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殺さねばならない相手がいます

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殺さねばならない相手がいます ◆Vj6e1anjAc



 前回までのあらすじ。

 なんか変なバイクがロボットになった。


 ざぁん――と聞こえるさざ波の音を、小さく鼓膜に感じている。
 宵闇の先にあるはずの海から、静かに響く波の音を、耳に感じて視線を動かす。
 黒一色の景色の中、懐中電灯の白熱のみが、彼女に視力を与えていた。
「そう……ここは孤島なのね」
 美国織莉子が目にしているのは、儀式のフィールドを示した地図だ。
 謎の人型機動兵器・オートバジンとの遭遇のショックから、ようやく立ち直った彼女は、
 ひとまず現状を把握すべく、地図および名簿の確認へと戻っていた。
 既に現在地は判明している。H-8というエリアは、ポケモン城が目印の島だ。
 この島は他のエリアとは異なり、外部との繋がりが見られない、完全な孤島となっている。
 隠れて殺し合いをやり過ごすには、うってつけの場所と言えるだろう。
(でも、それでは打って出ることはできないわ)
 傍らに置いた名簿へと、視線を落とし、内心で呟く。
 儀式の参加者の名を連ねた名簿には、いくつか見覚えのある名前があった。
 ひとつは親友の名前であり、ひとつは排除すべき敵の名である。
 そして親友と合流することも、仇敵を抹殺することも、恐らくはここにいたままでは不可能だ。
 こんなところに浮いた島に、わざわざ彼女らがやって来るとは思えない。
(ここに長居するわけにはいかない)
 勝つためには攻めること。
 己が目的を果たすためには、自ら打って出ることが必要だ。
 すぐにこの島を探索し、主戦場に移動するための手段を探さなければ。
「―――ッ」
 その、瞬間だ。
 不意に織莉子の脳裏に、ピントのぼけたビジョンが浮かび上がったのは。
(これは、私が出会う未来? この光景は、あのバイクのものではなかったというの?)
 彼女の魔法少女としての力――未来視がもたらす未来のビジョンは、一度目にしたものと同じもの。
 大きな人影がぼんやりと浮かび、織莉子の前に立ちはだかる。
 直後にオートバジンを変形させたことで、その人影の正体を、この鉄の巨人だと解釈したそれだ。
 その未来を再び見たということは、あの時垣間見た未来は、まだ織莉子の身に降りかかっていないということになる。
 すなわち未来視が示したものは、オートバジンとの遭遇ではない。
 何者か――恐らくはこの儀式の参加者と、これから遭遇するという預言だ。
「………」
 かさ、かさ、かさ、と砂が鳴る。
 地を踏みしだく足音が、織莉子の耳に飛び込んでくる。
 迫りくる来訪者を察知し、ゆっくりとそちらへ向き直った。
 現れた影は、黒。
 闇に紛れ、闇に忍び、闇より浮き出たかのような。
 黒い帽子に黒いコート、その下も黒スーツで固められた、全身黒ずくめの壮年の男。
「あら……個性的なペットを連れていますのね」
 そして何より目を引いたのは、その隣に引き連れた謎の生物だ。
 屈強な2本足で立つ体躯を有し、全身から紫の棘を生やしたその姿は、さながら映画の大怪獣を彷彿とさせる。
 魔女ではない。
 しかし、まともな生物ではない。
「クク……ニドキングを見るのは初めてかね?」
 ニドキング。
 その名を口にした男の顔は、不敵な笑みに染まっていた。


