惨劇の土曜日から約二週間・・・・
朝っぱらから校門の前でいちゃつく・・・否、言い争うカップルの姿があった。
川上「嘘よッ!!絶対浮気してたッ!
日曜日なのに家に居なかったし、携帯の電源も切れてたッ!
大和久「ちょ、お前。浮気とか言うなよ・・他の女子が聞いたらショック受けんだろ?
昨日は中条と管尾が動物園に行くってから、それに付き合ってたんだよ。来たら確認してみろよ。
携帯も、充電器がブッ壊れてて今使えねぇんだよ。
川上「・・・非道いッ!絶好のダブルデートシチュじゃない!
だったら尚更、何で呼んでくれなかったのよッ!?
大和久「だってよォ~・・お前が来るともれなくアイツが着いてくるじゃねえか。
そう言って指さした先には一人の男。
とっさにその男は街路樹の陰に身を隠すが、朝の光を受けて輝く頭がその存在を主張していた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「(・・・バレたか?だが尾行は完璧な筈ッ!
この騎士江藤・・・
陰ながら彼女を守ると誓いを立てた身。
バレたからとてやめるわけにはいかないッ!!)
川上「あ、あの人はッ!?
大和久「気づいてなかったのか?
・・・それにしてもよォ~。
アイツ学校どうしてんだろ・・・
ッ!!
軽口を叩く大和久の動きが驚きのためか止まる。
川上「ん~?・・どうしたの?
その視線の先には
見覚えのある生物の姿があった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「(馬鹿な!アイツは【見つけたら幸せになれるマスコット】って噂に書き換えられた筈だッ!
何で学校の外に・・・!?
川上「・・・何もいないわよ?からかってる?
振り向いた川上には、その姿は見えていないようである・・・
大和久「それじゃ・・・スタンドって事か?
―トテトテテ・・!
キャ「でしぃ~・・!
そこには懸命に逃げるキャッツの姿。
そして
「ゴラアアアッ!
待ちやがれてめぇ~ッ!!
鬼の形相でキャッツを追いかける少女の姿が遠くに見える。
ゴゴゴゴ・・・
大和久「・・!(あの怒りっぷり
大事なものを奪われたって顔だぜッ!!
これは捕まえねえといけねえな)
オラアァッ!!
―ドゴシャアァッ!!
O・Cが強烈な拳を叩き込む!
少女「へぶしッ!
それは丁度、少女が江藤の脇を駆け抜けようとした時であった。
―ゴロゴロゴロ・・・!
少女は鼻から血を吹き出し、派手に転がって行く!
江藤「・・・
・・・・・え?
―ドガッシイィッ!
「確保ォ~ッ!!
「捕まえたぞこの変態野郎ッ!!
「大臣の娘さんに手をあげるとはなんて野郎だッ!!
突然、屈強な黒服に肩から押さえつけられ罵声を浴びせかけられる江藤。
江藤「な、ちょ・・!待っ
弁解する暇もなく、路肩に停めてある黒塗りの高級車に引きずり込まれていく。
―バタン
―ブロロロロ・・・
江藤と黒服の乗った車が去っていくまでおよそ10秒・・・
恐るべき早業で人一人が跡形もなく消えてしまった。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「え?
あまりの出来事に絶句する大和久。
「いづみ様、大丈夫ですか?
「・・平気だ。少し鼻血が出ただけだ。
甲斐甲斐しく介抱する黒服に、いづみ様と呼ばれた少女は
大和久がキャッツを殴り飛ばすと同時に吹っ飛んだ・・・
そしてキャッツは川上には見えていない。
大和久「・・・と、言うことは
キャッツはスタンドであのガキが本体って事かぁ~ッ!?
いづみ「ちょっとあそこにいるお兄さんに用がある。
黒服「左様ですか、何かあれば知らせて下さい。
狙撃班が控えておりますので。
いづみ「うむ、下がれ。
黒服「かしこまりました。
一連の流れに、固まっている大和久に少女が近づき声をかける。
いづみ「私を殴ったのはお前だな・・・?
ドドドドドドド・・・
川上「生意気な小学生ね・・・人の彼氏をいきなりお前呼ばわりなんてッ!
いづみ「黙りなさい。私はお前の発言を許可していない。
非常に高慢ちきな態度である
川上「あんた何様のつもりよ!?
いづみ「いづみ様だ。
川上「(この子頭イっちゃってるわ・・・)
川上が閉口すると、満足げな笑みを浮かべて大和久へ向き直る少女。
いづみ「答えなさい。
今し方私のスタンドを殴り飛ばし、私に鼻血を出させたのはお前か?
