Guilty Girl ◆Z9iNYeY9a2
時計が刻一刻と18時に向けて針を進めている。
この殺し合いが始まって18時間。深夜より始まったこの殺し合いがまたあの陽の光の当たらない時間へと映りゆこうとしている。
この殺し合いが始まって18時間。深夜より始まったこの殺し合いがまたあの陽の光の当たらない時間へと映りゆこうとしている。
「さて、そろそろ放送の時間も近いけど」
「…………」
「どうしたんだいアクロマ?」
「…………」
「どうしたんだいアクロマ?」
インキュベーターは顔を僅かに曇らせて口をつぐんだアクロマに話しかける。
画面を見つめる彼の手は止まり、キーボードが打たれることなく静止したまま、バックグラウンドで実行されている作業のみが液晶の中で行われている。
画面を見つめる彼の手は止まり、キーボードが打たれることなく静止したまま、バックグラウンドで実行されている作業のみが液晶の中で行われている。
「死者の中に気になる者でもいたかい?」
「そうですね。ミュウツー、彼には期待していたのですが」
「そうですね。ミュウツー、彼には期待していたのですが」
ミュウツー。この殺し合いが始まって当初よりアクロマが気にかけていたポケモンだ。
彼は先の放送から今までの間にあの破壊の遺伝子を取り込んで、メガストーンに頼らぬ形でのメガシンカを果たした。
いや、正確にはメガシンカとは違うものであったのだろうが、しかし新たな姿を獲得したことには変わりない。
その光景を見ていたアクロマはその時とても表情を輝かせていたものだった。
彼は先の放送から今までの間にあの破壊の遺伝子を取り込んで、メガストーンに頼らぬ形でのメガシンカを果たした。
いや、正確にはメガシンカとは違うものであったのだろうが、しかし新たな姿を獲得したことには変わりない。
その光景を見ていたアクロマはその時とても表情を輝かせていたものだった。
しかし、その彼も次の放送で名を呼ばれる存在となってしまっていた。
ギラティナの捕獲から間もなくのことだった。
ギラティナの捕獲から間もなくのことだった。
「仕方ないよ。そもそもバーサーカーが射殺す百頭を解放するなんて、僕だって驚いたさ。
あんなものをまともに受ければ死ぬのは当然だ。何しろ万全の状態だったならゼロだって粉砕しただろうほどのものだ」
「憎悪を絆へと変換しての進化。それは私の求めていた答えに近づいたものだったのですが、残念です」
あんなものをまともに受ければ死ぬのは当然だ。何しろ万全の状態だったならゼロだって粉砕しただろうほどのものだ」
「憎悪を絆へと変換しての進化。それは私の求めていた答えに近づいたものだったのですが、残念です」
ミュウツーがバーサーカーを通して何を見たのか。
彼がイリヤに対して何を与えたのか。
それらは推測することでしか考えつくことはできない。
だが。
彼がイリヤに対して何を与えたのか。
それらは推測することでしか考えつくことはできない。
だが。
(もしそれが平行世界のイリヤスフィールの情報なのだとしたら、もう一人の自分についての記憶を得た彼女には因果が集まることにも繋がる)
それは自分たちにとっては望むべくことだ。
「それにしても、意外といえば意外だけどね。
まさか彼女がここまで残るなんて」
まさか彼女がここまで残るなんて」
キュゥべえの示す先に見える、マントを翻して剣を携え戦う青髪の少女。
千歳ゆま、佐倉杏子、呉キリカ、巴マミ、そして暁美ほむらと脱落していった魔法少女達。
その中で今美国織莉子と共に生き残っている、自分の契約によって戦う術を得た存在の一人、美樹さやか。
千歳ゆま、佐倉杏子、呉キリカ、巴マミ、そして暁美ほむらと脱落していった魔法少女達。
その中で今美国織莉子と共に生き残っている、自分の契約によって戦う術を得た存在の一人、美樹さやか。
本来の歴史では知るはずのなかった魔法少女の真実を知り、それでもまだ絶望に振り切れることなくあの場にいる。
そこには単体でエントロピーを凌駕しうる黄金の光を放った一人の少女、そして今彼女の目の前で己の因縁と向き合っている夢を守りし戦士の影響があるのだろうか。
そこには単体でエントロピーを凌駕しうる黄金の光を放った一人の少女、そして今彼女の目の前で己の因縁と向き合っている夢を守りし戦士の影響があるのだろうか。
(このまま折れることなく生き延びることができたなら、彼女もまた可能性を持ち得る存在になるかもしれない、か)
残り参加者は半分を下回り、その数は今や3分の1にも迫りつつある。
そしてその域に達しつつある者はポツポツと見受けられるようになってきた。
そのうちの誰かが最終的に一人残ってくれれば、全てが滞りなく終わることができる。
そしてその域に達しつつある者はポツポツと見受けられるようになってきた。
そのうちの誰かが最終的に一人残ってくれれば、全てが滞りなく終わることができる。
「だけど、その前に……」
脱落者の中から発生した一人のイレギュラー。
殺し合いからは脱落しつつも不可解な現象によって命を永らえさせた魔法少女。
彼女の状態、そしてその意志を確認する必要があるだろう。
殺し合いからは脱落しつつも不可解な現象によって命を永らえさせた魔法少女。
彼女の状態、そしてその意志を確認する必要があるだろう。
「アクロマ、アーニャに連絡をとっておいて欲しいんだ。もしもの事があった時、さすがに君と僕じゃ荷が重すぎるからね」
「分かりました。トリスタンも準備しておくように伝えたほうがいいですか?」
「まあ念には念だ。頼んだよ。それとギラティナも、彼女には知覚できないようにね」
「分かりました。トリスタンも準備しておくように伝えたほうがいいですか?」
「まあ念には念だ。頼んだよ。それとギラティナも、彼女には知覚できないようにね」
部屋の一室で蹲ったままの巨体に目をやりつつ、キュゥべえはそうアクロマに告げて、静かに部屋を立ち去っていった。
