幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA
長田結花は不幸な少女である。
両親は物心が付く前に亡くなり、彼女を引き取った養父母によって虐待を受けていた。
義理の妹は学校ですら彼女を追い詰め、雪のふる日に化け物となった。
力を得た長田結花は、果たして幸せだっただろうか。
その問は否である。
人を守りたいと告げる木場に同調する一方で、かつての不幸の象徴である人物たちは始末してきた。
胸の内に抱える二面性に悩みながらも、バケモノの力を振るい、追い立てられ、余裕を失っていった。
オルフェノクとなっても彼女は昔と何ら変わらなかった。
彼女を愛してくれる者はいない。
そう思い込むことが、彼女を不幸へと追いやっていたと気づかずに。
両親は物心が付く前に亡くなり、彼女を引き取った養父母によって虐待を受けていた。
義理の妹は学校ですら彼女を追い詰め、雪のふる日に化け物となった。
力を得た長田結花は、果たして幸せだっただろうか。
その問は否である。
人を守りたいと告げる木場に同調する一方で、かつての不幸の象徴である人物たちは始末してきた。
胸の内に抱える二面性に悩みながらも、バケモノの力を振るい、追い立てられ、余裕を失っていった。
オルフェノクとなっても彼女は昔と何ら変わらなかった。
彼女を愛してくれる者はいない。
そう思い込むことが、彼女を不幸へと追いやっていたと気づかずに。
□
月が傾き、夜に紫が混ざりはじめたころ、ロロは同行者である少女に振り向いた。
肩に掛かるか掛からないか程度に髪をまとめた、冷たい美貌を持つ十歳程度の女の子である。
「そろそろ行こうか、美遊」
「はい。ですけど、体の方はもういいんですか?」
「大丈夫。服も乾いてきたし、風邪も引いていないから問題はないよ。君が向かいたかった友達の家に向かおうか」
美遊は首を縦に振る。ロロの目的はもう一人の自分を始末し、あわよくば入れ替わることに変わった。
しかし、もう一人の自分を探すなど、現状では不可能である。
ならば彼女の信頼を深め、始末する準備を整えるのが先決だ。
情報、武器、地形の把握。
やるべきことは多い。ロロは荷物をまとめつつも、冷静に思考を続けた。
そんな時だ。
『誰か近づいています』
カレイドサファイアの忠告に身構える。美遊はとっくに準備をすませ、杖を握りしめていた。
敵か、味方か。
懐中電灯の光を消して、橋にかかる薄れ始めた闇を睨み続けた。
ほどなくして、人影が浮かび上がる。背の低さからして女性だろうか。
ロロは油断なく構えていたが、急に隣の美遊が警戒を解く。
「美遊……?」
「サファイア、もしかして……」
『はい。真理様が教えてくれました、長田結花様と特徴が一致しています』
サファイアが言い終えた瞬間、長田結花と推察された人物ははっきりと姿を見せた。
遠目から見ても、彼女は負傷をしているのがわかった。
服はところどころ敗れ、露出した肌は血で赤く染まっていた。
息遣いは荒く、危うい足取りだ。
「大丈夫ですか?」
美遊が冷静に尋ねると、相手の肩がびくっと震える。
結花らしき女性は何かに怯えているのか、少し後退った。
「あの、長田結花さんで間違いありませんか? わたしは美遊・エーデルフェルトと申します」
「どうして……?」
「真理さんからあなたのことを聞きました。わたしは味方ですので、今はあなたの傷の手当てをさせてください」
美遊は相手を刺激しないように説明を終え、近づいていく。
ロロは黙って成り行きを見ていた。下手に口を挟んで事態をこじれさせる訳にはいかないからだ。
一方、真理と聞いた瞬間に結花がわずかに安堵するが、それでも数歩後ろに下がる。
肩に掛かるか掛からないか程度に髪をまとめた、冷たい美貌を持つ十歳程度の女の子である。
「そろそろ行こうか、美遊」
「はい。ですけど、体の方はもういいんですか?」
「大丈夫。服も乾いてきたし、風邪も引いていないから問題はないよ。君が向かいたかった友達の家に向かおうか」
美遊は首を縦に振る。ロロの目的はもう一人の自分を始末し、あわよくば入れ替わることに変わった。
しかし、もう一人の自分を探すなど、現状では不可能である。
ならば彼女の信頼を深め、始末する準備を整えるのが先決だ。
情報、武器、地形の把握。
やるべきことは多い。ロロは荷物をまとめつつも、冷静に思考を続けた。
そんな時だ。
『誰か近づいています』
カレイドサファイアの忠告に身構える。美遊はとっくに準備をすませ、杖を握りしめていた。
敵か、味方か。
懐中電灯の光を消して、橋にかかる薄れ始めた闇を睨み続けた。
ほどなくして、人影が浮かび上がる。背の低さからして女性だろうか。
ロロは油断なく構えていたが、急に隣の美遊が警戒を解く。
「美遊……?」
「サファイア、もしかして……」
『はい。真理様が教えてくれました、長田結花様と特徴が一致しています』
サファイアが言い終えた瞬間、長田結花と推察された人物ははっきりと姿を見せた。
遠目から見ても、彼女は負傷をしているのがわかった。
服はところどころ敗れ、露出した肌は血で赤く染まっていた。
息遣いは荒く、危うい足取りだ。
「大丈夫ですか?」
美遊が冷静に尋ねると、相手の肩がびくっと震える。
結花らしき女性は何かに怯えているのか、少し後退った。
「あの、長田結花さんで間違いありませんか? わたしは美遊・エーデルフェルトと申します」
「どうして……?」
「真理さんからあなたのことを聞きました。わたしは味方ですので、今はあなたの傷の手当てをさせてください」
美遊は相手を刺激しないように説明を終え、近づいていく。
ロロは黙って成り行きを見ていた。下手に口を挟んで事態をこじれさせる訳にはいかないからだ。