ゴゴゴゴゴ・・・
大和久「・・・
そうだ、俺が殴った。
いづみ「そう
なら私と結婚してもらうわ・・!
川上「え
大和久「は?
いづみ「私のキャッツ・グローブを見て触れる人間は一人もいなかった。
価値観を共有出来そうな相手がやっと見つかったのよ。
嫌とは言わせない・・!
大和久「・・・嫌だと言ったらどうすんだよ?
いづみ「力づくでも。
川上「はぁ~?何言って
―チュインッ!
突然地面に小さなえぐれが発生する。
川上「・・・・え?
ゴゴゴゴゴゴ・・・
いづみ「狙撃手が狙っている。
命までは奪わないけど、少々痛い思いをする事になるわね。
何でこんな事が出来るのかって顔してるわね。
教えてあげる。
私の父はこの国の文部科学教育大臣でもある「一 九十九(にのまえ つくも)」だからよッ!
川上「マジ?
友愛政権を打ち倒し
今の政権の基礎を作り・・・首相すら頭が上がらないという・・・
大和久「知らねぇな・・・
おい、行くぞ。 頭のおかしい餓鬼に構っちゃいられねぇぜ。
―ガシィッ!
川上「(や、やだぁ、そんな強引な・・・)
力強く川上の手を引っ張り歩き出す大和久。
いづみ「知らない?・・っていうか待ちなさい!
【キャッツ・グローブ】!
電線を切って足止めしなさいッ!!
キャ「で、でも・・・
いづみ「でももへちまもあるかッ!
私がやれって言ったらやるんだよォ~ッ!!
キャ「分かったでし・・・
―ブツンッ!
―グオオォッ・・・!
川上「な、電線が切れてこっちに向かってくる!
―グオオッ!!
ドドドドドドドド・・・
大和久「問題無いッ!O・Cは既に能力を発動しているぜ!
―バッヂィィイーーン・・ッ!!
電線は二人の遥か後方へと振るわれる・・
川上「え?
キャッツ「外れた!
いづみ「何やってんのォ~ッ!!
大和久「いない場所を狙ってちゃあ、当たる訳ねえわな!
このまま逃げるぜッ!!
いづみ「待ちなさいッ!!
―ダダダダッ!!
脱兎の如く逃げ出した大和久を止められず、舌打ちするいづみ・・・
いづみ「逃がしたか・・・まぁ、いいか。
制服でどこの学校かは分かっちゃったからね
キャ「・・・
――大和久が少女に襲撃される前日
私は、町内にある動物公園に来ていた。
中条「ここにその猿がいるって訳か。
管尾「うん、【思いを遂げられなかった猿の魂は、その飼育員の子孫を守る守護霊となり、片時も離れず彼らを守る事を誓った。そしてその子孫は織須田動物公園で今も働いている】
悲願を果たす為に怪物になるより、この方がロマンチックじゃない?
目を輝かせながら解説する管尾。
未だ男子には戻れず女子のままであるが、スカート姿にもすっかり慣れた様で
時折、元が男だと言われても信じがたくなる事すらあった。
学校中の男子は驚いていたが、すぐに浮き足立ち、今や管尾はアイドル扱いである。
どうやら奴らは、下半身で物を考えるせいか可愛ければ元が男でも良いらしい。
大和久「管尾、今日の格好かわいいじゃねえかよ。
管尾「あ・・え、えと・・ありがとう。
図々しく会話に混ざってくる大和久。
こいつも女子から絶大な支持を得ている・・・
つまり、織須田高校の二大美男美女に挟まれ、見事なまでの引き立て役になっているのが私だ。
そう言えば・・・何故コイツがついてくるのだろうか。
その答えはすぐに分かった。
「礼司~!!
―タタタ・・!
足早に駆けてくる女子・・・
川上では・・・ない。
中条「大和久・・・おま
―バキィッ!
中条「ぶふッ!?
一瞬何が起きたか分からなかったが、痛みからすぐに大和久に何かされたのは分かった。
「ごめん、待った?
大和久「いや、ちょうど来たところだぜ。
あ、こいつら学校のクラスメイトとその彼女。
「ふ~ん、クラスメイトかぁ~。
礼司も青春してるじゃな~い!
