宇宙の騎士テッカマンの第1話


21世紀を迎えた地球の科学力は、太陽系の果てに
宇宙ステーションを造るほどまでに発展していた。
だが、さらに太陽系の外へ、
宇宙船を飛ばす計画を立てていた。
それは全地球人にとって、
重大な使命を担っていたのである。



宇宙船スペースエンジェル号が宇宙を行く。船長の南 恒星と、数人の船員たち。
窓の向こうには、地球が見える。

南「汚れている…… 昔の地球は美しかった」
船員「キャプテン。地球の命は、あとどのくらい持つのですか?」
南「風前の灯」
船員「はぁ?」
南「嵐の前の、ろうそくの火のようなものだ。見ろ、汚れきった地球の大気を。原水爆や公害が生んだ、死の汚染物質だ。間もなく重力が勝って、雨のように降り注いでいくのだ。そのとき、人類は滅亡する…… どんなことがあっても、この宇宙開拓計画を成功させねばならん」
船員「リープ航法が完成すれば、銀河系を飛び回ることもできるんですかね?」
南「それまで、地球が持つかどうかだ…… 地球を救うのが遅かった。誰の責任なのか?」
船員「キャプテン、謎の飛行物体が接近しています!」
南「流星か?」
船員「違います。怪しい電波を放っています。恐らく、宇宙船でしょう」
南「何、宇宙船!?」
船員たち「いや、地球の宇宙船がいるはずがない」「すると……」

見たこともない宇宙船が無数に出現。突如、スペースエンジェル号が激しく揺れる──



太陽の勇者



その頃、遥か離れた地球では。

宇宙開発センター。南の息子、主人公の南 城二が夜空を見上げている。

城二「お父さん、成功を祈っているよ」

センター局長の娘、天地ひろみが駆けて来る。

ひろみ「城二さん! スペースエンジェル号が!」
城二「ひろみちゃん、どうした!?」
ひろみ「早く! 早く、管制室へ!」

宇宙空間ではスペースエンジェル号が、謎の宇宙船団の攻撃を受けている。
宇宙開発センター管制室で天地局長が、スペースエンジェル号と通信をとっている。

南「スペースエンジェル号より、宇宙開発センターへ! スペースエンジェル号より宇宙開発センターへ! 残念ながら、重力装置を破壊されました。逃げ切ることは不可能です! うわあぁっ!」
天地「南くん、どうした!? 南くん、どうした!? がんばるんだ!」
南「ダメです…… 残念です!」
天地「非常カプセルで脱出しろ!」
南「うわぁぁ──っっ!!」
城二「お父さん! お父さん! お父さぁぁん!!」

スペースエンジェル号が大爆発。

天地「宇宙開拓計画の第一の犠牲者を出してしまった……」

城二は管制室を飛び出し、夜空を仰いで叫ぶ。

城二「お父さああぁぁ──ん!!」


数日後。センターの片隅で、城二が思いつめている。

城二 (お父さん、悔しいでしょう…… お父さんの唯一の夢が果たせずに終わってしまったんだ。太陽系から飛び出す夢が…… 俺は憎い! お父さんの夢を奪った宇宙人が!)

そこへ、ひろみがやって来る。

ひろみ「パパが、城二さんにお話があるんですって」
城二「天地局長が?」


天地局長が城二を、センター内の一室に招く。

天地「さぁ、入りたまえ。ここは、私の秘密研究室だ。ペガス!」

声に応じて、重厚な足音が響く。
部屋の壁面が開き、人間の2倍ほどの大きさのロボット、ペガスが現れる。

城二「すごいロボットだ……!」
ペガス「コンニチハ」
城二「あ!? こ、こんにちは」
天地「ハハハ。このペガスは、私が3年かかって造ったのだ」
城二「素晴しいロボットですね!」
天地「城二くん。宇宙開発計画の目的を知っているかね?」
城二「父から聞いていました。太陽系の外へ出られる、宇宙船のテストでしょう?」
天地「実は、第二の地球を捜すことだ」
城二「第二の地球? では、この地球はもうダメなんですか!?」
天地「公害で大気が汚れきっている…… 地球の資源も残り少なくなっている。地球を美しく再生しようとするクリーン・アース計画はすでに中止した。地球を救うのが遅かったのだ……」
城二「この地球が、滅びる!? そんなこと、信じられない」
天地「だが事実だ。地球の命は、3年と持つまい。いや、その前に地球人は、恐ろしい宇宙人に滅ぼされるかもしれない。宇宙人は太陽系に近づいて来ている」
城二「父を、スペースエンジェル号を襲った宇宙人たちですね」
天地「1日も早く、第二の地球を捜し出し、全地球人を無事に移住させねばならない」
城二「局長! 父が果たせなかった夢を僕が受け継いで、必ず果たしてみせます!」
天地「さすがは、南くんの倅だ。私はその言葉を聞きたかったのだよ。このペガスは別の目的で造ったのだが、君にあげよう」
城二「えぇっ、本当ですか!?」
天地「ペガスは力も強いし、空を飛ぶこともできる。ペガスを馬代りにして、宇宙パイロットとしての腕を磨き、お父さんの遺志を継いでくれたまえ」
城二「はい!」

