悪魔が生まれた日 Z9iNYeY9a2
時を遡る。
暁美ほむらとアーニャが情報交換をしていた頃のこと。
アーニャから、エデンバイタルの有り方についてを問うていたほむらは、ある一つの方法を考えついていた。
アーニャから、エデンバイタルの有り方についてを問うていたほむらは、ある一つの方法を考えついていた。
「本気?」
「ええ、本気よ」
「ええ、本気よ」
それは、自身の求める願い、全てのまどかの救済を叶える可能性となり、更に今のアカギ達のいるこの場における立場を盤石にしうるもの。
「一定の法則の中で、異なる世界の異なるものが類似性から同一のものと扱われる。
アリスの能力に、私のソウルジェムが魔法少女の魔力と同じものを感じたのはそれが原因だと、説明したわね」
「そうよ、だけど似てるだけ。根本的には違うもの。
更に言うわ。仮説としては有効かもしれないけど、でも私達はそんな実験は行っていない。どうなるかは分からない」
アリスの能力に、私のソウルジェムが魔法少女の魔力と同じものを感じたのはそれが原因だと、説明したわね」
「そうよ、だけど似てるだけ。根本的には違うもの。
更に言うわ。仮説としては有効かもしれないけど、でも私達はそんな実験は行っていない。どうなるかは分からない」
アーニャの口調には、ほむらを止めようとする意志が感じられた。
殺し合いの中のイレギュラーで生まれた貴重な体を案じているが故か。まさか本当に情から心配していることはないだろうが。
殺し合いの中のイレギュラーで生まれた貴重な体を案じているが故か。まさか本当に情から心配していることはないだろうが。
「第一、あなたがあれを継承するには、継承元が必要よ。
エデンバイタルを通せば力を呼び出すことはできるかもしれないけど、色んな世界の力を繋げて均衡を保っているこの場ではそこまでのことはできないのよ」
「あら、あるじゃない?
あなたの話を聞いていると、会場にはまだ残っているでしょ。
エデンバイタルと契約して力を行使する人は」
エデンバイタルを通せば力を呼び出すことはできるかもしれないけど、色んな世界の力を繋げて均衡を保っているこの場ではそこまでのことはできないのよ」
「あら、あるじゃない?
あなたの話を聞いていると、会場にはまだ残っているでしょ。
エデンバイタルと契約して力を行使する人は」
これが、暁美ほむらが意識を落とすより前にしたアーニャとの会話。
そして少しずつギラティナの力がその身に馴染み、世界の裏へと移動する力の一旦が繰ることができるようになったほむらが。
エデンバイタルへと接続を行い、会場を俯瞰していたゼロとの接触を図ったのがその後のことだった。
エデンバイタルへと接続を行い、会場を俯瞰していたゼロとの接触を図ったのがその後のことだった。
◇
一人エデンバイタルへの接続を図ったゼロの思念。
その意識の中で、ほむらはゼロへと接触した。
その意識の中で、ほむらはゼロへと接触した。
「お前は―――確かアリスと共にいた魔法少女だったか」
「暁美ほむら、よ」
「暁美ほむら、よ」
自身の意識の中に突如現れた少女に対し、しかし困惑することもなく冷静に語りかけるゼロ。
「その名は放送で呼ばれたはずだが。しかし存在の残滓には見えないな。
それも含めて色々と問いたいこともあるが、こうして私の前に姿を見せたということは何か目的があるのだろう?
聞いてやる、話すがいい」
それも含めて色々と問いたいこともあるが、こうして私の前に姿を見せたということは何か目的があるのだろう?