大和久「まぁな。
そう言うや私の肩に腕を回し、私以外誰にも聞こえないように囁く・・・
大和久「ボソボソ・・・(余計な事を言ったらぶっ殺す・・・
それだけ言って再び女性の元へと戻る。
成る程、理解出来た。やはり二股か。
これは非常に良い・・・
殴られたのは頭にくるが、この図体のデカい元ヤンうすら馬鹿の弱みを握ったのだ。
残念ながら私は彼女(川上)の連絡先を知らないので、今日密告は出来ないが。
管尾「大丈夫?
中条「あぁ大丈夫だ、問題ない。
大和久「マジか・・・
女子「・・・ビッグボス・・備府町・・・
大和久たちがなにやらヒソヒソ話をしているが、その中に聞き慣れた単語が混ざっている気がするが・・・
気のせいだろう。
それより、明日からどうやってゆすってやろうか・・・
そんな事を思いながら、園内にある猿の檻へと私は足を運ぶ。
――――――
小さな町の小さな動物公園。
園内はさした広さもなく、中条達は数分足らずで猿の檻の近くまで来ていた。
管尾「なんか緊張してきちゃった・・・
みんな、何か飲まない?
ちょうど自販機があるし。
中条「そうだな、喉も乾いてきたし。
女子「賛成!私、お茶~。
大和久「じゃんけんで負けた奴の奢りな。
中条「・・・やってやんよ!(絶対負かす・・!)
「「最初はグー!
じゃんけん・・・
管尾「え?
中条「大和久てめぇ、やる気あんのかよ?
女子「グー出しっぱなしだよ?負けちゃうよ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「俺はこれで行くぜ、おまえらは勝手にしな。
中条「ほぅ・・・どうしてもジュースを奢りたいらしいな。
いいぜ・・・
「「最初はグー!
じゃんけん!ぽ
大和久「(オーバーチュアー、TOCは既に発動している・・・!
おまえらが見たグーは過去の姿。
実際にはチョキを出しているから、全員パーを出した所で能力解除だぜッ!!
―バアァアアアンッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
中条「なん・・・だと?
女子「あれ?何で負けてるの!?
管尾「そんな・・・!大和久くんは確実にグーだったッ!!
相手がグーだったからパーを出したら相手が出していたのはチョキだったなんて・・・
な、何を言ってるか分からないと思うけど・・・
後出しだとかそういうチャチなものじゃない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった・・・!!
大和久「フフ・・・
フハハハハハッ!!
さぁ~て、誰がジュースを奢ってくれるんだ?
O・C「・・・・(能力の使い方が・・・セコい)
中条「ぐ・・・(くそがあぁ~~ッ!)
?「そのジャンケン!
あいこだぜッ!!
大和久「ッ!?
中条「!?
管尾「!?
女子「・・・?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
先ほどまでは全く気づかなかったが
自販機の側の喫煙所で煙草をくわえている男が一人・・・
右手は携帯をいじりながらも左手はグーを形作りそれを高々と掲げていた。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
男が深々とかぶっていた帽子を脱ぐとパーマがかった金髪が目に付く。
大和久「あ゛?なんだてめぇ喧嘩売ってんのか?
?「悪いがよ~・・・
今のジャンケン、な~んかイカサマ臭えんだわ。
明らかに負けた彼女らの反応がおかしい。
だから・・・仕切り直しだ。喧嘩を売ってる訳じゃあないぜ?
大和久「・・・(コイツもしかして、スタンド使いか?)
?「はいじゃあ多数決~!
仕切り直しに賛成の人手ぇ挙げて~。
中条「・・・(誰だか知らないが、まぁいいか)
管尾「・・・(あ、中条くんが手を挙げた。じゃあ私も・・)
女子「(三分の一か五分の一・・迷うまでもないわね。)
大和久以外の満場一致・・・
少数派の意見が黙殺される民主主義の恐るべき姿を、大和久は見た・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「チッ・・・
見ず知らずの人間の言うことを鵜呑みにするってか・・・
?「俺の名前は【城島 丈衣(ジョウジマ ジョウイ)】
身長177cm体重63kg
2000年12月31日生まれ、山羊座のA型、23歳・・今年24になる。
仲間からはジョジョとかJOYって呼ばれてる。
仕事はここのバイト、最近勤めだした。
働き出した理由は彼女にちょっとした贈り物をするため。
好きな食べ物はトマト、嫌いな食べ物はくるみ。
煙草は一日一箱と決めてる。
大和久「あ?何言ってんだてめぇ。
JOY「何って・・・自己紹介。
これで見ず知らずとは言わせねえぜ?
大和久「けっ・・屁理屈をッ!
てめーが負けたらキッチリ全員分取り立てるからなッ!!