 ニドキングなるものと共に現れた男は、名をサカキというらしい。
 ひとまず敵意がないことを確認した織莉子は、彼との情報交換に移っていた。
「ではサカキさん……貴方はこの儀式なるものの存在を、認めないということですね?」
「あの男の言いなりになるのも癪だからな」
 悠然と構えるその姿勢は、己の力量への自信の表れか。
 高圧的な物言いや、ぎらぎらと光る眼光からは、強い野心のようなものが感じられる。
 今まで付き合ってきた大人達とは、根本的に異なるタイプの人間だ。
 その肩書きは軍人か、はたまた身一つで起業した実業家か。
 自ら目の前の壁に攻め込み、なぎ倒す強烈な攻撃性が、態度の節々から感じ取られた。
 それを隠そうともしないということは、彼の敵意の矛先は、やはりあのアカギに向けられているということなのだろう。
「君はどうする、美国織莉子? 生きるために私を殺すか?」
 にぃ、と口元がつり上がった。
 サカキの問いかけに呼応して、背後のニドキングの目が細められる。
 睨みつける眼光から漂うのは、殺意。
 敵対せぬならそれでよし。ただし刃向かうというのなら、こちらも相応の対応を取らせてもらおう。
 言外に感じ取った脅迫の意図――やはりこの男、油断ならない。
 ただの正義漢のように、理想に殉じ犬死にする気はないようだ。
 主催者・アカギを打倒する。そうして生き残るためならば、他者を犠牲にする覚悟ができている。
「………」
 己自身は、どうだろうか。
 この惨劇の舞台のさ中、美国織莉子はいかに立ち回るべきか。
 オートバジンとの遭遇もあり、すっかり後回しにしていた案件を、改めて考え直す。
 何を為すべきか。
 何と戦うべきか。
「……私には、殺さねばならない相手がいます」
 改めて考えるまでもなく、既に答えは決まっていた。
「ほう、強く出たな」
「私も貴方と同じように、この儀式を認めるつもりはありません。巻きこまれた者達を、救いたいとも思っています。
 ですが、ただ一人だけ……彼女だけは倒さなければ、世界は闇に閉ざされることになる……
 もしそれを阻む者がいるのなら、私はその者達とも戦います」
 手段を選ばないのは自分も同じだ。
 やがて最悪の魔女となる、見滝原の少女・鹿目まどか。
 美国織莉子の生涯の悲願は、かの少女を覚醒前に抹殺し、救世を成し遂げることにある。
 そのためならば、なりふり構うつもりはない。
 邪魔をする者に容赦はしない。幾千万を救うためなら、一でも十でも切り捨ててみせる。
「そのターゲットの名前は?」
「それは今は言えません」
 まどかの名前を出すことは、この場では控えておくことにした。
 かのインキュベーターの監視の目が、どこにあるか分かったものではないからである。
 奴のことだ。あるいはこの儀式の場にも、ひょっこりと姿を現してもおかしくない。
 そうして彼に見つかって、自分の意図を察知されれば、その時点で世界は終わるだろう。
「ですが、貴方に危害を加えるつもりはありません。今は、これで納得していただけないでしょうか」
 交渉の場で優位に立つには、相手に強さを見せることだ。
 強い言葉と佇まいは、自らの力量をアピールし、相手を飲み込むことに繋がる。
 逆に飲み込まれないようにするためにも、自らも毅然とあらねばならない。
 確たる意志を瞳に宿し、真摯な語調で訴えかけた。
「………」
 しばし、サカキは沈黙する。
 この男のようなスタンスの人間は、自らに降りかかるリスクには非常に敏感だ。
 これで丸めこむことができなければ、自分を排除するために、ニドキングに攻撃命令を出すかもしれない。
 ここで理解を得られなければ、無意味な戦闘をすることになる。
 それだけは避けなければならなかった。こんなところで、ソウルジェムを無駄遣いしてはいられないのだ。
「いいだろう。君の言い分は理解した」
 にやり、と。
 猛禽を思わせる鋭い微笑が、再びサカキの顔に浮かぶ。
「君はそれなりに信用の置ける子のようだ。
 戦力が確保できれば、互いの生存確率も上がる……君さえよければ、私も同行させてもらおう」
「ありがとうございます」
 静かに、感謝した。
 この男は危険だが、なかなかに器の大きい雰囲気を醸し出している。
 そうでなくても、ニドキングとやらの戦闘能力が、見た目通りのものであるなら、きっと頼りになるはずだ。
 最初に会ったのが、あの訳の分からない機械だったことに比べれば、十分な進歩と言えるだろう。
「では、この離島から移動する手段を探したいのですが……」
「ターゲットを殺しに行くためか?」
「それもありますが、この儀式には、私の友人も巻きこまれています。彼女と……呉キリカと合流したいのです」
「戦力として使えるのか?」
「恐らくは。彼女は私以上に、荒事に長けた子ですから」
 これは嘘だ。
 キリカの捜索に行くという行為に、そのような打算は含まれていない。
 何故ならば、彼女は既に死に体なのだ。
 魔法少女・巴マミとの戦いで、キリカは致命傷を負っている。
 感傷、打算、ありとあらゆる想いを込めて、彼女を魔女にするつもりだったが、その前に2人は引き裂かれてしまった。
 漆黒の魔獣・呉キリカは、全ての戦闘能力を失った状態で、この儀式の場に放置されていることになる。
 もちろん、瀕死の友達を助けに行く、などと正直に話してしまえば、サカキは納得しないだろう。
 足手まといを助けるために、身を危険にさらす羽目になる。
 彼はそれを好まない。止められるか、排除されるかの未来が待つのは明白だ。
 故にここは嘘を織り交ぜ、サカキを説き伏せることにした。
「……了解した。そういうことなら引き受けよう」
 もちろん、全てを納得したわけではないのだろう。
 それでも一瞬の逡巡の後、男はそれを受け入れていた。


