第4話 【スタンド使い ―復讐の女―】
休憩を知らせるチャイムが鳴る。
上野譲華は先ほどのホームルーム時に窓際の席の男子生徒に目をつけていた。
スタンドの存在に気がついたのならばスタンド使いである可能性が高い。
しかし、ただ転校生の存在が気になっただけというのもありうる。
譲華(確かめてみる価値はありそうね・・・)
譲華は席を立ち、窓際の席へと向かう。
女生徒「あっ上野さん、この学校まだ、慣れてないよね?案内してあげようか?」
譲華「えっ、いや大丈夫。そのうち慣れると思うからいいよ、ありがとう。」
女生徒「でもこの学校広いから、迷っちゃうよ?私もこの学校に入学した時は・・・」
ふと窓際の席をみるとあの男子生徒が居ないことに気づく
譲華「ごめんね、案内は今度にしてくれない?ちょっと急ぎの用事があるの」
女生徒「上野さん!ちょっと!」
あの男子生徒を探す。
譲華(しまったッ 教室から出ようとしている!)
先生「上野さん、席のことなんだけど・・・」
譲華「すみません!後でお願いします!!」
先生「上野・・さん・・・・?」
廊下に出る。が、あの窓際の席の男子生徒の姿はない。ただ二人の男子生徒が話をしているだけである。
譲華(見失ってしまった・・・)
男子生徒A「あの転校生、かわいいよな。俺のタイプだわ」
男子生徒B「だけどよ、あの髪型、ぜェーーんぜん似合ってないよな、ダサイしよォ。」
男子生徒A「おい・・・うし・・うしろ・・・・」
男子生徒B「あんな髪型の奴がいるのかよって感じだよな、カニみてーで、笑えるよなぁ ププッ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
譲華「あたしの髪型が・・カニみてーだと・・・?」
男子生徒B「!! あっあのそれは・・いや・・・」
譲華「この髪型をけなす奴はあたしの父さんをけなした奴だッ!!
てめーは絶対に許さないッ しかるべき報いを与えてやるッ」
男子生徒A・B「うぁ・・ヒィィィィィーーーー!!」
譲華「『クリスタル・エンパイア』ッ!!」
クリスタル.E.「オラオラ―――」
ガッシィィィィィィィイイイイイイン
突然横から現れたスタンドに『クリスタル・エンパイア』のパンチは防がれた。
譲華「なにッ!?」
「それ以上はやめときなよ。こいつらは完全に『敗者のツラ』をしてる。
屈服した人間に追い討ちをかけるのはスッキリしねぇだろ?
あんた自身の心に後味のよくねぇものを残しちまうんじゃあねえのか?」
譲華「やっぱりスタンド使いなのね・・・あなた。」
窓際の男「あんた、『ただの転校生』じゃあないな。
この学校に何か『目的』があって探りにきたような感じだった。
普通は初めての場なら緊張してキョロキョロしてしまうのはわかる。
だがあんたは違う。ぼくらを『観察』していたようだった。
あんたの『目的』はなんだ?答えなよ、そうしたらあんたには関わらない」
譲華「あたしの目的は2つ。
『確かめること』と『見極めること』。そしてその双方は『今』をもって『完了』する!!」
クリスタル.E.「オラオラオラオラオラオラオラオラァアア!!」
『クリスタル・エンパイア』のラッシュが男生徒のスタンドのガードを崩す。
窓際の男「うぐッ なんていうパワーだ・・・!」
譲華「あなたのスタンドの能力を見せてもらうわよ」
クリスタル.E.「オラァァァアア!!!」
窓際の男「うぐぐ・・・ 首がッ」
譲華「どうしても能力を見せないっていうんなら、あなたのスタンドの首をへし折るわよ?
スタンドのダメージは本体に帰ってくる。これがどういうことかわかるわよね?」
窓際の男「スタンドというのか、これは。そしてこいつには能力が備わっているのか。
お前がぼくをここで絞め殺しても構わないが、ぼくは正直いってこいつの能力を知らない。
まぁ、知っていたとしても言わないだろうがね。」
譲華「あなた、今の自分の立場わかってる?あたしがあなたを絞め殺さないとでも思ってるの
あたしはやると言ったらやる。今までそうしてきた。そしてこれからもそうしていく。」
窓際の男「ぼくのツラはどうかな?このツラは『敗者のツラ』かい?
さっきからあんたは自分が優位にあると思っている。。
それは違うな。ぼくは絶対に自分で強いと思ってる奴には屈服したりはしない。
そしてぼくは『あんたに殺される』予定はない。」
窓際の男のスタンドが少しずつ、首を締めている『クリスタル・エンパイア』の腕を外していく
譲華「あたしの『クリスタル・エンパイア』よりもパワーがあるっていうのッ!?
力負けしているなんてッ!!」
窓際の男「さっきのは突然だったもんでね。あんた、やると言ったらやるんだろ?