扉を出るのではなく、壁をすり抜けるようにして。
扉を出るのではなく、壁をすり抜けるようにして。
◇
何もない、真っ暗な闇の中に包まれた感覚。
まるで夢を見ることもないほどにぐっすりと眠っていた時から目が覚める直前のそれに似ている。
まるで夢を見ることもないほどにぐっすりと眠っていた時から目が覚める直前のそれに似ている。
「…ん……っ…」
自分自身が無意識下で息を吐き出す音が耳に届き、それが意識を浮上させる。
目を開くと、ぼやけた視界に映ったのは薄暗い空間。
そこに壁にもたれかかるような形で座り込んでいた。
地面は鉄製なのか石造りなのか、石であったとしてそれが自然石なのか人工石なのか、それもよく分からない冷たさを感じている。
そして壁もそれと同じような物体でできている様子だ。
目を開くと、ぼやけた視界に映ったのは薄暗い空間。
そこに壁にもたれかかるような形で座り込んでいた。
地面は鉄製なのか石造りなのか、石であったとしてそれが自然石なのか人工石なのか、それもよく分からない冷たさを感じている。
そして壁もそれと同じような物体でできている様子だ。
「……ここは…」
目を開いた暁美ほむらは自身の記憶を呼び起こす。
確か自分は美国織莉子と戦い、敗北し。
命を奪われる直前にアリスに助けられ。
しかし消耗したソウルジェムを回復させる手段がなかった自分はアリスに自分のそれを破壊するようにお願いして。
確か自分は美国織莉子と戦い、敗北し。
命を奪われる直前にアリスに助けられ。
しかし消耗したソウルジェムを回復させる手段がなかった自分はアリスに自分のそれを破壊するようにお願いして。
それが最後の記憶。
の、はずだというのに、その後何かがあったような気がしている。
まるで夢でも見ていたかのような、現実なのかどうかすらあやふやだが何かがあったような、そんな感覚が。
の、はずだというのに、その後何かがあったような気がしている。
まるで夢でも見ていたかのような、現実なのかどうかすらあやふやだが何かがあったような、そんな感覚が。
(死後の世界…なんてものじゃなさそうね)
見下ろすと、そこに見えたのは見滝原中学校の制服。これは間違いなく自分の体が着ていた服だ。
深呼吸をしてみる。確かに空気を吸っているし、自身の心臓の鼓動も感じられている。
深呼吸をしてみる。確かに空気を吸っているし、自身の心臓の鼓動も感じられている。
(…だとすると……そうだ、ソウルジェムは…)
あの時アリスに破壊をお願いした自分の生命の結晶でもある宝石。
それが今あるのかどうかで、今の自身の現状を確認することができるかもしれない。
平時であれば指輪型にして手に備え付けられているはずのもの。確認のために手元を見ようと、後ろに置かれた手を前に出そうとして。
しかし後手に回された手は何かに繋がれたように拘束されており、前に出すことはできなかった。
それが今あるのかどうかで、今の自身の現状を確認することができるかもしれない。
平時であれば指輪型にして手に備え付けられているはずのもの。確認のために手元を見ようと、後ろに置かれた手を前に出そうとして。
しかし後手に回された手は何かに繋がれたように拘束されており、前に出すことはできなかった。
「どうやら、あまり愉快なことになってるってわけじゃなさそうね」
よく見ると、自分の足首にも拘束するかのような鎖がつけられている。
足にはめられた枷は赤黒い色をしている。少し動かしてその材質を確認してみる。少なくとも金属の類ではないようだ。
足にはめられた枷は赤黒い色をしている。少し動かしてその材質を確認してみる。少なくとも金属の類ではないようだ。
ともあれ拘束も解けない以上、見えないものは仕方がない。手探りで指を確認していく。
しかし、
しかし、
「ないわね…」
本来そこにあるはずの指輪型のソウルジェムはどの指にもつけられてはいなかった。
ここが死後の世界ということでないならば付近のどこかにあるはずだ。
ここが死後の世界ということでないならば付近のどこかにあるはずだ。
(そもそも、どうして私はこんなところに?)
まず現状把握する上で考えねばならぬこと。
もし誰かによってここに連れてこられた、という可能性についてを考えねばならない。
それは誰なのか、何の目的があってのことなのか。
もしそうならばソウルジェムもその何者かによって抑えられているのかもしれない。
もし誰かによってここに連れてこられた、という可能性についてを考えねばならない。
それは誰なのか、何の目的があってのことなのか。
もしそうならばソウルジェムもその何者かによって抑えられているのかもしれない。
「………考えるまでもないわね。こんなことをしそうなやつって言ったら」
「気がついたようだね、暁美ほむら」
「気がついたようだね、暁美ほむら」
寝覚めで頭の回転が鈍っていたようだが、少し考えれば思いつくことだ。
あの時もきっと、姿を変えてどこか自分の近くに潜んでいたのだろう生物。
自分に呼びかける声の主は白い尾を振りながら小さな歩幅で歩み寄ってくる。
何も知らぬ人が見れば愛嬌を感じるだろうその姿も、自分にしてみれば白々しいものにしか感じられなかった。
あの時もきっと、姿を変えてどこか自分の近くに潜んでいたのだろう生物。
自分に呼びかける声の主は白い尾を振りながら小さな歩幅で歩み寄ってくる。
何も知らぬ人が見れば愛嬌を感じるだろうその姿も、自分にしてみれば白々しいものにしか感じられなかった。
「インキュベーター…。私に、一体何があったの?」
そんな相手に頼るというのも癪ではあったが、自分に何があったのかすらも分からない以上やむを得ない。
こいつならば何があったのかも知っているはずだ。
こいつならば何があったのかも知っているはずだ。
「ふむ、一つ聞きたいんだけど、君はどこまで覚えているかい?
