キン肉マンⅡ世の第1話(テレビアニメ版)

大キン肉星雲第5惑星・キン肉星。
この星で、今、新たなるヒーローが生まれようとしていた。

かつて地球を守った伝説のヒーロー、キン肉マン。
その息子である万太郎に、大いなる使命が、引き継がれたのである。

キン肉マンこと現キン肉星大王・スグルが、生まれたばかりの万太郎にマスクを被せ、高々と抱き上げる。
キン肉王家の城・マッスルガム宮殿が、新王子の誕生に沸く国民の歓声に包まれる──。

キン肉マンたちの闘いが終結して地球に平和が戻り、
十数年の時が流れた。

そして、今、地球には…… 危機が迫っている。

拳型の隕石が富士山に落下する。

残虐・悪魔と呼ばれる「悪行超人」が、
再び人類の前に姿を現したのだ。



新超人伝説!
万太郎登場




隕石の中から悪行超人たちが現れ、人々を襲い始める。
破壊される街並み。

彼らの目的はただ一つ、地球を支配することにある。
だが、力なき人間たちには彼らと戦うことはできなかった。

そして……。

テリーマン、ロビンマスク、バッファローマン、ラーメンマン──歴戦の正義超人たちが地球を守るべく立ち向かう。
だが……。


キン肉星・マッスルガム宮殿。

ハラボテ・マッスル「ったくー、なんということじゃ。かつて地球を守った諸君ら『伝説超人(レジェンド)』を持ってしても、奴らに歯が立たなかったとは…… 困ったもんじゃのう」

宮殿に集められたテリーマンらは、みな悪行超人に敗れ、深く傷ついていた。

ロビン「リベンジだ! このロビンマスク、次こそ必ず勝利する!」
バッファローマン「ああ! 命に替えても、奴らを倒してやるぜ!!」
ラーメンマン「待て」
バッファローマン「ん?」
ラーメンマン「我らも歳を取った。肉体も格闘能力も衰えた今の我々が、何度闘いを挑んでも、若く血気盛んな悪行超人には手も足も出まい」
ロビン「くっ……」
ラーメンマン「それに、かつての闘いでは『あの男』がいつも一緒に闘ってくれたものだが……」
ロビン「あの男か……」

回想──アシュラマン、ヘル・ミッショネルズ、キン肉マンマリポーサ、キン肉マンスーパー・フェニックスと正義超人たちの死闘。

ラーメンマン「キン肉マンの存在があったから、我々は心を一つにして闘うことができたのだ」
ロビン「そうだったな」
バッファローマン「あいつは今どこに……」
真弓「それが、この宮殿をぷいっと出たきり戻ってこないんじゃ。どこをどうしているのやら……」
ハラボテ「いずれにしても打つ手なしか……」
ラーメンマン「一つだけ手があります」
ハラボテ「何?」
ロビン「それは?」
バッファローマン「奴らに打ち勝つ方法があると言うのか?」
ラーメンマン「悪行超人に対抗しうる、若き正義超人を育てるのです」
ハラボテ「な、なんと!」
ロビン「なるほど、その手があったか!」
ハラボテ「だが、そのような人材がどこにいると言うのじゃ?」
ラーメンマン「今、確かな者はただ一人」
真弓「して、その名は?」
ラーメンマン「キン肉マンの息子…… キン肉万太郎だ!」


一方、万太郎の自室。

万太郎「うっしっしっし、おいしそうなカルビ丼!」
執事トマス「本日のお夜食でございます」
万太郎「やったあ~、僕ちゃんの大好物!!」

カルビ丼音頭を踊る万太郎。

万太郎「それでは、いただき~、マッスル!」

が、トマスにカルビ丼を取り上げられる。

万太郎「何すんだよ~!」
トマス「これは母君・ビビンバ様が、勉強に勤しむ万太郎様のために心を込めてお作りあそばされたものですぞ?」
万太郎「母上が?」
トマス「お勉強が終わるまで、食べてはなりません」
万太郎「分かったよ、やればいいんでしょ、やれば……」

トマス、カルビ丼を風呂敷に包み去る。
万太郎はトマスの姿が見えなくなったのを確認すると、教科書の内側に隠していたキン肉星のグラビアアイドルの写真集を読み始めた。

万太郎(ウヒヒ、肉田ムキちゃんって可愛い~!)
真弓「これ、万太郎」
万太郎「うっさいなあ。今、勉強中だよ……」
真弓「万太郎ーっ!!!」
万太郎「お、おじいちゃん!」

