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【インハリット】オリジナルスタンドSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】第三話

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orisuta

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「いいかい? 俺たちの組織の構成員は千を超えている。
人数はこの国のギャングとしてはやや少ない方だが、スタンドを駆使してこのネアポリスの街だけでなく他の地方にも勢力を広げている。
内部抗争を収めただけでなく、急成長まで果たさせたのだから、つくづくボスは凄いお人だ」
「あの、ステッラさんはボスのことをずいぶん尊敬してるみたいですね」
パッショーネについての説明をするステッラの言葉の端々に、ジョルナータは彼のボスへの深い敬慕を感じていた。

「……そうだな。あの方は俺の親友の仇をとってくれた。それに、あの方に逢わなければ、今頃俺は野垂れ死にをしていた。
まあ、それはそれとして、うちはボスの方針で麻薬を扱うのを止めた。
先代のボスの代にはやっていたのだが、今のボスの上にいた人物が麻薬を嫌っていてな、その遺志を継いだらしい。
故に、対立組織にはそこに目をつけて己の勢力を浸透させようとする。その筆頭が、この前ボスを暗殺しようとした『ヴィルトウ』のやつらだ。
そこで、俺たちはやつらを潰すことになった。うちのシマに手を出そうとするやつらがどんな目になるかをアピールするためになッ!
ジョルナータ、君は俺のチームに入ってもらうこととなる。
俺はネアポリスを仕切る幹部だが、この度『ヴィルトウ』殲滅を任されることとなったからだ」
彼の言葉に、ジョルナータはゴクリと唾を飲み込んだ。
「来てくれ、チームのメンバーに引き合わせよう」


アッハハハ、ウヒヒヒ……
ここは、ステッラの表向きの仕事場である家電量販店の二階である。
普段は物静かな一室なのだが、今日はいかにもアメリカンガールとでも言いたげな格好の若い女がジョーク集を片手に馬鹿笑いをしていた。
その横で机にかじりついて何がしかのレポートを書いていた青年は、しばしば煩げに彼女に目を向けていたが、とうとう我慢の限界に来たのか、いきなり女の手から本をひったくって放り投げる。
その本は、ソファで転寝をしていたニット帽の男に当り、「いてっ!」と彼はうめく。
「ちょっ、何すんのさウオーヴォ!」
「少しは静かに出来ないのか、ベルベット? 少しは人の都合を考えろ」
楽しみを邪魔されてムッとした女に、青年はピシりと言い返す。
「おめーらの都合なんざどうだっていいんだよ。だからって、本を俺にぶつけるこたぁねーだろーがよ!」
言い争いが始まろうとしたその時、これまた機嫌を悪くして割って入ってきたニット帽の男に、両者は「「また面倒な」」と言わんばかりの視線を向ける。

「なんだ、やるってのかい? ちょうどいい、このチームの中でのナンバー2は誰なのかいい加減はっきりさせたいと思ってたとこなのさ!」
「ああ? 俺がナンバー2に決まってんだろうが! スタンドのパワーはよォー、俺のがこん中で一番強いってのが判ってるんだろ?」
「ふん、スタンドはパワーとスピードだけで勝負が決まるものじゃない。忘れたのか? この場所では僕に有利だということを」
ゴゴゴゴゴゴ……3者の間で殺意が交わされる。一触即発のその刹那、
「お前ら、何をやっている! 昨日、入るかもしれないと伝えた新しい仲間を連れてきたぞ!」

ステッラの一喝に、彼らは全員動きを止めた。
「ジョルナータ・ジョイエッロです、これからよろしくお願いします」
深々と頭を下げる彼女のギャングらしくもない儚げな姿に、彼らは気をそがれたのか、てんでにチッと舌を鳴らして席に戻る。

「へぇ、あんたが新入りかい? あたしはベルベット・フチーレ。よろしく頼むよ、『下っ端』としてね」
「俺はスカリカーレ・ストゥラーダだ。ま、せいぜいがんばりな。俺の出世を邪魔しなけりゃうるさいこたぁ言わねぇよ」
「お前ら、そろってロクなことを言わないな……。ま、こんなバカたちは放っておけ。
僕はウオーヴォ・クルードだ。君が僕の足を引っ張らないことを切に願う」
「は、はぁ……」
三者三様のあいさつに、彼女は答えに窮した。どうも、彼らは相互にあまり仲は良くないらしい。見かねたステッラが、
「気にするな。あんなことを言いつつ、やる時はしっかり連携をこなす。どいつも気のいい奴らだ」
と耳打ちした。