じゃあぼくも見習おうかな・・・。あんたがこれ以上やるってんなら
ぼくはあんたを『本気で』倒してやる、なぁに再起不能にするだけだ。
あんたみたいに殺すなんて物騒なことはしないし、
第一、ぼくは君みたいに人間観察が趣味の暇人じゃあないからね」
譲華「くっ・・・ あなた、強いわね。あなたの名前は?」
窓際の男「教えてやる、あんたの今のツラは『敗者のツラ』だ。
そして人に物事を尋ねるときは自分からっていうのを知らないのか?」
譲華「上野譲華。ホームルームの時、自己紹介したと思うんだけど。」
窓際の男「じゃあ、そろそろチャイムが鳴るからぼくは失礼するよ」
譲華「ちょっと!あなたの名前教えてくれるって言ったじゃない!」
窓際の男「尋ねるのであれば自分から言えと言っただけで、
ぼくがあんたに教えるなんて言った覚えはないね。」
ホームルーム終了と同時に譲華は窓際のあの男生徒をにらみつける。
(絶対に逃がしたりはしない!私の『復讐』のためにも!!)
視線を絶対に逸らすまいと目線を『固定』する。
窓際の男は逃げ去ると思いきや近づいて来た。
窓際の男「怖いなぁ。ホームルーム再開から怖い顔で
ずっと睨んでるのバレバレだよ。」
譲華はこれに反応しない。
ただじっと見ているだけである。
窓際の男「・・・ふ~ん。じゃあ失礼するよ。」
譲華はこれにも反応しない。
引き止めすらもしなかった。
窓際の男は教室から出て行く。
相変わらず先生は席のことについて譲華に尋ねたりしたが、
譲華はこれにも反応しなかった。
ただただあの男が出て行った教室の扉を見ているだけである。
帰路をあの男生徒は歩いていた。
「どうやら今日は変な奴に目をつけられてしまったようだ」
学校から家までは結構近いのだが、
わざわざ遠回りして寄り道をするのが好きだった。
「頭が飛んでるんじゃないかって思うような奴だったな」
商店街の真ん中を歩く。どうやら新しいコンビニがオープンしたらしい。
「ぼくはああいうふざけた奴は嫌いなんだよなぁ。」
商店街の角を曲がり、人気の無いところに出る。
「なぁにが『目的』は『確かめること』と『見極めること』だって?
答えにすらなってないし、意味深に言うことで
このぼくが興味を惹くとでも思ったのだろうか」
裏道を通る。猫が塀の上でこちらを見ていた。
この男が目線を合わしたらすぐに逃げて行ったが。
「本当に『今日は変な奴に目をつけられてしまったようだ』」
角を曲がるとすぐに足を止めた。
「はぁ・・・いい加減にしろよ?ストーカーは犯罪なんだぜ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「そこにいるのは分かってんだ。さっさと出てきなよ。」
曲がり角から姿を現したのは上野譲華である。
男生徒「出てきたな、ふざけた奴が一人。」
譲華「・・・」
男生徒「ぼくのだァいっきらいな人種だ。」
譲華「・・・・・」
男生徒「頭がぶっ飛んでいるみたいだな。髪型もだがな、プッ おっと失礼」
譲華「・・・・・・・」プツリ
男生徒「急に表情が変わったな。そういやさっきも髪のことについて言われて怒ってたな。」
譲華「・・・・・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
男生徒「きみはどうやらその髪型にケチをつけると怒るようだな。
よっぽどその変な髪型が気に入ってるのか?」
譲華「・・・・・どこまでもイヤミなヤローだな」ボソッ
男生徒「えぇ?なんですってェ?」
譲華「『クリスタル・エンパイア』ッ!!」
ギュウウウウウウウン
クリスタル.E.「オラァァァアアアア!!」
男生徒「ぶへァッ」(ドグシャアアアア
目にもとまらぬ速さで間合いをつめた『クリスタル・エンパイア』が男生徒をぶっ飛ばす。
男生徒が壁に激突すると、壁に大きな亀裂が走った。
男生徒の上に瓦礫が少し崩れてくるほどの衝撃であった。
男生徒「ガハッ うぐ・・・」
確実にこの男子生徒が折った骨の数は少なくないだろう。
何故ならこれほどの衝撃を直接受けたのだから。
この男生徒は何故スタンドを出して防御姿勢をとらなかったのか。
実はとらなかったのではなくとれなかったのである。
それほどまでに速い一撃だったのだ。
譲華「てめーみてェーな下衆ヤローはあたしだって大嫌いだ。
だがな、てめーみてェーな下衆ヤローでもスタンドを
持ってる奴なら誰だって選ばないくらいこっちは焦ってんだ。
てめーが協力したくなくても無理矢理協力させてやる。」
「あたしの『復讐』のために!!」