一方、真理と聞いた瞬間に結花がわずかに安堵するが、それでも数歩後ろに下がる。
「長田さん……?」
「近寄らないでください! わ、私は……私は……」
彼女の顔に何かの影が映る。ロロは気のせいかと目を瞬き、結花の顔を覗き込みなおした。
儚げで綺麗な女性の顔だ。見間違いか、とロロは首をかしげる。
一方美遊は何かを理解したように頷いた。
「大丈夫です。真理さんから話を聞いたとき、その可能性も考慮していました」
「……園田さんから。でも、ごめんなさい。私は……もう……」
結花は悲痛な顔を浮かべると、一瞬にして姿を変える。
白い鉄仮面を被ったような、伝説上の生物ハルピュイアを彷彿させる外見だ。
彼女は泣いているかのような掛け声と共に、自分たちの頭上を飛び越えた。
あまりの事態にロロは混乱しかけるが、どうにか踏ん張る。
ここでうろたえるようでは、兄のお荷物でしかないからだ。
「美遊、あれは……」
「オルフェノクでしょう。サファイア、真理さんが知っていた可能性は?」
『ほぼ確定かと。彼女のオルフェノクに対する説明は『人類を追い詰めた怪物』なのに、優しすぎましたからね』
美遊も同意らしい。ロロはあれがオルフェノクか、と認識しながら告げる。
「彼女が味方なら、追いかけないとまずいことになる」
「ええ、あの方向は……」
顔を歪めた彼女を視界の端に、ロロは荷物を担ぐ。
彼女の決意は決まっているだろう。それにオルフェノクの情報は集められるだけ集めたほうが、ルルーシュと合流したときに都合がいい。
「なら早く追いつこうか」
『……よろしいのですか?』
「もとより危険は承知さ」
ロロがサファイアに答えると、美遊は頭を下げた。
「近寄らないでください! わ、私は……私は……」
彼女の顔に何かの影が映る。ロロは気のせいかと目を瞬き、結花の顔を覗き込みなおした。
儚げで綺麗な女性の顔だ。見間違いか、とロロは首をかしげる。
一方美遊は何かを理解したように頷いた。
「大丈夫です。真理さんから話を聞いたとき、その可能性も考慮していました」
「……園田さんから。でも、ごめんなさい。私は……もう……」
結花は悲痛な顔を浮かべると、一瞬にして姿を変える。
白い鉄仮面を被ったような、伝説上の生物ハルピュイアを彷彿させる外見だ。
彼女は泣いているかのような掛け声と共に、自分たちの頭上を飛び越えた。
あまりの事態にロロは混乱しかけるが、どうにか踏ん張る。
ここでうろたえるようでは、兄のお荷物でしかないからだ。
「美遊、あれは……」
「オルフェノクでしょう。サファイア、真理さんが知っていた可能性は?」
『ほぼ確定かと。彼女のオルフェノクに対する説明は『人類を追い詰めた怪物』なのに、優しすぎましたからね』
美遊も同意らしい。ロロはあれがオルフェノクか、と認識しながら告げる。
「彼女が味方なら、追いかけないとまずいことになる」
「ええ、あの方向は……」
顔を歪めた彼女を視界の端に、ロロは荷物を担ぐ。
彼女の決意は決まっているだろう。それにオルフェノクの情報は集められるだけ集めたほうが、ルルーシュと合流したときに都合がいい。
「なら早く追いつこうか」
『……よろしいのですか?』
「もとより危険は承知さ」
ロロがサファイアに答えると、美遊は頭を下げた。
結花は変身を解きながら、近くの木にもたれかかった。
気が強く、自分とは正反対の園田真理。美遊は彼女と出会ったといった。
正直彼女に会いたくなかった。
自分はバケモノだ。それだけならまだしも、自分は人を殺してきたし、また殺してしまった。
乾巧がオルフェノクである事実を真理が受け止めたのは知っている。
だけど、結花は巧とは違う。
人を殺すことを明らかに楽しんだ。その報いが回ってきたのだ。
警察に追われ、捕らえられそうになった。
デルタと遭遇し、ルシファーズハンマーを受けた。
きっと裁かれるべきなのだろう。そう自分の命を諦めかけていた。
瞬間、狼のような遠吠えが響き渡る。
同時に急に現れた黒い狼に体を切り裂かれた。
結花は地面を転がり、襲撃者を見つめる。
二足歩行の黒い狼にしか見えない。血のように赤いたてがみが風になびく。
ああ、きっと天罰だ。自分にふさわしい最後がきたのだと、結花は覚悟をする。
気が強く、自分とは正反対の園田真理。美遊は彼女と出会ったといった。
正直彼女に会いたくなかった。
自分はバケモノだ。それだけならまだしも、自分は人を殺してきたし、また殺してしまった。
乾巧がオルフェノクである事実を真理が受け止めたのは知っている。
だけど、結花は巧とは違う。
人を殺すことを明らかに楽しんだ。その報いが回ってきたのだ。
警察に追われ、捕らえられそうになった。
デルタと遭遇し、ルシファーズハンマーを受けた。
きっと裁かれるべきなのだろう。そう自分の命を諦めかけていた。
瞬間、狼のような遠吠えが響き渡る。
同時に急に現れた黒い狼に体を切り裂かれた。
結花は地面を転がり、襲撃者を見つめる。
二足歩行の黒い狼にしか見えない。血のように赤いたてがみが風になびく。
ああ、きっと天罰だ。自分にふさわしい最後がきたのだと、結花は覚悟をする。
「砲射(シュート)!!」
なのに、決意を光が砕いた。
紫のドレスに黒いスカート。露出の大きい背中をマントで隠し、玩具のようなステッキを携える少女が自分の前に立つ。
「ケガはありませんか?」
美遊という名の少女が、助けに入ったのだと理解した。
紫のドレスに黒いスカート。露出の大きい背中をマントで隠し、玩具のようなステッキを携える少女が自分の前に立つ。
「ケガはありませんか?」
美遊という名の少女が、助けに入ったのだと理解した。
黒い狼は着弾する前に跳躍し、魔法弾を避けていた。
軽やかな体捌きはオルフェノクでも追いつけるかどうか。
結花はそんなことをぼんやりと思いながら、美遊に視線を移した。