君の記憶がある限りのところで構わないよ」
「私は、美国織莉子と戦って…、負けて命を落としたはず。
ソウルジェムを濁り切らせた私は、魔女になる前にアリスに壊すようにお願いした。それが最後の記憶よ」
「なるほどね。じゃあ君が考えているのは、ここが死後の世界か、それとも壊すのが間に合わずに魔女となってしまった後の世界、と考えているということかな?」
「後者は思いつかなかったけど、ただ前者にしてもかなり滑稽な仮説よね」
「残念だけどそのどっちでもない。今君は生きているよ」
「みたいね」
「ただその原理は僕の理解の範疇をも越えたものだけどね」
君の記憶がある限りのところで構わないよ」
「私は、美国織莉子と戦って…、負けて命を落としたはず。
ソウルジェムを濁り切らせた私は、魔女になる前にアリスに壊すようにお願いした。それが最後の記憶よ」
「なるほどね。じゃあ君が考えているのは、ここが死後の世界か、それとも壊すのが間に合わずに魔女となってしまった後の世界、と考えているということかな?」
「後者は思いつかなかったけど、ただ前者にしてもかなり滑稽な仮説よね」
「残念だけどそのどっちでもない。今君は生きているよ」
「みたいね」
「ただその原理は僕の理解の範疇をも越えたものだけどね」
そう言ってインキュベーターはどこからともなく白金色の球を取り出す。
確かそれはマオを殺し道具を回収した際に紛れていたものだ。
用途も分からずだたの石と判断していたが。
確かそれはマオを殺し道具を回収した際に紛れていたものだ。
用途も分からずだたの石と判断していたが。
「…なるほど、それが本命だったわけね」
「そういうことだ。誤魔化したことについては謝るけどね。
詳細は省かせてもらう、というよりは僕達にも何が起きたのか理解できていないんだけど。
これは白金球という名前があるんだけど」
「そういうことだ。誤魔化したことについては謝るけどね。
詳細は省かせてもらう、というよりは僕達にも何が起きたのか理解できていないんだけど。
これは白金球という名前があるんだけど」
淡々と語っている口調には申し訳なさそうな様子は微塵もない。
そのままキュゥべえは白金球を転がしながら、その前足を乗せる。
一瞬その足が光ったと思うと、球も釣られて光り出し。
そのままキュゥべえは白金球を転がしながら、その前足を乗せる。
一瞬その足が光ったと思うと、球も釣られて光り出し。
「…痛っ……」
体に軽い痛みが走った。
それは体のどこが、というものではない。痛覚そのものを直接刺激してくるかのようなもの。
断続的に感じる痛みは目の前のキュゥべえの発する光のタイミングとリンクしている。
それは体のどこが、というものではない。痛覚そのものを直接刺激してくるかのようなもの。
断続的に感じる痛みは目の前のキュゥべえの発する光のタイミングとリンクしている。
「大まかに説明させてもらうと、この白金球、君の砕けたソウルジェムの代わりを果たしているみたいなんだ」
◇
「というわけなんだ」
道具、白金球を利用することによる神の眷属のポケモンの召喚。
それが自分の死によって生まれた因果のエネルギーが果たされたという。
そしてそれを成した瞬間、白金球に私の魂が宿ったのだという。
それが自分の死によって生まれた因果のエネルギーが果たされたという。
そしてそれを成した瞬間、白金球に私の魂が宿ったのだという。
「何を言ってるのかよく分からないわね」
「ああ、流石にこんなことは前例がない。
だからこそサンプルとして君のことを保護させてもらった」
「研究対象のモルモットってわけね」
「否定はしないよ」
「じゃあこの鎖は私が余計なことをしないための拘束ってところかしら」
「ああ、流石にこんなことは前例がない。
だからこそサンプルとして君のことを保護させてもらった」
「研究対象のモルモットってわけね」
「否定はしないよ」
「じゃあこの鎖は私が余計なことをしないための拘束ってところかしら」
手足を拘束している鎖の材質は分からない。が、こんな特殊な状態になっている自分を縛っている以上ただの物質ではない可能性も高い。
「まあそうだね。君がおとなしくしてくれている保証がなかったし。
もしも君が下手に抵抗するようなら、その鎖の力を使って君の命を消させてもらうことになる。
石自体は壊せないけど、その中にある君の魂は別物だからね」
「そう。生憎私にあなた達に抵抗しようとは思わないわ」
もしも君が下手に抵抗するようなら、その鎖の力を使って君の命を消させてもらうことになる。
石自体は壊せないけど、その中にある君の魂は別物だからね」
「そう。生憎私にあなた達に抵抗しようとは思わないわ」
今自分を生かしているということは自分に利用価値があるということだ。それが何なのかは分からないが。
そうでないのならばキュゥべえの言うようにすぐさま殺してしまえばいい。
逆に言えば、これは取引材料にすることもできると推測できた。
そうでないのならばキュゥべえの言うようにすぐさま殺してしまえばいい。
逆に言えば、これは取引材料にすることもできると推測できた。
「それで、私にどうしろというのかしら?」
「僕達の会場の管理についての手伝いをしてくれればいい。
もしそうしてくれるなら、成功した暁には君の願いの一旦を叶えてあげることを約束しよう。
開始の時にアカギが説明していた願いを叶える奇跡、その一旦でね」
「具体的には?」
「それは今の君がどんな力を持っているのかを調べる必要があるから、それまでは保留だ」
