「――あれ? アイツは?」
「銀行かコンビニ。お金おろして来るってさ」
「ちょっと、それって逃げられたんじゃないの!?」
「私も思った。だから聞いたけど、大丈夫じゃないかなー多分」
「根拠は?」
「無い。私の直感」
「……ならいいか」
「うんうん」
ファミリーレストラン『サイベリア』。24時間営業するチェーン店だ。
週末の夜ともなると、引っ切りなしに客が訪れる。が、今日は火曜日、しかも午前4時30分。
店内には始発を待ってここで夜を明かしたような連中ばかり、三組ほどいるだけだった。
その中でも目立つテーブルが一つ。
国道に面した店の窓側にある席、食べ散らされた食器が絶妙なバランスで積み重ねられている。
「だいたいさぁ、イギリスの片田舎から半ば無理矢理引っ張り出して? こーんな東の果てにある国まで連れて来て? 街のテキトーな店に放置って、何様なの?」
「ま、お母さんの生まれた国にこれたのはラッキーだったよね」
「いや、まあ、そうだけどさー」
「つーかアイツって危機感無さすぎ」
「無さすぎってか、無いよね」
「「――わかってんのかなー、命狙われてるって事」」
「ねー」
「ねー」
そんなところへ、いつの間に店に入って来ていたのか、三人組の男がテーブルに近づいた。
だらだら歩く、いかにも日本の若者と言えるファッションの彼らは、とてもフレンドリーに話し掛ける。
「おはよー!」
「君達こんな朝からなーにやってんの? ひょっとして朝帰り?」
「だったら俺達と同じだね」
「よかったら今日は俺達と君達で遊びに行かねー?」
「……」
「……」
テーブルの利用者は黙ってしまった。
黙って、ジロリと男達を睨みつける。
四つの碧眼、二つの赤い唇、うっすらと笑っている表情に、男達の一人が唾を飲んだ。
「……今さぁ、こいつら『君達』って言ったよね?」
「うん、言った。――つまり『見えてる』って事」
「――なら、いいよね」
「――うん、いいよね」
コンビニから腋に荷物を抱えた男が出てきた。
その表情は、落胆。
「……預金残高0って……」
どうやらお金がおろせなかったようだ。
何かあったら使えと渡されたメモにあった、友人の口座が見事に空であったからだった。
「何やってんだよまったく……あれだけ格好良くメモ渡しておきやがって。アホめ」
追い詰められた状況で、この場は任せろと叫び立ち向かう直前のやりとりだった。
結果、彼はその友人とは離ればなれになり、今日までの二週間、いっさい連絡が取れていない。
無事でいりゃいーがと、ぼやいて歩きだした。
男の名はジョン・ジョーンズ。
とある組織の末端として世界を飛び回る生活をしている。
あるいはしていた。
二週間前、組織からの指令をこなすために相棒でもある友人とイギリスの片田舎を訪ねたところ、組織の裏切り者に囲まれ、逃亡を余儀なくされた。
偶然にも、目的であった『鍵』を手に入れて。
「…………」
トン、トン、と抱えた荷物――黒い箱を指で叩きながら歩く。
歩きながら、特徴的な赤いモヒカンが揺れている。
今は件の日に知り合った者が待っているファミリーレストランに向かっている。
二週間、何もしていなかったわけじゃあない。
ボスに連絡をしてみたり、顔なじみを訪ねてみたりなどしたが、どうやら裏切り者によって『裏切り者』として扱われているらしく、行く先々で襲撃されている。
(――そもそもボスが入院だと? バカバカしい、あの人がそう簡単にやられるものかよ……ランドのヤロォ……)
拳を握り締める。
入院の話はボスと連絡をとろうとして失敗した後にわかった事だ。
今はボスのよき右腕だった組織の会計役が全部仕切っているらしい。
ランド=マークという名の男であり、イギリスで知った組織の裏切り者である。
「ボス、どうか無事で――」
その時、ジョンの背後から鉄パイプが振り下ろされた。
ためらいの無い、当たれば昏倒必至の威力であった。
しかし、ジョンは右に半歩動いて鉄パイプを避け、振り向きながら拳を襲撃者の顔に叩き込んだ。