低く唸る獣を前にしても、彼女は落ち着いている。
なぜ、という疑問がまず結花に浮かんだ。
自分は死ななければならない。そして薄汚いバケモノだと彼女に見せたはずだ。
なのに、助けてくれた。
「どうして……?」
疑問が言葉となり、こぼれ出る。
美遊は敵を見据えながら、ステッキをゆっくりと胸の前に持ち上げた。
「わたしの一番大事な友だちなら、絶対あなたを助けに向かいますから」
『来ますよ、美遊様』
杖が喋った瞬間、結花は腕を掴まれて離れさせられた。
美遊が放った光と似たものを、黒い狼が放ったのだ。
いや、まだ両腕に光を溜めている。結花たちは知らないが、あれはポケモンの技の一つ「きあいだま」である。
「長田さん、一つ質問しますが、あれはオルフェノクなんですか?」
「……違うと、思います」
結花の返答を美遊は吟味するかのように頷いた。
黒い狼と距離を取り、結花を降ろす。小さな女の子なのに、すごい力だった。
「ならあれはおそらく……」
『タケシ様の世界からきた生物、ポケモンだと思われます。
彼のポケモン、ピンプクかウソッキーという可能性もありますが、いかがいたしますか?』
「なるべく傷つけないようにする」
美遊はステッキと会話しながら、戦闘態勢を整えていた。
ポケモンとか世界とか結花には理解できなかったが、相手を捕らえる気であるのは理解した。
黒い狼が爪をたてながら襲いかかる。
美遊は一直線に迎撃に向かった。獣の太い腕と少女の細腕がぶつかり合う。
彼女は見た目以上の力を持っているが、それでも人外の相手と正面からぶつかるのは不利だ。
実際、あっさりと弾き返された。結花はそんな不利な戦い方を選んだ理由に勘づいている。
オルフェノクである、バケモノである結花自身を守るためだ。
どうして、なんのために。
頭が混乱しながらも、結花は美優の戦いから目が離せなかった。
軽やかな体捌きはオルフェノクでも追いつけるかどうか。
結花はそんなことをぼんやりと思いながら、美遊に視線を移した。
低く唸る獣を前にしても、彼女は落ち着いている。
なぜ、という疑問がまず結花に浮かんだ。
自分は死ななければならない。そして薄汚いバケモノだと彼女に見せたはずだ。
なのに、助けてくれた。
「どうして……?」
疑問が言葉となり、こぼれ出る。
美遊は敵を見据えながら、ステッキをゆっくりと胸の前に持ち上げた。
「わたしの一番大事な友だちなら、絶対あなたを助けに向かいますから」
『来ますよ、美遊様』
杖が喋った瞬間、結花は腕を掴まれて離れさせられた。
美遊が放った光と似たものを、黒い狼が放ったのだ。
いや、まだ両腕に光を溜めている。結花たちは知らないが、あれはポケモンの技の一つ「きあいだま」である。
「長田さん、一つ質問しますが、あれはオルフェノクなんですか?」
「……違うと、思います」
結花の返答を美遊は吟味するかのように頷いた。
黒い狼と距離を取り、結花を降ろす。小さな女の子なのに、すごい力だった。
「ならあれはおそらく……」
『タケシ様の世界からきた生物、ポケモンだと思われます。
彼のポケモン、ピンプクかウソッキーという可能性もありますが、いかがいたしますか?』
「なるべく傷つけないようにする」
美遊はステッキと会話しながら、戦闘態勢を整えていた。
ポケモンとか世界とか結花には理解できなかったが、相手を捕らえる気であるのは理解した。
黒い狼が爪をたてながら襲いかかる。
美遊は一直線に迎撃に向かった。獣の太い腕と少女の細腕がぶつかり合う。
彼女は見た目以上の力を持っているが、それでも人外の相手と正面からぶつかるのは不利だ。
実際、あっさりと弾き返された。結花はそんな不利な戦い方を選んだ理由に勘づいている。
オルフェノクである、バケモノである結花自身を守るためだ。
どうして、なんのために。
頭が混乱しながらも、結花は美優の戦いから目が離せなかった。
南空ナオミは現状が好ましくないことに歯噛みする。
一人で六十人近くの人間を始末できるとは思っていない。
最終目的は元の欧名美術館に戻り、夜神月がキラであることを世間に思い知らせ、婚約者の無念を晴らすことだ。
だからこそ交渉できる相手は交渉し、自らの目的を隠しながら行動を共にして、隙を突いて殺そうと考えていた。
そんな彼女の前に、いかにも『殺してください』と言わんばかりの少女が目に入ったのだ。
やや短絡的だが、減らせるうちに減らしておきたいと思うのが人情。
彼女の肩書きからすると信じられないほど、あっさりと始末することを決めたのだ。
ゾロアークの性能も確かめたかった、という打算もあったため、相手を襲う手段は獣自身に委ねた。
ただ一つ、作戦を秘めさせて。
誤算だったのは、あの少女が一人ではなかったことと、子どもがゾロアークと渡りあえることか。
ナオミの目付きが険しくなる。
まだ顔は見られていない。ゾロアークを退かせ、しばらく時間が経った頃に何食わぬ顔をして合流するという手もありだ。
頃合いを見計らうべきか、と撤退の合図を送る準備をした直後だ。
後頭部に硬い感触を感じたのは。
「動くな」
若い男の声だった。不覚だ。
「私はたまたまここを通り過ぎただけ……と言っても無理よね」
相手は無言で銃を更に強く押し付けた。返答がわりだろう。
もっとも、そんな言い訳が通用するとは思っていない。
「降参よ」
「だったらあのポケモンを戻してもらおうか。彼女からある程度、ポケモンについては教えてもらっている。嘘は無駄だ」
「そう。あの子を退かせるため、口笛を吹かせてくれないかしら?」
「いいだろう。だけど妙な真似をするな。どんな行動を取ろうと、僕のほうが速い」
たいした自信だ。ナオミは大人しく彼に宣言した通り、ピィーっと甲高い口笛を吹いた。