聞いてやる、話すがいい」
何故この場に姿を現したのか。何故現せたのか。
それらの疑問もほむらからの目的を聞けば分かることだと。
前置きを切り捨てて本題を問うゼロ。
前置きを切り捨てて本題を問うゼロ。
「なら、単刀直入に言わせてもらうわ。
あなたの持っているギアスの源である魔女の力、それを私に譲って欲しいの」
「――――……ほう?」
あなたの持っているギアスの源である魔女の力、それを私に譲って欲しいの」
「――――……ほう?」
最初の一瞬で言葉を呑み込み、次の一瞬で言葉の意図を思考し。
放たれた声は興味と警戒、そして若干の殺意と共に放たれた。
放たれた声は興味と警戒、そして若干の殺意と共に放たれた。
「私は目的のために力が必要なの。
アカギの持つ神々の力に匹敵するものが。
エデンバイタルとやらと繋がることができるあなたの力を得られるなら、それも叶うかもしれない」
「その情報、お前がエデンバイタルから直接得たものではないな。誰から聞いた?」
「アーニャからよ。アーニャ・アールストレイム」
「アーニャだと?……なるほど、あの女に気に入られたというわけか」
アカギの持つ神々の力に匹敵するものが。
エデンバイタルとやらと繋がることができるあなたの力を得られるなら、それも叶うかもしれない」
「その情報、お前がエデンバイタルから直接得たものではないな。誰から聞いた?」
「アーニャからよ。アーニャ・アールストレイム」
「アーニャだと?……なるほど、あの女に気に入られたというわけか」
アーニャの名を出したことに得心がいったのか、殺意が消えていく。
「では、幾つか問わせてもらおう。お前が魔女の力を継ぐに値するものかどうかを計るために」
しかし警戒心は変わらず、ゼロの見えない瞳から鋭い視線が向けられるのを感じ。
ほむらはそれをまっすぐに受け止めた。
ほむらはそれをまっすぐに受け止めた。
「まず一つ。お前はギアスユーザーではない。我々とは異なる法則の中に生きるものだ。
そんなお前にこの力を譲渡したとして、果たしてその体は耐えうるものなのか?」
そんなお前にこの力を譲渡したとして、果たしてその体は耐えうるものなのか?」
まずほむら自身の肉体的資質、受け継ぐことが可能なのかどうかを問うもの。
もしも力が拒絶反応を起こせば、この体は崩壊してしまうかもしれない。
無為に散りゆくものに力の譲渡を約束することを受け入れるほど、ゼロは力を持て余した存在ではなかった。
もしも力が拒絶反応を起こせば、この体は崩壊してしまうかもしれない。
無為に散りゆくものに力の譲渡を約束することを受け入れるほど、ゼロは力を持て余した存在ではなかった。
「それは、可能性はある、としか答えられないわね。
多くの世界の法則が混じり合ったこの場であればあるいは、ってところ。
だけどギアスと魔法少女の力が近しいものとして扱われていることは実証済み。決して可能性がゼロではないと信じているわ」
「己の体が消滅するかもしれないリスクがあって尚も、挑むということか」
「ええ。私自身の果てのない望みを叶えるためだもの。それに一度死ぬはずだった体、今更命をかけることを躊躇ったりはしないわ」
多くの世界の法則が混じり合ったこの場であればあるいは、ってところ。
だけどギアスと魔法少女の力が近しいものとして扱われていることは実証済み。決して可能性がゼロではないと信じているわ」
「己の体が消滅するかもしれないリスクがあって尚も、挑むということか」
「ええ。私自身の果てのない望みを叶えるためだもの。それに一度死ぬはずだった体、今更命をかけることを躊躇ったりはしないわ」
ほむらの答えには迷いはなかった。
死というリスクがあって尚、欲望、いや、願いのために邁進する覚悟を持っていた。
死というリスクがあって尚、欲望、いや、願いのために邁進する覚悟を持っていた。
次に問うのは、精神的資質、受け継ぐに足る心を持っているのかどうか。
「いいだろう、なら二つ目だ。
この力を得た者には相応の役割が与えられる。世界の調律を果たすための歯車となる役割がな。