「ぐえっ!?」
「敵意どころか気配も押し殺せねぇとは……素人か」
「――――動くな」
襲撃者の顔を見ようとした瞬間、また背後から。
堅い塊を後頭部に押し付けられた。
素人とジョンの気配にまぎれて後ろに立ったようだ。
「……もう一人いたか」
「素人の、とは言え背後からの一撃を事もなげに避けるなんて、流石ですね」
「その声、聞いた事あるぜ……組織の人間だな」
「はい。――貴方が持ち去った『黄金の矢』はどこですか?」
「おいおい、日本は銃を所持しちゃいけない国だぜ?」
「……その箱、両手といっしょに頭の上にあげてください」
無視された上にあらためて拳銃で頭を押され、ジョンは箱を右手で掴みゆっくりと頭上に掲げた。
「箱を開けてください」
「……随分と警戒するんだな」
「貴方は組織の末端構成員に過ぎませんが、ランド様に匹敵する『発言力』を持っている事は知っています。ボスにも一目置かれる男が用意した箱なら警戒し過ぎるのがちょうどいいくらいです」
「ふん……ランド様、ね」
「――さぁ、早く、貴方が、開けなさい」
ジョンはため息をつき、肩を少し落とした。
OK、とつぶやき、その『箱』の仕組みを説明する。
「この箱のロックは音声認識になってる。俺の声に反応して開くんだ――いいか、開けるぞ?」
「ええ」
背後からは見えない、ジョンの口元がニヤリと釣り上がった。
「――『OPEN the BOX』」
箱の蓋が開いた。
と同時にその中身がグオンと飛び出す!
「なっ!?」
箱の中にあった物、それは『衝撃』。
飛び出した衝撃は、背後に立った人間にぶち当たり、2メートル程飛ばして地面を転がらせた。
右手の箱が霞みのようになって消えるのを感じながらジョンは振り向いた。
顔を確認して、大きくため息を吐いた。
「……やっぱり『園の娘達』か。まずいな、女をおもいっきり殴っちまった」
声でわかってたけどな、とつぶやいた。
『園の娘達』(ランドセルズ)とは組織の女性構成員の一部で作られたランドの部隊だ。
彼女達はかつていわゆる売られた子供たちで、過去、ランドの熱心な活動と手厚い介護によって助けられている。(という事になっている)
ランドに心酔し、忠誠を誓う、優秀で忠実な生き物だ。
「しかし、遂に私兵まで動かしてきたか……早いところどうにかしねーとな。――『レッド・ツェッペリン』」
ジョンが喚びだすと、かたわらに角の生えたスタンドが現れた。
典型的な近距離型で、その能力は『箱を作り出す』というもの。
箱は20cmの正方体だが中は際限なく広がるうえ、文字通り『何でも』入る。
例えば実態の無い衝撃や攻撃も納めることができる。
ただ箱を作りだすのに数十秒かかるため、ジョンは普段から箱をひとつは持ち歩く様にしている。
絶対安全な金庫を作れるという能力だと嘘をついて。
シュルシュルとスタンドの指から糸を紡ぐようにして、黒い箱が出来上がると、ジョンは拳銃を拾いあげて納めた。
――そこで思い当たる。
「……あっちにも手が伸びてるかもしれねぇな」
人目のあるレストランなら大丈夫だろうと置いてきたが、早朝から狙ってくる勤勉な奴らだしな、と思案する。
「心配だな…………急ぐか」
ある『不安』に思い当たったジョンは、人通りの無い道を、倒れた襲撃者はそのままに走りだしたのだった。
レストラン『サイベリア』という看板が見え、特に騒ぎが起きていない事を確認すると、ジョンは早足をやめて歩きだした。
連れの奴らはジョンのいる道路に面したテーブルにいるはずで、店の入り口に向かいながらその姿を探した。
(…………ああ、いるな。ちゃんと大人しくしてい――る?)
テーブルの側に見知らぬ男達が立っている事に気がついた。
そして連れの奴らが何事かをつぶやき、立ち上がった。
今からトラブルかと駆け出そうとするが、連れの奴らの取った行動を見て、ジョンは叫んだ。
「――おいおいおいおい、まてまてまてまて!!!!」
――ガシャャァァンン!!!
