あ、やせいの タイガー がとびだした

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あ、やせいの タイガー がとびだした ◆7KTvmJPRwQ


「う~ん……?」

 ふにっ

「う~~ん………………?」

 むにっ
 むにっ

「う~~~~~~ん……………………?」

 むにょ~~~ん………………パチン!

「痛いって事は夢じゃないわけで……う~ん?」

 月明かりのみが照らす、薄暗い神社の境内、先ほどまで頬を引っ張っていた手を顎にあて、首を捻る女性が一人。
 いきなり自分の頬をつまんだ上にその痕がくっきりと残ったままなのは妙齢の女性としてはいかがなものか。
 もっとも、黄と黒の縦縞…俗に言う虎柄の長袖に、緑のワンピースという奇抜な格好をした女性に、妙齢とかそういう表現があうのかどうか…いやすいません。

 兎にも角にも、女性は悩んでいた。
 茶のショートに、おそろいの茶の瞳。先ほどの服装も相まって、活発さと快活さが感じ取れそうな外見。
 今は多少の憂いをも秘めた表情は、その女性の職業…女教師と相まってお色気ムンムンさをかもし出している。
 そこまでにしておけよ藤村。

 と、兎に角彼女の名は藤村大河。
 私立穂群原学園にて英語教師を務めるにじゅううわなにをするやめ…………生徒に大人気の先生である。
 同校の卒業生でもある彼女は、現役時代には剣道でならし全国まで行った女傑。
 現在でも剣道5段の腕前を誇り、相棒の虎竹刀を手にまさしく文武両道容姿端麗を地でいく――
 S(そこまでに)S(しておけよ)F(藤村)
 虎をこよなく愛し、また同じくらい憎む穂群原の名物教師、通称冬木の虎。

「う~ん、あの顔色の悪い人が何か色々言ってたけど……何が何やら。
 銀河団とか言われてもこちとら英語教師なので地学とかわかりませんですよーだ。
 しかし殺し合いっておじーちゃんじゃあるまいし今時分随分と時代遅れな。
 というか勝手に出て行った誰かが燃えた後砂糖か塩みたいにサラサラになってたけどということはもしかしてバターにされるということもあるっていうのー!?」

 (〓з〓)のような顔になったと思いきや、(; ̄Д ̄)になったり(a∀a)となったりと、とにかくころころと表情を変えながら意味の無いことを喋り、そうして最後は\(>△<#)/と思いっきり爆発する。
 正直どうでもいいことに爆発しているようだが虎の名を持つ彼女にとって、ちびくろサンボの恐怖は割りと死活問題だ。

「というか大体ねー、後半何言ってるのか正直さっぱりだったんだけどその辺りどうなの?
 というかここ私の目には零観君のおうちに見えるというか昔私が間違えて折っちゃった枝とかあるしまず間違いないよね。
 そうなるとこれはもしや……」

 むむむと少しだけ真剣そうな顔で唸る。
 あるいはこの状況を少しでも理解出来たというのか。

「夕飯食べに士郎の所へ行こうとして、変な妄想してる間に零観君のとこまできちゃったのかなー?
 そうなると今日の私のお夕飯は二回分? おお、バビロニアの神よ、感謝します!」

 どうやらまるで理解できていないようだ。
 おそらく彼女はこのまま人里に下りてきた野生の虎として猟友会にしとめられるまで方々で食料をたかるという行動に出続ける事になるのだろう。
 おお、タイガよ、汝の頭は幸いなるかな。

 ……だが、

「おい、お前」

 そう、何事も上手く(悪く?)はいかないものらしい。
 明かりのない境内、いまひとつよくわからない状況。

「ギャーーーーーース!?」

 まるで予想してないところから声をかけられ、女性としてどうかという悲鳴を上げてしまったのも仕方のない事だろう。
 もっとも、驚きながらも反撃というか手に持っていた袋を振り回し、そしてすっぽ抜けて飛んだのは仕方のない事ではないが。

 ――否、それはすっぽ抜けたのではなく、飛ばしたのだ。
 藤ねぇが竹刀を担いだら用心せい。
 軸足から腰を伝わり腕に至る捻転のエネルギーを帯びた竹刀を、宙に舞う事で360°いかなる方向にも正確に飛ばす事を可能とした秘儀。
 其は秘伝、『虎目流、隕石流れ』。