JOY「OK、始めようぜ。
―ピッ・・・
男は持っていた煙草を指で弾き、地面へ捨てると
腕を交差させて指を組み、その手をそのまま顔の前へ持ってくると指の隙間をのぞき込む・・・!
―グググ・・・ッ!
管尾「あ、あの構えは・・・ッ!!
中条「・・・古いな。
女子「えぇ、古いわ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
JOY「・・・いいぜ、見えた。
「「最初はグー!!
「「じゃん!けん!!
「「・・・ぽんッ!!!
ドドドドドドドド・・・・!
JOY「・・・うわらばっ!
大和久「ブハハハハハハッ!!
残念だったな!約束通り全員分きっちり払ってもらうぜぇ~!!
JOY「ち、ちくしょ~ッ!!
(ケチつけずにスルーしときゃ良かった・・・)
女子「(ラッキー!払わなくて済んだわ)
管尾「(ちょっと申し訳ない気もするけど・・・)
中条「(・・・敗者に情けは無用ッ!!)
――こうして一行は、奢りで飲み物にありついたのであった。
「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため・・・
――パタッ・・・
川上「はぁ・・・やっぱり電源切ってるよ。
――ボフッ
苛立たしげなため息を一つつき、畳の上に敷いてある布団の上に身を投げる。
川上「この前の休みは電話に出てくれなかったし・・・
何考えてんのかしら。
携帯電話を充電コードに繋ぎ、布団の中に潜り込む。
折角の日曜日なのに、彼氏は電話に出てくれず、自分は布団の中でゴロゴロしているだなんて
彼氏に対する怒りやら情けなさやらで涙が出てくる。
決めた。寝よう。
クヨクヨ悩むのは自分の性にあっていないし、向こうから連絡が無い以上時間の無駄。
そう思い、布団を頭から被り
彼女は眠りに落ちていった・・・
その様子を、二階の窓にベッタリと張り付いて観察する人影が一つ・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
管尾「へぇ~、彼女さん年上なんですか。
JOY「まぁな。付き合って5年か。
俺、ず~っとプーだったからよ
たまには旅行でも連れて行ってやろうかなって・・・ハハハ
中条「(旅行っつーか就職・・・)
女子「ごめん、ちょっとお化粧直してくるね。
大和久「おぅ、ジュース預かってくわ。
―タタタタ・・・ッ
ジュースを預け、姿を消す女子・・・
姿が見えなくなるのを確認して中条はストレートに大和久へ疑問をぶつけてみる。
中条「おい・・・浮気かよ?
管尾「(ちょ・・直球すぎるッ!そりゃあ私も思ったけど・・・)
大和久「・・・・あ?
ドドドドドドドドド・・・
中条「あ?じゃねーよ。
お前は川上と付き合ってんじゃねぇのかよ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「口の聞き方に気をつけろよ、てめぇ・・・!
中条「あぁ?てめえは神様かなんかのつもりかよ?
JOY「お、何か険悪な雰囲気・・・
―ドガアァアアアンッ!!
「ッ!?
中条と大和久の後ろで、突如として発生した音にJOYを含めた三人が後ろを振り向く。
管尾「ふ、二人とも!
どうして・・・どうして仲良く出来ないのさッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
中条&大和久「・・・
―ザッ・・・
振り返った二人が無言で管尾に歩み寄る・・!
管尾「・・!(やば・・もしかして・・・怒らせた?)
中条&大和久「・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
管尾「・・(ひぃッ!)
大和久「管尾、お前・・・
中条「随分と派手にやっちまったなぁ・・・
さすがにマズいだろ、これ。
管尾「・・・・
・・・・・
・・・え?
見れば管尾の隣にある自販機が・・・日本中どこにでもあるであろう【真っ赤】な自販機の取り出し口のすぐ上が、大きくへこみそこには靴の跡がくっきりと残ってしまっていた・・・
大和久「従業員の目の前でこりゃマズいわ。
中条「・・・たぶん、弁償だな。
ドドドドドドドドド・・・
管尾「い、いや!確かに蹴ったは蹴ったけど!
元々へこんでたから、そこを狙って蹴っ飛ばしたんだよ!?
それに今の僕は女子なんだから・・本気で蹴ってもこんなに出来ないよ!
中条「誰でもそう言うんだよなぁ~、元々こうだった、そんなに強く蹴ってないってな。
大和久「あぁ、やっちまった事は素直に認めちまいな。
楽になるぜ?
