない。
エイティが消耗し、ガックリと膝をつく。
プラズマとマイナズマが分離し、勝ち誇ったように奇声をあげる。
フジモリとイケダは、どうにか各機から脱出する。
イケダ「フジモリ隊員、怪我はないですか!?」
フジモリ「あぁ、大丈夫だ。イケダ、お前こそ大丈夫か」
イケダ「大丈夫です。それにしても、凄い怪獣ですね。まるで歯が立たないや」
ツトム「エイティ! 死なないで!」
涼子が、エイティのもとへ駆けつける。
涼子「(このままでは、エイティは殺されてしまう…… 早く、早く助けなくては) エイティ、しっかり! 今、私が助けに行くわ!」
エイティ「いけない! 君まで変身しては駄目だ」
涼子「どうして!?」
エイティ「今、僕はやられても、君が新しいウルトラの戦士として戦うことができる。万一、2人共やられたら、地球はおしまいだ! 僕のことは構うな。いいか!?」
涼子「エイティ、あなたって人は……」
エイティ「地球を頼む、頼むぞ!」
涼子「エイティ!」
涼子が我慢しきれずに駆け出し、変身アイテムのブライトブレスレットを掲げる。
涼子「ユリアン!」
涼子が変身し、ウルトラの星の王女ユリアンの姿となり、地上に降り立つ。
フジモリ「あっ、別のウルトラマンだ!」
ユリアンが果敢に、プラズマとマイナズマの2体に立ち向かう。
2体の怪獣を相手に善戦するものの、次第に劣勢に追い込まれる。
エイティが力を振り絞り、参戦する。
エイティ「敵はプラスとマイナスの力を合体させて、何倍もの強さになっている。我々も力を合わせて戦うんだ!」
ユリアン「いいわ、エイティ!」
エイティとユリアンが宙を舞い、空中でフォーメーションを組む。
2人が超高速回転しつつ急降下、光のカッターと化して、プラズマとマイナズマの巨体を両断する。
合体技「ダブルパワー」が炸裂し、プラズマとマイナズマが大爆破する。
2大怪獣の最期を見届け、エイティとユリアンが空へ飛び去る。
戦いの後、猛とツトム。
ツトム「矢的さん、ごめんね。僕のために怪我させてしまって。こんなことじゃ僕、UGMの隊員になれそうもないな」
猛「そんなことはないさ。君の勇気と向上心があれば、将来、必ずいい隊員になれるとも」
ツトム「本当!? 本当にそう思う?」
猛「この代わり、これに懲りて、もう二度と出過ぎた危ない真似はしないこと」
ツトム「うん!」
猛「夜はちゃんと早く寝ること。いいね、約束するんだよ」
ツトム「はい!」
猛「じゃあね、ツトムくん」
ツトム「さよなら!」
猛と涼子が、暮れゆく夕陽を見つめる。
猛「あのときどうして、僕の言った通りにしなかったんだ?」
涼子「……」
猛「僕たち2人に万一のことがあったら、この地球はどうなるか、ウルトラの戦士の君ならよくわかってるだろう?」
涼子「……」
猛「君、聞いてるのか?」
猛が、無言でいる涼子の顔をこちらに向けさせる。
涼子は大粒の涙を流している。
猛「君……」
涼子「私…… 私、地球人に生まれたかった!」
涼子が駆け去る。
猛はその後ろ姿を見送りつつ、自身も目に涙を滲ませる。
最終更新:2021年03月05日 21:03