―かわいそうな王さま
作・朗読 ■■■■■
――むかし、むかし、あるところに王様がいました。
王様は自らの種族を長く統治していました。
彼らは独自の技術を用いて、繁栄を続けました。
彼らは独自の技術を用いて、繁栄を続けました。
王様達の周りには様々な種族がいたのですが、彼らは皆纏まっていませんでした。
そして、王様の種族に心を開きませんでした。
そして、王様の種族に心を開きませんでした。
ある時、王様は他の種族と“共存”したいと言いました。
心を開かない無礼な者達とも付き合って行きたいと考えたのです。
その様な寛容な心と大きな器を持つ者はこの先も現れないでしょう。
心を開かない無礼な者達とも付き合って行きたいと考えたのです。
その様な寛容な心と大きな器を持つ者はこの先も現れないでしょう。
王様はすぐに選別した七人の配下を大陸全土に派遣し、彼らを中心に“共存”の為の政策に取り掛かりました。
彼らに続き、老年の技術者も力を貸し、王様の政策は順調に進みました。
彼らに続き、老年の技術者も力を貸し、王様の政策は順調に進みました。
しかし、いつの世にも、反対する者は現れます。
他種族の筆頭である《帝国》が真っ向から反対し、同調する者を集め始めました。
王様の政策に反対する者は日に日に増え、何度も命を奪おうとします。
王様の政策に反対する者は日に日に増え、何度も命を奪おうとします。
そして一人の刺客が、王様の種族を多く殺し始めました。
それを止める為に、王様の側近が七人の配下と共に戦い、自身の命と三人の配下を犠牲にして、種族と王様を守ったのです。
しかし、それから数年後に新たな四人の刺客が現れました。
彼らは、お腹を空かせてつまみ食いをした幼子にも凶刃を振るう輩でした。
彼女は幼いながらも生き残る為に知恵を絞りましたが、敵わず「お母さん。」と言って、死んで行きました。
彼女は幼いながらも生き残る為に知恵を絞りましたが、敵わず「お母さん。」と言って、死んで行きました。
彼らの手により、老年の技術者は封印されました。
七人の配下の内の一人の女の子が天秤を持って共に戦う者と無謀にも刺客に挑みましたが、案の定、重傷を負って戻って来ました。
その後、刺客を閉じ込めようとした配下と様々な夢を与える事が出来る配下が犠牲になりました。
七人の配下の内の一人の女の子が天秤を持って共に戦う者と無謀にも刺客に挑みましたが、案の定、重傷を負って戻って来ました。
その後、刺客を閉じ込めようとした配下と様々な夢を与える事が出来る配下が犠牲になりました。
そして、遂に四人の刺客は王様のお城に辿り着きました。
王様は彼らによって命を奪われます。
王様は彼らによって命を奪われます。
四人の刺客―顔が良いだけの『勇者』、酒飲みの破戒僧の『僧侶』、小柄な『戦士』、そして人の心が分からないエルフの『魔法使い』は国に帰り、【英雄】として称えられました。
特に『魔法使い』の行いは非道いもので、多くの王様の種族を殺すだけに留まらず、老年の技術者の技術―『人を殺す魔法』を解析し、それを人間共に広めました。
それを機に人間の『魔法』は発達していき、王様達の種族は衰退して行きました。
そして長い月日が経ち、王様の目指していたものが忘れ去られ、行った政策―当時の人類の三分の二を滅ぼした事が、悪行として伝わり、人々の記憶に畏怖だけが残ったのです。
志も叶わず、命どころか、『魔族』が独占していた魔法技術も奪われるなんて―、
――なんて、かわいそうな『魔王』様。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――F-5に静かに佇む円形の建物、アリスドーム。
――殺し合いの開催の説明があったアレクサンドリア城とは違い、人気もなく夜の静けさだけがその場を支配していた。
その頭頂部に貴族風の服装をした長髪の青年が眼下の景色を見下ろす様に立っていた。
だが、彼は人間ではない。
その証に頭部からは二本の大きな角が天に向かって伸びていた。
だが、彼は人間ではない。
その証に頭部からは二本の大きな角が天に向かって伸びていた。
彼の名はリュグナー。《魔族》と呼ばれる人間に仇なす種族の一員であった。
彼の魔族での所属・肩書きは、
魔王軍直下《七崩賢》の一人、《断頭台》のアウラの配下の集団である《首切り役人》。
魔王軍直下《七崩賢》の一人、《断頭台》のアウラの配下の集団である《首切り役人》。
――その筆頭を務めるリュグナーは夜の寒さを感じながら、愚痴をこぼす。
「馬鹿げた催しだ。何故、我等魔族がこんな茶番に付き合わなければならない。」
奴の言う最後の一人になれば、願いが何でも叶う等という戯言に興味はない。
それより、早くこの殺し合いの場を逃れ、本来の目的であるグラナド領への侵攻を行わなければ。
それより、早くこの殺し合いの場を逃れ、本来の目的であるグラナド領への侵攻を行わなければ。
多くの欲望を持つ人間と違い、魔族という種族が求めるのは生涯を掛けた魔法の探求のみ。
それはリュグナーも例外ではなく、富や死者の蘇生には興味がない。
主に従い、己の魔法を極める―。望むもの等、他にはない。
魔族は長い時間を掛け、一つの魔法を極める。
リュグナーの使う魔法は、『血を操る魔法<バルテーリエ>』。
己の血液を操り、鞭や刃として扱う。
また大怪我を負っても容易く止血出来る。
先のフリーレンの弟子との戦いでは、身体に大穴が開く大怪我をしたものの、戦闘を続行する事が出来た。
己の血液を操り、鞭や刃として扱う。
また大怪我を負っても容易く止血出来る。
先のフリーレンの弟子との戦いでは、身体に大穴が開く大怪我をしたものの、戦闘を続行する事が出来た。
しかし―、自分はその後、フリーレンの弟子の策に嵌り、敗北した筈。
リュグナーは自分の身体を見渡す。
あの戦いで負った傷は全て癒えていた。
あの戦いで負った傷は全て癒えていた。
主催のあの女魔法使いの仕業か?