管尾「そんな・・ホントにそんな強く蹴ってないのに・・・
JOY「・・・・
ドドドドドドドドドド・・・
朝っぱらから校門の前でいちゃつく・・・否、言い争うカップルの姿があった。
川上「嘘よッ!!絶対浮気してたッ!
日曜日なのに家に居なかったし、携帯の電源も切れてたッ!
大和久「ちょ、お前。浮気とか言うなよ・・他の女子が聞いたらショック受けんだろ?
昨日は中条と管尾が動物園に行くってから、それに付き合ってたんだよ。来たら確認してみろよ。
携帯も、充電器がブッ壊れてて今使えねぇんだよ。
川上「・・・非道いッ!絶好のダブルデートシチュじゃない!
だったら尚更、何で呼んでくれなかったのよッ!?
大和久「だってよォ~・・お前が来るともれなくアイツが着いてくるじゃねえか。
そう言って指さした先には一人の男。
とっさにその男は街路樹の陰に身を隠すが、朝の光を受けて輝く頭がその存在を主張していた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「(・・・バレたか?だが尾行は完璧な筈ッ!
この騎士江藤・・・
陰ながら彼女を守ると誓いを立てた身。
バレたからとてやめるわけにはいかないッ!!)
川上「あ、あの人はッ!?
大和久「気づいてなかったのか?
・・・それにしてもよォ~。
アイツ学校どうしてんだろ・・・
ッ!!
軽口を叩く大和久の動きが驚きのためか止まる。
川上「ん~?・・どうしたの?
その視線の先には
見覚えのある生物の姿があった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「(馬鹿な!アイツは【見つけたら幸せになれるマスコット】って噂に書き換えられた筈だッ!
何で学校の外に・・・!?
川上「・・・何もいないわよ?からかってる?
振り向いた川上には、その姿は見えていないようである・・・
大和久「それじゃ・・・スタンドって事か?
―トテトテテ・・!
キャ「でしぃ~・・!
そこには懸命に逃げるキャッツの姿。
そして
「ゴラアアアッ!
待ちやがれてめぇ~ッ!!
鬼の形相でキャッツを追いかける少女の姿が遠くに見える。
ゴゴゴゴ・・・
大和久「・・!(あの怒りっぷり
大事なものを奪われたって顔だぜッ!!
これは捕まえねえといけねえな)
オラアァッ!!
―ドゴシャアァッ!!
O・Cが強烈な拳を叩き込む!
少女「へぶしッ!
それは丁度、少女が江藤の脇を駆け抜けようとした時であった。
―ゴロゴロゴロ・・・!
少女は鼻から血を吹き出し、派手に転がって行く!
江藤「・・・
・・・・・え?
―ドガッシイィッ!
「確保ォ~ッ!!
「捕まえたぞこの変態野郎ッ!!
「大臣の娘さんに手をあげるとはなんて野郎だッ!!
突然、屈強な黒服に肩から押さえつけられ罵声を浴びせかけられる江藤。
江藤「な、ちょ・・!待っ
弁解する暇もなく、路肩に停めてある黒塗りの高級車に引きずり込まれていく。
―バタン
―ブロロロロ・・・
江藤と黒服の乗った車が去っていくまでおよそ10秒・・・
恐るべき早業で人一人が跡形もなく消えてしまった。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「え?
あまりの出来事に絶句する大和久。
「いづみ様、大丈夫ですか?
「・・平気だ。少し鼻血が出ただけだ。
甲斐甲斐しく介抱する黒服に、いづみ様と呼ばれた少女は
大和久がキャッツを殴り飛ばすと同時に吹っ飛んだ・・・
そしてキャッツは川上には見えていない。
大和久「・・・と、言うことは
キャッツはスタンドであのガキが本体って事かぁ~ッ!?
いづみ「ちょっとあそこにいるお兄さんに用がある。
黒服「左様ですか、何かあれば知らせて下さい。
狙撃班が控えておりますので。
いづみ「うむ、下がれ。
黒服「かしこまりました。
一連の流れに、固まっている大和久に少女が近づき声をかける。
いづみ「私を殴ったのはお前だな・・・?
ドドドドドドド・・・
川上「生意気な小学生ね・・・人の彼氏をいきなりお前呼ばわりなんてッ!
いづみ「黙りなさい。私はお前の発言を許可していない。
非常に高慢ちきな態度である
川上「あんた何様のつもりよ!?
いづみ「いづみ様だ。
川上「(この子頭イっちゃってるわ・・・)
川上が閉口すると、満足げな笑みを浮かべて大和久へ向き直る少女。
いづみ「答えなさい。
今し方私のスタンドを殴り飛ばし、私に鼻血を出させたのはお前か?
