「はっ……はっ……。」
小刻みに荒く吐き出された息遣いが、空気を震わせる。伴うは、一定のリズムを刻む足音。腰元まで長く垂れたツインテールを風に靡かせながら、幡田みらいは荒野を一目散に駆け抜けていた。
時々、視線を後方へと向けると、どことなく彼女に似た白髪がかった髪色の少年が、手の形をした無数の魔力の塊を引き連れて迫ってくる。まるで最初から重力など働いていないかのごとく宙に浮かび、自在に移動するその様は、追跡者の少年がただの人間などではないことを鮮明に示している。
少年が手を前方に翳すと、辺りに漂う『暗黒の手』が一斉に加速し、みらいとの距離を縮めていく。伸ばした手の先に見える華奢な身体を一掴みしようとしたその寸前で、みらいは走る角度を斜め75度曲げて前面から飛び込んで回避する。足先を掠めた攻撃をいま一度見やると、その表情を恐怖に歪めながら、叫ぶ。
「助けて……お姉ちゃんっ!」
叫ぶは、最愛の姉の名。
あの運動音痴で事なかれ主義のお姉ちゃんが、悪夢のような戦場に危険も顧みず助けにきてくれたのなら――それはきっと、血縁なんて曖昧なものよりもずっとずっと深く、そして強い繋がりなのだろう。
――だから、助けに来て。お姉ちゃんの愛を、私に証明してみせて。
みらいの頭を占めるのは、その情念ただ一つ。
「……キミ。ずいぶん、しぶといんだねぇ。」
決死の形相を浮かべて走るみらいとは裏腹に、その追跡に際し一切の疲れを見せていない少年――ナラジアはこの時初めて、その顔をしかめた。
「まあ、弱いヤツを捕まえられるかどうか、ギリギリの鬼ごっこは、別に嫌いじゃないんだけどさ。」
――異界滅神ジャゴヌバ。
神話の時代からアストルティアを蝕む大いなる闇の根源の真名にして、ナラジアという器に宿る神の名。
自身の肉体の完全復活という大願を前にしながら、突如として開かれた殺し合い。当然、不愉快極まりないものだ。無力な少年を演じながら、眷属の邪神ピュージュを通じて魔界で暗躍してきたことも、こんな催しのせいで台無しだ。古砂夢という女には、相応の報いを与えてやらなければ割に合わない。
「……ただキミは、運が悪かった。生憎今は、虫の居所が悪くてね。」
だが、それはそれ、これはこれ、だ。
主催者への怒りがあるからといって、目先の娯楽を逃す意味は無い。
むしろ心中穏やかでないなればこそ、狩りをより愉しむことこそ道理と言えよう。
主催者への怒りがあるからといって、目先の娯楽を逃す意味は無い。
むしろ心中穏やかでないなればこそ、狩りをより愉しむことこそ道理と言えよう。
「そろそろ死んでくれないかな?」
再び構えられたその手に連動するように、暗黒の手は次々とみらいに襲い掛かる。先ほどまでの、徐々に加速させていく鬼ごっことは異なり、明確に命を狙い済ました急接近。本当は、お遊びの段階でもう少し早くにみらいの手首を掴み上げ、劈くような悲鳴を上げながら恐怖に歪む顔を肴に目を、鼻を、耳を、一つずつ千切り取って殺す手はずだった。想像よりも速かったみらいの逃げ足に僅かばかりに賞賛を送り――ゆえに、苦しまぬよう一瞬で葬り去る褒美を与えようというサービス精神の表れである。
みらいへと迫るその手は、か弱い少女の頭を軽く捻り潰す。
「――うーん、困るんだよね。」
……そうなる、はずだった。
ナラジアの予測に反し、少女の眼前に到達した暗黒の手は瞬く間に霧散し、少女が纏う黒いオーラを彩る照明と化した。
「君がもう少し弱かったら、お姉ちゃんに助けてもらうこともできたのに。」
少女の姿は、先ほどまでの白いニット服ではなく、黒を基調とした煌びやかな装束へと変わっていた。そして、苛立ちを隠さない、曇った表情のまま、手にした剣を突き付ける。その剣の名は、グランドリオン。元は聖剣と呼ばれた武器であるが、幡田みらいこと、幽鬼の姫アリストテレスの負の心に触れたことにより、その力は邪悪なものへと変化した。お姉ちゃんとお揃いの長剣スタイルにテンションが上がったみらいは、魔剣を突きつけながら高らかに宣言する。