「断るという選択肢はないんでしょう?」
「君は断るなんて思っていないよ。そうでなければあの時僕と取引なんてせずに撃ち殺してたはずだよね」
「僕達の会場の管理についての手伝いをしてくれればいい。
もしそうしてくれるなら、成功した暁には君の願いの一旦を叶えてあげることを約束しよう。
開始の時にアカギが説明していた願いを叶える奇跡、その一旦でね」
「具体的には?」
「それは今の君がどんな力を持っているのかを調べる必要があるから、それまでは保留だ」
「断るという選択肢はないんでしょう?」
「君は断るなんて思っていないよ。そうでなければあの時僕と取引なんてせずに撃ち殺してたはずだよね」
そう、あの時こいつの存在を受け入れた時点でもう選択肢はなくなっているのだ。
あの場でキュゥべえやアカギの企みに抗おうとしている者達を、あるいはまどかをも裏切る可能性を秘めたまま、ここまでやってきた。
猫のことを誰に話すこともなく、全ての情報を自分の中に隠し込んで。
今更、この白い悪魔に手を貸すことに迷う資格などない。
あの場でキュゥべえやアカギの企みに抗おうとしている者達を、あるいはまどかをも裏切る可能性を秘めたまま、ここまでやってきた。
猫のことを誰に話すこともなく、全ての情報を自分の中に隠し込んで。
今更、この白い悪魔に手を貸すことに迷う資格などない。
「少し着いてきてくれないかな。アカギのことは知っているだろうし、紹介しておきたい者達もいる。
君の体の検査も兼ねて、ね」
君の体の検査も兼ねて、ね」
そう言うと同時、壁から鎖が外れて体が自由を取り戻す。
手の拘束も合わせて解けたこともあり前に出して手首を確かめると、鎖と同じ色をした枷が残っており、そこから何かの小さな機器が点滅するかのように光っている。
ともあれ、他に体を縛るものはないだろうかと思って体を動かしてみると、胸や腹にかけた辺りに違和感を感じた。
未だ外されていない手錠の残りをよく見ると、服の下へと鎖を伸ばして体に巻き付いていることに気付いた。
手の拘束も合わせて解けたこともあり前に出して手首を確かめると、鎖と同じ色をした枷が残っており、そこから何かの小さな機器が点滅するかのように光っている。
ともあれ、他に体を縛るものはないだろうかと思って体を動かしてみると、胸や腹にかけた辺りに違和感を感じた。
未だ外されていない手錠の残りをよく見ると、服の下へと鎖を伸ばして体に巻き付いていることに気付いた。
「動くのに支障はないと思うからね。その程度は我慢しておいてほしい」
部屋から出て行くその後姿について歩くほむら。
周囲の様子を見てみようと周りを見回すが、空間が歪んでいるかのように視界が定まらなかった。
それはまるで、何かの力が周囲に働いているかのようにも感じられていた。
周囲の様子を見てみようと周りを見回すが、空間が歪んでいるかのように視界が定まらなかった。
それはまるで、何かの力が周囲に働いているかのようにも感じられていた。
◇
「ふむ、お待ちしていましたよ。暁美ほむらさん」
アクロマ。アーニャ・ストレイム。
眼鏡をかけた白衣の男と、騎士装束のような服を身にまとった桃色の髪の少女。
それがキュゥべえに案内されて入った部屋でほむらを出迎えた人物だった。
眼鏡をかけた白衣の男と、騎士装束のような服を身にまとった桃色の髪の少女。
それがキュゥべえに案内されて入った部屋でほむらを出迎えた人物だった。
キュゥべえ曰く、アーニャはもう一人いるシャルル・ジ・ブリタニアなる協力者の部下だという。
現在彼女はこの場において不在のシャルルに代わり雑務をこなす傍ら連絡係を勤めているという。
一見騎士というにも若すぎる、ただの非力な少女にも見えるが油断はできないだろう。
ブリタニア。その名前はアリスから聞いているナナリーの本当の名と同じ姓だ。
彼女が言っていた、車椅子の少女があの巨人を動かすほどの能力を持っていたのであれば、彼女と同じ名を持った者の部下が只の人間とも考えにくい。
現在彼女はこの場において不在のシャルルに代わり雑務をこなす傍ら連絡係を勤めているという。
一見騎士というにも若すぎる、ただの非力な少女にも見えるが油断はできないだろう。
ブリタニア。その名前はアリスから聞いているナナリーの本当の名と同じ姓だ。
彼女が言っていた、車椅子の少女があの巨人を動かすほどの能力を持っていたのであれば、彼女と同じ名を持った者の部下が只の人間とも考えにくい。
アクロマはポケモンの管理を主として担当しているらしい。
ほむら自身ポッチャマやサイドンといった存在を所持していた時期があったため、その存在程度は把握している。
惜しむらくは、ポケモンを知る参加者とは遭遇できなかったことだろうか。故に生態についての知識が足りず、織莉子と戦った時には判断を誤ってしまった。
ほむら自身ポッチャマやサイドンといった存在を所持していた時期があったため、その存在程度は把握している。
惜しむらくは、ポケモンを知る参加者とは遭遇できなかったことだろうか。故に生態についての知識が足りず、織莉子と戦った時には判断を誤ってしまった。
「興味があるなら時間がある時に聞くといいよ。ちょうど君の体がそうなった原因もまたポケモンの一匹だからね」
キュゥべえはそう言ったが、今はその時間がある時というわけではないようだった。
こちらに迫り寄ってきたアクロマは、手首につけられた錠に装着されていた小さな機器を取り外す。
それを小さなPCに取り付けると心電図のような線が画面を走った後で記号のようなものが映りだしたがそれが何なのかを読み取ることはできなかった。
