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1:「水晶の心 その1」の巻 - (2010/08/15 (日) 20:27:04) のソース

**――2022年 7月19日<夏休み前日> PM6:00――

「&bold(){うおおおおおおお!!} 待てッ! 話し合おうッ! 話せば分かるはずッ! ていうか分かれッ! そして許してッ!」

未だ日差しが弱る事のない、夏の午後6時。少年は「ある一人の少女」から全力で逃走を敢行していた。

今日は夏休み前日であり、終業式の後からこの逃走劇を繰り広げているので――…………
既にかれこれ5時間以上彼らは命がけの逃避行を繰り返し続けている事になる。
にも関わらず、二人が息を切らすことはない。もっとも、少女は怒りで、少年は生命の危機で疲れを忘れているだけだが。

「&bold(){許すかあああ―――ッ!} てめえこれで何度目だと思ってるッ! 毎日のようにィ!」

少年の制止の言葉に無慈悲な&bold(){「否」}を叩きつけ、追跡を続行する少女。
あまりの風圧に彼女の左右へ飛び出た特徴的な髪型は揺れに揺れ、ハサミのような形の髪飾りは今にも吹っ飛びそうだった。

「だッ、だっておまえ、そんな&bold(){カニみたいな髪型}してる方が悪いんだろお……はッ!」

あまりの恐ろしさに、思わず反抗したくなったのであろう。
少年は少女の怒りに油を注ぐ決定的な発言をしてしまった。言いかけてから、ことの重大さに気が付く。
どんどん顔から血の気が引き、嫌な汗が額を流れ、鼻を伝い、風に押しのけられて頬を横断する。
まるで大気自体が強大な重量を持ったかのごとく、少年の双肩にのしかかり押しつぶさんとする。

「…………」

少女の足が止まった。疲労からではない。普段、彼女はこの数倍の距離、少年を追い回しているのだ。

少女が俯く。あたりはまだまだ明るいにも関わらず、少女の表情は陰に隠れて伺えない。
しかし、感情は手に取るように分かる。それは&bold(){「憤怒」}。
そのあまりの圧力に、思わず少年の足も止まった。いや、正確には「すくみ上がった」。

「ハッ…………えっと……う……上野……さん……?」

このままでは駄目だと悟った少年が、かなり遅れながらも上野、と呼ばれた少女のご機嫌をとりにかかる。
彼が「カニのようだ」と評した髪型は、風もないのに不気味にゆらゆらと揺れていた。
それはまるで、カニが怒り狂って足を蠢かせているような、そんなおぞましい光景だった。

「…………」

一瞬、少女の姿に、買ってから10年経ったオンボロテレビの映像のようにノイズが走るが、それに気付く者はいない。
少女の頬が、ヒクヒクと小刻みに痙攣する。それを見た少年は、ますますもって顔から血の気を引かせる。
もし、恐怖だけで人が爆発できるとしたら、彼の肉片は今頃ブラジルあたりにまで届いていたことだろう。

空気がさらに張り詰める。少年は、あたりに人はいないか、と恐怖でよく働かない頭をフルに使って現実逃避を始めるが、
しかし現実は非情で、あたりには人どころか野良猫野良犬の類すら存在しない、完全な無人状態だった。

&bold(){「てめえ骨も残らねぇと思えッ!」}

少女が顔を上げる。その表情は、悪鬼さえも尻尾巻いて逃げるほどに恐ろしかった。
その怒声ひとつで、あらゆるものが震え上がり、場の緊張が弾け飛んだ。

同時に、少女の姿が消える。

いや、実際に消えたわけではない。
あまりの動きの速さに、&bold(){”消えたように錯覚した”}だけだ。
漫画か! と少年は心の中で目の前の少女の理不尽さ(性格ではなく、性能の)に
心の中で毒づく前に、逃走すべく体の向きを変えようとするが、それは既に遅かった。

