ウルトラマンレオの第22話


レオ兄弟対怪獣兄弟

レオの弟アストラ
兄怪獣ガロン 弟怪獣リットル登場




ウルトラマンレオこと、おおとりゲンの通う城南スポーツクラブ。
クラブに通う小学生のカオルが、指導員の百子を、クラブ内の一室へ引っぱって行く。

カオル「お姉ちゃん、早く! 早くったら!」
百子「ねぇ、どうしたのよ? なぁに?」
カオル「いいから、いいから」

室内にはゲン、指導員の猛、カオルの兄のトオル。
一面に誕生日パーティーの飾りつけがされており、テーブルにはバースデーケーキがある。

一同「おめでとう!」「おめでとう!」
百子「ありがとう! 嬉しいわ。私の誕生日を、こんなにお祝いしてくれて……」
カオル「ゲン兄ちゃんが言いだしたのよ。百子お姉ちゃんのお誕生日パーティーをやろうって」
百子「ありがとう」
ゲン「いやぁ」
トオル「あっ、赤くなった、赤くなった!」
ゲン「いや、ただ、僕はだね、皆の気持ちを代表して……」
トオル「照れない、照れない」
ゲン「こいつぅ!」
一同「アハハハハ!」
ゲン「そろそろ始めよっか。まず、ろうそくに火をつけて、っと」
猛「あっ、ちょっと待った。大村さんがいないじゃない」
ゲン「そうか」
百子「どこ行っちゃったのかしら?」
カオル「私、知ってるわ。またこれ」

カオルが自転車を真似てみせる。

ゲン「これって、自転車?」
猛「参っちゃうなぁ。肝心なときに、いつもいないんだから」
トオル「まぁ、いいじゃない。お姉ちゃんがいればいいんだもんね」
百子「トオルちゃん……」
猛「まぁ、そういうこと、そういうこと」
ゲン「そろそろ始めようか」

MAC本部の白川隊員からの通信が入る。

ゲン「はい。こちら、おおとり」
白川『東京102地区に怪獣出現!』
ゲン「了解! ……百子さん、悪い悪い。仕事ができちゃったんだ、ごめんね」
百子「もうっ、おおとりさんだってそうじゃない。フン!」


街中で怪獣が暴れ回り、火の海と化している。
人々が逃げ惑う中、自転車でトレーニング中の大村もいる。

大村「せっかくのトレーニングを邪魔しやがって。もう、許さんぞ!」

MACの佐藤隊員の乗る戦闘機マッキー3号が、怪獣に撃墜される。

佐藤「わぁっ……! だ、脱出だ!」

地上でゲンと、隊長のモロボシ・ダンがそれを見上げている。

ゲン「畜生、これで4機目だ! 隊長、このままいくと全滅です!」
ダン「ゲン、行くんだ!」
ゲン「はい!」

避難する人々に混じり、大村も自転車を飛ばすが、塀の向こうから声が聞こえ、自転車を止める。
ウルトラマンレオに変身しようとしていたゲンが、大村に行き合う。

ゲン「大村さん!? こんなところで何をしてるんですか?」
大村「この中でな、悲鳴が聞こえたような気がするんだ!」
ゲン「この中で? わかりました、僕が調べて来ます。さぁ、早く逃げて!」
大村「おい、あの怪獣は何て名前なんだ?」
ゲン「ガロンです! さぁ早く逃げて! さぁ、早く」

異星人であるゲンの聴覚が、声を聞き取る。

声「助けてぇ、れお兄ちゃぁん!」「あすかぁ、がんばれ──!」

炎に囲まれた中、少年が瓦礫の下敷きになっている。
もう1人の少年が、必死に瓦礫をどかそうとしている。

ゲン「おぉ──い! どこにいるんだ──!」

ゲンが少年たちを見つけ、手を貸す。

ゲン「おいっ、大丈夫か!? もっと力を入れて! がんばれよ!」

ゲンがレオに変身しないことで、怪獣ガロンは我が物顔で暴れ続けている。

ダン「ゲンの奴、どうしたんだ?」

ゲンたちはどうにか、瓦礫の下の少年を助け出す。

ゲンたち「さぁ、今のうちだ!」「あすか、大丈夫か!? しっかりしろ、あすか!」

ダン「本部、本部! モロボシだ!」
白川『MACの被害は、これまでの最大のものです。死者3名、負傷者16名、マッキー2号機2機破壊、同マッキー3号機4機破壊』
ダン「怪獣ガロンは我々に向かって自信を深めている。何としてでも倒さねばならん。全員、出動態勢に入れ!」
白川『了解。──緊急指令、緊急指令、全員出動! 目標、東京102地区、東京102地区!』