ゾロアークは美遊への攻撃をやめ、こちらに踵を返す。
銃を構えている少年はその行動にも気を緩めていない。できる。
だが、こちらは準備をしていたのだ。ナオミはほくそ笑み、回し蹴りで少年の銃を蹴り飛ばす。
「くっ!」
そのまま逃げようとするが、次の瞬間少年は飛ばされたはずの銃を握りしめ、自分に向けていた。
何をしたかは知らないが、たしかに速い。引き金にかかる指に力が入っていた。
だけど、ゾロアークの『きあいだま』が二人の間に割って入るのが早い。
これで、第一段階は終わった。
一人で六十人近くの人間を始末できるとは思っていない。
最終目的は元の欧名美術館に戻り、夜神月がキラであることを世間に思い知らせ、婚約者の無念を晴らすことだ。
だからこそ交渉できる相手は交渉し、自らの目的を隠しながら行動を共にして、隙を突いて殺そうと考えていた。
そんな彼女の前に、いかにも『殺してください』と言わんばかりの少女が目に入ったのだ。
やや短絡的だが、減らせるうちに減らしておきたいと思うのが人情。
彼女の肩書きからすると信じられないほど、あっさりと始末することを決めたのだ。
ゾロアークの性能も確かめたかった、という打算もあったため、相手を襲う手段は獣自身に委ねた。
ただ一つ、作戦を秘めさせて。
誤算だったのは、あの少女が一人ではなかったことと、子どもがゾロアークと渡りあえることか。
ナオミの目付きが険しくなる。
まだ顔は見られていない。ゾロアークを退かせ、しばらく時間が経った頃に何食わぬ顔をして合流するという手もありだ。
頃合いを見計らうべきか、と撤退の合図を送る準備をした直後だ。
後頭部に硬い感触を感じたのは。
「動くな」
若い男の声だった。不覚だ。
「私はたまたまここを通り過ぎただけ……と言っても無理よね」
相手は無言で銃を更に強く押し付けた。返答がわりだろう。
もっとも、そんな言い訳が通用するとは思っていない。
「降参よ」
「だったらあのポケモンを戻してもらおうか。彼女からある程度、ポケモンについては教えてもらっている。嘘は無駄だ」
「そう。あの子を退かせるため、口笛を吹かせてくれないかしら?」
「いいだろう。だけど妙な真似をするな。どんな行動を取ろうと、僕のほうが速い」
たいした自信だ。ナオミは大人しく彼に宣言した通り、ピィーっと甲高い口笛を吹いた。
ゾロアークは美遊への攻撃をやめ、こちらに踵を返す。
銃を構えている少年はその行動にも気を緩めていない。できる。
だが、こちらは準備をしていたのだ。ナオミはほくそ笑み、回し蹴りで少年の銃を蹴り飛ばす。
「くっ!」
そのまま逃げようとするが、次の瞬間少年は飛ばされたはずの銃を握りしめ、自分に向けていた。
何をしたかは知らないが、たしかに速い。引き金にかかる指に力が入っていた。
だけど、ゾロアークの『きあいだま』が二人の間に割って入るのが早い。
これで、第一段階は終わった。
「ロロさん!」
遠くの美優の声を耳にしながら、ロロはおのれの迂闊さを呪った。
油断はしていなかった。何らかの格闘技はかじっていただろうと用心していた。
予想通り銃を蹴り飛ばされたが、ギアスで挽回できた。そのまま撃ち殺せるはずだったのだ。
まさか、ギアスの有効範囲が狭くなっているなんて。
いつもなら彼女が持っていた黒いポケモンにも効果は及ぶはずだった。
結局ポケモンの行動は縛れず、攻撃を放たれてしまったのだ。
体力の消耗が激しくなっている時点で、効果範囲も疑うべきだっただろう。
兄ならその可能性に思い至ったはずだ。自分の愚かさが嫌になる。
半ば意地になりながら、煙をかきわけて殺人鬼の女性を探す。
「見つけた!」
黒いライダースーツに包まれた細い腕を思いっきり掴んだ。
間違いない、銃を突きつけたあの女性だ。今度は逃がすものか。
ロロが更に拘束しようとした時、相手の口から炎が走った。
虚を突かれ、頭の中が真っ白になる。ただ、危険を察知して本能で距離を取るだけだ。
地面を転がり火を必死になって消す。いったいどういうことだ。
「砲射(シュート)! ロロさん、火は!?」
「大丈夫……とっさに飛び退いたおかげか、ヤケドはひどくない」
ようやく追いついた美遊に対して強がりながら、敵を観察した。
彼女は両手に光を溜めている。
『あれは……先ほど相手したポケモンの技で間違いありません』
「あの人もポケモンということ……?」
『いえ、今分析の最中ですが、幻影系の魔術に近いものが使われているかと。ならば、あれは先程のポケモンと判断したほうがいいでしょう』
なるほど、とロロはサファイアの説明に納得し、悔しさに奥歯を食いしばった。
知らなかったとはいえ、あからさまな罠に引っかかったのだ。
悔しくないはずがない。
再びあの女に化けたポケモンが、両手に光を作る。足手まといにならないようロロは立ちあがろうとしたが、膝が崩れた。
火炎放射の威力は馬鹿にできない。それに気づいた美遊は庇うためか障壁に力を入れる。
このまま逃げられるのか。
だが、横から白い影が女を突き飛ばし、攻撃は中断される。
同時に女の影が消えて、黒い狼のポケモンへと姿が戻った。
「長田さん!」
美遊を助けに入った存在、オルフェノクに変身した結花に声をかける。
手助けするほど余裕が生まれたのだと安堵したのだ。
一方、ロロは彼女の危うさを感じ取った。精神的に追い詰められているように見える。
そのことを伝えるべきだろうが、傷が痛む。強がったとはいえ、ヤケドの痛みは響くか。
「はぁぁぁぁぁっ!」
表情の見えないはずの彼女は、明らかに鬼気迫っていた。
素早い格闘と身のこなしで反撃を許さず、確実に追い詰めていく。
「長田さん、行きますッ!」
美遊が魔法弾を放ち、ポケモンの動きを止めた。
合間を縫って結花が蹴り飛ばす。ポケモンはたまらず木々を蹴って逃げようとしたが、オルフェノクである結花の方が速い。