次の瞬間、少年の眼前に少女の姿が現れる。
まるで豹のような身のこなしで大きく腕を振りかぶり――

その拍子に少女の制服が乱れ、彼女の首筋が露わになる。
(もっとも、少年にそんなことを注意する余裕はないが)
彼女の首筋には――星型のアザがあった。

「&bold(){ひぃぃぃぃぃぃ!}」

少年の悲鳴が、杜王の空に響き渡る。
結局彼は日が落ち、あたりが真っ暗になるまで生死を賭けた鬼ごっこを続行するハメになった。


*1:「&ruby(クリスタル・エンパイア){水晶の心}」の巻


**――同日 PM09:00 Y市必府町――

&bold(){トン トン トン トン}

女「ねぇ、いい加減部屋でも&bold(){コート}着るその癖、直さない?」&bold(){トントン}

黒コート「却下だ。こいつはおれのポリシーさ」

女「何よ、そのポリシー……」&bold(){トントントントン}

黒コート「んなことより、しゃべりながら包丁使って指切ってもしらねーぞ」
女「わたしがそんなミスすると思う?」&bold(){トントントトン}

&bold(){トォルルルルルルン トォルルルル}

TV「――S市杜王区にて、本日未明、&bold(){変死体}が発見されたと――」

&bold(){トン トン トン トン}

女「電話?」&bold(){トントントントン}

&bold(){トォルルルルルルン トォルルルル}

TV「――被害者の体には心臓を貫通する&bold(){『穴』}があり、その他にも無数の&bold(){『穴』}が存在していたと――」
&bold(){
トォルルルルルルン トォルルルル}

女「ごめん、いまわたし、手が放せないのー! 出てくれる?」 &bold(){ジュゥージュゥー}
黒コート「――オーケー、テレビ消してくれ」

女「はいはいーっ」&bold(){スッ}

TV「――この不可解な&bold(){『穴』}による外傷の変死体の発見はこれで4件になり、警視庁は―― &bold(){プツ゛ン}

&bold(){ガチャッ}

黒コート「もしもし?」

??『もしもし? お久しぶりねぇ、わたしよ』
黒コート「…………おまえか」

??『……あなたに頼みたいことがあるの』

黒コート「……なんだ?」

??『知ってるかしら。……&bold(){「杜王区」}……K県にいるあなたには分からないでしょうけど……。

   &bold(){『通り魔事件}』が起きている。そして、その&bold(){「始末」}をあなたに任せたい』 &bold(){ドドド}
&bold(){
ド ド ド}

黒コート「……仗助さんたちはどうしたんだ? おれに頼むよりよっぽどそっちの方が確実じゃあないか?」

??『わたしを始めとして仗助先輩や広瀬さん、億泰は&bold(){「別件」}で全員出払ってしまうの。
   きみの役目はその間の&bold(){「戦闘慣れしてないスタンド使い」}の牽制と護衛ってところかしらね。言ってる意味、分かるわよね?』

黒コート「ああ、なるほど……。もう&bold(){この時期}か……。つまり、杜王区に残ったスタンド使いの護衛……だな?」

黒コート「ケッ……面倒くせ~な……。まあ、了解はしたが、おれはおれのやり方でやらせてもらうぜ。文句は言わせねえ。
     …………で、となると&bold(){『コイツ』}はどうする? おれが行くって言えばきっとついてこようとすると思うぜ。一家総出でな」
    &bold(){「折悪くちょうど夏休みだしな、明日からよ~」}