死にかけた自分を助けてくれたのは有り難い。
こんな殺し合いさえ開かなければ。
死にかけた自分を助けてくれたのは有り難い。
こんな殺し合いさえ開かなければ。
身体の状態を確認した後、続いて首輪の事を考える。
『血を操る魔法<バルテーリエ>』なら、首輪の隙間から血液を入れられる。血液を工具のように動かせば、首輪を解体出来るだろう。
『血を操る魔法<バルテーリエ>』なら、首輪の隙間から血液を入れられる。血液を工具のように動かせば、首輪を解体出来るだろう。
しかし、首輪の構造を知らなければ、解体中に電流で命を落とすかも知れない。
これまでであったなら、電流如き耐えられたであろう。
しかし、あの女魔法使いは恐らく入念に準備をして、殺し合いを行っている。
自分の様な首輪を解除出来そうな者も参加させているという事は対策もしてあるだろう。
これまでであったなら、電流如き耐えられたであろう。
しかし、あの女魔法使いは恐らく入念に準備をして、殺し合いを行っている。
自分の様な首輪を解除出来そうな者も参加させているという事は対策もしてあるだろう。
(私は先程のバカな真似をした男や老人のように死ぬつもりはない…。
やはり解除を考えるのは、他の参加者から首輪を奪った後からだろう。)
やはり解除を考えるのは、他の参加者から首輪を奪った後からだろう。)
長髪の魔族は首輪に対する思考の後、地図を取り出して開く。
現在地を確かめた後、汲まなく地図を眺める。
見覚えのない地名が並ぶ中、一つの地名に目がいく。
見覚えのない地名が並ぶ中、一つの地名に目がいく。
―城塞都市ヴァイゼ。
あり得ない事だ。それは50年前、魔王直下の大魔族《七崩賢》の一人、《黄金郷》のマハトが都市を丸ごと黄金に変えた後、【大陸魔法協会】の魔法使いによって封印された場所。封印は誰にも解けなかった筈だ。
(まさか、あの女魔法使いが解いて…?いや、解けたとしても、都市がそのまま会場に移動したのはおかしい。)
都市の事は兎も角、マハトの封印が解けたのは確かだ。
魔族・魔法使いは目視以外にも魔力によって相手を識別出来る。
最初の広間にて、見覚えのある魔力を感じたが、あれはマハトだったのだ。
魔族・魔法使いは目視以外にも魔力によって相手を識別出来る。
最初の広間にて、見覚えのある魔力を感じたが、あれはマハトだったのだ。
(マハト様が参加されているのは確実だ。問題は何故ヴァイゼまで此処にあるのだ?)
これが偽りであると切り捨てるのは簡単だ。しかし、わざわざ嘘を付く必要のない地図に書いてあるのは、理解出来ない。
そこまで考えて、ふと思い付く。
此処は本当に現実なのかと?
都市が移動し、上位の魔族である七崩賢が容易く捕まる事も信じらないが、自身の重傷を負った身体がすぐに治る事もおかしい。
リュグナーには、その様な現実の様な幻覚を作り出す者に心当たりがあった。
―《奇跡》のグラオザーム。
七崩賢の一人にして、《奇跡》と称される程の幻覚の世界を作る魔法を持つ大魔族だ。
(まさか、グラオザーム様があの女魔法使いの一味に加わっているのか?しかし…、)
グラオザームは80年前、魔王様が討たれる前に死んだ筈だ。
無論、死んだ場面を見ていない為、生きている可能性もある。
しかし、人類と一度でも協力した魔族等、それこそ黄金郷のマハト以外にあり得るだろうか?
無論、死んだ場面を見ていない為、生きている可能性もある。
しかし、人類と一度でも協力した魔族等、それこそ黄金郷のマハト以外にあり得るだろうか?
……今の時点では、考えていても結論は出る事はないだろう。
地図の確認後、続いて名簿を開く。
地図の確認後、続いて名簿を開く。
すぐに名簿の先頭に見覚えのある名前を見つけた。
主人である《断頭台》のアウラ。
彼女も最初の広間にて、魔力を確認している。
主人である《断頭台》のアウラ。
彼女も最初の広間にて、魔力を確認している。
多少の喜びを感じ、再び名簿に目を通すと、再度知った名前を見つける。
しかし、この相手は会いたくない存在だ。
――《葬送》のフリーレン。
フリーレンは目視では確認出来なかったが、その魔力は過去に対峙した時に覚えている。
自分達、魔族を多く葬った警戒すべき天敵だ。
マハトの名前がなかったが、名簿の隅に《一部の参加者は二時間後に発表します。》と書かれていたので、この枠内にいるのだろう。
というか、自分を含めてアウラ以外の魔族の名前は載っていない。
というか、自分を含めてアウラ以外の魔族の名前は載っていない。
何故、最初から名前を載せないのか気になったが、恐らく、人間共を油断させる為に名前を伏せたのだろう。
また名簿には『魔王』と名前があった。
初めの広間にて、『死者蘇生』の話があったが、リュグナーの魔力探知には、生前の魔王と同じ魔力は感じられなかった。
魔族か人間かは知らないが、他人が『魔王』という肩書きを勝手に名乗っているだけだろう。
初めの広間にて、『死者蘇生』の話があったが、リュグナーの魔力探知には、生前の魔王と同じ魔力は感じられなかった。
魔族か人間かは知らないが、他人が『魔王』という肩書きを勝手に名乗っているだけだろう。