瓦礫の下の少年・あすかは、彼を助けようとしていた兄・れおと共に、病院へ担ぎ込まれる。
ゲンも彼らに同行している。

れお「あすか、頑張るんだ! しっかりしろ、あすか! お兄ちゃんがついてるぞ、あすか!」

ゲンたちに見送られ、あすかは手術室へ運び込まれる。

ゲン「僕はMACのおおとりっていうんだけど、君は確か、れおくんだったよね」
れお「岡村れおです。あれが、弟のあすかです」
ゲン「あすかくんか…… でも君たちはどうして、あんなところに行ったんだ?」
れお「お父さんの会社です。今日はあすかの誕生日で、どこかで一緒に食事しようって。そしたら、そうしたら、怪獣が……」
ゲン「そうだったのか。じゃあ、お父さんとお母さんは……」
れお「もし、あすかが死んだら、僕は、僕は……」
ゲン「大丈夫、あすかくんはきっと助かるさ! 元気を出せよ! 僕は君の気持ちは、誰よりもよくわかるつもりだよ? 僕にも弟がいたんだ。でも怪獣のために、炎の海の中で行方不明になってしまったんだ…… 両親も一緒にね」
れお「えっ、おおとりさんも?」
ゲン「君にはまだ、あすかくんがいる。君の力で助けたんじゃないか! がんばれよ! あすかくんのためにも、な? 僕もできるだけのことはしよう。必ずあの怪獣を倒してあげる。君やあすかくんのためにも、もうこんなことはさせない!」

院内の廊下を行くゲンが、ダンに行き合う。

ゲン「隊長!?」
ダン「ゲン、なぜ変身しなかった?」
ゲン「あの子たちを、助けるために」
ダン「どうして知らせなかったんだ? 子供たちは我々に任せるべきだ。お前の今の使命は、レオに変身することではなかったのか? お前以外に奴を倒すことのできる者はいない。それは、お前自身が一番よく知っているはずだ」
ゲン「……すみませんでした」
ダン「もちろん、子供の命も大切だ。しかしそのために、より大きな犠牲が生まれている。 ゲン、どんな理由があろうとも、戦うべきときは戦わねばならん! 私はMACの隊長としては、レオなどに頼りたくはない。だが、同じ宇宙人としては、お前だけを信頼しているんだ」
ゲン「隊長……!」

ダンのもとに通信が入る。

ダン「モロボシだ」
白川『怪獣が移動しました。103地区です。急行願います』
ダン「よし、わかった。──ゲン、頼むぞ。お前なら必ず倒せる」
ゲン「はい!」
ダン「ゲン、あの子のことは俺に任せろ。死なせはせん!」
ゲン「はい!」


怪獣ガロンが街中で暴れ回り、大村が逃げ惑う。

大村「逃げれば逃げるほどついてきやがって、もう!」

ゲンが現場に到着する。

ダン (ゲン、頼むぞ。お前なら一発で倒せる相手だ)

ゲン「レオォ──っ!!」

ゲンがウルトラマンレオに変身して、怪獣に挑む。

大村「あっ、ウルトラマンレオだ! がんばれよ──!」

ダン「全MACに告ぐ。ウルトラマンレオを援護し、怪獣の逃げ道を塞ぐんだ!」
佐藤「了解!」

MACとレオの連携で、ガロンは次第に追いつめられる。

れお「レオ、いいぞー! がんばれー!」

病院のそばに、ガロンそっくりの怪獣が現れる。

大村「あぁっ、あれは何だい!? そっくりじゃねぇか! あれは兄弟だよ! えらいことになったぞ!」

それは大村の予想した通り、
怪獣ガロンの弟、怪獣リットルであった。

怪獣リットルが、次第に病院に迫る。

れお「レオ──! 助けて──! レオ──!」

レオがその声を聞きつけ、病院そばのリットルへと向かう。

ダン「やめろ、レオ! 先にガロンを倒すんだ!」

レオの隙をつき、ガロンとリットルがレオを痛めつける。

大村「畜生っ! レオ──っ! がんばれ──っ!」

怪獣2体がかりの攻撃に、レオはまったく相手にならない。

ついにたまりかねたダンは彼の唯一の武器、
ウルトラ念力をかけた。

変身能力を失ったダンの最後の切り札、ウルトラ念力。
怪獣が苦しみつつ、地中へと退散する。

しかしダンも、力を使い果たして倒れる。
ダン、変身が解けて倒れたゲンを、MACの佐藤隊員と梶田隊員が助けだす。

佐藤「隊長、大丈夫ですか!? しっかりして下さい、隊長!」
梶田「おおとりっ!」


ゲンが三角巾で腕を吊り、川辺に佇む。

レオの故郷、L77星での回想。

炎の海の中で、レオはアストラを
必死に助け出そうとする。

レオ「アストラ、がんばれ! 今助けるからな!」
アストラ「兄さん、僕はもうダメだ!」
レオ「アストラ、何を言うんだ!?
がんばれ、がんばれよ!」

アストラが、炎の中に消えてゆく。

レオ「アストラっ!?」
アストラ「レオ兄さ──ん!!」

ゲン「アストラっ!!」

我に返ったゲンに、ダンが歩み寄る。

ゲン「……隊長」
ダン「どうした? 今、病院へ行ってきた。あすかくんは、あの小さな体で必死に戦っていたよ」
ゲン「隊長……」
ダン「お前は、あの兄弟の中に自分を見たんだろう? しかし、そのために本来のお前を見失ってしまった。お前と弟のアストラの間にどんなことがあったか、俺は知らない。だが、いつまでも昔の思い出に囚われていてはいけない!」
ゲン「でも、僕は──」
ダン「言うな!」
ゲン「僕は…… 弟を助けることができなかったんです……」
ダン「ゲン、お前たちを引き裂いた宇宙人や怪獣を憎いと思うか?」