??『彼女は今のところ&bold(){『待機』}よ。実は彼女にも頼みたいことがあってね……。ま、それはきみにも説明するわ。後でね』

黒コート「……かまわねえけどよォ~」

??『お熱いところ申し訳ないわ! じゃあ、そういうことで、よろしくね! 以上、平塚雷鳥が香港からお送りしましたッ!』ピッ


女「……雷鳥さんから電話? けっこう久しぶりね。……どうしたの?」

黒コート「ちくしょう……。&bold(){『国際電話』}って電話代馬鹿になんねぇだろ……。

    ……ん? ああ、ちょっと野暮用ができちまってな……。&bold(){『杜王』}にいってくることになった」

女「そう……。わたしも」

黒コート「もう察しはついてんだろ? 今回はおれオンリーの用事だ。おまえは&bold(){『待機』}。あとで連絡してくるそうだ」

黒コート「ああ~~、子供たちの世話よろしく頼むぜ。もしかしたらあのガキども海外旅行初体験になるかもしんねー」

女「あ……ちょッ、ご飯……」

黒コート「悪ィな。まあ、またすぐに会えるさ。それまでの楽しみってことで、な!」バタン

女「……もう……」


**――翌日 <夏休み初日>PM4:00 杜王区――

***――この街の名は……『S市杜王区』。2000年代にS市と合併し、区となったこの街は、
***.   ここ数年で目覚しい発展を遂げているらしく、2年前とは街の細部がまるきり変わっていた――

&bold(){ザッ!}

黒コート「……久々に来たな、杜王」

黒服「わたしにとっては&bold(){『初めての杜王』}ですが」&bold(){ザッ}

***――彼は&bold(){「黒服」}。本名は不明。ただ、&bold(){「黒服」}、と名乗っているから&bold(){「黒服」}だ。
***.   素性は一切分からないが、SPW財団の人間ということだけは間違いなく、信用できる男だ――

黒コート「で、黒服。この後は何をするんだっけか。ホテルの予約だっけか?」

黒服「&bold(){黒やん}でいいと言いましたのに……。……まずはこの娘と接触してもらいます」パサッ

黒コート「いや黒服って呼ぶわ……。……なんだ、こいつ。
     ……&bold(){『譲』}るに……&bold(){『華々しい』}の&bold(){『華』}?  &bold(){『ジョウノ ジョウカ}』って読むのか?」

黒服「&bold(){『ウエノ ジョウカ』}と読みます。現在の住所は確か定禅寺1の7…………」

黒服「&bold(){『あの人』}の娘、という情報もあります」
黒コート「なにィ? &bold(){『あの人』}……って、&bold(){「あの」}&bold(){『あの人』}か」

黒服「ええ、&bold(){「あの」}&bold(){『あの人』}です」
黒コート「…………ややこしいな」

黒服「……ですね」

黒服「……そして、ふだんは温厚だが、怒ると&bold(){「不可解な怪力」}を発揮する――との情報があります」 &bold(){ゴゴゴ}

黒コート「&bold(){『不可解な怪力』}ぃ? &bold(){「スタンド」}じゃあなくてか?」

黒服「はい……。これはわたしにもまったく不明なことがらなのですが……。
    &bold(){「上野譲華自身」}が攻撃をあたえているのです。怒ると……、人外のような破壊力を持つ拳を繰り出すと」 &bold(){ドドド}

黒服「そして、これはさらに不明なのですが……&bold(){「上野譲華」}はこの&bold(){『不可解な怪力』}の他にも、
    &bold(){「物を隠すのが上手い」}という特技を持っているそうです。いや、これは特技と言っていいのか……」

&bold(){ド ド ド}

黒服「&bold(){『病気』}……、

    のようなものだと、&bold(){「資料」}には書いてあります。幼少時から、精神が不安定なときには彼女の周りから……。
    目の前にあったのに、いつの間にかそれが&bold(){「隣」}に&bold(){『移動』}していたり……。
    誰も気がつかないうちに彼女の懐にしまってあったり」

黒服「しかもさらに&bold(){「不可解」}なことに、どうも彼女はそれを自分で制御しているわけではないのです。
    彼女自身も知らないうちに、ものがなくなっていたり、ついさっきまで指先でイジくっていたものが移動しているのです」
黒コート「……&bold(){『スタンド…………能力』}……か?にしても、あまりに&bold(){「不安定」}すぎるな」

黒服「まったくもってその通りなのですが……」
黒コート「まるで安定してねーな。スタンド能力&bold(){「らしき」}ものがあるってーのに、肝心の&bold(){「スタンドヴィジョン」}がない……」