何にせよ、アウラ様がいるのは心強い。
彼女は五百年生きた大魔族にして、魔王直下《七崩賢》の一人。
彼女は五百年生きた大魔族にして、魔王直下《七崩賢》の一人。
彼女の扱う魔法――《服従させる魔法(アゼリューゼ)》に抗える者などいない。
人間が何人いようが返り討ちにして、駒として使い潰してくれる。
人間が何人いようが返り討ちにして、駒として使い潰してくれる。
そうなれば、警戒するのはフリーレンのみ。
特典には興味が無いが、これなら、アウラと共に勝ち残り、主催の魔法使いを殺す事も――。
そう思った時だった。
そう思った時だった。
「こんばんは。久しぶりね、リュグナー。」
背後から、声を掛けられて気付く。
いつの間に背後に居たのだろうか。
リュグナーが振り向くと、一人の少女が立っていた。
リュグナーが振り向くと、一人の少女が立っていた。
少女の外見は薄い緑色の髪、上着を羽織っただけの薄手の格好、温和な笑みを絶やさず、額にはリュグナーとの物と違い、小さな角が生えていた。
角がある点を除けば可憐な普通の少女―
しかし、彼女を見たリュグナーは自身の額から多量の汗が出る事を止められなかった。
しかし、彼女を見たリュグナーは自身の額から多量の汗が出る事を止められなかった。
何故、この方がここにいるのか――
頭に疑問が浮かんだと同時に、身体は臣下の如く、その少女の前で跪く。
「私も会えて、嬉しく思います。――《無名》の大魔族、ソリテール様。」
目の前の少女は両手で輪を作るような仕草をした後に、照れた様に笑う。
「嫌だわ、会ってそんなに真っ青な顔をするなんて。別に取って食べたりしないのに。」
目の前の少女―ソリテールははにかみ、姿に合った好ましい笑顔で、最初の広間にて主催の女魔法使いが言った物と同じ言葉で答える。
一方のリュグナーは青ざめたままで、
「……いえ、いきなり殺し合いを強要され、困惑していたまでです。
貴女に会えて、少し気分が晴れました。」
と、実際の思いとは違う言葉を口にする。
「……いえ、いきなり殺し合いを強要され、困惑していたまでです。
貴女に会えて、少し気分が晴れました。」
と、実際の思いとは違う言葉を口にする。
リュグナーは知っていた。
目の前の存在が、《大魔族》の中でも―、いや《七崩賢》以上に丁重に対応しなければならない存在だと。
目の前の存在が、《大魔族》の中でも―、いや《七崩賢》以上に丁重に対応しなければならない存在だと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
かつての《魔王軍》の中枢におり、魔族を従える立場にいる《大魔族》。
かつて、大陸全土を震撼させた魔王直下の《七崩賢》もこの中から選ばれる。
かつて、大陸全土を震撼させた魔王直下の《七崩賢》もこの中から選ばれる。
彼らは何百年とも長い年月を生きており、それに見合った実力を兼ね備えている。
それは人間側にも認知され、《大魔族》と対峙し、その魔法を見た者は恐れられ、様々な《二つ名》で呼ばれる様になる。
《全知》
《黄金郷》
《奇跡》
《不死》
《断頭台》
《血塗られた軍神》
《終極の聖女》
《黄金郷》
《奇跡》
《不死》
《断頭台》
《血塗られた軍神》
《終極の聖女》
だが、多くの《大魔族》が持つ二つ名を持たない例外もいる。
《無名》
その名は能力を持たない弱者を蔑むものではない。
――それは人間に認知されず、敵対する者を全て葬って来た《大魔族》の中でも最も警戒すべき存在だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
リュグナーは改めて、目の前の少女を見る。
《無名》という称号も恐れるものだが、彼女は魔族の中でも異端だ。
研究者としての側面もあり、長年人間について研究し、仕草も彼らと変わらないものを手に入れている。
また今は亡き魔族のトップである《魔王》とも親しい関係だった事も彼女の特別性を表していた。
《無名》という称号も恐れるものだが、彼女は魔族の中でも異端だ。
研究者としての側面もあり、長年人間について研究し、仕草も彼らと変わらないものを手に入れている。
また今は亡き魔族のトップである《魔王》とも親しい関係だった事も彼女の特別性を表していた。
そして――魔力の気配を消していても感じる強大な力を。
長年、魔術の研鑽を行っていても、《大魔族》には届かない。
《魔族》と《大魔族》では埋まらない差がある。
それを肌で感じながら、リュグナーは口を開く。
《魔族》と《大魔族》では埋まらない差がある。
それを肌で感じながら、リュグナーは口を開く。
「それで…、貴女は此処ではどう動きます?」
下僕である《魔族》は上位の存在である《大魔族》に答えを問う。
「――私は殺し合いなんてしないわ。」
「私は生き残りたいし、殺し合いなんてしたくないわ。ここにいる参加者達もそう思っている筈。彼らと“協力”すれば、私達は生き残る事が出来るわ。」
善性のある返事が返る。知らぬ者が聞けば、言葉通りに受け止め、彼女を対主催と信じるだろう。
