その南空ナオミをぶち殺す

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その南空ナオミをぶち殺す ◆8nn53GQqtY



 南空ナオミ
 自殺
 自分の婚約者を死に追いやったと
 一番疑わしき犯人を
 欧名美術館に呼びだすために
 その犯人の恋人を人質にとって
 2006年 4月15日 14時15分
 電話をかけさせる
 その後捜査本部に連絡をし
 第三者の確認を取らせ
 捜査本部監視のもと
 その犯行の証拠を自白させようとするが
 人質に逃げられそうになり
 14時55分に阻止しようとするが
 さらに精神錯乱となり
 その場で銃を使い自殺


 +   +   +


 『欧名美術館』。
 それが、その建造物の名前だった。

 美術館の二階に設えられた広いホール。
 フローリングの床と、あたたかみのあるアイボリーの壁紙。

 誰にとっても優しいその場所には、死神が一人存在した。


 それは、とある画家の代表作品。

 画家の名前はエクスーゾ・ケナック。
 絵の題名は『仮面と死神』。

 そこに描かれたのは、抽象の光景。
 人間の断末魔を模したような形相の仮面が、無数にあつまって、髑髏の死神を磔刑に処していた。
 磔にされた死神の胸を貫くのは、死刑囚の本来の得物であった、死神の鎌。
 寄り集まった仮面が死神の武器を奪い取って死神にトドメを刺すその絵姿は、まるで、死神に命を借り取られてきた犠牲者たちが、その無念をはらし死神に天誅をくだしているかのようで。


 何かを暗示するようなその絵を、鑑賞するのはただ一人。
 黒い革製のライダースーツに身を包んだ一人の女が、水色の封筒を抱きしめて嗚咽していた。
 へたりこむようにして座り、絵画を見上げ、はらはらと泣いていた。


 他ならぬ――この私、南空ナオミだった。


 涙は、とうに枯れ果てたはずだった。

 このように異常な状況下で、人目につきやすい場所で泣き崩れることが、どれほど危険なことかも、理解していた。

 しかし、ディパックから出て来たその封筒は、癒えない記憶を呼び覚まさせるに十分なものだった。

 『カトリック南青山教会』と印字がうたれた、『結婚』の為の書類の束。
 そして、幸せな結婚式を約束する、結婚式場の紹介パンフレット。

 それは、愛しいただ一人の人との、約束の証。
 もう少しで手に入っていた、当たり前の幸福。
 あの日、『彼』が死ななければ訪れていたはずの場所。


『創造の始めから、神は人を男と女につくられたのです。
 だから人は、その父と母を離れて、二人のものが一心同体になるのです。
 それでもはや、二人ではなく、一人なのです』


 聖書にしるされた言葉を、これほど深く理解し、噛みしめることができたその幸福。

 しかし、その喪失はあっけなく訪れた。

 二人が寄り添いあうことで一人と成るのなら、今の私は半身の欠けた、ただの半身でしかない。
私の愛した婚約者は、既に欠けていた。


 キラに、殺された。


 誰も訪れない優しいその場所で、許される限りの涙を流し、決して戻らない大切な人を偲んで、そして私は、ようやく『目的』に立ちかえった。


 すなわち、ここに来るまでにしていたことを思い出したのだ。

 私は『自分の恋人を殺されたと一番疑わしき犯人を、欧名美術館に呼び出す』ところだったのだ。

 キラである夜神月の罪を証明する為に、彼の恋人である少女を人質にとり、彼女に拳銃を突きつけて、恋人の命惜しさに犯行を自白させるつもりだったのだ。
 愛する者を失う恐怖を、キラにもまた、味あわせるために。
 Lを始めとした『第三者の確認』が行われている眼の前で、夜神月を断罪するために。

 私の心に、暗い復讐の情念が燃え上がる。
 その復讐を支えるのは、何としてもそれを果たすという鋼の意思。


 帰らなければならない。
 あの時、あの場所、ここではない本物の欧名美術館に帰って『2006年 4月15日 14時15分』に戻って、夜神月の『恋人を人質』にしなければならない。

