――午前7時 サンフランシスコ
「スタンド使い…しかも滅茶苦茶強そうなんだけど…」
少女――西城佑は困惑していた。
なぜなら、佑が日本の学校に馴染めなかった(というよりは馴染む気がしなかった)理由の一つに、彼女の持つ特異な“力”――それも周りの誰もが見る事の出来ない、本物の特異な“能力”を持っていた事があるからだ。
今までこんな不思議な力を持っているのは自分しかいないだろう、と佑は考えていた。いや、そうとしか思えなかったのだ。
しかし今、目の前で現実に、自分以外の誰かが不思議な“力”を使用しているのを目撃してしまった。
彼女が“スタンド”と呼んでいるその力は、通常の人間には見る事が出来ない。
その証拠に、先程の不良達にもあの少年の“スタンド”は見えていない様子だった。
なぜなら、佑が日本の学校に馴染めなかった(というよりは馴染む気がしなかった)理由の一つに、彼女の持つ特異な“力”――それも周りの誰もが見る事の出来ない、本物の特異な“能力”を持っていた事があるからだ。
今までこんな不思議な力を持っているのは自分しかいないだろう、と佑は考えていた。いや、そうとしか思えなかったのだ。
しかし今、目の前で現実に、自分以外の誰かが不思議な“力”を使用しているのを目撃してしまった。
彼女が“スタンド”と呼んでいるその力は、通常の人間には見る事が出来ない。
その証拠に、先程の不良達にもあの少年の“スタンド”は見えていない様子だった。
だから彼女は確信した、“スタンド”は同じような“スタンド使い”にしか見えないのだと言う事を。
「なんというご都合主義…いやいや、こんな事言ってる場合か私。」
佑は呟くと、気だるさをまんべんなく醸しだしながら少年へと近づいていったのだった…。
「もしもし、ハ、ハロー?」
少々怯えながらも、佑は少年へと近付き、日本人にしては流暢な英語で話しかけてみる。
「はぁ…はぁ…ふぅ。…ん?貴女は、どちら様だ?僕に何か用かな。」
佑が少年に話しかけた途端、少年の背後にいた“スタンド”が姿を消す。
恐らく少年の身体に戻ったのだろう、と佑は判断した。
「あ~…あの、別に用っていうか~…」
(こういう場合って、何て切り出すべきなんだろう?包み隠さず『貴様!私と同じスタンド使いだなァ~!?』とか言っちゃったら駄目なのかな…)
「?用がないんですか?なら、僕は急いでいるので…」
「ああっ、ちょっ、ちょっと待つのだ、少年よ!」
(ひええ、何言ってんだ私…!)
不思議そうな表情で再び歩き出そうとした少年を呼びとめる為に、佑は慌てて声を上げたのだが…よくなかった。
昨日の夜に読んだ漫画の悪役の口調で話してしまったのだ。
「わ、わわ私は少年に興味があってな!ハハハ!」
ガッ、と少年の腕を掴む佑、まるでカツアゲである。
(お、落ち着け私…人と話すのが久しぶりだからって、漫画の口調で話したら変な奴だと思われるって…)
「え?いや、あの、それって…?」
私は確実に変態か何かだと思われている――そう感じた佑が最初に考えた事は早急に手を打つ事だった。
つまり――
少々怯えながらも、佑は少年へと近付き、日本人にしては流暢な英語で話しかけてみる。
「はぁ…はぁ…ふぅ。…ん?貴女は、どちら様だ?僕に何か用かな。」
佑が少年に話しかけた途端、少年の背後にいた“スタンド”が姿を消す。
恐らく少年の身体に戻ったのだろう、と佑は判断した。
「あ~…あの、別に用っていうか~…」
(こういう場合って、何て切り出すべきなんだろう?包み隠さず『貴様!私と同じスタンド使いだなァ~!?』とか言っちゃったら駄目なのかな…)
「?用がないんですか?なら、僕は急いでいるので…」
「ああっ、ちょっ、ちょっと待つのだ、少年よ!」
(ひええ、何言ってんだ私…!)