ゲンが頷く。

ダン「ゲン、見てみろ。この平和な地球が、奴らが現れるたびに荒らされていくんだ。 そして今度こそ、我々の第二の故郷(ふるさと)も、終わりを迎えることになるかもしれん」
ゲン「……」
ダン「兄弟怪獣が現れるとは、想像すらできなかった。私の力はもう、彼らには通用しない。 MACは今や、全滅寸前だ。しかしMACは全滅を覚悟で、愛する地球を守るために戦おうとしている」
ゲン「隊長……! 僕も、地球を愛している気持ちは変わりません」

ダンのもとに通信が入る。

ダン「モロボシだ」
白川『隊長、東京103地区に兄弟怪獣が現れました』
ダン「行くぞ!」
ゲン「はい!」


ゲンが、街中で暴れ回る怪獣兄弟目がけて、突進する。

ゲン「レオォ──っ!!」

ゲンが再びレオに変身し、ガロンとリットルに戦いを挑む。
だが依然として、1対2では劣勢。
レオのカラータイマーが、点滅を始める。

そのとき──
突如、空の彼方から真っ赤な球体が飛来する。

大村「ああっ、隊長さん、あれは何ですか?」
ダン「……」
大村「きっと怪獣ですよ。今度こそ、レオはもう駄目だな」

赤い球体が地上で爆発する。
その中から、レオそっくりの赤い巨人が現れる。

大村「あっ、レオの弟だ! よし、兄弟対兄弟! これでもうレオは大丈夫ですよ、うん!」

この世の終わりの大ピンチに現れた赤い球。
そう、行方不明になっていたレオの弟、
アストラだった!

アストラがレオと共に、ガロンとリットルに挑む。
兄弟の連携攻撃で、2人の格闘技が次々に、怪獣兄弟に決まる。

兄弟合体光線ウルトラダブルフラッシャーが炸裂──!
ガロンとリットルが大爆発し、最期を遂げる。

大村「やったぁ! よぉし!」

レオとアストラが固く腕を握り合い、空へ飛び立つ。
アストラが、レオとは別の方向へと飛んでいき、レオが手を振って見送る。

レオの弟、アストラはどうして生きていたのか。
どこから来たのか、そしてまたどこへ行くのか。
それは誰も知らない。


城南スポーツクラブでは、改めて百子の誕生日パーティが開催されている。
大村が、花束を抱えて現れる。

猛「大村さん、遅いですよ!」
大村「いやぁ、すまんすまん、遅くなっちゃったな。これ、百子ちゃんにプレゼントだ」
百子「わぁっ、きれいなバラ! ありがとうございます」
カオル「大村さんにも、いいとこあるのね」
猛「いいとこあるなぁ、大村さん。あれ?」

花束の中にあったバースデーカードを、猛が見つける。

猛「あっ、モロボシさんからじゃありませんか!」
大村「うっ…… 実はそうなんだよ。隊長さんに頼まれてね。せっかくの百子ちゃんのパーティーに、おおとりくんを駆り出しちゃって申し訳なかったって、そう言ってた」
トオル「そんなことだと思った」
大村「そりゃないだろ、君」
一同「アハハハハ!」
百子「隊長さんって、優しい方なんですね」
ゲン「とってもね」
大村「あぁ。それと、おおとりさんにもことづけがあったよ」
ゲン「僕に?」
大村「れおくんとあすかくんがね、元気になったって」
ゲン「そうですか! それはよかった……!」


病院。
あすかは病室のベッドの上で、無事に意識を回復している。
れおが寄り添い、あすかと笑い合う。
看護婦が、バースデーケーキを運んでくる。

看護婦「さぁ、贈り物よ」
あすか「わぁっ、ケーキ!」
れお「誰から?」
看護婦「さぁ、誰かしら?」
れお「誰かなぁ…… あっ、おおとりさんだ! ほら!」

ケーキには、ゲンからのバースデーカードが添えられている。


たんじょう日、おめでとう。
二人で、ちからを合わせてがんばるんだ!
君たち兄弟とぼくは、いつまでも友だちだよ。
早く元気に、なってほしい。
れお あすか君へ
おおとりゲン


(続く)

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最終更新:2022年07月08日 19:13