ゴゴゴゴゴ・・・
大和久「・・・
そうだ、俺が殴った。
いづみ「そう
なら私と結婚してもらうわ・・!
川上「え
大和久「は?
いづみ「私のキャッツ・グローブを見て触れる人間は一人もいなかった。
価値観を共有出来そうな相手がやっと見つかったのよ。
嫌とは言わせない・・!
大和久「・・・嫌だと言ったらどうすんだよ?
いづみ「力づくでも。
川上「はぁ~?何言って
―チュインッ!
突然地面に小さなえぐれが発生する。
川上「・・・・え?
ゴゴゴゴゴゴ・・・
いづみ「狙撃手が狙っている。
命までは奪わないけど、少々痛い思いをする事になるわね。
何でこんな事が出来るのかって顔してるわね。
教えてあげる。
私の父はこの国の文部科学教育大臣でもある「一 九十九(にのまえ つくも)」だからよッ!
川上「マジ?
友愛政権を打ち倒し
今の政権の基礎を作り・・・首相すら頭が上がらないという・・・
大和久「知らねぇな・・・
おい、行くぞ。 頭のおかしい餓鬼に構っちゃいられねぇぜ。
―ガシィッ!
川上「(や、やだぁ、そんな強引な・・・)
力強く川上の手を引っ張り歩き出す大和久。
いづみ「知らない?・・っていうか待ちなさい!
【キャッツ・グローブ】!
電線を切って足止めしなさいッ!!
キャ「で、でも・・・
いづみ「でももへちまもあるかッ!
私がやれって言ったらやるんだよォ~ッ!!
キャ「分かったでし・・・
―ブツンッ!
―グオオォッ・・・!
川上「な、電線が切れてこっちに向かってくる!
―グオオッ!!
ドドドドドドドド・・・
大和久「問題無いッ!O・Cは既に能力を発動しているぜ!
―バッヂィィイーーン・・ッ!!
電線は二人の遥か後方へと振るわれる・・
川上「え?
キャッツ「外れた!
いづみ「何やってんのォ~ッ!!
大和久「いない場所を狙ってちゃあ、当たる訳ねえわな!
このまま逃げるぜッ!!
いづみ「待ちなさいッ!!
―ダダダダッ!!
脱兎の如く逃げ出した大和久を止められず、舌打ちするいづみ・・・
いづみ「逃がしたか・・・まぁ、いいか。
制服でどこの学校かは分かっちゃったからね
キャ「・・・
――大和久が少女に襲撃される前日
私は、町内にある動物公園に来ていた。
中条「ここにその猿がいるって訳か。
管尾「うん、【思いを遂げられなかった猿の魂は、その飼育員の子孫を守る守護霊となり、片時も離れず彼らを守る事を誓った。そしてその子孫は織須田動物公園で今も働いている】
悲願を果たす為に怪物になるより、この方がロマンチックじゃない?
目を輝かせながら解説する管尾。
未だ男子には戻れず女子のままであるが、スカート姿にもすっかり慣れた様で
時折、元が男だと言われても信じがたくなる事すらあった。
学校中の男子は驚いていたが、すぐに浮き足立ち、今や管尾はアイドル扱いである。
どうやら奴らは、下半身で物を考えるせいか可愛ければ元が男でも良いらしい。
大和久「管尾、今日の格好かわいいじゃねえかよ。
管尾「あ・・え、えと・・ありがとう。
図々しく会話に混ざってくる大和久。
こいつも女子から絶大な支持を得ている・・・
つまり、織須田高校の二大美男美女に挟まれ、見事なまでの引き立て役になっているのが私だ。
そう言えば・・・何故コイツがついてくるのだろうか。
その答えはすぐに分かった。
「礼司~!!
―タタタ・・!
足早に駆けてくる女子・・・
川上では・・・ない。
中条「大和久・・・おま
―バキィッ!
中条「ぶふッ!?
一瞬何が起きたか分からなかったが、痛みからすぐに大和久に何かされたのは分かった。
「ごめん、待った?
大和久「いや、ちょうど来たところだぜ。
あ、こいつら学校のクラスメイトとその彼女。
「ふ~ん、クラスメイトかぁ~。
礼司も青春してるじゃな~い!