だが“協力”という言葉―
それがどういう含みを持っているかリュグナーは知っている。
前者の話は本心だろう。
リュグナーも同様で、人を殺す等造作もない事だが、自分達を拉致した者に従うのは気が乗らないし、殺し合いに乗れば、危険人物として印象付けられ、逆に命を落とすリスクが高まる。
リュグナーも同様で、人を殺す等造作もない事だが、自分達を拉致した者に従うのは気が乗らないし、殺し合いに乗れば、危険人物として印象付けられ、逆に命を落とすリスクが高まる。
しかし、後者の話は違う。
ソリテールが言う“協力”は、平たく言えば、『自分の為に犠牲になってもらう』事だ。
敵の攻撃の盾になってもらう―。
首輪の解析の為に死んでもらう―。
首輪の解析の為に死んでもらう―。
殺し合いに乗らなくても、手段を選ばない者がいるだけで死者は増えていくだろう。
「リュグナー、失礼な事を考えていないかしら。か弱い乙女がいるのだから、貴方が守らないでどうするの。」
――か弱く見えるのは見た目だけだろう。
リュグナーは口に出したくなるのを必死で抑えていた。
リュグナーは口に出したくなるのを必死で抑えていた。
ソリテールは大魔族でも上位に入る実力を持っており、寧ろ本来の主であるアウラの方が自身の魔法を封じられれば、か弱い乙女に過ぎなかった。
「……申し訳ありません。
…ところでお気付きとは思いますが、此処には我が主アウラ様、同じ《七崩賢》のマハト様、そして我ら魔族の宿敵、《葬送》のフリーレンがいます。
私も殺し合いには乗るつもりはありませんが、奴を討つのには良い機会かと。」
…ところでお気付きとは思いますが、此処には我が主アウラ様、同じ《七崩賢》のマハト様、そして我ら魔族の宿敵、《葬送》のフリーレンがいます。
私も殺し合いには乗るつもりはありませんが、奴を討つのには良い機会かと。」
「そうね…。確かにマハトの事は気になるわ。でも、幾ら彼でも“悪意”や“罪悪感”の感情を知りたい為に短絡的に殺し合いに乗るとは思えないわ。
それから…、フリーレンの事は一時、放っておきましょうか。」
それから…、フリーレンの事は一時、放っておきましょうか。」
何故、と問う前に少女は答える。
「此処でフリーレンがどう行動するかは大方読めるわ。彼女は優しいもの。きっと戦えない善良な人々の為に戦うに決まっているわ。しばらく泳がせ、弱るまで待つ。
……そうなれば、私達が殺しやすくなるわ。」
……そうなれば、私達が殺しやすくなるわ。」
ソリテールは先程殺し合いを否定した口で、クスクスと笑う。
その口元には先程とは違い、嘲りの色が見て取れた。
その口元には先程とは違い、嘲りの色が見て取れた。
「ああ、アウラとも合流するわ。大切な仲間だもの。“協力”し合わなくちゃ。」
初めに名前を出したのに後から答えた事。先程使った“協力”という単語を使った事。
―やはり、ソリテールにとってアウラはその程度の位置なのだろう。
確かに他の《大魔族》や《七崩賢》と比べて、彼女は劣る。
だからと言って、並の魔法使いや魔族では刃が立たないのだが。
だからと言って、並の魔法使いや魔族では刃が立たないのだが。
「……分かりました。では、取り敢えずはアウラ様を探すとしましょう。」
自身の荷物を持ち、その場を離れようと動き出す。
それを、後ろからソリテールが止める。
それを、後ろからソリテールが止める。
「私も質問があるわ、リュグナー。最初の広間で最後に死んだ老人が使役していた魔物―。
あれに見覚えはあるかしら?」
あれに見覚えはあるかしら?」
「いえ、ありませんね。それが何か?」
炎を纏ったワニの様な魔物―。
多少変わった魔物がいて、少し違和感を感じたが、別段気にもしなかった。
それを何故、ソリテールは気にするのか?
多少変わった魔物がいて、少し違和感を感じたが、別段気にもしなかった。
それを何故、ソリテールは気にするのか?
「…面白いわね。私も見覚えがないの。
あれは新種、いえ、きっと違う世界の魔物だわ。」
あれは新種、いえ、きっと違う世界の魔物だわ。」
「あんな魔物、知らないだけで、他の地域に生息しているだけではないのですか?」
リュグナーにとって、いや彼の住む世界にとって魔物等、歩けばすぐ近くにいる犬や猫と変わらない存在だ。
確かに人間にあそこまで従う魔物は稀な存在だが、疑問は感じなかった。
確かに人間にあそこまで従う魔物は稀な存在だが、疑問は感じなかった。
「いいえ、かつて《魔王軍》が人間に対して戦争を起こした際、様々な地方の魔物は戦力に使えるか調べ、徴収した記録があるわ。
実際、私自身も地方に出向き、多くの魔物を調べた。でも、あんな魔物はいなかった。
数年の間に新種や進化態が出たとしても、動物の系統が全く違う。
つまりあれは私達の知らない所から来たのよ。」
実際、私自身も地方に出向き、多くの魔物を調べた。でも、あんな魔物はいなかった。
数年の間に新種や進化態が出たとしても、動物の系統が全く違う。
つまりあれは私達の知らない所から来たのよ。」
「まだあるわ。この殺し合いの会場、此処は何処かしら?
