聖闘士星矢の第1話(漫画版)
ギリシア神話の時代──
英雄ペルセウスは 怪物メドゥサの首を斬りおとした その血だまりの中から美しい翼をもった 天馬ペガサスが誕生したという
そしてペガサスは天に翔けあがり 星座となったのだ……
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ギリシア、エーゲ海そばの古代遺跡の跡地。日本人観光客のカップルが、夜空に見惚れている。
「あっ ながれた」
「ほら あそこにもまた流れ星が! あぁ エーゲ海の夜空って なんてすてきなの こわいくらいに流れ星がいっぱい!」
「このギリシアのエーゲ地方は古代 群星の地といってね みたとおり流れ星が多いだろ その流れ星がときどき地上にまでおちてくるんだって」
「なにいってるの みんなホテルの神父さんの受け売りじゃない ウフフフ……」
そのとき突如、空から何かが地上へ落ちたかのような轟音。
「エッ?」「なに?」
「な……なによ 今の音…… まさか本当に星がおちてきたのかしら」
「ウ……ウソだろ 雷じゃないのか たしかこっちのほうでしたけど……」
「うっ!?」「きゃあ」
地面に大穴があき、傷だらけの少年が倒れている。主人公、星矢。
カップル女「ひ……人だわ それもまだ少年よ」
カップル男「ど……どうなってんだよ いったい!? こ…… これはひどい 全身キズだらけじゃないか…… し……しかし この少年はいったい……? ま……まさか ほんとうに空からふってきたっていうんじゃないだろうな……」
星矢「う……」
カップル女「あっ 気がついたわ」
カップル男「だ……大丈夫か キミ?」
星矢「くっ いつっ うう……」
カップル男「あっ じっとして 今 手当をしてあげるから」
カップル女「そうよ うごいちゃだめよ……」
星矢「あ……あいつは…… あいつはどこだ!?」
カップル男「あいつって? そういうキミこそ いったいどこからきたんだ? そ……そのキズは常識ではかんがえられないほどひどいけど いったい……」
カップル女「わたしたちはね 日本からきたのよ わかる?」
星矢「う…… き……きた……」
カップル男「ど……どうしたんだ」
カップル女「なにをそんなにおびえてるの?」
雷鳴のような轟きとともに、人影が突如として現れる。
カップル男「う!?」
カップル女「きゃあ」
カップル男「で……でたぁ」
カップル女「いやぁ わたしだけおいてかないでよ!!」
カップルが逃げ出す。星矢のもとに現れたのは、仮面の女戦士、魔鈴。
魔鈴「こんなところまでふっとんだの カッコわるいね 星矢」
星矢「くっ 魔鈴さん!」
魔鈴「さぁ 聖域にもどって あと百回シミュレーションよ」
星矢「い……いやだ あんたの指導はもうたくさんだよ!!」
魔鈴「明日 カシオスに殺されたいの」
星矢「へっ オレはあんなヤツに負けやしねぇよ!!」
魔鈴が構えをとる。
星矢「くっ 問答無用ってかよ!!」
魔鈴の一撃で星矢が大きくふっ飛ばされる。
星矢「げ……げふ……」
魔鈴「今の一撃さえかわせないようで どこが負けないっていえるの? 星矢 おまえもみたはずさ カシオスの残忍さを…… 今日の戦いまで 九人の相手の首をすべて一撃でとばしている…… あいつは聖域で身につけた自分の破壊力をたのしんでるのさ だけど明日は一撃じゃ勝負じゃつけないね……」
星矢「な…… なんでさ?」
魔鈴「お前の実力が完全に下だと思っているからさ あいつはゆっくりとたのしみながら おまえを殺すだろう 耳をおとし 鼻をおとし…… そして最後にお前の首を…… 今までとばした九人の首の上につみあげるだろう!!」
星矢「お……おどかさないでよ 魔鈴さん!」
魔鈴「だからせめて相討ちにもちこめるように シミュレーションをあと百回っていってるのよ」
星矢「い……いやだ これ以上シゴかれたら あんたに殺されちゃうよ! もう特訓なんかしなくたって カシオスには負けやしねぇ!!」
魔鈴「証拠をみせてよ」
星矢「証拠?」
魔鈴「今までおまえが一度も勝てたことのないカシオスに勝てるという証拠よ それがわかればわたしも安心してねむれるわ おまえが死ぬのは勝手だけど わたしがおまえにつきあったこの数年間がムダになるのはシャクだからね」
星矢「よぉし!! よっくみろよ魔鈴さん! その証拠ってのをこの地べたにきざんでやる!! これが俺の力のすべて……」
魔鈴「!」
星矢「これがオレの小宇宙だぁ!!」
渾身の星矢の拳の一撃が地面に炸裂、大地が大きく砕ける──!!
魔鈴「セ……星矢…… おまえいつのまに…… これはまぐれか……!? いや ちがう 今のはたしかに…… たしかに星矢のうしろにペガサスがみえた……」
先のカップルたちがそっと覗くと、すでに星矢たちはいない。
「い……いない…… いつのまにかいなくなっちまったよ あのふたり……」
「で……でも 今のはいったいなんだったのよ あの少年が地面をわったような気がしたけど…… わたしたち夢でも見たのかしら……」
「!」
「ね……ねぇ ちょっとどうしたのよ!?」
「はぁ はぁ ゆ……夢だと思いたいよ…… でも……」
地面には、10メートル近くの大穴が空いていた──
「この彗星がおちたような跡はなんなんだよ!?」
「!!」
翌日。アテネ市内に戻ったカップルは、神父に事情を話す。
神父「ホッホ それは女神の聖闘士じゃよ……」
カップル男「女神の聖闘士!?」
神父「しかしギリシア人でもめったにであえんのに おまえさんら運のいい観光客じゃのォ」
カップル男「じょ……冗談じゃない おどろくやらこわいやらで 昨夜は死ぬかと思いましたよ 神父さん! と……ところでなんなんです その聖闘士っていうのは?」
神父「古代ギリシア神話にアテナという女神がいてのォ……」
アテナは神がみの王ゼウスの娘で 全身に鎧をまとった姿で誕生した…… そう アテナは戦いの女神だったのだ!!