大和久「まぁな。
そう言うや私の肩に腕を回し、私以外誰にも聞こえないように囁く・・・
大和久「ボソボソ・・・(余計な事を言ったらぶっ殺す・・・
それだけ言って再び女性の元へと戻る。
成る程、理解出来た。やはり二股か。
これは非常に良い・・・
殴られたのは頭にくるが、この図体のデカい元ヤンうすら馬鹿の弱みを握ったのだ。
残念ながら私は彼女(川上)の連絡先を知らないので、今日密告は出来ないが。
管尾「大丈夫?
中条「あぁ大丈夫だ、問題ない。
大和久「マジか・・・
女子「・・・ビッグボス・・備府町・・・
大和久たちがなにやらヒソヒソ話をしているが、その中に聞き慣れた単語が混ざっている気がするが・・・
気のせいだろう。
それより、明日からどうやってゆすってやろうか・・・
そんな事を思いながら、園内にある猿の檻へと私は足を運ぶ。
――――――
小さな町の小さな動物公園。
園内はさした広さもなく、中条達は数分足らずで猿の檻の近くまで来ていた。
管尾「なんか緊張してきちゃった・・・
みんな、何か飲まない?
ちょうど自販機があるし。
中条「そうだな、喉も乾いてきたし。
女子「賛成!私、お茶~。
大和久「じゃんけんで負けた奴の奢りな。
中条「・・・やってやんよ!(絶対負かす・・!)
「「最初はグー!
じゃんけん・・・
管尾「え?
中条「大和久てめぇ、やる気あんのかよ?
女子「グー出しっぱなしだよ?負けちゃうよ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「俺はこれで行くぜ、おまえらは勝手にしな。
中条「ほぅ・・・どうしてもジュースを奢りたいらしいな。
いいぜ・・・
「「最初はグー!
じゃんけん!ぽ
大和久「(オーバーチュアー、TOCは既に発動している・・・!
おまえらが見たグーは過去の姿。
実際にはチョキを出しているから、全員パーを出した所で能力解除だぜッ!!
―バアァアアアンッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
中条「なん・・・だと?
女子「あれ?何で負けてるの!?
管尾「そんな・・・!大和久くんは確実にグーだったッ!!
相手がグーだったからパーを出したら相手が出していたのはチョキだったなんて・・・
な、何を言ってるか分からないと思うけど・・・
後出しだとかそういうチャチなものじゃない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった・・・!!
大和久「フフ・・・
フハハハハハッ!!
さぁ~て、誰がジュースを奢ってくれるんだ?
O・C「・・・・(能力の使い方が・・・セコい)
中条「ぐ・・・(くそがあぁ~~ッ!)
?「そのジャンケン!
あいこだぜッ!!
大和久「ッ!?
中条「!?
管尾「!?
女子「・・・?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
先ほどまでは全く気づかなかったが
自販機の側の喫煙所で煙草をくわえている男が一人・・・
右手は携帯をいじりながらも左手はグーを形作りそれを高々と掲げていた。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
男が深々とかぶっていた帽子を脱ぐとパーマがかった金髪が目に付く。
大和久「あ゛?なんだてめぇ喧嘩売ってんのか?
?「悪いがよ~・・・
今のジャンケン、な~んかイカサマ臭えんだわ。
明らかに負けた彼女らの反応がおかしい。
だから・・・仕切り直しだ。喧嘩を売ってる訳じゃあないぜ?
大和久「・・・(コイツもしかして、スタンド使いか?)
?「はいじゃあ多数決~!
仕切り直しに賛成の人手ぇ挙げて~。
中条「・・・(誰だか知らないが、まぁいいか)
管尾「・・・(あ、中条くんが手を挙げた。じゃあ私も・・)
女子「(三分の一か五分の一・・迷うまでもないわね。)
大和久以外の満場一致・・・
少数派の意見が黙殺される民主主義の恐るべき姿を、大和久は見た・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「チッ・・・
見ず知らずの人間の言うことを鵜呑みにするってか・・・
?「俺の名前は【城島 丈衣(ジョウジマ ジョウイ)】
身長177cm体重63kg
2000年12月31日生まれ、山羊座のA型、23歳・・今年24になる。
仲間からはジョジョとかJOYって呼ばれてる。
仕事はここのバイト、最近勤めだした。
働き出した理由は彼女にちょっとした贈り物をするため。
好きな食べ物はトマト、嫌いな食べ物はくるみ。
煙草は一日一箱と決めてる。
大和久「あ?何言ってんだてめぇ。
JOY「何って・・・自己紹介。
これで見ず知らずとは言わせねえぜ?
大和久「けっ・・屁理屈をッ!
てめーが負けたらキッチリ全員分取り立てるからなッ!!