数分後。

万太郎「えええっ!? そんな~!」
真弓「そんなもこんなもないわ!」
万太郎「どんなよ!」
真弓「よいか? かつて、父のキン肉マンがそうしたように、お前も地球に行き、悪行超人たちと闘うのじゃ。そのためにはまず、ヘラクレス……」
万太郎「やだよ、そんなの」
真弓「なんじゃと!?」
万太郎「僕はそんな野蛮なことしないよ。闘うために体を鍛えるより、ゲームとか漫画とか、楽しいことがたくさんあるからね」
真弓「ああ~っ、なんと嘆かわしい。その腐った性根を叩き直してくれる!!」

万太郎、写真集を盾にする。

真弓「あ~っ、こ、これは今をときめく人気アイドル・肉田ムキちゃんじゃないの!」

真弓が写真集に夢中になっている隙に、カルビ丼の入った風呂敷包みを持って逃げ出す万太郎。

真弓「あっ、万太郎!! 者共、万太郎を捕まえるのじゃ~!!」

マッスルガム宮殿から脱出した万太郎を衛兵たちが追いかける。

衛兵「お待ちください、万太郎殿~!」
万太郎「もう、しつこいなぁ! よーし…… 『とろろ昆布』~!!」

放屁をかます万太郎。

衛兵「臭い……」
万太郎「ふん、ざまあみろー!」

が、すぐに衛兵に包囲される。

衛兵「そこまでですな」
万太郎「そりゃないよ~…… あー、空飛ぶハンペン!!」
衛兵「ええ!?」

一斉に上を向く衛兵。

万太郎「んなもんあるかよ!」

再度、逃げ出す万太郎。

衛兵「待てー!!」
万太郎「捕まってたまるか!」

万太郎の足が急に止まらなくなる。いつの間にか万太郎は崖の壁面を走っていた。

万太郎「あ~れ~!!」

転げ落ちる万太郎。その先には宇宙船が。

万太郎「な、なんだ?」
衛兵「万太郎様~!!」

万太郎が宇宙船の操縦席に落下した瞬間に扉が閉まり、宇宙船が飛び立つ。

万太郎「どうなってんだ、これ? 誰か助けて~!!」
衛兵「万太郎様ーっ!!」


万太郎を乗せた宇宙船は宇宙空間をむちゃくちゃに飛び回る。

万太郎「どうやったらキン肉星に戻れるんだよ~!? これか? これか?」

誤って中央のボタンを押す万太郎。
操縦席が分離し、脱出ポッドとして射出される。

万太郎「あ、あれは……」

地球に向かって落ちていく脱出ポッド。


東京都大田区・田園調布にある()()(リー)公園に脱出ポッドが墜落。

万太郎「死ぬかと思った…… ん?」

辺りを見渡す万太郎。
かつて父・スグルが地球での住居としていた掘っ立て小屋「キン肉ハウス」がその目に留まる。

万太郎「なんだ、このボロっちい小屋は? でも、なんか懐かしいようなこの造形……」

扉を開ける万太郎。

万太郎「こんにちは、誰かいませんか?」

しかし中はもぬけの殻だった。

万太郎「汚えな~」

隅に置かれた怪しげな箱に接近する万太郎。

万太郎「この箱はなんだ?」

箱を調べるうち、スイッチに手が触れる。
蓋が開く。
怯えておしっこを漏らす万太郎。

万太郎「ぎゃああああ!! だ、だ、誰だ!?」

中から出てきたのは、マントを羽織り眼鏡をかけた、キン肉星人の少年だった。

ミート「私はミート。アレキサンドリア・ミートです」
万太郎「はあ……?」
ミート「あなたはどなたですか?」
万太郎「僕? 僕はキン肉万太郎だよ」
ミート「キン肉マン、太郎? ……キン肉マン!? キ、キン肉マン・タロウ!!」
万太郎「……違うよ。僕は『キン肉マン・タロウ』じゃなくて『キン肉・万太郎』だからね? 変な所で切らないでね」
ミート「顔をよく見せて!」

万太郎の顔に触れるミート。

ミート「おお…… マスクこそ頭髪露出型で違うが、そこから覗く澄みきった左右の瞳…… この豚と見間違う鼻と、タラコのような分厚い唇…… あ、あなたのお父様のお名前は!?」
万太郎「え? ああ、父上ね。キン肉星第58代大王・キン肉スグルだよ。昔はキン肉マンって呼ばれてたんだって」