黒服「まるで……まだ覚醒していないスタンドのような――」

少年「&bold(){ぎゃああああああ―――ッ!!} やめてえええ―――ッ!!」&bold(){ギュン!}

譲華「まてコラ、このクソカスがッ! 今日と言う今日は本当にッ許さねーぞボケッ!」&bold(){ギュン!}

黒コート「」

黒服「」

黒服「…………」

黒コート「……今おれたちの隣を物凄い勢いで通り過ぎたのって、この写真の娘だよな?」

黒服「ですね……」

黒コート「…………追うか」&bold(){ダッ}

黒服「ですね……」&bold(){ダッ}


&bold(){ダッダッダッ}


黒コート「にしてもあの娘足が速いっつーか物凄い形相っつーか……。どういう理由であんなトチ狂ってるんだ?」

少女「&bold(){邪魔よッ!} どきなさいッ!!」&bold(){ドン}

黒コート「うおッ!?」&bold(){トトッ}

少女「譲華ぁぁぁ~~~~ッ! そのへんにしときなさいッ!」&bold(){バアッ}
少年「なっ、&bold(){那由多ちゃん}ッ! 助かったァァ~~~……」

譲華「那由多~~……。あたしの邪魔するってんならてめ~も容赦しねーぞ? こいつが何したか分かってんだろ!」

黒服「あれは……&bold(){「対象」}のひとりです。&bold(){『虹村那由多』}……。&bold(){「資料」}には、
    彼女もまた&bold(){「不可解な怪力」}を持っているとのこと……。特別な「特技」は見られませんが、
    彼女の場合はこの&bold(){「不可解な怪力」}をある程度制御できているようです……」

黒コート「あの那由多とかいう少女が、譲華を止めようとしてる……ってとこかな、今の場面は」

那由多「うぐ……! うぐぐぐ……こいつ……また&bold(){『パワー』}が強く……」

譲華「ナマッチョロイ邪魔なんかしてんじゃあねェ! てめぇは邪魔だッ!」&bold(){ヴンッ!}

黒コート「…………! 押し負けたッ!」

譲華「てめぇぇぇ~~~追い詰めたぜッ! &bold(){『パスカル』}……どこの国の学者かは忘れたが…………
    そいつに言わせると、人間は&bold(){『考える葦』}だそうだぜェェ~~~!
    葦ってのはショボイ植物だからよォォ~、つまり! 人間は考える以外はてんでひ弱な生き物ってことだよな~~!
    ということはよォォ~~~~~学習しねえ脳タリンはよォォ~~~~何度おいかけられても学習しねえアホはよ~~」

譲華「人間として終わってるよなァァァ~~~~……! え? どうしたよ?」

少年「うぐぐ……」

黒服「……譲華さんが少年を追い詰めてますが」

黒コート「……あー、面倒くさいな……。あのじゃじゃ馬を御さなきゃあならんのか」&bold(){ザンッ}

那由多「まるで……簡単にできる……みたいな口ぶりね……!」&bold(){ググッ}

黒コート「できるから言ってるんだよ……」

譲華「あたしのこの髪型をけなすヤツは誰だろーとぜってェ許さねェ!」&bold(){ゴオオ}

那由多「くぅっ…………!」
     . . . .
黒コート「オーマイ……。来てそうそう&bold(){『コイツ』}を使うとは思わなかったぜ」&bold(){バ ン}

少年「うおおおッ! マズイ! 避けなくてはッ! 見た目は可愛らしい女の子のフックだがその実は!
    たとえ暴走するインド象だろーと! 荒れ狂うバイソンの群れだろーと! 関係なくひねり潰す怪力!  &bold(){ヌグッ}

    ……あれ?」&bold(){ピク}

譲華「ぬ、ぬぐぐ、ぬぐぐぐぐぐ…………! あれ? どうして? 動けない……!」&bold(){ググ}ググ
                               . ... . . . ... .
黒コート「……実に……実に久しぶりに使ったぜ&bold(){。『セントラル・ヒーティング』}」 &bold(){ゴ ゴ ゴ}

黒コートのスタンド『にしても、カズハのやつを待機にさせたのは正解だったな……。あいつカニが大嫌いだからよぉ~!
          確実に! あいつの地雷を踏んで大惨事になっただろーぜ。下手にどっちも力があるからなぁ~』&bold(){グニャアアアアアア}
那由多「……あんた……!? これは……!」