気合を込めた叫びと共に、彼女の背中から光の羽が伸びた。
周りの木々を切り裂きながら、ポケモンに迫る。
その瞬間、ロロは目撃してしまった。黒い狼の顔が、人間のように微笑んだのを。
ポケモンは真上に跳躍して、必殺の一撃を避けた。
なのに、ブシュッと液体が噴出する音が鼓膜を叩く。
血に濡れる灰色の怪人の腕に、ロロたちを襲った女の首が落ちた。
いきなりの状況に、殺人鬼の死体が灰になるまで、全員の視線は釘つけになった。
遠くの美優の声を耳にしながら、ロロはおのれの迂闊さを呪った。
油断はしていなかった。何らかの格闘技はかじっていただろうと用心していた。
予想通り銃を蹴り飛ばされたが、ギアスで挽回できた。そのまま撃ち殺せるはずだったのだ。
まさか、ギアスの有効範囲が狭くなっているなんて。
いつもなら彼女が持っていた黒いポケモンにも効果は及ぶはずだった。
結局ポケモンの行動は縛れず、攻撃を放たれてしまったのだ。
体力の消耗が激しくなっている時点で、効果範囲も疑うべきだっただろう。
兄ならその可能性に思い至ったはずだ。自分の愚かさが嫌になる。
半ば意地になりながら、煙をかきわけて殺人鬼の女性を探す。
「見つけた!」
黒いライダースーツに包まれた細い腕を思いっきり掴んだ。
間違いない、銃を突きつけたあの女性だ。今度は逃がすものか。
ロロが更に拘束しようとした時、相手の口から炎が走った。
虚を突かれ、頭の中が真っ白になる。ただ、危険を察知して本能で距離を取るだけだ。
地面を転がり火を必死になって消す。いったいどういうことだ。
「砲射(シュート)! ロロさん、火は!?」
「大丈夫……とっさに飛び退いたおかげか、ヤケドはひどくない」
ようやく追いついた美遊に対して強がりながら、敵を観察した。
彼女は両手に光を溜めている。
『あれは……先ほど相手したポケモンの技で間違いありません』
「あの人もポケモンということ……?」
『いえ、今分析の最中ですが、幻影系の魔術に近いものが使われているかと。ならば、あれは先程のポケモンと判断したほうがいいでしょう』
なるほど、とロロはサファイアの説明に納得し、悔しさに奥歯を食いしばった。
知らなかったとはいえ、あからさまな罠に引っかかったのだ。
悔しくないはずがない。
再びあの女に化けたポケモンが、両手に光を作る。足手まといにならないようロロは立ちあがろうとしたが、膝が崩れた。
火炎放射の威力は馬鹿にできない。それに気づいた美遊は庇うためか障壁に力を入れる。
このまま逃げられるのか。
だが、横から白い影が女を突き飛ばし、攻撃は中断される。
同時に女の影が消えて、黒い狼のポケモンへと姿が戻った。
「長田さん!」
美遊を助けに入った存在、オルフェノクに変身した結花に声をかける。
手助けするほど余裕が生まれたのだと安堵したのだ。
一方、ロロは彼女の危うさを感じ取った。精神的に追い詰められているように見える。
そのことを伝えるべきだろうが、傷が痛む。強がったとはいえ、ヤケドの痛みは響くか。
「はぁぁぁぁぁっ!」
表情の見えないはずの彼女は、明らかに鬼気迫っていた。
素早い格闘と身のこなしで反撃を許さず、確実に追い詰めていく。
「長田さん、行きますッ!」
美遊が魔法弾を放ち、ポケモンの動きを止めた。
合間を縫って結花が蹴り飛ばす。ポケモンはたまらず木々を蹴って逃げようとしたが、オルフェノクである結花の方が速い。
気合を込めた叫びと共に、彼女の背中から光の羽が伸びた。
周りの木々を切り裂きながら、ポケモンに迫る。
その瞬間、ロロは目撃してしまった。黒い狼の顔が、人間のように微笑んだのを。
ポケモンは真上に跳躍して、必殺の一撃を避けた。
なのに、ブシュッと液体が噴出する音が鼓膜を叩く。
血に濡れる灰色の怪人の腕に、ロロたちを襲った女の首が落ちた。
いきなりの状況に、殺人鬼の死体が灰になるまで、全員の視線は釘つけになった。
殺される直前、南空ナオミは逃げる準備を整えていた。
結花を発見するまでに、ゾロアークの特性、イリュージョンを知ったのだ。
そしていざというときは自分に化けたゾロアークが引きつけているうちに逃げ出し、再起を図る。
口笛から連なる作戦は、最後の手段であった。
手持ちの戦闘道具を失うのは惜しいが、戦闘能力のある人物を三人相手取るのは分が悪い。
だから最後の手を使った。ナオミはポケモンを意志のない道具としか見ていないためだ。
それが、間違いであった。
ナオミはゾロアークの生い立ちを知らない。
Nに心を許すまで、特性『イリュージョン』により人に追い詰められ、傷ついてきた。
アカギたちによってモンスターボールに手を加えられなければ、ナオミはおろか、他の人間に心を許すはずがない。
だからこそ、自由を与えて敵をひきつけるように指示したのは、彼女の過ちだ。
ゾロアークは結花に追い詰められた振りをしながらも、巧みに攻撃位置を誘導していたのだ。
少しずつ、確実に、反意を抱いていると悟られず。
南空ナオミを殺すため、機会を伺っていた。
ゆえに結花の攻撃の間合いを測りながらも、限界まで引きつけてから跳んだのだ。
結果、結花の刃はナオミの首に届いた。
それを死ぬ直前、彼女は悟った。
だけど、ゾロアークを恨む心はなかった。
こうなって当然、裁きが下ったのだと納得したのだ。
デスノートに人の行動は操れても、心は操れない。
レイ・イワマツを殺された復讐に、関係ない月の恋人を巻き込んで、また六十人近くの人たちに犠牲を強いた。
結局そう考えが行き着いたのは、彼女の心が憎悪に染まった証拠である。
ゆえにこの結末は、キラは報いを受けるべきという彼女の理屈に照らし合わせると、必ずたどり着く答えだった。
結花を発見するまでに、ゾロアークの特性、イリュージョンを知ったのだ。