ミートが感極まって泣き出す。

万太郎「な、何!?」
ミート「もう…… もう二度と聞けないと思っていた王子、いや、キン肉スグル大王のお名前を、そのご子息自身の口から聞けるなんて…… このミート、光栄の極みでございます!」
万太郎「あーっ、分かった! どこかで見た顔だと思ったら…… 昔、父上が日本の防衛をしてた時に、仕えていた人だ。父上のアルバムで見たことがある」
ミート「私は、あなたのお父様といつも一緒にいました。セコンドという立場で、共に闘っていたのです。あの時、消えかけていた、正義の二文字を取り戻すために……」
万太郎「でも…… 何十年も経ったはずなのに、君が全然変わってないのは、どういうこと?」
ミート「それは……」


ミート「地球が平和になった時、私はあなたのお父様と一緒に、キン肉星に帰る予定でした。しかし、私は思いました…… この平和が未来永劫に続くんだろうかって。その心配から私は、地球に留まることにしたのです。いつか再び、暗黒の世になった時、この私の頭脳を、未来の正義超人に役立ててもらうために! この『プリザーブ・カプセル』は、超人の能力と肉体を何十年も冷凍保存できるのです」
万太郎「へぇ~…… ちょっと待てよ? 君がここにいるということは、もしかして、この星は……」
ミート「地球に決まってるじゃありませんか」
万太郎「そ、そんな!」

真弓の「地球に行き、悪行超人と闘え」という言葉が万太郎の脳裏をよぎる。

万太郎「悪行超人……!? 嫌だ~!! 僕ちゃん、キン肉星に帰る~!! 嫌だー!!」

外はすでに夜になっていた。
キン肉ハウスを飛び出し、脱出ポッドに戻る万太郎だが、追い出される。

万太郎「痛ててて…… な、なんだぁ?」

脱出ポッドの中から、悪行超人ブラッド・キラーが現れた。

ミート「悪行超人!!」
ブラッド「落下してきたカプセルの反応を辿ってここに来てみたが…… とんだ奴に出くわしたものよ」
ミート「何!? まさか……」
ブラッド「貴様がキン肉マンの息子、万太郎か」
万太郎「何のことやら? 僕は通りすがりの小学生。今、塾の帰りなのさ」

万太郎は小学生のふりをしてやり過ごそうとする。

万太郎「それにしても何、おじさん? いい歳こいてコスプレのつもり? 付き合ってらんないや。じゃあ、そういうことで…… また会いマッスル~」

逃げる万太郎の首根っこを掴むブラッド・キラー。

ブラッド「とぼけるな。その不細工な面、伝説のキン肉マンとそっくり同じだぜ?」
万太郎「いえ、人違いです! ほら……」

イケメンを装うが当然通じず、地面に叩き付けられる万太郎。

ブラッド「いい加減にしろぃ!! いいか、俺たちの先輩たちはお前の親父によって散々な目に遭わされてきたのだ。そんな歴史を繰り返さぬよう、この悪行超人ブラッド・キラー様が、お前を処刑してやる!」
万太郎「ひえ~っ、助けて!!」
ブラッド「クロス・クラッシュ!!」

ブラッド・キラーの胸の十字マークが突き出される。大木をもへし折る恐ろしい威力。
必死にかわす万太郎。

ミート「万太郎様!!」

再度、かわす万太郎。
滑り台に逃げるが、ブラッド・キラーは滑り台を引っこ抜いて投げ飛ばす。
シーソーに着地した万太郎だったが、反対側の板が壊れた滑り台の下敷きになり、勢いで上空に吹き飛ばされる。
落下する万太郎。

ブラッド「はははは、落ちろ落ちろ!」
万太郎「うわああああああっ!!」
ミート「万太郎様!!」
万太郎「助けて~!」

万太郎、鉄棒を掴んで難を逃れる。

万太郎「決まった!」
ミート(す、凄い…… とっさにあれだけ動けるなんて、凄い運動神経だ。さすがはキン肉マンのご子息です。だけど……)
万太郎「うわああっ!!」

クロス・クラッシュで鉄棒を壊され、万太郎が落下。
再び逃げ出す万太郎。

万太郎「助けてー!!」
ミート「逃げてばかりでは駄目です!」
万太郎「えっ!?」
ミート「闘うのです! かつてこの地球を守って闘い、人々に愛と勇気の素晴らしさを教えてくれた、あのキン肉マンのように!!」
万太郎「だけど……」
ミート「大丈夫! あなたならできます!」