何処かの無人島?でも、多くの人が拉致されているのに、現在、人類圏で力を持つ《大陸魔法協会》や《帝国》が認知出来てないのはおかしいわ。
仮に無人島でこの催しを開き、人が入れない様に結界を張っても、魔法の痕跡は残る。
優秀な魔法使いが多数所属する両組織がそれを見過ごす訳はない。
また結界なんて、彼等にかかれば短期間での解析・解除も容易い。
無論、主催が長い年月と綿密な計画を立て、尚且つ、先の両組織に身を置けば話は別だけどね。
でもその例外を除いて…、此処は彼等の力が及ばない、介入出来ない場所と考えるわ。」
何処かの無人島?でも、多くの人が拉致されているのに、現在、人類圏で力を持つ《大陸魔法協会》や《帝国》が認知出来てないのはおかしいわ。
仮に無人島でこの催しを開き、人が入れない様に結界を張っても、魔法の痕跡は残る。
優秀な魔法使いが多数所属する両組織がそれを見過ごす訳はない。
また結界なんて、彼等にかかれば短期間での解析・解除も容易い。
無論、主催が長い年月と綿密な計画を立て、尚且つ、先の両組織に身を置けば話は別だけどね。
でもその例外を除いて…、此処は彼等の力が及ばない、介入出来ない場所と考えるわ。」
「それについてですが…、グラオザーム様が絡んでいる事は考えられませんか?」
先程、考えた仮説を話すリュグナー。
それを静かに聞くソリテール。
それを静かに聞くソリテール。
「確かにグラオザームの作る世界なら、どんな強者でも容易く引き込めるわ。可能性は否定しないわ。
でもね、グラオザームの魔法では『存在しない物』は作れないのよ。
何かしら、元になる物が存在するの。
例えば、私達の足元にあるこの円形の建物。
普通の建物とは建て方も違う、
こんな物は私達の世界には存在しなかった。
これは魔法で作った『想像の産物』ではなく、他の世界に『存在した物』を此方に持って来たのよ。
だから、グラオザームがあの魔法使い―古砂夢に力を貸して、この世界を作ったとしても、私達の物とは違う世界―『異世界』は存在するのよ。
故に私は『参加者は別の世界』から集められ、『この会場は作られた空間』と推測するわ。
……もっと言えば、主催の古砂夢…。彼女も違う世界から来た可能性があるわ。あの電流の魔法は私達の使う魔法と系統が違うもの。」
でもね、グラオザームの魔法では『存在しない物』は作れないのよ。
何かしら、元になる物が存在するの。
例えば、私達の足元にあるこの円形の建物。
普通の建物とは建て方も違う、
こんな物は私達の世界には存在しなかった。
これは魔法で作った『想像の産物』ではなく、他の世界に『存在した物』を此方に持って来たのよ。
だから、グラオザームがあの魔法使い―古砂夢に力を貸して、この世界を作ったとしても、私達の物とは違う世界―『異世界』は存在するのよ。
故に私は『参加者は別の世界』から集められ、『この会場は作られた空間』と推測するわ。
……もっと言えば、主催の古砂夢…。彼女も違う世界から来た可能性があるわ。あの電流の魔法は私達の使う魔法と系統が違うもの。」
リュグナーは困惑する。
これが、別の者―配下のリーリエや主のアウラが言ったなら、戯言と切って捨てただろう。
しかし、発言者はソリテールだ。
大魔族の中でも、高い知性を持ち、鋭い洞察力を持つ彼女の言葉には、説得力がある。
これが、別の者―配下のリーリエや主のアウラが言ったなら、戯言と切って捨てただろう。
しかし、発言者はソリテールだ。
大魔族の中でも、高い知性を持ち、鋭い洞察力を持つ彼女の言葉には、説得力がある。
「すみませんが…、私には理解が追い付きません。
私には魔物もあの女の使う魔法も知らないだけで、別の世界から来たとは思えません。」
私には魔物もあの女の使う魔法も知らないだけで、別の世界から来たとは思えません。」
「そうね。でも彼等を調べればそれを証明出来るわ。」
「広間で最後に犠牲になった老人―、死ぬと分かってのあの行動。あれは他の参加者を助ける為の行動よ。
つまり、老人の仲間―『魔物使い』は他にもいるのよ。
私はあの魔物使い達の事を詳しく知りたいの。……リュグナー、一時的でいいわ。私の配下になって、それを手伝ってほしいの。」
つまり、老人の仲間―『魔物使い』は他にもいるのよ。
私はあの魔物使い達の事を詳しく知りたいの。……リュグナー、一時的でいいわ。私の配下になって、それを手伝ってほしいの。」
目の前の少女は自身の細い手を、リュグナーに向ける。
「…それはこの殺し合いに関係がないのでは?」
長髪の魔族は疑問に思い、小柄な大魔族に訊ねる。
長髪の魔族は疑問に思い、小柄な大魔族に訊ねる。
「頭が固いわね、リュグナー。彼らがどのように魔物を操っているか分かれば、此方の戦力を増やす事にも繋がるわ。
アウラと貴方達《首切り役人》はグラナド領への侵攻を目論んでいるのでしょう?
仮に今の戦力で手に入れたとしても、近隣の領主や、【大陸魔法協会】が魔族に支配されたままの領地を放置している筈はないわ。
領地を維持するにしても、広げるにしても戦力は必要よ。」
アウラと貴方達《首切り役人》はグラナド領への侵攻を目論んでいるのでしょう?
仮に今の戦力で手に入れたとしても、近隣の領主や、【大陸魔法協会】が魔族に支配されたままの領地を放置している筈はないわ。
領地を維持するにしても、広げるにしても戦力は必要よ。」
目の前の少女の言葉には一理ある。
ただ殺して回るのも、面白くもない。
戦力の増強が出来るのなら、あの見たことのない魔物の事を調べてもいいかも知れない。
ただ殺して回るのも、面白くもない。
戦力の増強が出来るのなら、あの見たことのない魔物の事を調べてもいいかも知れない。
「それは確かに…、役に立ちますね。」
少女の提案に貴族風の魔族は、同意する。
その言葉にソリテールは、笑顔を見せる。
その言葉にソリテールは、笑顔を見せる。
「ありがとう、それと、もう一つ頼めるかしら。今度は、特定の人物の…命を奪う事よ。」
小鳥がさえずるような愛らしい声音で、殺人の命令を下す大魔族。
「それは…、フリーレンの事……ですか?」
やはり、フリーレンを打倒しろとの命令か。相手の戦力を測る為に捨て駒として、動けという事か。
リュグナーの思考を読んだように、ソリテールは小さく笑って答える。
「まさか、フリーレンを殺す事はしなくていいわ。彼女は貴方では殺せない。
私は部下を死地に追いやる愚かな指揮官ではないわ。」
私は部下を死地に追いやる愚かな指揮官ではないわ。」
では、何をと言う前に目の前の少女が答える。
「貴方は気付いたのかしら?此処にフリーレンの弟子が来ている事に。
名前は―、“フェルン”だったかしら。
――彼女を殺して、フリーレンの目の前に晒しなさい。
大切な愛弟子だもの、きっと素敵な表情を見せてくれるわ。
泣き叫んで、絶望してくれるかしら?それとも怒りで目の前が見えなくなるのかしら?どちらにしても楽しみね。」
名前は―、“フェルン”だったかしら。
――彼女を殺して、フリーレンの目の前に晒しなさい。
大切な愛弟子だもの、きっと素敵な表情を見せてくれるわ。
泣き叫んで、絶望してくれるかしら?それとも怒りで目の前が見えなくなるのかしら?どちらにしても楽しみね。」
目の前の少女――ソリテールはまるで遠足に行く子供の様に無邪気な表情を見せる。
発言と表情の落差に、戦慄を覚えるリュグナー。
辛うじて声を絞り出す。
辛うじて声を絞り出す。
「…その様な手間をなさらずとも、フリーレンを殺せば、あの小娘は放って置いても良いのでは?」
「あら、――それは彼女と戦いたくないと言っているのかしら?」
―その場の空気が変わる。
目の前の少女は偽りの姿を脱ぎ捨て、本来の大魔族としての威圧感を配下に与える。
目の前の少女は偽りの姿を脱ぎ捨て、本来の大魔族としての威圧感を配下に与える。
「私は知っているのよ、リュグナー。
フリーレンならまだしも、弟子とはいえ、20年も生きていない小娘に負けるなんて。貴方の長い年月で磨いた魔法はその程度だったのかしら?」
フリーレンならまだしも、弟子とはいえ、20年も生きていない小娘に負けるなんて。貴方の長い年月で磨いた魔法はその程度だったのかしら?」
何故それを知っている?何処から見ていたのか?