お前に、その覚悟はあるのか?己を殺してその役を受け入れることができるか?」
「できるわ。あの子の世界を守るために必要だというのなら。
――逆にあの子を世界が拒絶するというのなら、世界を壊す覚悟もある」
この力を得た者には相応の役割が与えられる。世界の調律を果たすための歯車となる役割がな。
お前に、その覚悟はあるのか?己を殺してその役を受け入れることができるか?」
「できるわ。あの子の世界を守るために必要だというのなら。
――逆にあの子を世界が拒絶するというのなら、世界を壊す覚悟もある」
一息入れてそう告げるほむらの瞳は真っ直ぐだった。
世界を壊す。ゼロ自身の思惑からは外れる行為ではあったが、しかしその目は決して嫌いではなかった。
世界を壊す。ゼロ自身の思惑からは外れる行為ではあったが、しかしその目は決して嫌いではなかった。
あるいはこの娘なら、この世界のシステムの中に迎合していった自分とは異なるやり方で世界の形を導いていく可能性もあるかもしれない。
「なら最後の問いだ。
これまでの質問にいくら望む答えを出そうと、このギアスは私が手放さない限りはお前の手元に向かうことはない。
もし手放すことがあるとすれば私が死ぬ時だろうな。だが私は死ぬつもりはない。
どうするつもりだ?この場で力づくで私から奪うというのか?」
これまでの質問にいくら望む答えを出そうと、このギアスは私が手放さない限りはお前の手元に向かうことはない。
もし手放すことがあるとすれば私が死ぬ時だろうな。だが私は死ぬつもりはない。
どうするつもりだ?この場で力づくで私から奪うというのか?」
最後の問いは手段。
まだ生があり、死を望むこともないこの魔王から、如何にして力を継ぐというのか。
まだ生があり、死を望むこともないこの魔王から、如何にして力を継ぐというのか。
「今の私にあなたと戦う力はないわ。こうしてあなたと話しているのも、それなりに無茶なことをしているわけだし。
だけど、そこに心配はいらないと思っている。いずれ、そうね、近いうちにあなたは負けるでしょうね」
「ほう」
だけど、そこに心配はいらないと思っている。いずれ、そうね、近いうちにあなたは負けるでしょうね」
「ほう」
その返答に、若干興味を引かれるかのような反応を示すゼロ。
「この魔王たる私が敗れるというのか?」
「ええ。あなたはいつか必ず敗れ、命を落とすと思うわ」
「ええ。あなたはいつか必ず敗れ、命を落とすと思うわ」
「何を根拠に?」
「根拠なんて。決まっているでしょう」
「根拠なんて。決まっているでしょう」
「だって、魔王っていうのは、いつだって勇者に倒されるものじゃないの」
その回答に、一瞬虚を突かれたように思考を止められてしまうゼロ。
「―――勇者」
「ええ」
「いると思うのか?そのような存在が」
「いるわ」
「ええ」
「いると思うのか?そのような存在が」
「いるわ」
ゼロはその先の根拠を問うたりはしなかった。
この少女は、まさに子供のような幼稚な発想を持ってこの魔王を説き伏せようとしているのだ。
この少女は、まさに子供のような幼稚な発想を持ってこの魔王を説き伏せようとしているのだ。
もしこれを聞いたのがルルーシュであったならば虚に取られた後その意味を考えて長考してしまっただろう。
なのに、その言葉に妙な説得力を感じてしまった。
あるいはこの夢幻の場において感じ取っていたのかもしれない。
殺し合いを生き抜き、多くの死を乗り越えた者の因果がこの魔王の首元に刃を突きつけようとしている気配を。
あるいはこの夢幻の場において感じ取っていたのかもしれない。
殺し合いを生き抜き、多くの死を乗り越えた者の因果がこの魔王の首元に刃を突きつけようとしている気配を。
それが勇者とでも名付けられるような存在なのかもしれない。
「ふ、フハハハハハハハハハハハ!!!」
言われなければ気付かなかっただろうそんな小さな死の気配を意識させられてしまった。
一周回ってあまりにも愉快な事実に思わず笑いだしてしまった。
一周回ってあまりにも愉快な事実に思わず笑いだしてしまった。
「いいだろう!魔法少女よ!