意を決して立ち止まる万太郎。

ミート「万太郎様!」

ブラッド・キラーを睨むが……

ブラッド「うおおおおおお!!」
万太郎「どわ~っ、やっぱり怖いよ~!! 勘弁してー!!」
ミート「そ、そんな……! もしかしたら、万太郎様はお父上の力を受け継いでいるのかもしれないと、そう思ったけど…… その()(こころ)までは受け継いでいなかったのですね……? 僕の愛した地球の守護神・キン肉マンは、もういないんだ……!」

ミートの目から悲しみの涙があふれる。

ブラッド「クロス・クラッシュ!!」

ついにクロス・クラッシュが万太郎に命中。
万太郎が持っていた風呂敷が地面に落ち、中のどんぶりが割れる。

万太郎「せっかく母上が作ってくれたカルビ丼が! まあ、食べられないわけじゃないか……」

カルビ丼を踏み潰すブラッド・キラー。

万太郎「あっ!!」
ブラッド「こいつがどうかしたかよ? さっきから後生大事に何を持っているかと思いきや、こんな粗末な食い物だったのか。笑わせてくれるぜ! ふはははははは!!」
万太郎「よ、よくも……」
ブラッド「はあ? 何か言ったか?」
万太郎「よくも……」

万太郎の体が輝き始める。

万太郎「よくも僕のカルビ丼を……」
ミート「ああっ……!!」
万太郎「母上の真心を…… 踏みにじってくれたな!! うおおおおおっ!!!」

火事場のクソ力が爆発する!

ミート「万太郎様の額に、キン肉マンと同じ『肉』の文字が!!」
万太郎「ブラッド・キラー…… お前だけは、絶対に許さん!!」
ブラッド「そうかい、そうかい! ようやくやる気になったようだな。ふふふ、無抵抗の者を殺すよりはいいってもんだ。喰らえ、ブラッド・ボンバー!!」

ブラッド・キラーのラリアットをかわす万太郎。

ブラッド「何!?」
万太郎「うおおおおっ!!」

ブラッド・キラーの胴をクラッチし、投げ飛ばそうとするが……

ブラッド「なんの! うりゃああああっ!!」

ブラッド・キラー、踏ん張って万太郎を投げ返す。

ブラッド「クロス・クラッシュ!!」
ミート「危ない!!」

万太郎は腕一本でクロス・クラッシュを受け止めた。

ブラッド「く、くそぉぉっ……」

万太郎とブラッド・キラーの押し合い。
やがてブラッド・キラーの十字マークに亀裂が入り、粉々に砕ける。

ミート「こ、これは、火事場のクソ力……!! 万太郎様は、お父上のあの力を受け継いでいたのですね!!」
万太郎「今度はこちらからいくぞ!!」
ブラッド「まだまだ!!」

ブラッド・キラーのタックルを正面から受け止める万太郎。

ミート「ま、まさかあの技を!?」

再び万太郎の体が発光し始める。

ミート「敵の左肩下に頭を潜り込ませ、両腕の絡みを強固にして、大地の巨木を引き抜く心構えで敵の体を高く差し上げる。そして、両内腿を押さえ体の自由を奪う。このまま鷹の如く舞い上がり、稲妻の如き勢いで敵を叩きつければ…… 首・背骨・腰骨・左右の大腿骨の五か所が粉砕される!! あれこそキン肉族48の殺人技の一つ『()(どころ)(じゅう)(りん)(がら)み』!!」
万太郎「そりゃあああ!!」

ブラッド・キラーを抱えて飛び上がる万太郎。

ミート「またの名を──」
万太郎「キン肉バスタ──っ!!」

キン肉バスターが炸裂!
その衝撃で地面が陥没する。

ブラッド「し、信じられぬ……!!」
ミート「しかと、しかとこの目で見ましたよ…… 『キン肉マンⅡ世』誕生の瞬間を!!」


その頃、富士山に刺さった拳型隕石の中では、三人の悪行超人が万太郎とブラッド・キラーの戦いを見ていた。

悪行超人A「しゃらくさい。あんな小僧の一人や二人、恐れることなどない」
悪行超人B「奴を侮るな、奴はキン肉マンの名を継ぐ者……」
悪行超人C「どちらにしても、面白くなってきたぜ」
三人「ふっふふふふ、はははははは…… はははははははは!!」



(続く)

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最終更新:2020年07月19日 23:23