城二が何気なくペガスに触れると、脚の装甲が開き、内部に人間が入れるような空間がある。

城二「何ですか、この仕掛けは?」
天地「人間の細胞をパワーアップして、『テッカマン』を造る装置だ」
城二「テッカマン……?」
天地「まぁ、鉄の鎧を着た中世の騎士、って感じかな。一種のスーパーマンだ」
城二「局長、ここに入れば誰でもテッカマンになれるんですか?」
天地「それが問題なんだ。特別な波長を受け入れる体質でなければならない。普通の人間だったら、たちまち死んでしまうだろう」
城二「特別な波長の体質?」
天地「誰もがテッカマンになれるまでには、まだまだ研究と開発が必要なんだ。完成までには、10年かかるな」
城二「テッカマン……」


地球の生命があと3年以内という事実は、
極秘にされた。
なぜなら、もしこの事実を人々が知ったら、
その驚きのために大混乱が起きると
予想されたからである。

ある日の夜、この悲しみを秘めた地球に、
宇宙から訪れたものがあった

夜。空から謎の宇宙船が飛来し、山中の森の中に墜落する。
炎上する宇宙船から、人間そっくりの宇宙人、アンドロー梅田が降り立つ。

夜が明け、アンドローは海辺を訪れる。海水は公害で汚れ、工場が黒煙を撒き散らしている。

アンドロー「汚ねぇ…… 地球も終わりか」


アンドローが宇宙開発センターを訪れる。
空から、城二の乗ったペガスが飛来し、アンドローの頭上をかすめる。

アンドロー「降りて来い! それとも、俺から行こうか?」

ペガスが着陸し、城二が地上に降り立つ。

城二「驚かしてごめんよ。そんなところに人がいるとは思わなかったんだ」
アンドロー「これでもロボットか? まぁ、お前の遊び相手としては、ちょうどいいおもちゃだぜ」
城二「何、おもちゃとは何だ!? ペガスの性能は、地球最高の科学力の結晶だ!」
アンドロー「フン。地球が滅びるのも、科学力の結晶だぜ」
城二「えっ!?」
アンドロー「この地球が、3年以内ってこと」
城二「お前、誰からそんなことを!?」
アンドロー「一目見りゃわかるぜ、俺には。クリーン・アース計画も中止した……」
城二「黙れ! 黙るんだ! どこで情報を知ったか知らないが、その重大なことをみだりに喋ることは許さん!」
アンドロー「俺の勝手だぜ」
城二「何ぃっ!?」

城二がアンドローに掴みかかり、投げ飛ばす。
余裕で立ち上がったアンドローに、城二が体当たり。しかし逆にアンドローに投げ飛ばされる。

アンドロー「気の短けぇ野郎だなぁ」
城二「そんな重大なことをみんなが知ったら、どうなると思うんだ!? バカ!」

さらに城二が殴りかかるが、アンドローは余裕でそのパンチを受け止める。

アンドロー「よせよ。俺に敵うはずがないんだ」
城二「世界中が大混乱に陥ってしまうのが、わからないのか!? こいつ!」

2人は殴り合いのケンカを始める。ひろみが通りかかり、慌ててケンカを止めに入る。

ひろみ「やめて、城二さん! ケンカなんか嫌い! やめて! どうしてケンカになったの? ねぇ、城二さんったら」
城二「そ、それは……」
アンドロー「なぁに、つまらねぇことさ。城二とかいったな。顔は憶えておくぜ」


一方の宇宙空間では、宇宙ステーションが謎の宇宙船により破壊される。
謎の宇宙船団は、ついに太陽系に接近し、宇宙ステーションを破壊した。
彼らの目的は、果たして何であろうか?
刻一刻と、地球に危機が近づいていた。
この、恐るべき謎の宇宙船団を撃退するために、地球防衛軍の戦闘用宇宙船団が出動準備を開始した。

宇宙開発センター。城二が天地局長の部屋へ赴く。

城二「局長、お願いがあるんです!」
天地「城二くんか。バカに改まって、何だね?」
城二「地球防衛軍の宇宙船に、僕も乗せてください」
天地「何!?」
城二「黙っていられないんです。憎い宇宙人にこの手を叩きつけてやりたいんです!」
天地「ダメだ!」
城二「お願いです! 僕だってもう、一人前の宇宙パイロットです。誰にも負けません! ですから──」
天地「いかんと言ったらいかん! いいかね? 君には大事な任務がある。お父さんの遺志を継ぐことだ」