不思議そうな表情で再び歩き出そうとした少年を呼びとめる為に、佑は慌てて声を上げたのだが…よくなかった。
昨日の夜に読んだ漫画の悪役の口調で話してしまったのだ。
「わ、わわ私は少年に興味があってな!ハハハ!」
ガッ、と少年の腕を掴む佑、まるでカツアゲである。
(お、落ち着け私…人と話すのが久しぶりだからって、漫画の口調で話したら変な奴だと思われるって…)
「え?いや、あの、それって…?」
私は確実に変態か何かだと思われている――そう感じた佑が最初に考えた事は早急に手を打つ事だった。
つまり――
「こっちに来るのだ!少年!」
――ぐい、と少年の手を引っ張り、路地裏に逃げ込む事だった。
――ぐい、と少年の手を引っ張り、路地裏に逃げ込む事だった。
「え!?あ、いたたた!ちょっと、なんなんです貴女!?」
ただ周りの視線が痛くなり逃げ出しただけだったのだが、これではまるで痴女である。
周りから見れば自分は今にも少年を襲いそうではないか、ますます怪しまれてしまう。
しかし佑は慌てていた、初めてみる自分以外の“スタンド使い”、そして久しぶりのまともな会話に。(まともではないが。)
周りから見れば自分は今にも少年を襲いそうではないか、ますます怪しまれてしまう。
しかし佑は慌てていた、初めてみる自分以外の“スタンド使い”、そして久しぶりのまともな会話に。(まともではないが。)
(こ、これじゃ変態じゃないの~~!!ああもう、どうにでもなれッ!)
「さ、騒ぐな!騒ぐなってば!ええい、話があるんだよ!!気持ち悪い誤解してんじゃねえぞコラ!?」
(今度は不良口調かよ!しかも気持ち悪いの私だし!)
「ひぃッ…!す、すみません!誤解いしてませんから!お願いですから逃して下さい!」
何一つ好転しない状況、カオスな路地裏。
「さ、騒ぐな!騒ぐなってば!ええい、話があるんだよ!!気持ち悪い誤解してんじゃねえぞコラ!?」
(今度は不良口調かよ!しかも気持ち悪いの私だし!)
「ひぃッ…!す、すみません!誤解いしてませんから!お願いですから逃して下さい!」
何一つ好転しない状況、カオスな路地裏。
――しかしその時、もう一つの声が聞こえた。
佑でも少年でもない、もう一つの新しい声。
佑でも少年でもない、もう一つの新しい声。
「不愉快――そう不愉快極まりないなァ。僕の朝は『エレガント』なミルクティーとクロワッサンで始まると決まっているのに。朝から実に嫌なモノを見てしまったなァ~?」
――路地裏の入口に、前髪を異常に伸ばした、一人の青年がいた。
「へ…?」
「こ、今度はまた不良ですか~ッ!?ああっ!なぜ今日の僕はこんなにもついていないんだッ!」
「へ…?」
「こ、今度はまた不良ですか~ッ!?ああっ!なぜ今日の僕はこんなにもついていないんだッ!」
佑も少年も困惑していた。
新たに現れた青年の恰好が少し浮世離れしたモノだった事と
この意味不明な状況の路地裏に平然と――なんとなくナルシスト的な雰囲気を纏いながらも本当に平然と、侵入してきたからである。
(やば…!なんか変な奴きたし…!も、もしかして勘違いされてる…!?)
佑は少年から離れようとはせず、“面倒な事になってしまった~”とある意味冷静な感想を抱いていた。
一方少年は少年で、先程から両の拳を震わせて目の前の光景を恐れ半分に睨みつけている。
「美しくない、と言ってるんだよ。わかるよねェ?レディが少年に手を挙げるなんて、美しくない。そう、まるで美しくないなァ。」
ゆっくりと、そして自分の声に自惚れた様子で青年が近づいてくる。
新たに現れた青年の恰好が少し浮世離れしたモノだった事と
この意味不明な状況の路地裏に平然と――なんとなくナルシスト的な雰囲気を纏いながらも本当に平然と、侵入してきたからである。
(やば…!なんか変な奴きたし…!も、もしかして勘違いされてる…!?)
佑は少年から離れようとはせず、“面倒な事になってしまった~”とある意味冷静な感想を抱いていた。
一方少年は少年で、先程から両の拳を震わせて目の前の光景を恐れ半分に睨みつけている。
「美しくない、と言ってるんだよ。わかるよねェ?レディが少年に手を挙げるなんて、美しくない。そう、まるで美しくないなァ。」
ゆっくりと、そして自分の声に自惚れた様子で青年が近づいてくる。
「僕が美しいのは世界の常識としてだ、レディ?別に世の中の全てに美しくあれとは言わないけどねェ~?」
段々と近づいてくる青年に、嫌悪感と恐怖を半々に感じつつも、佑は怯まない。
「だ、だから何?何か用?あのね。何か勘違いしてると思うけど、私、この子と話してるだけなの。」
「せめて僕の眼に映るものくらいはさァ~。」
ジャリ、と泥を踏みしめた青年が更に近づく。
「美しくあって欲しいと願うわけだよ、レディ。わかるよね?」
「…………!」
佑は押し黙り、青年を睨みつける。
陰気な印象が幸いしてかなり人相が悪く映るはずなので、彼女が本気で睨むと結構恐いのだ。
よくよく考えればただ少年から手を離して「すいません」と一言言えばそれで済みそうな物を
佑は簡単には折れずに睨み返してしまったのだった。
陰気な印象が幸いしてかなり人相が悪く映るはずなので、彼女が本気で睨むと結構恐いのだ。
よくよく考えればただ少年から手を離して「すいません」と一言言えばそれで済みそうな物を
佑は簡単には折れずに睨み返してしまったのだった。
“別に悪い事してないし!”
