レオ兄弟対怪獣兄弟
レオの弟アストラ 兄怪獣ガロン 弟怪獣リットル登場
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ウルトラマンレオこと、
おおとりゲンの通う城南スポーツクラブ。
クラブに通う小学生のカオルが、指導員の百子を、クラブ内の一室へ引っぱって行く。
カオル「お姉ちゃん、早く! 早くったら!」
百子「ねぇ、どうしたのよ? なぁに?」
カオル「いいから、いいから」
室内にはゲン、指導員の猛、カオルの兄のトオル。
一面に誕生日パーティーの飾りつけがされており、テーブルにはバースデーケーキがある。
一同「おめでとう!」「おめでとう!」
百子「ありがとう! 嬉しいわ。私の誕生日を、こんなにお祝いしてくれて……」
カオル「ゲン兄ちゃんが言いだしたのよ。百子お姉ちゃんのお誕生日パーティーをやろうって」
百子「ありがとう」
ゲン「いやぁ」
トオル「あっ、赤くなった、赤くなった!」
ゲン「いや、ただ、僕はだね、皆の気持ちを代表して……」
トオル「照れない、照れない」
ゲン「こいつぅ!」
一同「アハハハハ!」
ゲン「そろそろ始めよっか。まず、ろうそくに火をつけて、っと」
猛「あっ、ちょっと待った。大村さんがいないじゃない」
ゲン「そうか」
百子「どこ行っちゃったのかしら?」
カオル「私、知ってるわ。またこれ」
カオルが自転車を真似てみせる。
ゲン「これって、自転車?」
猛「参っちゃうなぁ。肝心なときに、いつもいないんだから」
トオル「まぁ、いいじゃない。お姉ちゃんがいればいいんだもんね」
百子「トオルちゃん……」
猛「まぁ、そういうこと、そういうこと」
ゲン「そろそろ始めようか」
MAC本部の白川隊員からの通信が入る。
ゲン「はい。こちら、おおとり」
白川『東京102地区に怪獣出現!』
ゲン「了解! ……百子さん、悪い悪い。仕事ができちゃったんだ、ごめんね」
百子「もうっ、おおとりさんだってそうじゃない。フン!」
街中で怪獣が暴れ回り、火の海と化している。
人々が逃げ惑う中、自転車でトレーニング中の大村もいる。
大村「せっかくのトレーニングを邪魔しやがって。もう、許さんぞ!」
MACの佐藤隊員の乗る戦闘機マッキー3号が、怪獣に撃墜される。
佐藤「わぁっ……! だ、脱出だ!」
ゲン「畜生、これで4機目だ! 隊長、このままいくと全滅です!」
ダン「ゲン、行くんだ!」
ゲン「はい!」
避難する人々に混じり、大村も自転車を飛ばすが、塀の向こうから声が聞こえ、自転車を止める。
ウルトラマンレオに変身しようとしていたゲンが、大村に行き合う。
ゲン「大村さん!? こんなところで何をしてるんですか?」
大村「この中でな、悲鳴が聞こえたような気がするんだ!」
ゲン「この中で? わかりました、僕が調べて来ます。さぁ、早く逃げて!」
大村「おい、あの怪獣は何て名前なんだ?」
ゲン「ガロンです! さぁ早く逃げて! さぁ、早く」
異星人であるゲンの聴覚が、声を聞き取る。
声「助けてぇ、れお兄ちゃぁん!」「あすかぁ、がんばれ──!」
炎に囲まれた中、少年が瓦礫の下敷きになっている。
もう1人の少年が、必死に瓦礫をどかそうとしている。
ゲン「おぉ──い! どこにいるんだ──!」
ゲンが少年たちを見つけ、手を貸す。
ゲン「おいっ、大丈夫か!? もっと力を入れて! がんばれよ!」
ゲンがレオに変身しないことで、怪獣ガロンは我が物顔で暴れ続けている。
ダン「ゲンの奴、どうしたんだ?」
ゲンたちはどうにか、瓦礫の下の少年を助け出す。
ゲンたち「さぁ、今のうちだ!」「あすか、大丈夫か!? しっかりしろ、あすか!」
ダン「本部、本部! モロボシだ!」
白川『MACの被害は、これまでの最大のものです。死者3名、負傷者16名、マッキー2号機2機破壊、同マッキー3号機4機破壊』
ダン「怪獣ガロンは我々に向かって自信を深めている。何としてでも倒さねばならん。全員、出動態勢に入れ!」
白川『了解。──緊急指令、緊急指令、全員出動! 目標、東京102地区、東京102地区!』
瓦礫の下の少年・あすかは、彼を助けようとしていた兄・れおと共に、病院へ担ぎ込まれる。
ゲンも彼らに同行している。