そしていざというときは自分に化けたゾロアークが引きつけているうちに逃げ出し、再起を図る。
口笛から連なる作戦は、最後の手段であった。
手持ちの戦闘道具を失うのは惜しいが、戦闘能力のある人物を三人相手取るのは分が悪い。
だから最後の手を使った。ナオミはポケモンを意志のない道具としか見ていないためだ。
それが、間違いであった。
ナオミはゾロアークの生い立ちを知らない。
Nに心を許すまで、特性『イリュージョン』により人に追い詰められ、傷ついてきた。
アカギたちによってモンスターボールに手を加えられなければ、ナオミはおろか、他の人間に心を許すはずがない。
だからこそ、自由を与えて敵をひきつけるように指示したのは、彼女の過ちだ。
ゾロアークは結花に追い詰められた振りをしながらも、巧みに攻撃位置を誘導していたのだ。
少しずつ、確実に、反意を抱いていると悟られず。
南空ナオミを殺すため、機会を伺っていた。
ゆえに結花の攻撃の間合いを測りながらも、限界まで引きつけてから跳んだのだ。
結果、結花の刃はナオミの首に届いた。
それを死ぬ直前、彼女は悟った。
だけど、ゾロアークを恨む心はなかった。
こうなって当然、裁きが下ったのだと納得したのだ。
デスノートに人の行動は操れても、心は操れない。
レイ・イワマツを殺された復讐に、関係ない月の恋人を巻き込んで、また六十人近くの人たちに犠牲を強いた。
結局そう考えが行き着いたのは、彼女の心が憎悪に染まった証拠である。
ゆえにこの結末は、キラは報いを受けるべきという彼女の理屈に照らし合わせると、必ずたどり着く答えだった。
今起こった現実の光景に、誰一人反応出来なかった。
確かに彼女は結花を殺そうとしたが、だからと言って殺すつもりはなかった。
どうして、という疑問が頭の中でぐるぐる回る。
『あのポケモンに注意をしてください!』
しゃべるステッキが何かを叫んでいる。意味が頭に入らない。
ボーっと見つめていると、黒い狼は灰の中から赤と白のボールを拾い、脱兎のごとく逃げ出していった。
誰も追いかけようとはしない。結花もどうすればいいかわからなかった。
『気にする必要はありません。これは不幸な事故です。あのポケモンが動いた先に人がいるなど、誰も判断が不可能な状況でした。
それに、殺害をあのポケモンが誘導している節が……』
「サファイア、そこまで」
『……申し訳ありません』
なぜステッキが謝るのか、結花はわからなかった。
人を殺したのは確かな事実なのに、ステッキは悪くないないのに。
「美遊……ちゃん? でしたか?」
「はい」
「園田さんに伝えてください。私に……殺されないようにしてください。探さないでください、と」
美遊は目を丸くした。冷静な印象だったが、意外と表情豊かのようだ。
「あなたたちも、私から離れてください。私は……私は、人殺しのバケモノですから……」
返事を聞かず、結花はその場から必死に離れた。
何も聞きたくない。見たくない。
『この会場に呼ばれた中で、“悪い人”を退治してきて欲しいんです』
意図せず、あの女性の言う通りに動いてしまった。
ただあの子を守りたい。自分を助けようとする子どもだけは、死なせてはいけない。
そう思っただけなのに、運命は許さなかった。
きっと無様な結末が汚れた怪物にはお似合いだろう。
結花は涙が流れているのも気づかず、ただ自分の知っている人たちから逃げ出した。
確かに彼女は結花を殺そうとしたが、だからと言って殺すつもりはなかった。
どうして、という疑問が頭の中でぐるぐる回る。
『あのポケモンに注意をしてください!』
しゃべるステッキが何かを叫んでいる。意味が頭に入らない。
ボーっと見つめていると、黒い狼は灰の中から赤と白のボールを拾い、脱兎のごとく逃げ出していった。
誰も追いかけようとはしない。結花もどうすればいいかわからなかった。
『気にする必要はありません。これは不幸な事故です。あのポケモンが動いた先に人がいるなど、誰も判断が不可能な状況でした。
それに、殺害をあのポケモンが誘導している節が……』
「サファイア、そこまで」
『……申し訳ありません』
なぜステッキが謝るのか、結花はわからなかった。
人を殺したのは確かな事実なのに、ステッキは悪くないないのに。
「美遊……ちゃん? でしたか?」
「はい」
「園田さんに伝えてください。私に……殺されないようにしてください。探さないでください、と」
美遊は目を丸くした。冷静な印象だったが、意外と表情豊かのようだ。
「あなたたちも、私から離れてください。私は……私は、人殺しのバケモノですから……」
返事を聞かず、結花はその場から必死に離れた。
何も聞きたくない。見たくない。
『この会場に呼ばれた中で、“悪い人”を退治してきて欲しいんです』
意図せず、あの女性の言う通りに動いてしまった。
ただあの子を守りたい。自分を助けようとする子どもだけは、死なせてはいけない。
そう思っただけなのに、運命は許さなかった。
きっと無様な結末が汚れた怪物にはお似合いだろう。
結花は涙が流れているのも気づかず、ただ自分の知っている人たちから逃げ出した。
「長田さん! くっ……」
『申し訳ありません、わたしが迂闊でした』
「サファイアのせいじゃない。きっとなにを言っても、長田さんは引き止められなかった……」
美遊はうつむき、悔しさで体が震えた。
イリヤならどうしたのだろうか、と思わずにはいられない。
一番の親友である彼女なら、何も考えず理屈抜きに感情論で結花を引き止めただろう。
それがわかっているだけ、自分に足りないものを自覚していく。
あの、イリヤが空を飛べた時のように。
「追いかけないのかい?」
ロロが上着を着ながら尋ねてきた。
ヤケドはどうしたのだろうか。