 古来より……おおよそさぼたあじゅを試みる生徒というものは後を絶つことは無い。
 いかに教師、藤村大河が冬木の虎と恐れられた女傑であれ、己の竹刀(かいな)の届く範囲でなければ折檻するも難し。
 若き日の……未だに若き身ではあるが、藤村大河は生徒と自らへの憤りをはらすべく古書物を読み漁る日々を漫然と過ごすのみであった。
 お八つ片手に読み続ける日々の中、ある古書(\105)に記された秘伝、秘しおくべき技術との出会いこそ、まさに天啓というべきものか。

 太刀を振り回す最中、精密な握力操作によって鍔から柄頭にまで手の位置を変えることによる、間合いのわずかな伸張。
 紙一重が勝敗を分ける太刀会いの最中において生み出された術理。
 竹刀が届かぬのなら、届かせてしまえばいい。

 そして始まる修行の日々。
 剣道五段の腕を持つ藤村大河といえど、本来他人に伝える事すら考慮されていない秘儀の取得には長き日々を費やした。
 あるときは弟分の家に乱入し食事を用意させ、またある時は部活の顧問を寝て過ごし、日々虎と呼ぶなと叫び続ける。
 太刀会いではない以上間合いなど伸ばしたところで何の意味もないことに気づかぬ日々の果て。
 剣(竹刀)は、大河を見捨ててはいなかった。

 元より才あるものがその青春の日々を費やして習得する秘儀。
 才はあれど暇な時間に弟分相手に道場で竹刀を振るうだけでは完成するはずもなく、幾度となく竹刀はすっぽ抜け、障子や掛け軸を紙のように破るのみ。
 そんな日々が続くわけもなく、一週間もせずに弟分に出禁にされる。
 だが、その腹いせとばかりに最後の一太刀を振るい、そして奇跡は起きた。
 大河の目に映ったのは、当然のごとくすっぽ抜けた竹刀が横を向いていた弟分に直撃し、昏倒させる光景。

 竹刀が飛ぶなら、飛ばせばいい。
 切り付けねばならぬ太刀と異なり、打つ事を目的とした竹刀ならば握り続ける必要も無し。
 原理としてはチョーク投げのそれに近しく、己が回旋に瞬発力を加えた竹刀を全力で飛ばすのみ。
 一寸食い込ませるだけでも生徒(ヒト)は昏倒するのだ。
 目を覚ました弟分に夕食抜きを宣告された藤村大河の目からは、涙が止まることは無かったという。

 という逸話が無かったり無かったりしつつ、それでもこの技は確実に何人かの生徒の血を吸った大技。
 飛んだ袋は見事に謎の相手に命中。
 さすがはタイガ、幽霊だろうとなんだろうと問答無用で追い返す、凄いぞ。カッコイイゾー。

「…………」

 とは、いかなかった。
 明らかに、空気に混じる怒気。
 声をかけただけなのにいきなり顔面に投げつけられる袋。
 思わず両手を合わせて謎のエネルギー弾を生み出してしまったとしても文句は言われまい。

 ちゅどーん!

「ギャーーー!! ヤ、ヤツラか、謎の黒服共がまたやってきたのかー!?
 うおーどどどこからでもかかってこいやー!!」
「……おい」
「うおーーーーーーー、私は誰の挑戦でも受けるーー!!」
「…………」
「ギャーギャー!!」
「………………」
「わーわー……お?」

 ひとしきり騒いだせいか、落ち着いてくる冬木の虎。
 クールダウンしてみれば、騒いでいるのは自分一人。
 先ほど声をかけたらしい相手は、おそらくは呆れたような表情で、大河を眺めている。
 呆れたような表情という不確かな表現なのは、実際そうだからとしか言いようがない。

 そう。おそらくは呆れているのだろうが、何しろその相手は人間では無かった。
 白と紫の、直立した尾を持つ爬虫類という感じの体格。
 それでいて、その表情はどちらかといえは爬虫類よりも、人のそれに近い雰囲気すら受ける。