 名簿を見た限り、この殺し合いに夜神月の恋人は参加していないようだ。

 つまり、私が突然に拉致された時点で、せっかく拉致した夜神の恋人は自由の身となり、今ごろは近所の交番にでも駈けこまれていることだろう。

 それはとてもマズイ。

 夜神の恋人を拉致できなければ、彼に私と同じ苦しみを味あわせることはできない。
 つまり、たとえこの殺し合いを打倒して生還したとしても、私の復讐計画は破綻してしまうのだ。
 それ以前に、この殺し合いの中で夜神月が死んでしまっても、私の復讐は達成されないのだ。

 それではいけない、と私の狂気が大きく警鐘を鳴らした。

 そう、それはもはや狂気と言ってよかった。

 本来の私は、もっと冷静に行動ができていたはずなのに。
 よく考えれば、私の計画には色々と穴もあるはずなのに、
 なにより、何の関係もない少女を巻き込むなど許されていいはずがないのに、頭の中は、『そうしなければ』という考えに取りつかれてしまっている。

 ただ、元の世界に戻るのでは駄目だ。

 どうしても、私は、あの時間に戻って、『2006年 4月15日 14時15分』に『電話をかけさせる』という計画を遂行して、夜神月を追い詰めなければいけない。

 あの死神を、白日のもとに晒してみせる。
 あの殺人鬼を、死刑台へと送り込んでやる。

 もはや私は、己の存在意義をそこにしか見出せなくなっていた。


 つまり、私の方針は『皆殺し』だ。


 ただの生還ではない。
 望んだ時間軸、望んだ場所に、任意で生還しなければならない。

 その為には、『勝者』となるしかない。
 あのように瞬間的に人間を拉致できる主催者なら、帰る際にちょっと時間を合わせるぐらいの、サービスは効かせてくれるだろう。

 それに、主催者は言っていたではないか。

 『勝者』は、『今は亡き者の蘇生』をも可能となるのだと。
 現代の日本にさえ、念じるだけで犯罪者を殺すような力が存在するのだ。
 であるなら、『呪術』が当然に存在するような世界ならば、蘇生の秘術があったとしてもおかしくなないのではないか。
 つまり、上手くいけば、皆殺しを達成した上で、夜神月を蘇生させて生還し、復讐を再開することができる。


 ただ、殺すだけでは私の復讐心は満たされないのだ。
 キラの『捜査穂部に連絡をし』、衆人環視の状況で屈服させなければ、復讐は達成されない。


 『キラ』である夜神月は、人を操り殺す技術を持っているようだし、そんな人間が殺し合いに放り込まれれば、バトルロワイアルを殺し扇動して引っかきまわすか、あるいは失敗して敵を多くつくることになるのは目に見えている。
 私は本名が知られていないから、ひとまず殺される心配はないわけだが、当の夜神月が事態の中心として動くことが予想されるなら、こちらもうかうかしていては殺される。
 仮に『死者の蘇生が可能』という前提を疑うにしても、どのみち積極的に殺し合いに乗っていた方が有利だろう。


 ――あれ?


 私は首をひねった。

 この殺し合いには、あの『L』も参加しているというのに、にも関わらず、私はLを含めた55人全員を殺そうとしていた。
 そのことが、本当に首をかしげたくなるほど、不思議だった。

 私という人間は、Lを慕っていたのではなかったか?
 私は、Lに絶対の信頼を置いていたのではなかったか?

 Lを信じていれば、間違いはないはずだった。
 Lの指令なら、どんな危険だって冒せるはずだった。

 胸に手をあてて考える。
 呵責はあった。
 にもかかわらず私は、何の迷いも疑問もなく、目的の為にLを『不要』と断じていた。

 Lが見ていてくれなくとも、ワタリや『捜査本部』の人間が目撃される状況をつくれば、夜神月を公の前で糾弾することはできる。
 私の復讐計画にLは必ずしも必要でない以上、殺しても支障はない――

 そんな風に、容易くLを切り捨てる思考を働かせていた。

 まるで、人を操る能力を持つ者に、『あの時間に、あの美術館で、夜神月を追い詰めなければならない』と命じられているかのように。


 ――いや、いくら何でもそれはないだろう。

 例えばキラに人を操る力があったとしても、私は夜神月に名前を知られていないのだから、キラの力を使われることはない。

 私は己の執念で、復讐を成し遂げたがっているのだ。


 ――己の浅ましさに、吐き気がした。


 これでは、まるで復讐鬼の所業ではないか。
 私は、己の復讐の為に、55人の人間を皆殺しにしようと考えているのだ。
 自らの保身の為にレイを殺そうとした夜神月と同じ所業を、私は行おうとしているのだ。