「で、テンぺスタ。僕たちをここに召集するだなんてどうしたんですか? まさか、彼女の紹介ってだけではないんでしょう?」
「ああ、その通りだ。俺たちに、ボスから直々に命令が下った。『ヴィルトウ』を叩き潰せ、とな」
彼の言葉に、三人の顔にさっと緊張の色が走った。
無理もない、先日『ヴィルトウ』のボスへと暗殺チームが送り込まれ、その半分が返り討ちになったばかりなのだ。
暗殺チームを統括していた幹部のミスタが悔しそうな顔をしていたのを、直弟子であるベルベットに至っては間近で見ている。
その任務が自分たちに下されたのだ!
 
 
 




「……こいつは運が向いてきたぜぇーッ! この任務を果たしさえすれば、俺たちゃ一気にのし上がれる。それぞれが幹部になることだって夢じゃないじゃねぇかよォー!」
「落ち着け、ストゥラーダ。今回の任務は命懸けだ」
仲間を落ちつかせようとウオーヴォが口を開いたその時だった。
『ケケケ、そうだな。命懸けだなァ、お前らにとってはよォ』
「「「「「!!!」」」」」
何処からか聞こえてきた謎の声に、彼らはパッと周囲に警戒を向けた。
『お初にお目にかかるぜ、俺はタスティエーラ。ヴィルトウのもんだ。名前は覚えなくていいぜ、どうせ俺にみんな始末されるんだからよォ。
俺はな、そっちのボスのお膝元にいる番犬どもを始末に来たんだがよォ、こいつはいい話を聞かせてもらったぜぇ。
うちを叩き潰そうという連中を未然にしとめりゃ、俺の出世は間違いねぇーッ!』
機嫌よさそうに笑う声に、ジョルナータの耳がピクリと動く。
「判りました、そこです! インハリット・S!!」
インハリット・Sの拳がソファの陰をぶち抜く。しかし、そこにあったものは……
「これはっ、電話?! いや、違う!」
先端が受話器のようになっているメカメカしい木の枝が何処かから伸びており、
『いや、電話にゃあ違いねぇぜ嬢ちゃん。だがよぉ、それだけじゃないんだぜぇ!』
「はっ! ……うぁっ!」
とっさに振り返った彼女が目にしたのは、回転しながら迫りくる何本もの枝であった。
その先端には扇風機のファンのようなものがついていたりする。
ザクリ、と体のあちこちを切り刻まれて倒れこんだ彼女だが、
「ジョルナータ!」
「大丈夫です、傷は飛び散った肉片を戻すことで自分で治療できます! それより、敵を見つけてください!」
次から次へと襲い来る枝枝を防ぎつつ叫び声を上げる少女に、
『やってみろやァ! 俺様を見つけるのと、その部屋の中でお前らがミンチになるのと、どっちが早いかねぇ!』
男の言葉が即座に返ってくる。

「……ウオーヴォ、お前のスタンドならこういった相手には向いているだろうな」
その時、ステッラがぽつりと呟いた。
「了解した。おそらく、相手は商品の電話や扇風機を『機械の木』に変えて操っているようだ。
僕と似たスタンド使いならば、相手をするのは当然僕だ。ダフト・パンク!」
言葉より早く、青年の腕から数十本ものコードが勢いよく飛び出した。




名前の由来
 ヴィルトウ:力量の意
 ウオーヴォ:卵
 クルード:生の
 フチーレ:銃
 スカリカーレ:トイレの水を流す   
 ストゥラーダ:通り・道
 タスティエーラ:キーボード

使用させていただいたスタンド


No.89
【スタンド名】 ダフト・パンク
【本体】 ウオーヴォ・クルード
【能力】 「コード」に接続した生物や機械を、意のままに操れる




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