れお「あすか、頑張るんだ! しっかりしろ、あすか! お兄ちゃんがついてるぞ、あすか!」
ゲンたちに見送られ、あすかは手術室へ運び込まれる。
ゲン「僕はMACのおおとりっていうんだけど、君は確か、れおくんだったよね」
れお「岡村れおです。あれが、弟のあすかです」
ゲン「あすかくんか…… でも君たちはどうして、あんなところに行ったんだ?」
れお「お父さんの会社です。今日はあすかの誕生日で、どこかで一緒に食事しようって。そしたら、そうしたら、怪獣が……」
ゲン「そうだったのか。じゃあ、お父さんとお母さんは……」
れお「もし、あすかが死んだら、僕は、僕は……」
ゲン「大丈夫、あすかくんはきっと助かるさ! 元気を出せよ! 僕は君の気持ちは、誰よりもよくわかるつもりだよ? 僕にも弟がいたんだ。でも怪獣のために、炎の海の中で行方不明になってしまったんだ…… 両親も一緒にね」
れお「えっ、おおとりさんも?」
ゲン「君にはまだ、あすかくんがいる。君の力で助けたんじゃないか! がんばれよ! あすかくんのためにも、な? 僕もできるだけのことはしよう。必ずあの怪獣を倒してあげる。君やあすかくんのためにも、もうこんなことはさせない!」
院内の廊下を行くゲンが、ダンに行き合う。
ゲン「隊長!?」
ダン「ゲン、なぜ変身しなかった?」
ゲン「あの子たちを、助けるために」
ダン「どうして知らせなかったんだ? 子供たちは我々に任せるべきだ。お前の今の使命は、レオに変身することではなかったのか? お前以外に奴を倒すことのできる者はいない。それは、お前自身が一番よく知っているはずだ」
ゲン「……すみませんでした」
ダン「もちろん、子供の命も大切だ。しかしそのために、より大きな犠牲が生まれている。 ゲン、どんな理由があろうとも、戦うべきときは戦わねばならん! 私はMACの隊長としては、レオなどに頼りたくはない。だが、同じ宇宙人としては、お前だけを信頼しているんだ」
ゲン「隊長……!」
ダンのもとに通信が入る。
ダン「モロボシだ」
白川『怪獣が移動しました。103地区です。急行願います』
ダン「よし、わかった。──ゲン、頼むぞ。お前なら必ず倒せる」
ゲン「はい!」
ダン「ゲン、あの子のことは俺に任せろ。死なせはせん!」
ゲン「はい!」
怪獣ガロンが街中で暴れ回り、大村が逃げ惑う。
大村「逃げれば逃げるほどついてきやがって、もう!」
ゲンが現場に到着する。
ダン (ゲン、頼むぞ。お前なら一発で倒せる相手だ)
ゲン「レオォ──っ!!」
ゲンがウルトラマンレオに変身して、怪獣に挑む。
大村「あっ、ウルトラマンレオだ! がんばれよ──!」
ダン「全MACに告ぐ。ウルトラマンレオを援護し、怪獣の逃げ道を塞ぐんだ!」
佐藤「了解!」
MACとレオの連携で、ガロンは次第に追いつめられる。
れお「レオ、いいぞー! がんばれー!」
病院のそばに、ガロンそっくりの怪獣が現れる。
大村「あぁっ、あれは何だい!? そっくりじゃねぇか! あれは兄弟だよ! えらいことになったぞ!」
それは大村の予想した通り、
怪獣ガロンの弟、怪獣リットルであった。
怪獣リットルが、次第に病院に迫る。
れお「レオ──! 助けて──! レオ──!」
レオがその声を聞きつけ、病院そばのリットルへと向かう。
ダン「やめろ、レオ! 先にガロンを倒すんだ!」
レオの隙をつき、ガロンとリットルがレオを痛めつける。
大村「畜生っ! レオ──っ! がんばれ──っ!」
怪獣2体がかりの攻撃に、レオはまったく相手にならない。
ついにたまりかねたダンは彼の唯一の武器、
ウルトラ念力をかけた。
変身能力を失ったダンの最後の切り札、ウルトラ念力。
怪獣が苦しみつつ、地中へと退散する。
しかしダンも、力を使い果たして倒れる。
ダン、変身が解けて倒れたゲンを、MACの佐藤隊員と梶田隊員が助けだす。
佐藤「隊長、大丈夫ですか!? しっかりして下さい、隊長!」
梶田「おおとりっ!」
ゲンが三角巾で腕を吊り、川辺に佇む。
レオの故郷、L77星での回想。
炎の海の中で、レオはアストラを
必死に助け出そうとする。
レオ「アストラ、がんばれ! 今助けるからな!」
アストラ「兄さん、僕はもうダメだ!」
レオ「アストラ、何を言うんだ!?