「僕の最後の支給品、やけど直しのスプレーが役に立ったよ。ここまで即効性があるなんてね」
こちらの心を読んだかのように、彼は続けた。
いや、今の自分なら何を考えているのか当てるのは簡単だろう。
ロロはすくっと立ち上がって、デイパックを背負う。
「それで、長田結花さんだっけ? 彼女はあのまま進むと、君を苦しめたバーサーカーに遭遇しちゃうけど……どうする?」
「……放ってはおけません」
美遊は答える。サファイアは判断しかねるのか、黙っていた。
このままバーサーカーのもとに向かうのは自殺行為に近いが、このままでいいはずがない。
結花を見捨ててイリアを探したなど、胸を張って言えるはずがない。
「友達の家に向かうのがまた遅れちゃうね」
「ロロさんは先にそちらに向かってもらえますか? さすがに長田さんとロロさんをかばいながら、バーサーカーから逃げきるのは難しいので」
「大丈夫だよ。ほら」
ロロがそういった瞬間、彼の手にサファイアがあった。
えっ、と驚く美遊の手に優しく返される。
「この力なら、逃げ出す手助けができる。助けに向かうなら、早くしないとね」
掴みどころがないが、ロロの態度に美遊は助けられる。
内心感謝しながら、もう一度バーサーカーの前に立つ決意を固めることにした。
体が震える。傷めつけられた記憶が蘇る。
けど、自分ならきっと乗り越えられる。そう信じながら、一歩踏み出した。
『申し訳ありません、わたしが迂闊でした』
「サファイアのせいじゃない。きっとなにを言っても、長田さんは引き止められなかった……」
美遊はうつむき、悔しさで体が震えた。
イリヤならどうしたのだろうか、と思わずにはいられない。
一番の親友である彼女なら、何も考えず理屈抜きに感情論で結花を引き止めただろう。
それがわかっているだけ、自分に足りないものを自覚していく。
あの、イリヤが空を飛べた時のように。
「追いかけないのかい?」
ロロが上着を着ながら尋ねてきた。
ヤケドはどうしたのだろうか。
「僕の最後の支給品、やけど直しのスプレーが役に立ったよ。ここまで即効性があるなんてね」
こちらの心を読んだかのように、彼は続けた。
いや、今の自分なら何を考えているのか当てるのは簡単だろう。
ロロはすくっと立ち上がって、デイパックを背負う。
「それで、長田結花さんだっけ? 彼女はあのまま進むと、君を苦しめたバーサーカーに遭遇しちゃうけど……どうする?」
「……放ってはおけません」
美遊は答える。サファイアは判断しかねるのか、黙っていた。
このままバーサーカーのもとに向かうのは自殺行為に近いが、このままでいいはずがない。
結花を見捨ててイリアを探したなど、胸を張って言えるはずがない。
「友達の家に向かうのがまた遅れちゃうね」
「ロロさんは先にそちらに向かってもらえますか? さすがに長田さんとロロさんをかばいながら、バーサーカーから逃げきるのは難しいので」
「大丈夫だよ。ほら」
ロロがそういった瞬間、彼の手にサファイアがあった。
えっ、と驚く美遊の手に優しく返される。
「この力なら、逃げ出す手助けができる。助けに向かうなら、早くしないとね」
掴みどころがないが、ロロの態度に美遊は助けられる。
内心感謝しながら、もう一度バーサーカーの前に立つ決意を固めることにした。
体が震える。傷めつけられた記憶が蘇る。
けど、自分ならきっと乗り越えられる。そう信じながら、一歩踏み出した。
美遊を向かわせることができて、ロロは内心安堵した。
オルフェノクにしろ、美遊の魔法少女にしろ、味方にすると頼りになる力ばかりだ。
兄と違って人心掌握術は不得意だが、印象を良くしておいて損はない。
どちらもこの殺し合いで、兄と共に脱出するための力として申し分ないのだ。
もちろん、彼女たちに気を遣う部分もあるが、優先順位の問題だ。
ロロにとって彼女たちより、兄であるルルーシュが大事であるというだけ。
それに、とロロは冷徹に思考する。
話に聞いたバーサーカーならば、ナナリーや別世界の自分を自然に始末するのに都合がいいのではないか、と。
自らの居場所を奪うため。
充分に幸せを噛み締めたもう一人の自分の立場を奪うため。
都合のいい駒となりうるなら、バーサーカーを利用すべきである。
ロロは冷徹な思考を隠しながら、美遊と共に結花を追った。
オルフェノクにしろ、美遊の魔法少女にしろ、味方にすると頼りになる力ばかりだ。
兄と違って人心掌握術は不得意だが、印象を良くしておいて損はない。
どちらもこの殺し合いで、兄と共に脱出するための力として申し分ないのだ。
もちろん、彼女たちに気を遣う部分もあるが、優先順位の問題だ。
ロロにとって彼女たちより、兄であるルルーシュが大事であるというだけ。
それに、とロロは冷徹に思考する。
話に聞いたバーサーカーならば、ナナリーや別世界の自分を自然に始末するのに都合がいいのではないか、と。
自らの居場所を奪うため。
充分に幸せを噛み締めたもう一人の自分の立場を奪うため。
都合のいい駒となりうるなら、バーサーカーを利用すべきである。
ロロは冷徹な思考を隠しながら、美遊と共に結花を追った。
月が沈みかけ、空が白み始めた。
ゾロアークは鼻を天に向け、己のトモの匂いを嗅ぎ分ける。
彼の味方はNだけだ。理解してくれるのはNだけだ。
南空ナオミのせいで余計な時間を食った。
だから急がねば。トモの元へ。
ゾロアークは鼻を天に向け、己のトモの匂いを嗅ぎ分ける。
彼の味方はNだけだ。理解してくれるのはNだけだ。
南空ナオミのせいで余計な時間を食った。
だから急がねば。トモの元へ。
【南空ナオミ@デスノート(実写):死亡】
【C-6/森の南東/一日目 早朝】