私が命を落とした際には、この力を受け継ぐことを許可しよう!」
「……!!」
私が命を落とした際には、この力を受け継ぐことを許可しよう!」
「……!!」
ほむらの無表情を作ろうとしている瞳の内に歓喜の色が映る。
「ただし―――」
だが、ゼロとてほむらに過度の配慮をするつもりはない。
あくまでも力を受け継ぐことを許可しただけ。
あくまでも力を受け継ぐことを許可しただけ。
「力はお前が受け取りに来い。エデンバイタルに取り込まれて消えてなくなる前に、な」
エデンバイタルに還る時、この力は今いるこの夢の空間より更に奥を進むだろう。
言わずともほむらはいずれその事実に気付くはずだ。
言わずともほむらはいずれその事実に気付くはずだ。
「無論、容易なことではなかろう。故に私からの試練とでも受け取るがいい」
「―――分かったわ、あとのことはこっちでどうにかする」
「―――分かったわ、あとのことはこっちでどうにかする」
これ以上ねだるのも限界だろう。むしろ下手に強請って機嫌を損ねることの方が怖い。
会話は終わったとこちらに背を向けるほむら。
会話は終わったとこちらに背を向けるほむら。
「一つ言っておこう」
そこに一言、ゼロが呼びかけた。
「お前の願いは知らん。だが、この力を得た時にお前が進む道は孤独の道だ。
その覚悟は私が死ぬまでにしておくがいい」
「……孤独の道、ね。
そんなもの、ずっと歩んできたわ」
その覚悟は私が死ぬまでにしておくがいい」
「……孤独の道、ね。
そんなもの、ずっと歩んできたわ」
答えるつもりもなかったが思わず、ほむらはゼロの呼びかけに答えていた。
これが、ゼロがスザク、セイバーという勇者と戦うより前、夢幻の空間でほむらと交わした会話。
◇
そうして、ゼロは死んだ。
聖剣エクスカリバーの星の光は、エデンバイタルから承った魔王の体をもってしても耐えられなかったのだ。
聖剣エクスカリバーの星の光は、エデンバイタルから承った魔王の体をもってしても耐えられなかったのだ。
ゼロが消滅した今現在。
形を失い、集合無意識の中へと還っていこうとするコードの軌跡の前に、黒い影はいた。
形を失い、集合無意識の中へと還っていこうとするコードの軌跡の前に、黒い影はいた。
ここまで来るのは大変であった。
ゼロがいつ倒されても間に合うように早急にこの場所へとたどり着く準備を進めた。
ゼロがいつ倒されても間に合うように早急にこの場所へとたどり着く準備を進めた。
アクロマを説得してギラティナを縛る赤い鎖の力を緩め、ほむらの中に宿った、ギラティナの持つ異空間へと渡る力を増幅させた。
そうして空間を渡って門の近くへと来た。
しかしその姿はほむらのものではない。黒く巨大な翼を持った骨のような竜の姿。
そうして空間を渡って門の近くへと来た。
しかしその姿はほむらのものではない。黒く巨大な翼を持った骨のような竜の姿。
『念の為の保険ですよ。あなたがその力を受け継ぐことができるかどうか、できたとして例えば拒絶反応などが起きて肉体が崩壊することが無いように』
ぐったりとしたギラティナに、紫色のガスを浴びせるアクロマ。
それを見つめるほむらの頭部には、怪しい機械が取り付けられている。
それを見つめるほむらの頭部には、怪しい機械が取り付けられている。
そのガスはアクロマのいる世界の派生の一つの中で生み出された道具。
ある狂気の思想に陥った男が開発した、人間の精神をポケモンの内に転移させるというものらしい。