がんばれ、がんばれよ!」
アストラが、炎の中に消えてゆく。
レオ「アストラっ!?」
アストラ「レオ兄さ──ん!!」
ゲン「アストラっ!!」
我に返ったゲンに、ダンが歩み寄る。
ゲン「……隊長」
ダン「どうした? 今、病院へ行ってきた。あすかくんは、あの小さな体で必死に戦っていたよ」
ゲン「隊長……」
ダン「お前は、あの兄弟の中に自分を見たんだろう? しかし、そのために本来のお前を見失ってしまった。お前と弟のアストラの間にどんなことがあったか、俺は知らない。だが、いつまでも昔の思い出に囚われていてはいけない!」
ゲン「でも、僕は──」
ダン「言うな!」
ゲン「僕は…… 弟を助けることができなかったんです……」
ダン「ゲン、お前たちを引き裂いた宇宙人や怪獣を憎いと思うか?」
ゲンが頷く。
ダン「ゲン、見てみろ。この平和な地球が、奴らが現れるたびに荒らされていくんだ。 そして今度こそ、我々の第二の故郷も、終わりを迎えることになるかもしれん」
ゲン「……」
ダン「兄弟怪獣が現れるとは、想像すらできなかった。私の力はもう、彼らには通用しない。 MACは今や、全滅寸前だ。しかしMACは全滅を覚悟で、愛する地球を守るために戦おうとしている」
ゲン「隊長……! 僕も、地球を愛している気持ちは変わりません」
ダンのもとに通信が入る。
ダン「モロボシだ」
白川『隊長、東京103地区に兄弟怪獣が現れました』
ダン「行くぞ!」
ゲン「はい!」
ゲンが、街中で暴れ回る怪獣兄弟目がけて、突進する。
ゲン「レオォ──っ!!」
ゲンが再びレオに変身し、ガロンとリットルに戦いを挑む。
だが依然として、1対2では劣勢。
レオのカラータイマーが、点滅を始める。
そのとき──
突如、空の彼方から真っ赤な球体が飛来する。
大村「ああっ、隊長さん、あれは何ですか?」
ダン「……」
大村「きっと怪獣ですよ。今度こそ、レオはもう駄目だな」
赤い球体が地上で爆発する。
その中から、レオそっくりの赤い巨人が現れる。
大村「あっ、レオの弟だ! よし、兄弟対兄弟! これでもうレオは大丈夫ですよ、うん!」
この世の終わりの大ピンチに現れた赤い球。
そう、行方不明になっていたレオの弟、
アストラだった!
アストラがレオと共に、ガロンとリットルに挑む。
兄弟の連携攻撃で、2人の格闘技が次々に、怪獣兄弟に決まる。
兄弟合体光線ウルトラダブルフラッシャーが炸裂──!
ガロンとリットルが大爆発し、最期を遂げる。
大村「やったぁ! よぉし!」
レオとアストラが固く腕を握り合い、空へ飛び立つ。
アストラが、レオとは別の方向へと飛んでいき、レオが手を振って見送る。
レオの弟、アストラはどうして生きていたのか。
どこから来たのか、そしてまたどこへ行くのか。
それは誰も知らない。
城南スポーツクラブでは、改めて百子の誕生日パーティが開催されている。
大村が、花束を抱えて現れる。
猛「大村さん、遅いですよ!」
大村「いやぁ、すまんすまん、遅くなっちゃったな。これ、百子ちゃんにプレゼントだ」
百子「わぁっ、きれいなバラ! ありがとうございます」
カオル「大村さんにも、いいとこあるのね」
猛「いいとこあるなぁ、大村さん。あれ?」
花束の中にあったバースデーカードを、猛が見つける。
猛「あっ、モロボシさんからじゃありませんか!」
大村「うっ…… 実はそうなんだよ。隊長さんに頼まれてね。せっかくの百子ちゃんのパーティーに、おおとりくんを駆り出しちゃって申し訳なかったって、そう言ってた」
トオル「そんなことだと思った」
大村「そりゃないだろ、君」
一同「アハハハハ!」
百子「隊長さんって、優しい方なんですね」
ゲン「とってもね」
大村「あぁ。それと、おおとりさんにもことづけがあったよ」
ゲン「僕に?」
大村「れおくんとあすかくんがね、元気になったって」
ゲン「そうですか! それはよかった……!」
病院。
あすかは病室のベッドの上で、無事に意識を回復している。
れおが寄り添い、あすかと笑い合う。
看護婦が、バースデーケーキを運んでくる。
看護婦「さぁ、贈り物よ」
あすか「わぁっ、ケーキ!」
れお「誰から?」
看護婦「さぁ、誰かしら?」
れお「誰かなぁ…… あっ、おおとりさんだ! ほら!」
ケーキには、ゲンからのバースデーカードが添えられている。
たんじょう日、おめでとう。 二人で、ちからを合わせてがんばるんだ! 君たち兄弟とぼくは、いつまでも友だちだよ。 早く元気に、なってほしい。 れお あすか君へ おおとりゲン |
最終更新:2022年07月08日 19:13