リュグナーの頭の中で疑問が湧き上がるが、弁明出来る相手ではない。
弁解の言葉の代わりに頭に『死』という文字が浮かび上がる。
リュグナーの頭の中で疑問が湧き上がるが、弁明出来る相手ではない。
弁解の言葉の代わりに頭に『死』という文字が浮かび上がる。
しかし、少女の姿をした大魔族は、引き続き温和な口調で話し出す。
「でもね。私は魔族だけど、悪魔ではないわ。手の内を晒した相手と戦って勝つのも確かに大変ね。
……なら、人間と同じ方法を使いなさい。
不意をつく、毒を盛る、手段を選ばないのなら、殺すのは簡単でしょう?」
……なら、人間と同じ方法を使いなさい。
不意をつく、毒を盛る、手段を選ばないのなら、殺すのは簡単でしょう?」
「ソリテール様、それは……。」
魔族として、魔法以外の勝ち方には承服出来かねます。
――口にしようとしたその言葉は発する事はなかった。
何故なら、リュグナーのすぐ側に大剣が突き刺さったからだ。
――口にしようとしたその言葉は発する事はなかった。
何故なら、リュグナーのすぐ側に大剣が突き刺さったからだ。
「あら、貴方の役に立たないプライドは貴方の命より重みがあるのかしら?
それなら、今此処で私に殺されて、無傷の首輪の回収に役立ってもらおうかしら。」
それなら、今此処で私に殺されて、無傷の首輪の回収に役立ってもらおうかしら。」
闇の中、少女の瞳が妖しく光る。
次の瞬間、リュグナーは地面に平伏し、声を上げていた。
「……申し訳ありません、ソリテール様!
ご機嫌を損ねる発言、謝罪致します。
そしてこのリュグナー、ソリテール様の為に汚名を被ってでも、使命を全うする心構えであります!
必ずや、フリーレンの弟子の首を貴女に献上します!!」
ご機嫌を損ねる発言、謝罪致します。
そしてこのリュグナー、ソリテール様の為に汚名を被ってでも、使命を全うする心構えであります!
必ずや、フリーレンの弟子の首を貴女に献上します!!」
貴族風の青年が、平民の姿の娘に頭を下げる。
第三者から見れば、場違いな光景が行われる。
第三者から見れば、場違いな光景が行われる。
「首は要らないけど頼もしいわ、リュグナー。流石は《首切り役人》の筆頭。アウラも聞き分けの良い部下を持って幸せね。」
満面の笑顔で、表面上はリュグナーを褒めるソリテール。
―その目の奥は、期待すらしていない暗い深淵だった。
―その目の奥は、期待すらしていない暗い深淵だった。
リュグナーの側に刺さった大剣が消え去る。
大剣を創造する魔法――魔法名は分からないが、ソリテールの使う魔法の一つだ。
大剣を創造する魔法――魔法名は分からないが、ソリテールの使う魔法の一つだ。
「さて、行きましょうか。
ここじゃ、寒いから建物の中に入りましょう。
お互いの支給品の事も知りたいし、この中も調べないとね。」
ここじゃ、寒いから建物の中に入りましょう。
お互いの支給品の事も知りたいし、この中も調べないとね。」
「はっ!!」
額や背中に多量の汗をかきながら、少女に従うリュグナー。
小柄な《大魔族》の背中を見ながら、《魔族》は思う。
小柄な《大魔族》の背中を見ながら、《魔族》は思う。
―これで殺し合いは終わった。
今からは殺し合いではなく、《大魔族》による虐殺が始まるのだと。
今からは殺し合いではなく、《大魔族》による虐殺が始まるのだと。
それは主催に対してもだ。
例え仲間がいても、《七崩賢》がそちらにいたとしても、参加者として選んだ相手が悪かった。
例え仲間がいても、《七崩賢》がそちらにいたとしても、参加者として選んだ相手が悪かった。
(古砂夢…、愚かな主催よ。貴様がどの様な魔法を持っていたとしても、大魔族に―マハト様やソリテール様には敵うまい。
…貴様は他の有象無象の参加者と同様に、死を迎えるのだ。)
…貴様は他の有象無象の参加者と同様に、死を迎えるのだ。)
そして、フリーレン。
魔族の宿敵の彼女の旅も此処で終わる。
流石に三体の大魔族が相手では生き残れまい。
魔族の宿敵の彼女の旅も此処で終わる。
流石に三体の大魔族が相手では生き残れまい。
しかし…、それ以上にフリーレンの弟子を殺さなければ、リュグナーにも未来はない。
(…私は何としても生き残る…。
このクソッタレな状況でも生き延びて見せるぞ!)
このクソッタレな状況でも生き延びて見せるぞ!)