しかしアテナはみずから戦うことは好まず その戦争はつねに守るための戦いだった!! 凶暴で残忍なアレスとの戦い 巨人ギガースとの戦争 ポセイドンとの大地をかけた争い……
神々の壮絶な死闘は人間にとって気の遠くなるほどのながい年月つづいた…… しかしその戦場において つねにアテナのまわりを守る少年たちがいた…… それが女神の聖闘士なのだ!!
かれらは地上のあらゆる場所からやってきた 真の勇気と力をもった少年たちだ! 武器をきらうアテナを守るため 少年たちは己の肉体を武器として戦った! その拳は空をひき裂き! その蹴りは大地をわったという!
今でもこの世に邪悪がはびこるとき かならずやあらわれるという希望の闘士…… しかし もはやギリシア神話の中にもその名は存在しない幻の少年たち 女神の聖闘士──
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「セイヤとカシオス!!」
聖闘士の総本山、ギリシア聖域の闘技場。星矢と巨漢カシオスが対峙する。
星矢には魔鈴が、カシオスには彼の指導者である仮面の女戦士・シャイナが就いている。
彼らをとりまく多くの兵たち、そして聖闘士の最高指導者・教皇。
教皇「おまえたちは今日までそれぞれ九人の戦士と戦い勝ちぬいてきた のこった戦士はもはやおまえたちふたりのみ 今日戦って勝ちのこったひとりが アテナの栄誉ある聖闘士となることがかなうのだ そしてそのものには……」
シャイナ「おまち下さい 教皇! おそれいりますが その前にもうしあげたいことが!」
教皇「なにか シャイナよ」
シャイナ「じつは昨夜 セイヤが聖域を脱走したという疑いがあるのですが……」
兵たち「なに脱走!?」「本当か それは……」「マリン 指導者のおまえがついていながらどうしたことだ」「脱走は厳罰ということをしらぬおまえではあるまい」
魔鈴「なにかのまちがいでしょ 昨夜 聖域の外まで特別指導はおこなったけれど……」
星矢「そ……そうだ でたらめいうなよ!」
シャイナ「とぼけるな おまえははるかに実力の勝るこのカシオスと戦うことにおじけづいたのさ! しょせん日本人にアテナの聖闘士になる資格などありはしないのだ!」
星矢「な……」
そこへ、聖闘士の1人であるアイオリアが口を挟む。
アイオリア「さぁ それはどうかな」
シャイナ「アイオリア」
アイオリア「日本人だから聖闘士になれないということはないはずだ それに勝負というものはいつもおなじとかはぎらない」
教皇「アイオリアのいうとおりだ すべては戦ってみればはっきりすること セイヤが脱走するほどの臆病者なのか…… 臆病者に勝利はありえないからな さぁ戦え ふたりとも!! 勝者にはこの聖衣をあたえよう!!」
ペガサスのレリーフが刻まれた箱。
兵たち「おぉ聖衣……」「聖衣だ!!」「あれが神話の時代からうけつがれ」「まとったものは地上で最強の力を発揮できるという……」「まさしく聖闘士の証……」
星矢 (そうか あれが聖衣か…… あの聖衣を手にいれるためにオレは幼い頃 このギリシアまできたんだ……!!)
いきなりカシオスが、星矢の体を軽々とつかみ上げる。
星矢「うっ」
カシオス「セイヤ なぜ昨夜の内ににげなかった 命とひきかえにしてまで そんなにあの聖衣がほしかったのか だがおまえにはやらんぞ 聖衣はギリシア人であるこのカシオスのものだからな ふしゅらしゅらしゅら さぁひとおもいに このままにぎりつぶしてやるぅ」
星矢「うあぅ~っ」
カシオス「いや まてよ なにもあわてることはねぇんだな おまえをいためつけるのもこれが最後だからな そうだ お前の体をひとつずつおとしていこうか どうだ いいアイデアだろ セイヤ ふしゅらしゅら まずは耳だ!!」
カシオスが拳を振り上げる。血しぶきが飛び、耳が地面に転がる。
シャイナ「う」
兵たち「あぁ!!」「なにぃ!?」
それより先に星矢の手刀が唸り、カシオスの耳を斬り落としていた──!
カシオス「うぎゃああ み……耳が…… 耳がなくなったぁ!!」
星矢「確かにいいアイデアだぜ カシオス 耳の次はどこだ」
カシオス「ぐおぉ~っ き……貴様 殺すぅ……」
アイオリア「今まで感じなかった小宇宙を 今日はセイヤのまわりに感じる マリンよ キミはついにセイヤをあそこまで強力にそだてあげたのか」
星矢「さぁ遠慮するなよ カシオス おまえには相当の借りがある…… 日本へ帰る前にそれをここで全部かえしてやるぜ!!」
最終更新:2015年04月12日 09:12