こちらに迫り寄ってきたアクロマは、手首につけられた錠に装着されていた小さな機器を取り外す。
それを小さなPCに取り付けると心電図のような線が画面を走った後で記号のようなものが映りだしたがそれが何なのかを読み取ることはできなかった。
その後も特に何か変わったことをしたわけではない。
血を採取したり脈を図ったり。まるで病院での検査のよう。かつて私が入院していた時代を思い起こさせる。
血を採取したり脈を図ったり。まるで病院での検査のよう。かつて私が入院していた時代を思い起こさせる。
キュゥべえは定期的に話しかけてくるが、アクロマは事務的に仕事をこなすのみ。アーニャも離れた場所でじっと見つめているだけ。
私もあることに意識を割いていたため、あまり話しかけることもなかったのだが。
私もあることに意識を割いていたため、あまり話しかけることもなかったのだが。
「何も異常はないですね」
そうして様々な検査が行われた後、アクロマから告げられたのがそれだけだった。
首をかしげながらキュゥべえは問いかける。
首をかしげながらキュゥべえは問いかける。
「本当に何も異常はないのかい?」
「ええ。心拍数から血液検査など、様々な角度から確認してみましたが彼女は生きている健康体の人間の状態そのものです。それもかなり理想的な」
「ふぅん」
「では少し外に出ていただいても構わないでしょうか。キュゥべえ君達も、一旦」
「ええ。心拍数から血液検査など、様々な角度から確認してみましたが彼女は生きている健康体の人間の状態そのものです。それもかなり理想的な」
「ふぅん」
「では少し外に出ていただいても構わないでしょうか。キュゥべえ君達も、一旦」
それっきり部屋から追い出されることになった。
自分だけではなく、アーニャとキュゥべえも一緒に、だ。
自分だけではなく、アーニャとキュゥべえも一緒に、だ。
露骨なまでの人払いだが、そこで渋ったところで何にもならない。
キュゥべえに先導されるまでもなく、部屋の外の廊下に出る。
キュゥべえに先導されるまでもなく、部屋の外の廊下に出る。
「少し待っていてほしい。すぐ終わるらしいからね」
そう言ったキュゥべえの言葉にまたも病院での検査後の待合室のようなものを感じつつも、静かに壁に背をもたれかからせたまま床に座り込んだ。
(体は健康そのもの、ね)
そのまま、閉じられた自動扉の向こうに目をやりながらあの中で感じた感覚を思い出す。
入った瞬間、胸がざわつき、心臓の鼓動が強くなったのを覚えている。
最初はあの部屋に私という存在を警戒し何か対策を打っていたのかとも思った。
しかしそうではない。あの部屋には何かがあった。
その感覚を受けた時、どこからともなく経験した覚えのない記憶が蘇った。
デジャヴというのだろうか。しかし経験した記憶はなくとも、それを感じ取った記憶は残っている。
入った瞬間、胸がざわつき、心臓の鼓動が強くなったのを覚えている。
最初はあの部屋に私という存在を警戒し何か対策を打っていたのかとも思った。
しかしそうではない。あの部屋には何かがあった。
その感覚を受けた時、どこからともなく経験した覚えのない記憶が蘇った。
デジャヴというのだろうか。しかし経験した記憶はなくとも、それを感じ取った記憶は残っている。
キュゥべえ達はそれに気付いているのかいないのか。
(もしその答えがあそこにあるなら)
横目に見る。
壁に背を預けこちらを監視するように見つめるアーニャ、そして私の横で丸くなったキュゥべえ。
壁に背を預けこちらを監視するように見つめるアーニャ、そして私の横で丸くなったキュゥべえ。
話しかけてくる様子はない。
つまりは複数の者がいる場所で、一人で時間を潰すしかないのだ。
それにおかしな経験をして目が覚めたばかり。
つまりは複数の者がいる場所で、一人で時間を潰すしかないのだ。
それにおかしな経験をして目が覚めたばかり。
眠くなったところで、不自然さなどない。
ほむらは自然に、ゆっくりと瞳を閉じて意識を落とし。
同時に、自分の感覚を体の奥から感じている共鳴に同化させた―――――
同時に、自分の感覚を体の奥から感じている共鳴に同化させた―――――
◇
「それで、結局どうだったんだいほむらは?」
「さっき言った通りです。人間としてあまりにも健康でした。あなたの前では魔法少女、とでも言ったほうがよろしいのでしょうかね。
私の取り付けた機材が記録した、彼女から発されている信号は確かに彼女をポケモンのそれだ、と認識したにも関わらずです」
「…つまりどういう状態なんだい?」
「今の彼女は人間でありポケモンでもある、という不可解にして興味深い存在となっているということですよ。
今の彼女であれば、ギラティナの力を自分のものとしてある程度使役することもできるかもしれません」
「さっき言った通りです。人間としてあまりにも健康でした。あなたの前では魔法少女、とでも言ったほうがよろしいのでしょうかね。
私の取り付けた機材が記録した、彼女から発されている信号は確かに彼女をポケモンのそれだ、と認識したにも関わらずです」
「…つまりどういう状態なんだい?」
「今の彼女は人間でありポケモンでもある、という不可解にして興味深い存在となっているということですよ。
今の彼女であれば、ギラティナの力を自分のものとしてある程度使役することもできるかもしれません」
アクロマと話しているのはほむらと共に部屋を出たキュゥべえ。