新たな主人を得た魔族は、恐怖の中で己の生存の為の策を必死で練っていた。
【F-5/アリスドーム頭頂部/1日目 深夜】
【リュグナー@葬送のフリーレン】
[状態]:健康、ソリテールへの恐れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本行動方針:大魔族(アウラ、ソリテール)に従い、殺し合いから生き延びる。
1.フリーレンの弟子(フェルン)を殺す。手段は選んでいる場合ではない。
2.アウラ様と合流したい。しかし、二人の大魔族(マハト、ソリテール)と比べたら、戦力的には不安…。
3.解析の為、参加者から無傷の首輪を回収する。(遺体から剥ぎ取るか、一人殺して奪うか。)
4.ソリテール様に従い『魔物使い』の情報を探す。魔物を使い、此方の戦力増強を図る。
5.名簿の『魔王』様は別人、グラオザーム様が主催陣にいるのか?
[状態]:健康、ソリテールへの恐れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本行動方針:大魔族(アウラ、ソリテール)に従い、殺し合いから生き延びる。
1.フリーレンの弟子(フェルン)を殺す。手段は選んでいる場合ではない。
2.アウラ様と合流したい。しかし、二人の大魔族(マハト、ソリテール)と比べたら、戦力的には不安…。
3.解析の為、参加者から無傷の首輪を回収する。(遺体から剥ぎ取るか、一人殺して奪うか。)
4.ソリテール様に従い『魔物使い』の情報を探す。魔物を使い、此方の戦力増強を図る。
5.名簿の『魔王』様は別人、グラオザーム様が主催陣にいるのか?
※参戦時期は身体に大穴を開けられ、フェルンにトドメを刺される前です。(魔力の欺きの話をした後。)
※会場は全て幻覚で、主催陣に【七崩賢】の一人、《奇跡》のグラオザームがいると予想しています。
※会場は全て幻覚で、主催陣に【七崩賢】の一人、《奇跡》のグラオザームがいると予想しています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
殺し合いに巻き込まれ、多くの参加者が困惑と恐怖を感じる中、《無名》の大魔族―ソリテールにとっては、木漏れ日の公園を散歩する様な晴れやかな気分だった。
此処には、自分の知らない物が多くある。
知らない知識を持った人々が多くいる。
知らない知識を持った人々が多くいる。
彼らと“お話し”をして、彼らの知識と技を手に入れたい。
数え切れない人間を殺して来たソリテールにとって、殺す事は息をする様な日常的な動作。
そんな当たり前の事より、『異世界』という新しい“研究材料”が出来た事を楽しみにしていた。
(少しは古砂夢に感謝してもいいのかしら。
私に新しい知識を増やせる機会を作ってくれた事を。
……それにしてもリュグナーにも困ったものね、戦い方次第では命を落とす事もなかったものを。)
私に新しい知識を増やせる機会を作ってくれた事を。
……それにしてもリュグナーにも困ったものね、戦い方次第では命を落とす事もなかったものを。)
ソリテールは追憶する。
彼女はアウラと彼女の配下《首切り役人》が敗れた後、残留魔力を調べ、負けた場面を予想していた。
彼女はアウラと彼女の配下《首切り役人》が敗れた後、残留魔力を調べ、負けた場面を予想していた。
ソリテールにとってフリーレンとアウラの戦いを調べる事が主だったが、ついでに《首切り役人》達の残留魔力も調べていた。
故に、リュグナー達の顛末も想像する事が出来た。
故に、リュグナー達の顛末も想像する事が出来た。
(あの当時のリュグナーなら、相手が魔力量を欺いたとしても、経験の差で殺す事も出来た筈。きっと格下と侮ったのね。良くない癖だわ。)
力のある魔族は人間を見下す傾向にある。
その奢りで、何人の魔族が人間に討ち取られた事か。
その奢りで、何人の魔族が人間に討ち取られた事か。
(油断と奢りは捕食者故の致命的欠点。これだけ狩られても尚、私達は狩られる事を学べていないのね。)
それを正す為に、フリーレンの弟子―フェルンを手段を問わずに殺させる。
彼女は、大魔族である自分にも手傷を負わせたのだ。
このまま成長すれば、いずれは大魔族も討伐出来る魔法使いへと成長するだろう。
悪い芽は早めに摘んだ方が良い。
このまま成長すれば、いずれは大魔族も討伐出来る魔法使いへと成長するだろう。
悪い芽は早めに摘んだ方が良い。
最悪、リュグナーが返り討ちに合ってもフェルンにある程度手傷さえ負えれば、それでも良い。後は他の参加者がとどめを刺してくれる。
出来れば彼女がフリーレンと合流する前に、片付けておきたい。
出来れば彼女がフリーレンと合流する前に、片付けておきたい。
リュグナーには厳しく対応したが、これも彼の為、魔族の為だ。
(でも、始めに会えたのが彼で良かった。どうやら、自分が死んだ事には気付いてないようね。)
ソリテールが呼ばれたのはアウラが討たれた後、《黄金郷》でフェルン・シュタルクと戦い、フリーレンとの戦闘中の時だった。
戦いの最中、気が付くとあの広間に居た。
何故か戦いで負った傷も回復していた。
そこで古砂夢の殺し合いについての説明があり、そして会場にて死んだ筈のリュグナーと会い、会話の内容で生き返ったと察し―、いや、死ぬ前から来たのだと考えたのだ。
何故か戦いで負った傷も回復していた。
そこで古砂夢の殺し合いについての説明があり、そして会場にて死んだ筈のリュグナーと会い、会話の内容で生き返ったと察し―、いや、死ぬ前から来たのだと考えたのだ。
リュグナーには話さなかったが、古砂夢の話す『死者の蘇生』とは時間を操る事――、
つまり生きている時間軸から連れて来る事ではないかと予想していた。
古砂夢本人も最初の自己紹介の時に、「『時間』のib(インスタントバレット)」と名乗っていた。
つまり生きている時間軸から連れて来る事ではないかと予想していた。