と、軽い興奮状態の彼女の脳内はそんな感じの言い訳で埋め尽くされていた。
と、軽い興奮状態の彼女の脳内はそんな感じの言い訳で埋め尽くされていた。
「ど、どうでもいいですから早く離して下さいよぉ…」
「ちょっと黙ってなさいよ、アンタには話しがあるの。」
「な、ならなんでこんな事~~!」
「うっさい。」
「ちょっと黙ってなさいよ、アンタには話しがあるの。」
「な、ならなんでこんな事~~!」
「うっさい。」
ただ一言言い放つ佑は、目の前に立った青年を見つめる。
「やれやれ――とにかく彼を離しておやりなよレディ。さもないと、僕も本気で怒るよ?」
「やれやれ――とにかく彼を離しておやりなよレディ。さもないと、僕も本気で怒るよ?」
「――やってみなさいよ、それで怪我させたらアンタこそ美しくないと思うけど。」
勝ち気とまでいかなくとも、佑には度胸があった。
勘違いされて通報するならまだしも、この変なナルシストは自力で何とかしようとしている。
彼女は偽善や正義、自分の中の倫理勧を自身たっぷりに語られるのは好きではないのだ。
少年を助けに来たヒーロー気取りのこの青年にはなんとなく屈したくない、と――そういう感情が湧き出て
彼女に強気な発言を促していた。
勘違いされて通報するならまだしも、この変なナルシストは自力で何とかしようとしている。
彼女は偽善や正義、自分の中の倫理勧を自身たっぷりに語られるのは好きではないのだ。
少年を助けに来たヒーロー気取りのこの青年にはなんとなく屈したくない、と――そういう感情が湧き出て
彼女に強気な発言を促していた。
「なら――君は傷つけずに彼を救出すればいいさ。僕にはそれが」
ギュオン、と彼の背後からオーラがあがり
「―――!?」
「出来るからねェ、レディ?」
佑が驚いた一瞬、その一瞬の隙をつき
俊敏な動きをした「何か」が、少年を捕まえて素早く青年の元に抱き寄せてしまったのだ。
俊敏な動きをした「何か」が、少年を捕まえて素早く青年の元に抱き寄せてしまったのだ。
「――え!?」
佑が気付いた時には、少年は青年の元におり
青年は相変わらずの自分に酔ったような雰囲気で、驚き目を見開く佑を笑っていた。
「レディを傷つけるなんて美しくないだろう?けどレディが少年を苛めているのはもっと美しくない。よね?」
長い前髪を揺らし、佑の全身を舐めるようにしつこい視線で見る。
「綺麗なレディ、僕を怒らせてくれるなよ。それから、スカートの丈はちょっと長くした方が良いね。それじゃチラリズムの楽しみが薄れるよ。フフフ…!」
青年は相変わらずの自分に酔ったような雰囲気で、驚き目を見開く佑を笑っていた。
「レディを傷つけるなんて美しくないだろう?けどレディが少年を苛めているのはもっと美しくない。よね?」
長い前髪を揺らし、佑の全身を舐めるようにしつこい視線で見る。
「綺麗なレディ、僕を怒らせてくれるなよ。それから、スカートの丈はちょっと長くした方が良いね。それじゃチラリズムの楽しみが薄れるよ。フフフ…!」
――その場で唖然とする佑を置いて、青年は振り返り歩き去る。
少年も少しホッとした様子で、遅れて走り出す。
少年も少しホッとした様子で、遅れて走り出す。
完全に変態扱いである。
だがそれ以上に、佑の脳内は強い刺激に犯されていた。
「――二人目の、スタンド使い…!?」
佑は驚愕していた、ただただ驚くばかりだった。
ついさっき、ほんの少し前まではいつもと同じようなつまらない朝を過ごしていたのに。
ついさっき、ほんの少し前まではいつもと同じようなつまらない朝を過ごしていたのに。
たった10分かそこらの時間で、彼女の世界は大きく変貌してしまった。
自分以外の“スタンド使い”を二人も見つけてしまったのだ。
「こんな事って…あるわけ…?」
呆れた様に笑う佑は、路地裏に一人、へたりこんだ。