だがその白い体はほむらの傍に確かに存在するはずのものだ。
だがその白い体はほむらの傍に確かに存在するはずのものだ。
ネタなど簡単なことだ。この場にいるキュゥべえとは別の個体が会場に潜り込んで猫に擬態しているように、アクロマと話している個体もまた、今のほむらの傍にいるものとは別のもの。
ほむらはそのことについて知らぬはずもない。故にほむらの傍に見張り役として一匹の個体が張り付いているのだ。彼女が例えば魔法を使って盗聴をするなどということがないように。
もし強引にそれを振りほどこうとしたならば、もう一人の見張り、アーニャが取り押さえるだろう。
ほむらはそのことについて知らぬはずもない。故にほむらの傍に見張り役として一匹の個体が張り付いているのだ。彼女が例えば魔法を使って盗聴をするなどということがないように。
もし強引にそれを振りほどこうとしたならば、もう一人の見張り、アーニャが取り押さえるだろう。
「なるほど、確かギラティナの持つ固有能力は確か世界に歪みが生じた際に安定させるというものだったかな」
「ええ、ですがこの殺し合いの場に張られた結界を越えての干渉ができないことは、先程までの様子から察していただけると思います。
逆に言えば、この会場の安定化をある程度図ることは可能というわけですね」
「今、あの場は多数の因果の絡み合いによって徐々にエントロピーを凌駕しつつあるからね。その存在は非常に有用だ。
放送後はまず壊れたと言っていた制限装置の様子を彼女と一緒に見に行こうと思う。
ただでさえ巴マミの魔女化やゼロのガウェインの制限の緩和で異変が起こっている。もし”まだ”その時でないのなら対策も急ぐ必要があるしね」
「ええ、ですがこの殺し合いの場に張られた結界を越えての干渉ができないことは、先程までの様子から察していただけると思います。
逆に言えば、この会場の安定化をある程度図ることは可能というわけですね」
「今、あの場は多数の因果の絡み合いによって徐々にエントロピーを凌駕しつつあるからね。その存在は非常に有用だ。
放送後はまず壊れたと言っていた制限装置の様子を彼女と一緒に見に行こうと思う。
ただでさえ巴マミの魔女化やゼロのガウェインの制限の緩和で異変が起こっている。もし”まだ”その時でないのなら対策も急ぐ必要があるしね」
魔法少女のソウルジェムがあの場では魔女を生むことなく破壊されるという事実を知る者は少ない。しかしそれを知ったのが行動力のあるアリスであれば、広まるにも時間はかからないだろう。
巴マミの魔女化は美樹さやか、乾巧、木場勇治、Nしか知らないことではあるが、そのNは一人他の参加者を探して戦場から離れつつある。
この2つの情報が合わされば、原因はともあれ異変に気付く者も確実に出てくる。
巴マミの魔女化は美樹さやか、乾巧、木場勇治、Nしか知らないことではあるが、そのNは一人他の参加者を探して戦場から離れつつある。
この2つの情報が合わされば、原因はともあれ異変に気付く者も確実に出てくる。
「では当面の目的は以上の通り、ということで」
「そうだね。あ、それともう一つ。僕自身も失念していたことがあった。
禁止エリアに入った人間はアカギがそうしたように刻印が発動して死に至らしめるものだけど。
もしポケモンやその他参加者ではない生き物が侵入した場合ってどうなるんだい?」
「…?いえ、特に何も起こりませんよ?」
「………………。
つまりはポケモン達は禁止エリアに入り放題だと?」
「ええ。ですからもしものことがあった時のためにポケモン城にポケモン達を配置したのですし。
さらに言えば、あの場所にいるあなたのスペアもそういった時の監視の役を果たすためのものではないのですか?」
「分かった。まだ言いたいことは残ってるけど、そろそろ時間が近い。アカギのところにも定時連絡にいかないといけないしね。
今はその確認だけで終わらせておくものとして、後でもう少しじっくり話させてもらうよ」
「そうだね。あ、それともう一つ。僕自身も失念していたことがあった。
禁止エリアに入った人間はアカギがそうしたように刻印が発動して死に至らしめるものだけど。
もしポケモンやその他参加者ではない生き物が侵入した場合ってどうなるんだい?」
「…?いえ、特に何も起こりませんよ?」
「………………。
つまりはポケモン達は禁止エリアに入り放題だと?」
「ええ。ですからもしものことがあった時のためにポケモン城にポケモン達を配置したのですし。
さらに言えば、あの場所にいるあなたのスペアもそういった時の監視の役を果たすためのものではないのですか?」
「分かった。まだ言いたいことは残ってるけど、そろそろ時間が近い。アカギのところにも定時連絡にいかないといけないしね。
今はその確認だけで終わらせておくものとして、後でもう少しじっくり話させてもらうよ」
キュゥべえの質問、それはメロと美国織莉子が接触したことでポケモンによる禁止エリア侵入の可能性が認識され実行に移される可能性が見えてきたことによる懸念だった。
今後の行動にもある程度影響が出てくるほどには重要な事柄だ。
今後の行動にもある程度影響が出てくるほどには重要な事柄だ。
もしものことが起こり得るというのであれば、こちらで先手を打っておく必要もある。
「最後に一つ。白金球ですが、もし彼女にその役割を果たしてもらいたいと思うのであれば、可能なかぎり彼女の近くにそれを置いておくことをおすすめします」
「忠告感謝するよ」
「忠告感謝するよ」
それだけを最後に、キュゥべえは今度こそ退室し。