ひろみが部屋の前を通りかかり、ドア越しに声が聞こえる。

天地「復興を背負っている世界の人々を、1日も早く安全な第二の地球へ移住させてやることだ」
城二「でも、このままでは宇宙人が攻撃してきます。奴らをやっつけるのが先です。父が苦しんで死んだかと思うと、僕は……」
天地「君の気持ちはよくわかるが、死んでいったお父さんは喜びはしないよ。これだけは、許すわけにはいかん!」
城二「……わかりました!」
天地「城二くん!?」

城二が部屋を飛び出す。


センター内の格納庫。宇宙船、ブルーアース号が鎮座している。
アンドローが密かに、ブルーアース号のもとへ近づいている。

アンドロー「ブルーアース号か。これなら、太陽系の外まで飛べそうだな」

船内では、城二が発進準備を進めている。アンドローが光体と化し、船内に入り込む。
ブルーアース号が発進、カタパルトを蹴って空へ飛び立ち、成層圏を突破、宇宙へと飛び出す。

城二「さすがはブルーアース号だ。操縦は、お前たちに任せるぞ。行先はポイントΘ932、Φ0688!」

コンピューターの音声が応答する。

音声『リョウカイ。ポイントΘ932、Φ0688』
城二「いけねぇ。晩飯、食いそこなったぜ」

自動的に、城二の前にサンドイッチが出される。

音声『ハイ、ドウゾ』
城二「ほぉ~、気がきくなぁ!」

城二がサンドイッチにかぶりついているところへ、ひろみが顔を出す。

ひろみ「フフッ。食いしんぼうねぇ」
城二「ひろみちゃん!?」
ひろみ「地球に戻れったって、もうダメ。戻ったら城二さんも、パパに捕まってしまうわ」
音声『キャプテン。アヤシイ・ウチュウセンガ・チカヅイテキマス』
城二「何っ!?」

ブルーアース号に謎の宇宙船が群がり、光線を放って攻撃を仕掛けてくる。

城二「危ないっ! いきなり攻撃をかけてくるやり方は、お父さんのときと同じだ!」
ひろみ「このままじゃ、危ないわ!」

ブルーアース号がロケットの噴射で、敵宇宙船の数機を撃ち落とす。
しかし敵宇宙船は数を増し、どんどんブルーアース号に群がってくる。

ひろみ「城二さん、逃げきれないわ」
城二「よぉし!」
ひろみ「城二さん、どこへ!?」

城二は席を立ち、ブルーアース号に搭載されていたペガスのもとへ向かう。

城二「ペガス・テックセッター!」

ペガスの両脚内部の空間、セッタールームに城二が収容される。

ひろみ「城二さん!?」
城二「パワーラーップ!!」

城二の体が装甲に包まれてゆく──

ブルーアース号からペガスが出撃。そのペガスの背から、城二の変身したテッカマンが姿を現す。
テッカマンを乗せ、ペガスが宇宙を翔ける。

ひろみ「あぁっ! あれが城二さん!?」

宇宙船が光線を放って攻撃して来るが、テッカマンの身を覆う装甲には通じない。
長槍・テックランサーを振るい、襲い来る宇宙船を次々に斬り裂く。
ペガスも怪力を振るい、体当たりで母船を攻撃する。
最後にテッカマンが、母船をテックランサーで斬り裂き、宇宙船団を一掃する。


ペガスがブルーアース号へ帰還。船内で、元の姿に戻った城二が、ペガスの中から姿を現す。

城二「はぁ、はぁ……」
ひろみ「城二さん!?」
城二「俺は、なれたんだ! テッカマンに!」
ひろみ「テッカマン? これはどういうことなの?」
声「ハッハッハ!」

物陰から、アンドローが現れる。

城二「あっ、お前は!?」
ひろみ「密航したのね!?」
アンドロー「それにしても、地球の科学も進歩したもんだ。テッカマンが誕生したんだからな」
ひろみ「誰、あなた!?」
アンドロー「アンドロー梅田、と呼んでもらおうか」
城二「一体、何の用があってブルーアース号に乗ったんだ!?」
アンドロー「スペースエンジェル号を襲ったのは、ワルダスターだぜ」
城二「ワルダスター?」
アンドロー「悪党宇宙人の連合軍さ」
城二「なぜ、それを知っている!?」
アンドロー「そんなこたぁ、どうでもいいだろう? ワルダスターと戦うんなら、俺も力を貸すぜ」
城二「ワルダスターの目的は?」
アンドロー「太陽系を奪うことだ。もちろん、地球の人間どもを皆殺しにしてな。ワルダスター相手に、地球が勝てるかな?」


恐るべきワルダスターの秘密を知っている、
アンドロー梅田とは何者か?
地球の自滅を前にして、
第二の恐怖が地球を狙っている。

テッカマンの力を得た城二は、
固い決意を胸に秘めて
ブルーアース号を地球へ向けた。

行け、テッカマン! 宇宙の騎士!!



(続く)

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最終更新:2017年03月16日 05:56