邪馬台幻想記の第1話

それは幻想の時代――遠い昔のこの日本の物語――

投魔国
少年の一撃が兵士を切り裂く
大王「!!何者だ!!」
少年「あんたがこの投魔国の大王だな。オレはこの国を崩す者だ」

紀元三世紀 この日本――倭国――はいくつもの国に分かれ、戦乱の時代を迎えていた――


第一話 崩す少年と築く少女

投魔国の跡地にあの少年と、別の男がいた。
?「くっくっくっ・・・・国とはもろいもんだなァ、統治する者がいなくなっただけで民が争い、乱れ、崩れていく・・・」
「いずれにせよ!これで邪馬台国は西への退路を失ったワケだ!ウデがなるだろ、なァ紫苑・・・・・!」



邪馬台国

民衆「・・・おい聞いたか?例の投魔国王が何者かに暗殺されたって話」
「ああ、おかげで投魔国は大混乱!もう国とは言えない状態らしいぜ」
「「国崩し」ってヤツか・・・最近多いな・・・」
「この国は大丈夫かァ・・・?いくらああして、月に一度旅人集めて兵士採用試験やっててもよ」
「へへっ、ロクな戦力集まらねェもんな。ただのお祭りだよ」
「まァ、あの女王様を暗殺できるヤツなんかそうは居ねーか」
「ああ、ヤジマ総隊長もいるしな」

兵士採用試験には、あの少年――紫苑が参加していた・

紫苑「邪馬台国?」
?「ああ、聞いた事はあるだろう。代々、巫女の力をもった女王によって統治される巨大国家・・・・今回のお前の任務は・・・・女王を抹殺し邪馬台国を崩す事」
「お前の実力を見込んでの任務だ。やってくれるな?これまでのように・・・」

紫苑の一撃が対戦相手の剣を弾いた。
相手「ひ・・・・ま・・まいった・・・」
民衆「おお~~~!!」
「すげーぞ、あのボーズ!」
「あと一人で五人抜きだ!」
紫苑(屈強の兵士五人抜きで兵士採用試験合格・・・女王に苦もなく近づくためにこれを利用しない手はない)
「残るはお前一人・・・」
最後の一人は、兜で顔を隠していた。
相手「フ・・・」
その相手は、紫苑と互角に戦う。
紫苑(こいつ・・・できる・・・)
「・・・悪いが・・・ここでムダな労力を使うワケにはいかない」
「方術!!浮石弾!!!」
相手「!!」
紫苑が右手を地面に着くと、無数の弾丸が放たれ相手を吹き飛ばした。

民衆「なんだ今の・・・」「方術・・・!?」
紫苑「オレの勝ちだな」
民衆「聞いた事があるぞ・・・はるか古よりこの倭の島に伝わる幻の戦術・・・精神の力・・・「氣」を操る事によって様々な奇跡を起こせると言うが・・・まさかあんな少年が・・・」
紫苑「五人抜き達成だ。これでこの国の兵士になれるんだろ?」
兵士「あ・・ああ・・・」

相手「「浮石弾」か・・・地面に氣を送り込んで小石をフッ飛ばしたワケね」
「ぷはァっ」
相手が起き上がった。その素顔は少女だった。
相手「あいたた・・・も―少しは手加減してよね」
紫苑「女・・・?」
民衆「い・・・」
相手「ま・・・いい運動にはなったケドね」
民衆「壱与様ァっ!!?」
紫苑(!!!)
壱与「あれ?誰も気づいてなかったの?私の変装」
民衆「壱与様――!」「イヨ様だ――」
紫苑(壱与・・・?まさかアイツが)
(近隣三十か国をたばねる邪馬台国連合の長、女王壱与!!?)
(オレの・・・暗殺の標的・・・)

壱与は、身代わり人形を残して、その場に来ていて、世話役のナシメが激怒していた。
ナシメ「あのじゃじゃ馬娘がァァ!!武術などはしたないからやめろとあれほど言っておるのに・・・・・うぬぬぬ・・・」