部屋の中にはアクロマ一人が残って作業を再開し始めた。
部屋の中にはアクロマ一人が残って作業を再開し始めた。
◇
(なるほど、私も踊らされていたものね)
目を閉じたままのほむらは、明晰夢のような意識の中で先の会話について思考する。
まず、あいつらは私の今の状態に気付いていない。
ギラティナとやらに意識を共感させることができるということに。
ギラティナとやらに意識を共感させることができるということに。
そのギラティナはあの部屋の中に何かしらの手段で姿を消して隠されていた様子だ。
だがそれを解放することはできないだろうし、もし可能だったとしても制御のやり方も分からない。現状のまま何も気付いていないふりをして様子を見るのが懸命だろう。
だがそれを解放することはできないだろうし、もし可能だったとしても制御のやり方も分からない。現状のまま何も気付いていないふりをして様子を見るのが懸命だろう。
そうこう考えているうちに、何者かに体を揺さぶられる感覚が走る。
気がそれに気を取られた途端、”暁美ほむら”としての意識が覚醒する。
気がそれに気を取られた途端、”暁美ほむら”としての意識が覚醒する。
「起きなさい」
ゆっくりと目を開くと、目の前にはアーニャの顔。
その足元にはキュゥべえが素知らぬ顔でひょこひょこと尻尾を振っている。
その足元にはキュゥべえが素知らぬ顔でひょこひょこと尻尾を振っている。
「時間よ。ついてきて」
「…………」
「…………」
ゆっくりと立ち上がると、その先導に従って部屋から離れるように廊下を進み始めた。
あの共感以降、それまで感じていた空間の視覚的な歪みが減っているように感じられた。
あれもあのギラティナなるポケモンの力に近い何かで制御しているものなのだろうか。
などと考えつつ。
あの共感以降、それまで感じていた空間の視覚的な歪みが減っているように感じられた。
あれもあのギラティナなるポケモンの力に近い何かで制御しているものなのだろうか。
などと考えつつ。
「…そういえば一ついいかしら?」
「何?」
「私って、アリスに撃たれて、死んだのよね?」
「何?」
「私って、アリスに撃たれて、死んだのよね?」
その道中、ふと私はアーニャに問いかけた。
あくまでも自然な流れで。
ただ私は自分の最期がどのような形であったのかが気になって問うていると思わせられるように。
あくまでも自然な流れで。
ただ私は自分の最期がどのような形であったのかが気になって問うていると思わせられるように。
「自分の死に様がそんなに気になるのかい?」
「…そうね。まさか死んだ後で蘇るなんて目に会うなんて思ってもみなかったもの。自分がどんな風に死んだのか、気になるのは当然でしょう?」
「じゃあ僕が答えよう。君のソウルジェムはあの時完全に濁りきっていた。平時であれば魔女をいつ産んでもおかしくないほどにね」
「そう…。じゃあ私はアリスに撃たれて死んだ、ということね」
「…そうね。まさか死んだ後で蘇るなんて目に会うなんて思ってもみなかったもの。自分がどんな風に死んだのか、気になるのは当然でしょう?」
「じゃあ僕が答えよう。君のソウルジェムはあの時完全に濁りきっていた。平時であれば魔女をいつ産んでもおかしくないほどにね」
「そう…。じゃあ私はアリスに撃たれて死んだ、ということね」
砕かれたソウルジェム、しかしあの時何かが発生して私はこうして命を繋いだ。
そう考えるのが自然だろう。
可能であればその先の情報も得ることであの時聞いた情報に間違いがないことの確証を得よう。
そう考えながら呟いた。
そう考えるのが自然だろう。
可能であればその先の情報も得ることであの時聞いた情報に間違いがないことの確証を得よう。
そう考えながら呟いた。
「いいえ、あの子は撃たなかったわ」
しかしその言葉を否定したのはアーニャだった。
こちらに目を向けることなく、私の前を歩きながら答えていた。
こちらに目を向けることなく、私の前を歩きながら答えていた。
「…どういうこと?」
「言葉通りの意味よ。あの子は命が尽きかけたあなたを撃たなかった」
「じゃあ、私は魔女になったっていうの?」
「それは僕から説明させてもらうよ。あの場では基本的に魔女が生まれることはない。濁りきったソウルジェムはグリーフシードと化す前に自壊するようになっていたんだ。
少なくとも君が死んだ段階では、ね」
「…………」
「要するにそういうことよ。あの子はあなたがもしかしたら魔女となるかもしれない、その可能性を突き付けられて尚、あなたを撃てなかった」
「…そう……」
「聞きたいことは聞けたかい?」
「ええ」
「言葉通りの意味よ。あの子は命が尽きかけたあなたを撃たなかった」
「じゃあ、私は魔女になったっていうの?」
「それは僕から説明させてもらうよ。あの場では基本的に魔女が生まれることはない。濁りきったソウルジェムはグリーフシードと化す前に自壊するようになっていたんだ。
少なくとも君が死んだ段階では、ね」
「…………」
「要するにそういうことよ。あの子はあなたがもしかしたら魔女となるかもしれない、その可能性を突き付けられて尚、あなたを撃てなかった」
「…そう……」
「聞きたいことは聞けたかい?」
「ええ」
それで会話は終わった。
情報を得られるかどうかは賭けに近かった。
そもそも自分の状態も分からぬまま、話がそれで打ち切られてしまう可能性だってあったのだから。
だが棚から牡丹餅とでもいうべきか。キュゥべえ自身がそれを隠す事自体に重要性を感じなかったのだろうか。