ドサッ
ドスッ
ドンッ
「うおおぉぉぉいいいぃい!?」
道路に面した大型のウィンドーをぶち破り、男三人が『投げ捨て』られた。
三人共が背中から地に落ちたが、最初に投げられ、ウィンドーを破らされた男だけは立ち上がる様子どころか動きもしなかった。
よろよろと立ち上がる残り二人の心が半ば折れているのを顔色から確認したジョンは、店内へと目を向ける。
割れた窓、いや、自分達で割った窓から二人の女が出てくる。
長い金髪に碧眼、歳は女子高生といったぐらいだが、大人びた印象を受ける。
人形のように整った彼女らの顔は、まったく同じだった。
「あ、ジョンだ」
「あ、ジョーンズだ」
「てめぇら……」
『不安』が実現してしまったジョンは、怒りと呆れと驚愕が混ざったような、微妙な表情をしていた。
それでも『一応』二人を叱責する。
「俺は大人しくしてろ、と言ったよなあ? あ? アリス」
「へーい」
「…………何してんだよ『本体』がよお? え? アリカ」
「しーん」
おざなりな返事と明らかなシカト、ジョンはついつい声を荒げる。
「大人しくした結果が御覧の有様かよ!? てめぇら今置かれてる状況がわかってんの!? 騒ぎ立てるんじゃねーよ!!」
「状況わかってないのはジョンだよねー」
「だよねー。何故、護衛対象置き去りにしてふらついてんの?」
「……くっ」
「まー大目に見てよ、先手必勝っていうじゃんか」
「やり過ぎんだよ、てめぇらは」
「私達が生きるには、この国はあまりにも――小さい」
アリスと呼ばれた方がふざけて、はふぅ、と達観したかのような顔をして息を吐いた。
それを受けたジョンは怒りを飲み込んで、話を変える事にした。
「冗談はそれくらいにして、だ。――逃げるぞ、もう場所も面も割れてるらしい」
「お金は?」
「駄目だった」
「えー新しい服はー!?」
「靴はー!?」
「うるせぇ! さっさと行くぞ! じゃなきゃ弁償のために無いお金を捻り出さなきゃならねーんだぞ!?」
「じゃお先」
「私もお先」
店内からこちらをうかがう店員を指差しながら怒声をあげた。
その店員はサッとテーブルに隠れたが、ジョンの睨む彼女達はどこ吹く風で、むしろ、まさしく我先にといった具合で、走りだしたのだった。
ひと足遅れてジョンも走り出す。
が、その足も数歩で止まってしまった。
前を走る彼女達のさらに先、路地からゾロゾロとガラの悪い連中が現れたからだ。
しかも全員があきらかにこちらを見ている。
急停止して、振り返るが、投げられた二人が立ち上がり、その後ろに仲間と思われる集団があった。
「……どうやら逃がしちゃくれねーらしいな」
「「げー……」」
「よし、アリス、こいつを空に向かって撃ち尽くせ」
「ん?」
ジョンは箱から先程の拳銃を取り出し渡す。
それを見た集団のほぼ全員が顔色を悪くする。
「チッ……全員『見えて』やがる。『半端者』め」
「おお、拳銃じゃん。ジョン、私も撃ちたい」
「阿呆か、てめぇは指紋がつくだろう」
空に向けて、九発、乾いた破裂音が鳴った。
「――これでデカイ騒ぎにはなるだろう」
「混乱に上じてって分けね――敵は全部倒していいの?」
「いや、そんな時間もないだろう。半分ぐらいやったら逃げるぞ」
「「OK」」
そして、ジョンはレストランの方へ。アリカとアリスは路地の方へ。
それぞれが不敵な笑みを浮かべて走りだした。
ジョンの闘い方は巧みだ。
相手が一人だろうが多人数だろうが関係なく相手取れる戦法をとる。
スタンド、レッド・ツェッペリンを側に立たせ、スタンドと共に攻撃を仕掛けながら『箱』を作る。
一度に作り出せる箱は三つまでであるが、次々と作っては使い、消えていく。
レッド・ツェッペリンがジャージの男を殴り飛ばせば、横から振り下ろされたバットをジョンが箱で受け止める。
受け止めた直後にジョンの蹴りがバットの持ち主の腹に突き刺さっていた。