「あ、え、えーとその……Do you speak English?」
「よくわからんが、何だ」
「あ、あれ日本語? あれ、でもどう見ても外国の……どこの人?」

 英語教師である以上、当然英語は話せる。
 世界20億人と会話できる以上割と安心、と思いきやどこの里とも知れぬ相手の発した言葉は日本語。
 そして、言葉が通じるならUMAとかその類ではなく、ちょっと変わった外国の人と理解したのも、仕方のないこと……では普通はないがまあしかたない。

「……私はミュウツー。私の姿を知っているはずがないだろうが、私もポケモンだ」
「ほうほう、ポケモン人のミュウツーさんとな。日本語お上手だね~」
「……ポケモンを知らないのか?」

 ミュウツーは、元々自然に存在する生命体ではない。
 ポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれ人と共存する存在。その中の特異存在。
 遺伝子の組み換えによって作り出された、遺伝子ポケモン。人の欲望の産物である。
 その高い知能は人の言語すら容易に操るため、ポケモンではない存在と認識されるのも無理は無い。
 そう、ミュウツーは考えていたのだが、相手の反応は予想とはいささか異なっていた。

「ポケモン? アフリカとかそっちのほうの国?」
「……とぼけている、という訳ではなさそうだな」
「うーん、ごめんね。私英語教師だから地理は苦手なのよ」
「いや、いい」

 心理戦を仕掛けてくるような相手ではない。
 そもそも、ポケモンを知らないと言い張ることに利点など何も無い。
 どういう事情なのか、あの時のアカギという男の言葉から推測できなくもないが、確証には遠い。
 ならば今は『そういうもの』と考えておけばいい。

「お前はこの状況をどう考える?」
「ほえ?」
「この現状、殺し合いというものを強制されていることについて、だ」
「あー……」

 ミュウツーの言葉に、大河は肩を落とす。

「ああ、さっきのアレは夢とか幻覚とかM.I.Bとかじゃ無いのね……」
「そうだ、紛れもない現実。命の掛かった戦いだ」
「ううう、世の中は無情なり、南無」

 □

「それで、どうするつもりなのだ、お前は?」
「あーと、そういえば私は名乗ってなかったわねー。
 私は藤村大河、穂群原学園で教師をやっているわ……ってありゃー士郎と桜ちゃんに、セイバーさんてあの子よね。 それと遠坂さんも」

 ミュウツーの薦めにより、とりあえず名簿というものを目にしてみる大河。
 いくつか見知った名前を見つけるが、嬉しさは感じられない。

「んー……正直まだどういう状況なのか微妙に理解できてないけど。
 真面目に答えさせてもらうなら……わっかんない、かなぁー」
「……ふざけているのか?」
「あー、うんごめん。 そういう風に聞こえちゃうよね? でも本当に真面目な話、わからないとしか言いようがない、かな。
 とりあえずさ、私は姉として士郎の事は守ってあげなくちゃだし、家族みたいな桜ちゃんや教え子の遠坂さんの事も心配だね。
 謎の外国人のセイバーさんは……私よりも強いけど心配には変わりない、かな。
 ……で、私に出来ることってそれくらいなのよね」

 表情に真剣さなど欠片もないが、それでも大河の言葉には先ほどまでにはなかった強さが感じられた。

「ちょっと関係ない話になるけどさ、士郎……あ、私の弟みたいな子なんだけどさ、その子、何か凄い隠し事してるのよね。
 私にはバレてないつもりなんだろうけど、いきなりセイバーちゃんなんて凄腕の金髪美少女連れてきて一緒に住む、だなんて普通じゃないもの。
 士郎のお父さん関連って誤魔化してたけど……そもそも切継さんだって普通じゃなかったしね」

 あははー、とどこかに寂しさの漂う笑みを浮かべる。
 笑って思い出すことが、故人への作法という風情で。

「で、ちょうどそれと同じ頃からかな……私達の住んでる街で怪事件が続発するようになったのは。
 多分、士郎とセイバーさん、それと桜ちゃんに遠坂さんも……かな、何か関わっていると思う」