「っていうわけで、君はお姉ちゃんを殺せるから、私が消しておくね。」
お姉ちゃんに、助けに来てほしい。血の繋がりなんて曖昧なものじゃなくて、私のために危険にも立ち向かってくれる、そんな繋がり。
殺し合い――アナムネシスに辺獄に連れて行かれた時のようなアクシデントには驚いたけど。でも、やることは何一つ変わらない。私だけのお姉ちゃんと、二人きりで家に帰りたい。そのみらいを掴むために、邪魔者には退場してもらわなくちゃ。
「……へえ。面白いね、君。まさか大いなる闇の根源を前にして、悲劇のヒロインごっこに興じるとは。」
言うまでもなく――幡田みらいは、壊れている。
辺獄の管理者、フェレスをしてその心の奥底が読めないと言わしめる狂気、その奥底。人の精神に付け込み支配する闇の根源、ジャゴヌバといえどもその深淵を見ることはかなわなかった。
その狂気に惹かれたか、ナラジアは醜く顔を歪めて笑う。瞳に灯る紅い光がいっそう強く、妖しく輝いた。
「……僕は君が欲しい。」
――兄弟姉妹の絆というのは、美しいものだ。
想い合い、そして守り合う。
そんな確固たるものだからこそ、利用できるし、躪り甲斐がある。
想い合い、そして守り合う。
そんな確固たるものだからこそ、利用できるし、躪り甲斐がある。
この娘の目の前で、姉を殺してみせようか。
はたまた、姉が助けに来るというのなら人質にしてみせるのも面白い。
或いは片方を傀儡にして、姉妹同士で殺し合わせるのも一興か。
はたまた、姉が助けに来るというのなら人質にしてみせるのも面白い。
或いは片方を傀儡にして、姉妹同士で殺し合わせるのも一興か。
ふふつ、支配者の座を奪われたようで面白くなかったこの殺し合いが、楽しみになってきたよ。
【B-4/快楽ノ園/一日目 深夜】
【ナラジア@ドラゴンクエストXオンライン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:娯楽として殺し合いに優勝する。
1.幡田みらいに強い興味
2.古砂夢への怒り
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:娯楽として殺し合いに優勝する。
1.幡田みらいに強い興味
2.古砂夢への怒り
※異界滅神ジャゴヌバの意識覚醒後、討伐される前からの参戦です。
【幡田みらい@Crystar】
[状態]:健康
[装備]:グランドリオン@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:お姉ちゃん(幡田零)とふたりで家に帰る。
1.ナラジアを排除する。
2.手頃な敵に追い詰められる演技をして、お姉ちゃんに助けに来てもらいたい
※再生の歯車到着前からの参戦です。
[状態]:健康
[装備]:グランドリオン@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:お姉ちゃん(幡田零)とふたりで家に帰る。
1.ナラジアを排除する。
2.手頃な敵に追い詰められる演技をして、お姉ちゃんに助けに来てもらいたい
※再生の歯車到着前からの参戦です。
【支給品紹介】
【グランドリオン@クロノ・トリガー】
ドリストーンから造られた赤きナイフがラヴォスエネルギーを吸収することで長剣へと形を変えた聖剣。
幡田みらいの幽鬼の力に由来する負のエネルギーを吸い込んだことで、持ち主の負の心を増幅させる『魔剣グランドリオン』へと変質した。
【グランドリオン@クロノ・トリガー】
ドリストーンから造られた赤きナイフがラヴォスエネルギーを吸収することで長剣へと形を変えた聖剣。
幡田みらいの幽鬼の力に由来する負のエネルギーを吸い込んだことで、持ち主の負の心を増幅させる『魔剣グランドリオン』へと変質した。
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