古砂夢本人も最初の自己紹介の時に、「『時間』のib(インスタントバレット)」と名乗っていた。
ソリテール達の世界には、神話の時代に天地を創造し、聖典をもたらした《女神》が存在していた。
何千年前に、地上に降臨した彼女は地上に様々な自身の魔法の痕跡を残した。
その魔法は様々な者が解析したが、今も一部しか解明されていない。
何千年前に、地上に降臨した彼女は地上に様々な自身の魔法の痕跡を残した。
その魔法は様々な者が解析したが、今も一部しか解明されていない。
その中の一つに《時巡りの鳥の章》がある。
『時間』は決して戻らないという不可逆性の理論を覆した魔法。
これまでの、どの魔法使いも実用には至っていない代物。
これまでの、どの魔法使いも実用には至っていない代物。
かつてソリテール自身も《女神》の魔法を調べていた事があり、その時の経験が、気付かせてくれた。
(いずれにしても、まずは首輪に対する情報を集める事ね。……そういえばフリーレン以外にも、殺すべき相手がいるわね。)
――魔王。
名簿に載っていたかつての主君の肩書き。
リュグナー同様、ソリテールも魔力探知で自分の知る魔王ではない事を悟っていた。
リュグナー同様、ソリテールも魔力探知で自分の知る魔王ではない事を悟っていた。
《魔王軍》を率いる魔王の死後、《七崩賢》や《大魔族》が後を継がなかったのは、各々が個人主義を掲げていただけではない。
長年纏まらなかった魔族を千年以上に渡り、纏め上げた手腕。
それは誰にも真似出来ないものであった。
長年纏まらなかった魔族を千年以上に渡り、纏め上げた手腕。
それは誰にも真似出来ないものであった。
(そう、私達の主は《魔王》様以外に考えられないわ。
……可哀想な魔王様、フリーレン一行には命を。誰とも知らぬ者には称号さえも奪われるなんて。)
……可哀想な魔王様、フリーレン一行には命を。誰とも知らぬ者には称号さえも奪われるなんて。)
無論、参加者が異世界から呼ばれたのなら、意図せず名乗っている事は理解出来る。
しかし、亡き主君の名を見ず知らず者が名乗る事はソリテールにとって許される事ではなかった。
しかし、亡き主君の名を見ず知らず者が名乗る事はソリテールにとって許される事ではなかった。
(本来なら手足をもいだ後、魔王様への謝罪を喉が潰れるまで言わせて、目の前で知己の者を殺す位の罰を与えて上げたいのだけれど、フリーレンの様な強者がいる以上、そんな無駄な事は許されないわね。)
無礼者への処罰について考えた後、ソリテールの思考は移る。
『時間跳躍』の魔法を手に入れる方法へと。
『時間跳躍』の魔法を手に入れる方法へと。
(……もし、本当に時間への干渉でも『死者の蘇生』が叶うのなら…。)
――古砂夢を殺して、その『魔法』を手に入れる。そう、偽りの魔王様を連れて来た彼女を処罰し、本来の主君を取り戻す。
死後も亡き王に忠誠を誓う少女は、好奇心とは違うその思いを胸に抱いていた。
【ソリテール@葬送のフリーレン】
[状態]:健康、異世界への好奇心
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本行動方針:他の参加者と“お話し”や“協力”して、異世界の知識と技術を得て、主催を打倒する。
1.会場内を散策し、会場や異世界の情報を得る。
2.《葬送》のフリーレンと弟子のフェルン、『魔王』様を騙る者は殺す。
3.広間の老人の仲間―《魔物使い》の情報を得たい。魔物を懐かせる技術を手に入れたい。
4.解析の為、参加者から無傷の首輪を回収する。(遺体から頂戴するか、誰でもいいから殺して奪うか。)
5.マハトを警戒。([自身の安全の為に、]無闇に殺し合いに乗っていないと信じたい。)
6.アウラ?合流してもいいわね。捨て駒に使えるわ。
[状態]:健康、異世界への好奇心
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本行動方針:他の参加者と“お話し”や“協力”して、異世界の知識と技術を得て、主催を打倒する。
1.会場内を散策し、会場や異世界の情報を得る。
2.《葬送》のフリーレンと弟子のフェルン、『魔王』様を騙る者は殺す。
3.広間の老人の仲間―《魔物使い》の情報を得たい。魔物を懐かせる技術を手に入れたい。
4.解析の為、参加者から無傷の首輪を回収する。(遺体から頂戴するか、誰でもいいから殺して奪うか。)
5.マハトを警戒。([自身の安全の為に、]無闇に殺し合いに乗っていないと信じたい。)
6.アウラ?合流してもいいわね。捨て駒に使えるわ。
※参戦時期は《黄金郷》にてフリーレンと交戦中の時。
※広間での老人(クラベル)が魔物(ポケモン)を操る様子や、アリスドーム等の自らの世界にはない建物を見て、『参加者は異世界から集められた。』と推測しています。
※また会場は【大陸魔法協会】や【帝国】の目が届かない『作られた世界』とも推理しています。
(その為、若干、《七崩賢》“奇跡”のグラオザームの魔法が絡んでいる可能性も考えています。)
※古砂夢の話す『死者蘇生』は、時間を操り、死者を生前の時間軸から連れて来る事と考えています。
※広間での老人(クラベル)が魔物(ポケモン)を操る様子や、アリスドーム等の自らの世界にはない建物を見て、『参加者は異世界から集められた。』と推測しています。
※また会場は【大陸魔法協会】や【帝国】の目が届かない『作られた世界』とも推理しています。
(その為、若干、《七崩賢》“奇跡”のグラオザームの魔法が絡んでいる可能性も考えています。)
※古砂夢の話す『死者蘇生』は、時間を操り、死者を生前の時間軸から連れて来る事と考えています。
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| リュグナー | 027:流星(前編) | |
| ソリテール |