 姉の勘というべきか、女の勘というべきか。
 いずれにせよ、通い妻してる桜の気持ちにも気づけない朴念仁の士郎如きが隠し事など10年早い。
 だがそれでも、それについては問わない。

「そして、士郎は私をそれに巻き込みたく無いと思ってる。弟分のくせに生意気なって思うんだけど……士郎が言わないなら、私からは言えない。
 士郎は、多分ずっと昔、切継さんに引き取られたときから、こうするだろうと思ってたから。
 セイバーさんにぐうの音も出ないくらいコテンパンにやられたのもあるけど、私には多分、それくらいしか出来ない。
 士郎が安心していられるように、またいつもの日常に戻れるように。いつも通りの私でいることが、私にできる事、なんだと思う」
「…………」
「うん、だからっていうんじゃないけど、私は殺し合いだろうと何だろうと、出来ることしか出来ない。
 士郎達が何も言わないなら、私はただたまたま居合わせた冬木の虎として、剣を振るう。
 怯えて震えてる桜ちゃんがいたら先生として助けてあげる、それくらいかな」

 そこにあるのは、おそらくはミュウツーが初めて目にする存在。
 野心や希望という強く響く感情ではなく、包み込むかのような、慈愛。
 純粋に個人のことを案じる、良き大人という相手。

「なぜ、そんな細かい事まで私に言った?」 
「ん? いやまあ聞かれたからだけど……ミュウツーさんは多分いい人だし」
「いい人……か」
「んー、というかもしかしたら本当に人でないのかもしれないという懸念がひしひしと沸き上がってきてはいるのですが、それでもいい人よねきっと」

 生み出されたポケモンとかそういった事情など知りもしない無責任な、けれど知らないからこそ言える、純粋な評価。

 ミュウツーは、悩んでいた。
 かつて、彼は人間を憎んでいた。
 自らの欲望のために自分を含むポケモンを利用する、悪しき存在として。
 だが、サトシという少年との出会いにより、彼は憎しみを捨て去る事が出来た。
 そうして、人への憎しみをすて、自らと同じ生み出されたポケモン達と暮らす日々。
 ふたたび、ミュウツーは悪しき人間達にこのような場に駆り立てられた。

 果たして、人間とは善なのか、悪なのか。
 そして、その人間に作られた自分は、どうなのか。

 □

 少なくとも、大河という女性はミュウツーを善と称した。
 サトシも、間違いなく善と言うだろう。
 だが、彼を生み出した男…サカキは悪と呼ぶのではないか。

「他の人を巡る、ねぇ」
「ああ、お前の言葉は参考にはなった、だがそれでもまだ答えには遠い」
「むぅ、なにやら突くと蛇が出そうな難しそうな話の予感」

 二人とも、あるのは異なる目的。
 ミュウツーは、まだ己を決めかねている。
 だからこそ、大河と共にではなく一人で他の人間を巡りたかった。
 その先に、あるいは非情な決断があるかもしれず。

「サトシ、それとタケシという少年に会うといい。
 逆にサカキ、という男には気をつける事だ。 出来るなら会わないほうがいいだろう」
「ふむふむ、あ、私の知り合いは」
「先ほどの話の中で聞いた。 出会う事があれば、話には出そう」

 ……ただ、穏便にとはいかないかもしれないが。
 大河の言葉が本当ならば、その者達は何かを隠している。
 あるいはそれが、この現状において何か重要な一手となることもある。
 それともう一つ、大河に心配をかけている事に、わずかな憤りもある。
 もっとも、それを口に出すことは出来ないのだが。

「さらばだ、タイガー」
「おう、じゃあねー! ……ってタイガーっていうなー!!」


【B-2/柳洞寺/一日目 深夜】

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:士郎と桜を探す
2:セイバーと凛も探す
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました


【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:健康、頭部に軽い痣
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:相手を選びつつ接触していく
2:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※柳洞寺の境内にちょっとだけ爆発痕


011:猫を被った蛇二人 投下順に読む 013:最強の竜
時系列順に読む
初登場 藤村大河 060:タイガー不思議のダンジョン ~城の探検隊~
初登場 ミュウツー 039:風といっしょに


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