JOY「OK、始めようぜ。
―ピッ・・・
男は持っていた煙草を指で弾き、地面へ捨てると
腕を交差させて指を組み、その手をそのまま顔の前へ持ってくると指の隙間をのぞき込む・・・!
―グググ・・・ッ!
管尾「あ、あの構えは・・・ッ!!
中条「・・・古いな。
女子「えぇ、古いわ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
JOY「・・・いいぜ、見えた。
「「最初はグー!!
「「じゃん!けん!!
「「・・・ぽんッ!!!
ドドドドドドドド・・・・!
JOY「・・・うわらばっ!
大和久「ブハハハハハハッ!!
残念だったな!約束通り全員分きっちり払ってもらうぜぇ~!!
JOY「ち、ちくしょ~ッ!!
(ケチつけずにスルーしときゃ良かった・・・)
女子「(ラッキー!払わなくて済んだわ)
管尾「(ちょっと申し訳ない気もするけど・・・)
中条「(・・・敗者に情けは無用ッ!!)
――こうして一行は、奢りで飲み物にありついたのであった。
「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため・・・
――パタッ・・・
川上「はぁ・・・やっぱり電源切ってるよ。
――ボフッ
苛立たしげなため息を一つつき、畳の上に敷いてある布団の上に身を投げる。
川上「この前の休みは電話に出てくれなかったし・・・
何考えてんのかしら。
携帯電話を充電コードに繋ぎ、布団の中に潜り込む。
折角の日曜日なのに、彼氏は電話に出てくれず、自分は布団の中でゴロゴロしているだなんて
彼氏に対する怒りやら情けなさやらで涙が出てくる。
決めた。寝よう。
クヨクヨ悩むのは自分の性にあっていないし、向こうから連絡が無い以上時間の無駄。
そう思い、布団を頭から被り
彼女は眠りに落ちていった・・・
その様子を、二階の窓にベッタリと張り付いて観察する人影が一つ・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
管尾「へぇ~、彼女さん年上なんですか。
JOY「まぁな。付き合って5年か。
俺、ず~っとプーだったからよ
たまには旅行でも連れて行ってやろうかなって・・・ハハハ
中条「(旅行っつーか就職・・・)
女子「ごめん、ちょっとお化粧直してくるね。
大和久「おぅ、ジュース預かってくわ。
―タタタタ・・・ッ
ジュースを預け、姿を消す女子・・・
姿が見えなくなるのを確認して中条はストレートに大和久へ疑問をぶつけてみる。
中条「おい・・・浮気かよ?
管尾「(ちょ・・直球すぎるッ!そりゃあ私も思ったけど・・・)
大和久「・・・・あ?
ドドドドドドドドド・・・
中条「あ?じゃねーよ。
お前は川上と付き合ってんじゃねぇのかよ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
大和久「口の聞き方に気をつけろよ、てめぇ・・・!
中条「あぁ?てめえは神様かなんかのつもりかよ?
JOY「お、何か険悪な雰囲気・・・
―ドガアァアアアンッ!!
「ッ!?
中条と大和久の後ろで、突如として発生した音にJOYを含めた三人が後ろを振り向く。
管尾「ふ、二人とも!
どうして・・・どうして仲良く出来ないのさッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
中条&大和久「・・・
―ザッ・・・
振り返った二人が無言で管尾に歩み寄る・・!
管尾「・・!(やば・・もしかして・・・怒らせた?)
中条&大和久「・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
管尾「・・(ひぃッ!)
大和久「管尾、お前・・・
中条「随分と派手にやっちまったなぁ・・・
さすがにマズいだろ、これ。
管尾「・・・・
・・・・・
・・・え?
見れば管尾の隣にある自販機が・・・日本中どこにでもあるであろう【真っ赤】な自販機の取り出し口のすぐ上が、大きくへこみそこには靴の跡がくっきりと残ってしまっていた・・・
大和久「従業員の目の前でこりゃマズいわ。
中条「・・・たぶん、弁償だな。
ドドドドドドドドド・・・
管尾「い、いや!確かに蹴ったは蹴ったけど!
元々へこんでたから、そこを狙って蹴っ飛ばしたんだよ!?
それに今の僕は女子なんだから・・本気で蹴ってもこんなに出来ないよ!
中条「誰でもそう言うんだよなぁ~、元々こうだった、そんなに強く蹴ってないってな。
大和久「あぁ、やっちまった事は素直に認めちまいな。
楽になるぜ?
管尾「そんな・・ホントにそんな強く蹴ってないのに・・・
JOY「・・・・
ドドドドドドドドドド・・・