壱与「君、強いのね。私「方術士」に会ったのの初めてよ。名前は?」
紫苑「紫苑」
壱与「紫苑君・・・か♡気に入ったっ!兵士にしとくにはもったいない!!」
「君には今日から私の護衛役をしてもらうわ。いいわね?」
紫苑「―――!」

紫苑と壱与は宮に移った。
紫苑(バカなヤツ・・・自分から墓穴を掘りやがった。女王の護衛・・・暗殺するにはうってつけだ。女王壱与・・・あんなヤツが国を統治しているようでは・・・倭の島の戦乱が終わるはずもない・・・)
ナシメ「壱与様っ!全く何度言ったらわかるのですっ!!」
壱与「ゴメンゴメン。でもさァ、あ―やってたまには試合しとかないと、体なまっちゃうじゃない?」
ナシメ「だから、あなたは女王!戦う必要はないのです!!」
壱与「これからはそういうワケにはいかないよ。それに、おかげで強い護衛も見つかったじゃん」
ナシメ「む・・・たしかに彼の実力は認めますが・・・本来なら護衛の決定も軍議で行うべき事柄なのですぞ!とにかくっ、今後は軽率な行動はつつしむよ―に!!」
ナシメと紫苑が顔を合わせる。
紫苑「・・・・・・」
ナシメ「・・・壱与様を・・・お願いしますぞ!」
「全く壱与様のヤンチャには手を焼かされるわい!」
紫苑(その苦労ももうすぐ終わるさ・・・)
壱与「ま―た怒らしちゃった。ナシメは私の世話役なの」
「少し出かけますか」

壱与と紫苑は、川に行った。
壱与「あ―魚!そこの岩かげ!ホラ、見て紫苑君!」
「・・・・?何でそんなにはなれてんの?」
紫苑「・・・・お前にはカンケイない」
壱与「・・・・・泳げないの?」
紫苑(びくうっ!)
壱与「キャハハ、真っ赤だ、図星でしょ!わかりやす―い!」
紫苑「う・・・うるさい!!」
壱与「大人ぶっててもやはり子供なのね。かわい――」
紫苑「だれが子供だっ!!」
壱与「だって君、十三でしょ。私よりふたつも年下じゃん」
「あ!そ―だ、釣りざおもってくればよかったなァ」
紫苑「ぐっ・・・ハッ」
(来た・・・暗殺の好機・・・こいつを殺せば邪馬台国は崩れる・・・殺せば・・・)


紫苑は、廃墟の中に一人坐りこんでいた。
?「何をしている?小僧・・・・」
紫苑「別に・・・死ぬのを待ってる・・・ここにオレの国があった・・・でも・・・戦が起きて焼けて無くなった・・・他に行く所なんてないから・・・・だから・・・」
?「戦はキライか?小僧・・・我らは「陰陽連」。この世界から戦を無くすために同志を求めている。共に・・・来るがいい・・・」
「紫苑・・・倭の島には「国」が多すぎるのだ。国同士の摩擦が戦乱を生む・・・我らはこの手でその原因を取り除かねばならん」

紫苑(そう、全ては―この戦乱の世を終わらせるために――!!!)
壱与「そんなに急ぐ事もないんじゃない?殺し屋さん」
紫苑「!!!気づいてたのか・・・」
壱与「ふふ、甘くみないでよ。幻の力・・・方術を操り、倭国の裏に暗躍する巨大組織・・・方術士集団「陰陽連」ウワサには聞いてたからね」
紫苑「・・・・気づいてたならなぜ・・・オレを護衛にした!?お前を殺そうとしてる刺客だぞ!」
壱与「だからよ。君とゆっくり話をする場がほしかったの」
「ついてきて!私のとっておきの場所教えてあげる!」