 だが、そのことに自嘲はすれど、躊躇いはない。
 そうせずにはいられないから、そうするのだ。

 私は、あの時間に、あの場所で、『疑わしき犯人』に『犯行を自白』させなければならない。
 そうしなければ、ならない。

 そこに、『なぜ』という疑問が生まれる余地はない。


 パンフレットを美術館の床に捨てた。
 復讐鬼に堕ちた私に、思い出を懐かしむ資格はない。


 支給品の確認を終えると、私はディパックから『モンスターボール』という個別支給品を取りだした。
 いつでも取り出せるよう、ライダースーツのポケットにしまいこむ。

 初見では全く用法の分からなかったそれだが、実際に開閉スイッチを押すや、その有用性はすぐに理解できた。

 解き放たれたボールからは、狐とも狼ともつかな二足歩行の獣がその姿を現した。
 地面に届きそうな赤い鬣と、俊敏そうな長い手足。
 私の支給武器の名前を“ゾロアーク”と言った。

 “ポケモン”という生物など完全に未知だったが、実際にその異様を目にした限り、かなりの当たり支給品を引き当てたといっていい。
 説明書に書かれた使用技も、打撃技や火炎放射など各種に富んでいた。
 幻影を見せるという個体能力まであるらしい。

 この“幻影”という能力の効果は曖昧だが、上手く応用すれば不意打ちや騙し打ちとして使うこともできるだろう。
 油断させやすそうな参加者を捕まえて、試してみるのもいいかもしれない。

 つまり、燃やされたメガネの男のような異能のない私でも、充分に参加者を殺せる力があるということだ。


 +   +   +


 かくして、幻想に憑かれた女は、幻想を見せる狐と共に夜を行く。

 彼女は知らない。

 その歪んだ復讐心が、己のものではなく、死神のノートによって植えつけられたものだということを。

 夜神月は己自身の力ではなく死のノートによって人を殺している為に、この会場では直接的な脅威となる力を持たないことを。

 このバトルロワイアルに存在する夜神月が、己の知る夜神月とは、似て非なる存在だということを。


 そしてたとえ、彼女の望みが全て叶い、あの時間に戻れたとして、その先に待つのは、己の死だということを。


【D-7/美術館/一日目 深夜】

【南空ナオミ@デスノート(実写)】
[状態]健康、デスノートに操られ中
[装備]モンスターボール(ゾロアーク)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]基本支給品一式、、不明支給品0~1
[思考]
基本:『夜神月を欧名美術館に呼び出す(デスノートの指令)』ために、何としても生還する
1:ひとまずは皆殺しを狙う
2:死者の蘇生が可能かどうかを確かめる。可能なら夜神月を蘇生させる

[備考]
※参戦時期は、デスノートに操られて夜神月に電話をかけた直後です
※思考が『2006年4月15日14時15分に欧名美術館に夜神月を呼びだす』ために誘導されています
※南青山教会の水色の封筒が、美術館の『仮面と死神』の絵の前に放置されています

【南青山教会の水色の封筒@デスノート(実写)】
南空ナオミとレイ・イワマツ(実写版ではレイ・ペンバーではない)が、結婚式場の予約をする為に取り寄せた書類。
劇場版にて、南空ナオミはレイ・イワマツの死にざまを目撃するという改変が行われているが、彼女はその現場にいた時にこの封筒を持っていた。
その為、夜神月に教会をつてに名前を調べられてしまい、デスノートに名前を書かれて操られることになった。

【Nのゾロアーク@ポケットモンスター(ゲーム)】
Nの最終決戦時の手持ち。ちなみにオス。
ゲームでのレベルは50。使用技は“きあいだま”“かえんほうしゃ”“つじぎり”“かたきうち”。
攻撃力と素早さ、特殊攻撃の種族値が高く、手持ちの控えポケモンに変身する“イリュージョン”という特性を持つ。


025:シュレーディンガーの猫? 投下順に読む 027:魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる
時系列順に読む 028:殺さねばならない相手がいます
初登場 南空ナオミ 062:幻影と罰


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