名探偵聖也くん ボクとパンチの物語の第1話

第1話 聖也、変な犬に出会う

小学4年生の少年、高野聖也がとある夫婦の家で、大量のご飯を食べている。
妻「うーん、あいかわらずみごとな食べっぷりだねー」
夫「聖也くん、食べるのはそれくらいにして早く探してよ」
聖也「探すって何をだっけ?」
夫「オレが昨日なくした結婚指輪だよ」
「昨日の夜、商店街の仲間と飲みに行ってしこたま酔って朝になったら、ずっと薬指にはめていたはずの指輪がなくなっていたんだよ!!」
聖也「うーん、事件を整理するとこうだね」
「おじさんは昨日7時から駅前の「カニ天国」へ行って、友だちとカニを食べてお酒を飲んで、夜中の3時にぐでんぐでんに酔っ払って家に帰ってきたんだよね」
「奧さんに服を脱がしてもらってそのまま布団に横になって、朝になってふと気づくと指輪がなくなっていたんだよね」
「服はこのタンスの中にしまったんだね?」
妻「ポケットの中には紙クズ以外何も入ってなかったわよ」
聖也「このゴミは昨日から捨ててないよね?」
妻「え?ええ」
夫「オイオイ、オレはゴミ箱に落としたりしてないぞ」
聖也「うん・・・コレ?」
聖也がゴミ箱から拾ったのは、指輪だった。
夫「な、なんでゴミ箱に!?」
妻「ポケットの中には紙クズ以外入ってなかったよ!!」
聖也「紙クズの中に指輪が包んであったよ。カニを食べて手が汚れたんで、指輪を紙でふいてポケットにしまっておいたんだよ。それを奥さんがただの紙クズだと思って、ゴミ箱に捨ててしまったんだよ」
夫「お前がよけいなことをするからこの騒ぎだ!!」
妻「あんな汚い紙に包んでたら。だれだってゴミだと思うじゃない!!」
聖也「もういい?学校に遅れちゃうよ」
夫「あっ、いやぁ、この町内で何か困ったことがあったら、いつも」
妻「聖也くんに頼んで解決してもらうのが慣わしになっちゃたわね」
夫「ありがとう聖也くん!!」
妻「また何かあったら、よろしくお願いするわねー」

聖也は、学校に行った。
クラスメイト「一限は国語の授業だろ?高野――、オレこのドリルやってないんだ。教えてくれよ―――」
聖也「タダじゃ嫌だぞ」
クラスメイト「ちゃんとお菓子持ってきてあるって」

聖也「ホイ」
クラスメイト「サンキュ」
聖也が、ドリルを返してから渡されたお菓子を食べる。
女子「高野くんって勉強できるけど、なんか変な男の子よねー・・・」

聖也「学校もいいけど、給食の前と後の時間が無駄だな」
教師「給食だけが目的で学校に来てるのか」

聖也「さあ給食だ!!」
クラスメイト「給食当番でもないのに、なんでいつも給食係の手伝いするんだよ」
聖也「みんなに隠れて自分の分をいっぱい入れるために決まってんだろうがよ!!」
クラスメイト「イバって言うことか」
給食係「オーイ大変だ!!」
「この犬が給食のおかずを全部食べちゃったんだよ」
給食室には、左目に黒いアザがある犬がいた。
聖也「なんだと―――ッ!!!」
聖也の怒りゲージがどんどん上がり、髪が金色に変わる。
給食係「スーパーサイヤ人にでも変身しそうな勢いだな」
聖也「許せん!!こいつを喰ってしまえ!!」
給食係「どうしたらいいのかなあ」
給食のおじさん「給食室にはオレひとりしかいなかったからねえ。気がついたときには、おかずのハンバーグ全部食べられちゃってたよ」
聖也「ムキ―――ッ!!!ハンバーグは僕の大好物!!!ますます許せん、死刑――――ッ!!」
「ん?おかずはハンバーグ?だったら、犯人はこの犬じゃないよ」
給食係「え!!なんで!?」
聖也「ハンバーグはひき肉をこねて、タマネギとパン粉を加えて固めて焼いたもんでしょ?」
「だけど犬はタマネギが苦手だから食べられないんだ。すごい下痢を起こして、最悪の場合、死んでしまうこともあるんだよ。この犬の様子を見てると、とてもそうは思えないでしょ」
給食係「た・・・確かに・・・」
聖也「おじさん、本当にこの犬が食べるのを見たの?」
おじさん「うっ!!!」
聖也「おじさん、いままで見たことない人だね。給食の係の人、僕はみんな知ってるけど、ここは初めて?犬が全部食べたなら、少しは食べカスが残ってそうなもんだけど、ここにはまったく食べカスが残ってないよね?」
「もしかしたら、初めてここに来て作るのが遅れたか、数を間違えるかして、僕らのクラスの分を作るのが間にあわなかったんじゃないのかな!!?」
おじさん「う・・・う・・・う・・・う・・・!!」
「わーん、すみません!!!どうしても間にあわなかったんで、学校の裏をウロウロしてたこの犬のせいにしたんです」
犬「ワン」

学校から帰る聖也の後ろにあの犬が付いていた。
聖也「ついてんくんなよ」
犬「ワン」
聖也が走ると、犬も走って追いかけてくる。


給食のおじさんは、校長室で注意を受けていた。
校長「こんどからは、こういうことがないようにお願いしますよ」
おじさん「ハ・・・ハイ。しかし校長先生、あの子はいったいなんですか?小学四年生なのに、なんで私の嘘をひと目で見抜けるんですか?」
校長「あの子はわが校始まって以来の秀才で、喰い意地ははっているが町一番の有名な小学生―――名探偵、高野聖也くんだよ」



(続く)

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最終更新:2017年03月25日 23:55