2人は森の中の高台に移った。
紫苑「ここは・・・」
壱与「昔、先代女王ヒミコ様が神事を行っていた祭壇。そして私がその跡を継いだ場所よ。私の夢はここから始まったの」
紫苑「・・・夢?」
壱与「倭国・・・統一」
紫苑(!!)「統一だと・・・?まさか・・・」
壱与「そ!今の倭の島はたくさんの小さな国に分かれてるでしょ!?」
「それらの国全てと手をとりあい、一つの国を築くの」
「そして、この戦乱の時代を終わらせる・・・それが私の夢。だから・・・今、殺されるワケにはいかないの・・・」
紫苑(全ての国を・・・一つに・・・?)
「ムリだ!そんな事できるワケがない!!この倭国には多くの国の多くの大王達がそれぞれの野心をいだき、ひしめいている!!そいつら全部と手をとりあい、統一国家を築くなんて神でもなければ不可能だ!!」
壱与「・・・かもね、もしかしたら死ぬかもしれない。でもやってみる価値はあると思うの」
「アタシさ、もう少し兵力が集まったらいくつもりなんだ。伝説の聖地「高天の都へ」
紫苑「!あの幻の神都へ・・・?」
壱与「そう・・・高天の都はこの倭国のどこかにあると伝えられる神の加護を受けた豊かな場所。そして倭国の中心地でもある。すでに多くの国の王達がそこを手に入れるため遠征を始めてるわ。倭国の中心を制するという事はつまり倭国の王である証だから」
「私がそこで集結した王達を説きふせる事ができれば…統一国家の夢もあるいは・・・」
紫苑(こいつ本気で・・本気でこの世界を変えようというのか。国を一つにする事で戦乱をしずめるなんて・・・そんな事ができるのなら・・・)
?「志を持つのは勝手だが・・・」
壱与「!!」
冒頭で紫苑といた男が、一与の背後に現れ、首を掴みあげた。
壱与「かはっ・・・」
?「紫苑はオレ達陰陽連の刺客なんだ。くだらん夢物語で惑わせないでくれよな」
紫苑「シダ!?なぜお前がここに・・・国境の森でオレの報告を待つと・・・」
シダ「へっ・・・ガッカリさせるなよ。オレはお前を相棒として信頼してたんだぜェ?」
「殺しの標的と仲良くおしゃべりか」
紫苑「!」
シダ「確かにお前は「国を崩す」事に懐疑的な部分があった。これがその結果かよ」
紫苑「カ・・・カン違いするな!話くらい聞いてやってからでも遅くはないと・・・!」
シダ「じゃあ殺せるだろうなコイツを・・・ブッた斬ってやれよ、その剣で・・・・」
紫苑「・・・・!」
シダ「国崩しに情けなど無用・・・オレ達は陰陽連の教えに従い、全ての国を破壊しなきゃならねェ。古の力・・・「方術」をもって戦のない世界を造るためにな。それとも紫苑・・・戦乱で祖国を失い、死を待つしかなかったお前を拾い・・・育てた陰陽連のやり方が信じられねェとでも」
壱与「バカじゃないの!!?全ての国を破壊!?そんな事したら・・・残された民はどこへ行けばいいのよ!!」
紫苑(どこへ行けば――・・・)

紫苑「死ぬのを待ってる」
「他に行く所なんてないから・・・」
「だから・・・」

シダ「・・・民だァ?くだらねェ…」
シダが高台の外に壱与を放り投げた。
壱与「――!!!」
シダ「一人で生きていけねェ弱者は・・・あの世に行くしかねェだろ!!?」

壱与(ジョーダンじゃない!こんな所で死ぬワケにはいかないのに・・・こんな所で――)
飛び降りた紫苑が壱与の手を掴んだ。
壱与「紫苑君!!!」
紫苑「つかまれっ!!」
壱与(・・・・)
紫苑が剣を柱に突き刺し、落下の勢いを弱めたが剣は折れた。
紫苑「ぐっ」
紫苑と壱与は着地した。
シダ「・・・・」
シダが二人を追って、飛び降りた。