ある狂気の思想に陥った男が開発した、人間の精神をポケモンの内に転移させるというものらしい。
『伝説のポケモンをこのようなことに使うのは甚だ不本意ではありますが、今は私の命が第一です。それにギラティナほどの力であれば存在崩壊、死まで至ることはないでしょうし』
ほむらは適当に言い繕えばいいとは言ったが、言い訳として通じるとは限らない。
ならばむしろ成功してこちらの安全を確保することの方が優先事項だと。
ならばむしろ成功してこちらの安全を確保することの方が優先事項だと。
そういって機械のスイッチを操作したところで、ほむらの意識はギラティナの中へと取り込まれていった。
それがほむらの体がギラティナと化した経緯。
念を入れてくれるのはありがたいが、おかげでゼロの死ギリギリにこの場に到着することになってしまった。
念を入れてくれるのはありがたいが、おかげでゼロの死ギリギリにこの場に到着することになってしまった。
目の前を飛ぶ、エネルギーの塊となった光の球に静かに触れるほむら。
瞬間、全身に激しい衝撃が走り、同時に意識に混濁が起こった。
肉体をギラティナに依存させ、自身の存在は精神だけに留めているような状況で、まるで全身の内側から剣が生えてくるような感覚に襲われる。
肉体をギラティナに依存させ、自身の存在は精神だけに留めているような状況で、まるで全身の内側から剣が生えてくるような感覚に襲われる。
それだけでも気がおかしくなりそうな状況で、自分の意識の中に様々な光景がひたすら移り続けていく。
人が進化していく歴史。積み上がっていく屍。
多くの魔法少女の希望と絶望の歴史。
それだけではない。エデンバイタルの管理外の世界の光景すらも、会場につながった門を通じて流れ込んでくる。
多くの魔法少女の希望と絶望の歴史。
それだけではない。エデンバイタルの管理外の世界の光景すらも、会場につながった門を通じて流れ込んでくる。
二匹のそっくりな白い獣が争う様子。
空を飛ぶ巨大な建造物から放たれる赤い光。
炎に燃えていく男を看取る死神。
ピンク色の悪魔に飛び蹴りを放つ金色の魔王。
神殿のような場所で殴り合う魔神と少年。
空を飛ぶ巨大な建造物から放たれる赤い光。
炎に燃えていく男を看取る死神。
ピンク色の悪魔に飛び蹴りを放つ金色の魔王。
神殿のような場所で殴り合う魔神と少年。
あまりにも多い情報量に脳が悲鳴を上げる。
だが、これでも肉体的な負担はギラティナに押し付けているからこそ耐えられているのだということが分かる。
もしこれが元々の暁美ほむらとして受けたものであれば、きっと耐えきれず意識は霧散し消滅していただろう。
もしこれが元々の暁美ほむらとして受けたものであれば、きっと耐えきれず意識は霧散し消滅していただろう。
脳裏を過ぎていくたくさんの光景の中で、それでも視界に焼き付いたものがあった。
魔と成り果てようとしている自分に絶望して涙を流す少女。
死にゆく友のために、白い悪魔に契約の意志を告げようとする少女。
死にゆく友のために、白い悪魔に契約の意志を告げようとする少女。
そうだ、私が救うべきなのは彼女達だ。
そのためにどんな苦しみにも耐え、どんな悲しみも背負ってきた。
そのためにどんな苦しみにも耐え、どんな悲しみも背負ってきた。
今更この程度の痛みが自分を止められるものか。
(―――私に、受け入れられなさい、意志だけの者達――!!)