そしてバットを受け止めた箱はその場に『固定』する。
固定された箱は空中でも微動だにせず、そこから動かす事はジョンにもできなくなるが、それでいい。
レッド・ツェッペリンが、ジョンが、また別の敵に向かったとき、背後にまわろうとして箱の側に立ってしまった金髪の男は悶絶する事になる。
「――『No.1 OPEN』」
メキッと軋むような嫌な音がして、金髪の男は肩を押さえて崩れ落ちた。
レッド・ツェッペリンの岩を砕く威力の拳。
経験と研鑽によって磨かれたジョンの格闘技。
設置型でいつ開くか、何が飛び出すかわからない箱。
全てを利用し、完璧に使いこなすのがジョンの戦法であった。
そうして半分程の人数が動かなくなって、ジョンは箱を二つ作りその場で跳んだ。
レッド・ツェッペリンを踏み台にして、取り囲む男達の頭上へあがり、そこに箱を『固定』した。
「てめ、降りてこいコラァ!!」
「休んでんじゃねーぞぉ!? ボケが!」
「逃げんなやぁ!!」
口々にジョンを罵る彼らだが、全員がハァハァと息をきらせており、むしろ休ませて貰っているのは彼らの方だった。
一方、息も切れず、汗ひとつかいていないジョンは、
「うるせー『半端者』だなぁ、調子にノリやがって……」
と、ため息にも近い台詞を吐いたのだった。
――『半端者』とは、ジョンやアリカ、アリスが追ってくる者達の一部につけたものだ。
『彼ら』はスタンドを見ることができる。
スタンドが見えるという事は、スタンド使いであるか、スタンドを発現させる素質を持っているかである。
しかし『彼ら』のなかで能力を発動させる者も、ましてやスタンドを発現させる者はいない。
『半端者』とは、ランド=マークによって『素質』を植え付けられた者たちの事だからだ。
見えるだけでなぜ調子に乗るのかというと、植え付けられた中には本当にスタンドを発現させる者がいるからだ。
その存在が、『自分にも同じ力が』『ひょっとしたら一番強いモノが』などという感情を刺激し、思い込ませるのだ。
――自分は特別である、と。
「そして『黄金の矢』がスタンドを覚醒させる唯一の手段で、それを俺が持っている、と――」
『そんなモノ、俺は持ってないんだがなぁ……』
ジョンのつぶやきは、眼下の喧騒に紛れて消えた。
ジョンが箱の上にしゃがみ、レッド・ツェッペリンでテキトーに殴ったり、投げられた得物を弾く様子を、先に見たのはアリスだった。
「うわ、もう半分倒してる!」
アリスの声に、ジョンの方を『見ないまま』で、アリカは本当だ、と応えた。
ちょうど蹴りが赤いジャケットの男の顎に炸裂したところだった。
「――っと、やっぱりジョンは強いね」
「やっぱり強いから危機感がないのかな」
「あー、かもしれないね」
「そのうち筋肉操作できるやつに『足りないものは……』とか言われそう」
「ハッ! あんなチキンヘッドの霊界探偵認めないしー」
「異議なし。あーでも探偵ってのはアリかも」
「お、異議なし!」
危機感が足りないのはどちらかといえば……という話はさて置くとする。
ジョージの『巧み』に対してアリカ、アリスの闘い方は、『流麗で鋭い』。
絡み合うように、流れるようにして動き回り、次々と『半端者』達に蹴りを突き込んでいくそのさまは、まるで踊っているかのようだった。
全てを蹴りの一撃で沈める事も、洗練さをより引き出していた。
このコンビネーションを可能にするのは、双子であるから――ではない。
『スタンド』と『波紋法』だ。
アリカ・スノウリゾートは『波紋法』の使い手にして、『スタンド使い』でもあった。
彼女に波紋法を授けたのは祖父であるグレーン・スノウリゾート。若い頃に世界を渡り歩いていてであった女性から教わったらしい。
残念ながら祖父にも、そしてアリカにも、波紋の素質はあっても大成するものではなく、一種の健康法として祖父から孫へ伝えられた。