【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(小)、怪人態、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:???
1:仮面ライダー(間桐桜)から逃げる
2:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
3:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
4:自分を知っている人から離れたい
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
[状態]:ダメージ(大)、疲労(小)、怪人態、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:???
1:仮面ライダー(間桐桜)から逃げる
2:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
3:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
4:自分を知っている人から離れたい
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
【たった一人の 家族/友達 を守り隊】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:カレイドステッキサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、支給品0~1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:結花を追いかける
2:ロロと行動
3:凛を始め、知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。ユーフェミア・リ・ブリタニアも、日本人を殺す可能性があるので警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:カレイドステッキサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、支給品0~1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:結花を追いかける
2:ロロと行動
3:凛を始め、知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。ユーフェミア・リ・ブリタニアも、日本人を殺す可能性があるので警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ギアス使用による消耗(中)、半乾きの服
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:ナナリーとロロ・ヴィ・ブリタニアを殺害し、自分の居場所を守る
2:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える。
3:ナナリーの悪評を振りまく。
4:ルルーシュと合流する
5:殺し合いを止めるための仲間を集める。
6:美遊・エーデルフェルトと行動。衛宮邸に立ち寄りつつ、住宅街を探索
7:『オルフェノク』と『バーサーカー』には気をつける。
8:バーサーカーを利用できるのでは?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます
[状態]:ギアス使用による消耗(中)、半乾きの服
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:ナナリーとロロ・ヴィ・ブリタニアを殺害し、自分の居場所を守る
2:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える。
3:ナナリーの悪評を振りまく。
4:ルルーシュと合流する
5:殺し合いを止めるための仲間を集める。
6:美遊・エーデルフェルトと行動。衛宮邸に立ち寄りつつ、住宅街を探索
7:『オルフェノク』と『バーサーカー』には気をつける。
8:バーサーカーを利用できるのでは?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます
【共通備考】
ゾロアークが自分のモンスターボールを持ってNを探しています。
南空ナオミのデイパックがC-6の森に放置されています。
内容は基本支給品と不明支給品0~1です。
ゾロアークが自分のモンスターボールを持ってNを探しています。
南空ナオミのデイパックがC-6の森に放置されています。
内容は基本支給品と不明支給品0~1です。
【やけどなおし】
使用することでやけどの状態異常を回復できる、即効性の薬。
本来はポケモンのアイテムだが、ポケモン以外でも使用可能。
使用することでやけどの状態異常を回復できる、即効性の薬。
本来はポケモンのアイテムだが、ポケモン以外でも使用可能。
061:対決~英雄の真髄 | 投下順に読む | 063:淑女のフォークリフトVS仮面ライダー……観客:怪奇蛇男(前編) |
時系列順に読む | ||
045:「ナナリー・ランぺルージって奴の仕業なんだ」 | 美遊・エーデルフェルト | 085:Lost the way |
ロロ・ランペルージ | ||
023:monster. ~愛故の狂気 | 長田結花 | |
026:その南空ナオミをぶち殺す | 南空ナオミ | GAME OVER |