壱与「あ・・・ありがとう・・・でも・・・どうして・・・?」
紫苑「あんたを、死なせるワケにはいかない・・・」
(そうだ・・・大切な場所を失う悲しみ――オレは知っていたはずなのに・・・)
シダ「ヘェ――マジかよ紫苑・・・裏切り者には死・・・それもわかった上でやったワケだろ?」
紫苑「「邪魔なものは排除すればいい」、陰陽連のやり方は・・・違う。こいつの言う通り・・・民が幸せに暮らせる「国」がなければ意味がないんだ」
シダ「フ・・・」
シダが剣を抜いて、紫苑と壱与に斬りかかった。
紫苑は壱与を連れて飛びのいた。
壱与「きゃっ」
シダ「それならそれでいいさ。お前もろとも女王を殺せば、邪馬台国崩しはオレ一人の手柄となる。まぁ、いずれこうなる気はしてたぜェ。お前の父親がそうだったからな、カエルの子はカエルってワケだ」
紫苑「!?どういう事だ・・・」
シダ「くっくっくっ、お前の祖国・・・月代国とか言ったか?五年前のあの日、お前の父、月与国王が何者かに殺されたために国が混乱し滅亡した・・・そうだったろ?
殺したのは他でもない陰陽連よ」
紫苑「な・・・に?」
シダ「あのころ組織は発足当初、国崩しに必要な人材を集めていた。そこで上の連中は、凄腕の方術士として知られていたお前の父に目をつけ、説得を試みた。だが、お前の父はそれを拒んだのさ。バカなヤツだぜ、その結果、国は内部崩壊・・・それが組織の最初の国崩しとなったワケだ。ようするにお前は父親の代わりだったワケよ。何も知らず陰陽連のために戦い続ける姿は何とも笑えたがな。くくくく」
壱与「・・・何てヤツらなの・・・」
シダ「どうだ、真相を知った気分は。冥土のみやげに教えてやったんだ。感謝して・・・!!?」
紫苑の体から、氣が溢れだした。
シダ「!!?これは・・・」(精神の波動・・・氣の力か!!!)
紫苑「おかげで・・・やっとわかったよ。真に倒すべき戦乱の元凶は・・・国でもそれを治める王達でもなかった」
シダ「・・・・・・・へっ!何をするつもりか知らんが・・・てめえの方術は知り尽くしてる!!女王もろともあの世へ行きな!!」

月与国王(紫苑・・・方術とは氣を操る力・・・氣とは精神の力だ。心に迷いのある者には方術を極める事はできん・・・)
紫苑(父上・・・)「・・・必要なのは強き心・・・!」
壱与(倭国・・・統一)
紫苑(オレは・・・今のオレに迷いはない!!!)
シダ「!!?何ィ!!?紫苑の・・・氣が物質化していく!!!」
紫苑の氣が剣の形を取った。
シダ(まさか――!!!精神の武器――心具――)
紫苑の心具の一撃がシダを切り裂いた。
シダ「・・・・!」
紫苑「オレは今まで・・・自分のしている事にずっと迷いをいだいていてきた・・・だから・・・創り出す事ができなかった。オレの心に眠る月代王族の象徴・・・この心具「月読の剣」を」
シダ「ぐ・・・まさかこの土壇場で・・・心の力を武具に変える究極の方術・・・「心具創造」に目覚めるとは・・・」
シダの出した札が、鳥となって飛び去っていた。
紫苑「!!式神!」
シダ「くくく・・・お前の裏切りはすぐ本部に伝わる・・・・陰陽連を敵にまわす事がどれほど愚かな事か・・・思い知るがいいぜ・・・フヘヘヘヘ・・・・」
シダが倒れた。
紫苑(・・・・・!)

壱与「紫苑君・・・・」
紫苑「オレはこれまで・・・たくさんの国を崩してきた・・・」
紫苑「やり直しは・・・今からでもきくよな・・・」
壱与「・・・どうするの?」
紫苑「・・・お前が戦のない世界を造るというなら・・・オレは護衛としてお前を守る。そして・・・いつか高天の都へ連れていく・・・国崩しでたくさんの人に悲しみを与えた事を償うには倭国統一を成しとげてこの戦乱の時代を終わらせるしかないんだ・・・文句・・・ないだろ?」
壱与「うん!一緒に行こう!高天の都へ・・・」


続く

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最終更新:2016年06月18日 14:59