しかし呼吸からエネルギーを得るこの技は、自身の強化にのみ特化させれば十ニ分に使える代物であった。
そこに加えて『スタンド』。
まだ名前が無いのは発現してまだ期間が短い事、現在は『暴走』状態にある事からアリカが名前をつけ渋っているからだ。
アリカのスタンドだから、『アリス』と、ひとまず呼んでいる。
アリスは、アリカの完全なコピーにして本人でもある。感覚、記憶、感情を共有し、100%の意志疎通が可能である。
――それゆえの、コンビネーションだ。
と、空中にいたジョンがバッと飛び降り、ついでとばかりに下にいた半端者を二人ほど踏み付け着地した。
「あ、ジョーンズがこっち来る」
「ありゃ、もうおしまいか」
「いっきにトドメ刺しちゃおうか」
「――OK」
アリスの思惑は、アリカの策略。
確認する必要も無く、二人は共に駆け出した。
向かう先はそばにあった喫茶店、の店先にある水道蛇口。
ホースがつながったままの蛇口をアリカが蹴り飛ばす。
波紋で強化された蹴りは容易く蛇口を破壊し、辺りに水を撒き散らした。
さらに吹き出す水を手で抑え向きを調整し、追い掛けてきた半端者にぶっかける。
たかが水に思わず怯んだ集団から、二人、勢い任せに飛び込んできたが、あえなくアリスに蹴り飛ばされた。
「いくよアリス」
「いいよアリカ」
二人は手を繋ぐ。
アリカは目を閉じ深呼吸。
アリスは水に手をあてる。
「「――波紋疾走!!」」
瞬間、電流のように水を駆け抜けた波紋のエネルギーは、地面の水溜まりから濡れた半端者まで届き、彼らの体内で暴れ回った。
アリカ一人では、他者にぶつけられるエネルギーを産む事と操作する事は同時にできない。
しかし、二人が生産と操作を分担することで波紋疾走を可能にする。
二人がまったくの同一人物であるが故に使える業だ。
ドサドサと倒れていく半端者を見て、アリカとアリスはニヒヒと笑うのだった。
ジョンを追ってこちらに向かって来ていた残りの半端者達は、何が起きたのか理解できずに棒立ちでいる。
そしてジョンはというと、
「あ、アブねぇ……」
空中に箱を一つ固定し、ダンクシュートを決めるかのようにぶら下がっていた。
「OK、ジョーンズ。逃げよう」
「まったくOKじゃねーよてめぇら! 一歩気づくのが遅れりゃ俺まで感電するとこだ!?」
「電気じゃなくて波紋だって」
「結果的には似たようなもんだろうが! ――お?」
ぶら下がったまま、ジョンはパトカーのサイレンを聞き付けた。
ザッと着地し、走り出す。
「もういい、逃げるぞ」
「あいよ」
「しっかし、このサイレンも聞き慣れたねー」
「ねー」
「……俺としちゃ有ってほしくなかった現実だよまったく」
改めて走りだした半端者の集団も、所詮はまだ一般人レベル。
本気で鍛えられたプロと波紋使いの三人に追い付けるものも少なく、半分に減った数をより減らしていき――
「これからどーすんの?」
「まずは金だ。これが無けりゃなんともならん。ましてや組織に真っ向から抵抗するならな」
「世知辛いもんだね」
「これから、当てになるかわからんが、ボスの知り合いを訪ねてみよう。――確か日本にいるはずだ。それまでは節約しながら行く」
「えー服はー!?」
「靴はー!?」
「…………ハァ、金が借りれたら、な」
――――ついには三人の姿も街の中に消えていった。
使用させていただいたスタンド
No.3365 | |
【スタンド名】 | レッド・ツェッペリン |
【本体】 | ジョン・ジョーンズ |
【能力】 | 触れたものを一時的に閉じ込める筐体(箱)を作る |
No.4577 | |
【スタンド名】 | イリュージョン・イズ・マイン |
【本体】 | アリカ・スノウリゾート |
【能力】 | 本体が指定した人間と同じ容姿・身体能力を持った姿に形を変える |
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