(私が子供と手を組むとはな)
 この儀式が始まった頃には、予想だにしていなかったことだ。
 思わぬ協定を結んだことに、サカキは内心で苦笑した。
 不審な点も多い少女だ。
 ラジオでジョウト中に流れたはずの、サカキの名前を聞いていながら、何の反応も示さなかった。
 それどころか、ポケモンのニドキングを目の当たりにしても、まるでそれを知らないのだという。
(だが、美国織莉子は使える娘だ)
 直感的な判断だった。
 自らの立ち上げたロケット団を、子供に潰されたサカキである。年齢で差別をする気はない。
 そうでなくてもこの織莉子からは、独特なプレッシャーを感じるのだ。
 こいつは何かを持っている。
 それが頭脳の明晰さであれ、腕っ節の強さであれ、並の人間には持ち得ない、強い力を持っている気配がある。
 かのレッド少年を彷彿とさせる、年齢にそぐわぬ圧倒的な何かだ。
 風格、と表現してもいいだろう。文字通り、並の女子中学生とは、格の違う存在というわけだ。
 この直感が正しければ、織莉子は優秀な手駒になるだろう。
 目的のためには手段を選ばないという、その性質も気にいった。
 情がブレーキになりえないというのは、サバイバルにおいては重要な才だ。それが己だけでなく、味方さえも救うことになる。
(なりふり構わぬ正義か……せいぜい、利用させてもらうとしよう)
 にやり、と口元を釣り上げて、銀髪の少女の姿を見やった。
「あら、どうかしたの?」
 そしてその織莉子に近寄る、1つの大きな影がある。
 全身を鋼鉄色に光らせた、身の丈2メートルほどのロボットだ。
 どう見ても、ポケモンとは言い難い。完全な人工物なのだろう。
 これほど精密な人型ロボットを作るとは、大した技術だ、と感心した。
「まぁ……貴方、飛べたのね」
 そのロボットはというと、まるで織莉子に見せびらかすように、その場でホバリング飛行をしている。
 ぴろろろろ、という音と共に、得意げに目元に光を点滅させていた。
「でも、貴方の大きさではねぇ……私を運ぶことはできても、サカキさんが置いてきぼりになってしまうわ」
 しかし次の瞬間には、織莉子にばっさりと切り捨てられる。
 飛行をやめたロボットが、うなだれるように沈黙した。
 確かにあれの大きさでは、人2人を抱え込むには無理がある。
 このエリアからの移動には、何か他の手段を探さなければならない。
「では、このポケモン城を探ってみるか?」
「そうですね……何か使える物があるかもしれません」
 となれば、矛先を向けるべきは、己の眼前にそびえ立つ巨城だ。
 ここまで辿ってきた道筋には、めぼしいものは落ちていなかった。
 ならば新天地へと目を向けて、捜索をするのが一番と言えよう。
 頷く織莉子を引き連れて、サカキはポケモン城へと踏み込んだ。


【H-8/ポケモン城城門前/一日目 深夜】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、白女の制服姿
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。まずはそのために、市街地エリアへ向かう方法を探す
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:ポケモン城に入り、H-8から出る方法を探す
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前

【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:ポケモン城に入り、H-8から出る方法を探す
4:『強さ』とは……何だ?
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※『ギンガ団』についての知識はどの程度持っているかは後続の書き手さんに任せます

【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します


027:魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる 投下順に読む 029:偽ニセモノ者ガタリ語
026:その南空ナオミをぶち殺す 時系列順に読む
020:白い魔法少女と黒い男と銀の機神 美国織莉子 049:『不快なる快勝』
サカキ


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