黒コート「そこで黙って見てな。……オイ、ジャリガキ」

譲華「誰がジャリガキだってェ!?」&bold(){バッ}

黒コート「おまえだ、おまえ。もう、そのへんでいいだろ?そいつ。大分マイってるようだしよぉ~~っ」

譲華「いいわけねェだろッ! こいつ昨日も……」

黒コート「&bold(){『当身』}」&bold(){ドガッ}

譲華「きゃううっ……」&bold(){ガクッ}

少年「なっ!?」

那由多「あっ! 譲華に何をっ……くそっ動けねえ」&bold(){ググ}


***――30分後、カフェ ドゥ・マゴ(※少年は先に解散しました)――

譲華「えっと……その……何ていうかお手を煩わせてしまい……まことに申し訳なく……」&bold(){ショボーン}

黒コート「(なんだこの変わり身……)」

譲華「本当にすみませんでした……えっと……」

黒コート「靖成だ。川端 靖成。雷鳥からの紹介でこの町に来た」

譲華「雷鳥さんの……道理で……。よろしく、靖成さん」

黒服「わたしはSPW日本支部から派遣された通称&bold(){「黒服」}です。気軽に&bold(){『黒やん』}とお呼びください」

譲華「いや普通に黒服って呼ぶ……」&bold(){ビク}

那由多「…………………………」&bold(){ギロリ}

譲華「(ううっ……見てる……! 見てるわ、めっちゃこっち見てる……!)」

那由多「……虹村那由多よ」

靖成「虹村? おまえ億泰さんの娘さんか?」

那由多「……父さんを知ってるの?」

靖成「ああ、ちょっとした縁でな」

靖成「(あの人たちは&bold(){「スタンド」}についてこの娘たちに何も説明してねーのか……。
     まあ、当然か。自分の娘に&bold(){『普通の青春を送って欲しい』}と考えるのはよぉぉ~~)」

靖成「……おれは、&bold(){『通り魔』}をとっ捕まえるためにこの街に来た」

那由多「……&bold(){「通り魔」}を? 雷鳥さんの知り合いってことはやっぱりアンタも警察関係の……?」

靖成「どーやらおまえら、普通じゃあない力を持ってるらしいからな、忠告に来た」&bold(){ド ド ド}

那由多「……何を言ってるの?」 &bold(){ドド}

靖成「おぼえはないか? おまえらの父親は……」 &bold(){ド ド ド}

那由多「なんの、なんの話をしてるのを言っているのよッ!!」&bold(){バンッ}

靖成「おまえらの父親はおまえらを巻き込みたくないから話していなかったようだが、
    もうこうなっちまった以上、そのままのスタンスじゃあ命がいくらあってもたらねえ」 &bold(){ド ド ド}

那由多「だから何の話だって言ってんのよォォォ――――ッ!!!」&bold(){ド ドドドド ド ド}

靖成「おまえたちは&bold(){『超能力者』}だ」&bold(){ドン}

譲華「はっ……?」

那由多「ちょっと、ちょっと、待って……超能力者って、あの? ものを浮かせたり、スプーン曲げたり?」

靖成「正確にはそれは&bold(){「結果」}だがな……。このおれも超能力を持っている。
    おれやおまえの『父親たち』はこのパワーを&bold(){「スタンド」}と呼んで…………おまえらもそれを備えている。
    そしてこのパワーを自由に操れるヤツラを、おれたちは&bold(){『スタンド使い』}……と呼んでいる」

HW &bold(){ズゥゥ}
靖成「おれの&bold(){『これ』}は、&bold(){『ヒートウェイヴ』}……という。&bold(){「見える」}だろ?」

那由多「ちょっと待ってよ、百歩譲って譲華のあの力が&bold(){『スタンド』}だとして! なんでそんなことをあたしたちに教えるの?」

靖成「話はまだ続いてるんだぜ……! さっき話した&bold(){「通り魔」}……」

靖成「あいつも、&bold(){スタンド使い}だ! 紛れもなくな…………」

譲華「でも、あたしたちとその&bold(){『通り魔』}に何の関係があって……」

靖成「忠告だぜ。おれがしてるのは、最初から……今に至るまで全てな」

黒服「&bold(){『スタンド使いは引かれ合う』}――のです。数十年前、あなたがたの父親も体験した絶対的な法則(ルール)」

靖成「お前らもスタンド使い、通り魔もスタンド使いである以上、いつどこで出会ってもおかしくはねぇ。
    だから忠告なんだぜ……。&bold(){『雨の日に気を付けろ』}……これが忠告だ」

&bold(){ド ド ド ド}

譲華「わ、わかりました……。あたしたちにその&bold(){「すたんど」}っていうのが備わってるというのは、まだ実感わかないけど」

那由多「………………」

靖成「……じゃあ、邪魔したな。もう遅いから、日が暮れないうちに帰れよ」


**side靖成

靖成「さぁて、これからどうしたもんかな……」

黒服「……一刻も早く、&bold(){「通り魔」}を拿捕、再起不能にしなくては、ですね?
    これからもまだまだやることはありますし……」

靖成「それもそうだが、あの娘たちの動向だよ」

黒服「……え?」

靖成「あの人の娘だぜ? あの譲華は……。そんなヤツが、&bold(){『常識では理解されない』}犯行を目の前にして、
    平気な顔をしてその状況から目をそらせるような人間だとはとうてい思えねぇ」