欲しかった情報はあっさりと話してくれた。
そもそも自分の状態も分からぬまま、話がそれで打ち切られてしまう可能性だってあったのだから。
だが棚から牡丹餅とでもいうべきか。キュゥべえ自身がそれを隠す事自体に重要性を感じなかったのだろうか。
欲しかった情報はあっさりと話してくれた。
少なくともあの時に聞いた会話の一部に確証が取れていることが確認できた。
あの共感覚は事実として私の中にあるのだろう。
これは可能な限り隠さねばならない。現状の私にとって、ほぼ唯一に近い手札なのだから。
あの共感覚は事実として私の中にあるのだろう。
これは可能な限り隠さねばならない。現状の私にとって、ほぼ唯一に近い手札なのだから。
「……………アリスは、どうしてるの?」
「間もなく放送を聞くはずだよ。君の名前が呼ばれる放送を」
「間もなく放送を聞くはずだよ。君の名前が呼ばれる放送を」
アリスは私を撃たなかった。
私が魔女を産むかもしれないという可能性を残していると認識した上で。
魔女の危険性を実物として知らないのであれば仕方ないといえるのかもしれない。
魔女の危険性を実物として知らないのであれば仕方ないといえるのかもしれない。
だが。
(…甘いわね、あなたは)
脳裏に浮かぶのは、忘れもしない、この手でまどかのソウルジェムを砕いたあの瞬間の光景。
私はあの時、魔女になりかけた大切な人の命を撃ち抜いた。
涙を流しながら、そうすることでしかまどかを救うことができない自分に絶望しながら。
私はあの時、魔女になりかけた大切な人の命を撃ち抜いた。
涙を流しながら、そうすることでしかまどかを救うことができない自分に絶望しながら。
大切な友達だった、あの子を死なせた。
もしアリスがあの時の自分と同じ状況であったとしたら、あの子は撃っただろうか。
そんな仮定が浮かんで、しかし意味のないことだと思考を撃ち切った。
まどかと私の関係は、あの子と私とのそれとは違うものだ。同じ状況には成り得ない。
そんな仮定が浮かんで、しかし意味のないことだと思考を撃ち切った。
まどかと私の関係は、あの子と私とのそれとは違うものだ。同じ状況には成り得ない。
アリスと私との関係。
ただ偶然出会って、ずっと共に行動して、時に助け合って、あの子の決意を見届けて。
そして最期を看取られた。
その中にあったものは何だったのだろうか。
ただ偶然出会って、ずっと共に行動して、時に助け合って、あの子の決意を見届けて。
そして最期を看取られた。
その中にあったものは何だったのだろうか。
ただ、それはこれまで繰り返してきた時間の中にはなかった、新鮮な関係ではあったような気がする。
ほんの一日にも満たない時間、共に過ごしてきただけの相手。
ほんの一日にも満たない時間、共に過ごしてきただけの相手。
何故だろうか。
今も生きて戦っているだろうあの少女が。
これから流れる放送で私の名前を呼ばれた時のことを考えると、胸に小さく針を刺すかのような痛みが走るような気がするのは。
今も生きて戦っているだろうあの少女が。
これから流れる放送で私の名前を呼ばれた時のことを考えると、胸に小さく針を刺すかのような痛みが走るような気がするのは。
【?????/一日目 夕方】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?、あかいくさりによる拘束
[服装]:見滝原中学校の制服、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:キュゥべえ達に従うふりをして、”目的”のための隙を伺う。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
魔法少女としての力が使用できるかどうかは現状不明です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっているため次の放送では名前を呼ばれます。
※ギラティナと感覚が共有されており、キュウべえとアクロマ達の会話を聞いていました。
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?、あかいくさりによる拘束
[服装]:見滝原中学校の制服、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:キュゥべえ達に従うふりをして、”目的”のための隙を伺う。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
魔法少女としての力が使用できるかどうかは現状不明です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっているため次の放送では名前を呼ばれます。
※ギラティナと感覚が共有されており、キュウべえとアクロマ達の会話を聞いていました。
134:理想郷は遥か遠く | 投下順に読む | 136:堕落天使 |
時系列順に読む | ||
128:あなたの存在は認めない/許さない | 暁美ほむら | 148:変わりたい少女達の話 |
128:Not Yet | キュゥべえ | 137:第三回定時放送 |
アクロマ | 155:ReStart準備中 | |
107:第二回定時放送 | マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア | 137:第三回定時放送 |