黒服「&bold(){!!} ではッ! なぜわざわざけしかけるようなマネをッ!?」

靖成「ライオンはよォォ~~~……。てめーの子供をがけの下につき落とすっていうぜ。
    これからの戦い、絶対にアイツラに戦いの火の粉が降りかからないとも知れねェ。
    &bold(){『通り魔』}はまだまだマシな方だ……。このあたりでひとつ、アイツラの&bold(){「スタンド」}を起こしてやらねえとな」

靖成「(少なくとも、足手まといにゃあならねーだろうしよォ……)」

&bold(){プアァワァアア――――ッ}


**――side譲華――PM7:30 商店街――

譲華「………………………………」&bold(){スタスタ}

那由多「ねえ、譲華」

譲華「……ん、何? 那由多」

那由多「……わたし、読心できるんだ、実は」

譲華「…………は?」

那由多「&bold(){『この街で起きている殺人事件が、「よくわからない力」で起こされてることなんて、}
      &bold(){知らなかったし、そんな暗黒じみたことに関わるのはスゴク怖いけど、}
      &bold(){それが「誰にも分からない」んなら、それを知ってる自分は立ち向かわなくてはならない』}」

譲華 &bold(){ギクッ}

那由多「図星……のようねぇぇ~~~っ……。昼間は一日中一般人を追いまわしてたってのによく言うわ、ホント」

譲華「うう……。け、怪我はしないように加減してたもん……」

那由多「あんだけ怒り狂っててそんな加減ができるあんたが好きよ。でもね、それとこれとは話は別」

那由多「相手は&bold(){「通り魔」}よ? 立ち向かおうなんてしたら殺されるかもしれないの? 分かる?
     死ぬのよ? DEAD。死んだら何もかもおしまいなの」

譲華「死なないわよ、あたしは」

&bold(){ド ド ド ド}

那由多「……はぁ、なんの根拠があって……」
譲華「なゆた~ん、考えすぎだっての~。那由多、あたしが死んでるとこなんて想像できる?」

那由多「そんなこと……」
譲華「じゃあ大丈夫でしょ? だったらグレートにブチ負かすだけよ、&bold(){『通り魔』}さんとやらを」

那由多「…………。………………こーいうところはあんたには敵わないわ……これも運命かもね」
譲華「ニタァァ~~ッ さっすがなゆたん! 助かるわ~」


&bold(){――数十分後――}

譲華「……とかいって、結局通り魔と出会わなかったら格好つかないよね……」
那由多「そうよねぇ……。さんざんカッコつけてこれはないわ」

那由多「とりあえず、今日はここまでしない? 遅いしさ」
譲華「う~ん~」

那由多「……わたし、透視できるんだ、実は」
譲華「はぁ? いきなり何言ってるのよ?」

那由多「あんたの持ってるケータイ……そうねぇ、ざっと15件ほど、あんたの母さんから着信があるわ。
     &bold(){『早くかえって来い』『どーしたッ! 早く応答しろ!』}……ってね」
譲華「えぇ~まっさかあ~~~
                         &bold(){パカッ}

                               げっ! ぴったし15件」&bold(){サァ~}

那由多「分かったら帰るわよ」
譲華「……はい…………」


**――さらに数分後――

那由多「んじゃ~、あたしはこっちだから。じゃあね、譲華。また明日」
譲華「じゃあね~那由多。また明日」

譲華「はぁ~、収穫ゼロかぁ、駄目だな~これじゃ」

&bold(){スタスタ}
&bold(){ スタスタ}

譲華「(……? うしろから足音が……? しかも、あたしの足の動きに合わせている……)」

譲華「……考えすぎか」&bold(){ハァ}

&bold(){スタスタ}
&bold(){ スタスタ}

譲華「(………………)」

&bold(){スタスタ}
&bold(){ スタスタ}

譲華「~~~~~~~~~~~~~ッ!!」

譲華「(ッつっても気になるでしょうがッ!)」&bold(){バッ}

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