体に降りかかる反動、その原因である、ギアスを異界の者に与えまいとする集合無意識の神達に強く抗い、むしろ押さえつけんとするほむらの意識。
やがて意識に浮かび上がってくる光景は、ひたすら一人の少女の姿だけを映し続けていた。
自分が救わねばならない者達、救いたい者達。
強く願い続けていると、痛みを乗り越え慣れたのか、それとも痛みを与える者の力を超えたのか、やがて体の痛みも引いてきていた。
強く願い続けていると、痛みを乗り越え慣れたのか、それとも痛みを与える者の力を超えたのか、やがて体の痛みも引いてきていた。
同時に、ギアスの力の反動を押し付け続けてきたギラティナの体も少しずつ小さくなっているのを感じた。
縮小していく体は、ちょうど自分の元々の体程度の大きさに収まりそうだった。
縮小していく体は、ちょうど自分の元々の体程度の大きさに収まりそうだった。
体は力を乗り越えた。
そう感じたほむらは、手と思われる部分を振るい、この空間の中に小さな穴を生み出した。
そう感じたほむらは、手と思われる部分を振るい、この空間の中に小さな穴を生み出した。
ギラティナ自身が持っていた空間を渡る能力で生み出した、時空の歪み。
ちょうど今の体の大きさであれば抜け出せるだろう。
ちょうど今の体の大きさであれば抜け出せるだろう。
空間を抜け出していく最中に体の内から湧き上がってくる力を前に、ほむらの胸は高鳴りを感じていた。
◇
ひたすらに機械の映す波を見続けるアクロマ、その隣に立つアーニャ。
そして頭に器具を付けて眠り続けるほむら。
そして頭に器具を付けて眠り続けるほむら。
そんな三人のいる空間に、黒く小さな穴が空き、そこから人一人分ほどの大きさの光が飛び出し。
眠るほむらの中へと飛び込んでいった。
眠るほむらの中へと飛び込んでいった。
薄い明かりのみで照らされていた場所を、目を覆うほどまばゆい光が照らす。
その奥でほむらの影は起き上がり、その体のシルエットを変化させていく。
その奥でほむらの影は起き上がり、その体のシルエットを変化させていく。
膝の上ほどまでの長さであったスカートはその端を地面につくほど伸ばし、背中からはまるで丸めて引きちぎったかのような影が翼のように生えていく。
やがて影は立ち上がる。空間の奥から飛び出した輝く小さな石、ソウルジェムのように収まった白金玉がその手の甲に装着されドス黒く変色する。
光が収まった時、そこに立っていたほむらは露出度の高い黒いドレスのような服を纏い。
その腕に装着されていた魔法少女としての武器であった盾は巨大な金色の時計の針が生えている。砂時計を思わせる外見であった盾はまさしく時計のような形に変化していた。
その腕に装着されていた魔法少女としての武器であった盾は巨大な金色の時計の針が生えている。砂時計を思わせる外見であった盾はまさしく時計のような形に変化していた。
「―――うまくいったみたいよ」
そう呟いた瞬間、ほむらの頭上の空間に、爪が振り下ろされたかのような亀裂がその体を飲み込まんと走った。
空間を割った一撃。物理的な防御が意味をなさず、魔力、魔術やポケモンといった力を使っても防ぎきれないほどだろう力を持っている。
しかしほむらは動揺することもなく手を頭上にかかげ、黒い影を生み出し異空間へとつながる亀裂を埋め尽くした。
空間を割った一撃。物理的な防御が意味をなさず、魔力、魔術やポケモンといった力を使っても防ぎきれないほどだろう力を持っている。
しかしほむらは動揺することもなく手を頭上にかかげ、黒い影を生み出し異空間へとつながる亀裂を埋め尽くした。
それがほむらという異物に対して発動した防衛機能だったのか、あるいはアカギがほむらを試すために放った亜空切断だったのかはその場の皆には判断はできなかったが。
その一撃を受け止めたという事実だけでも、彼女の力がギアスの継承に成功しギラティナのそれと同等、あるいはそれ以上の力を手にしたということの証明だと。
無言なりにそう表情で告げる彼女から放たれる気配は、魔力を感じる能力のないアーニャとアクロマの二人ですらも畏怖を感じるほどだ。
無言なりにそう表情で告げる彼女から放たれる気配は、魔力を感じる能力のないアーニャとアクロマの二人ですらも畏怖を感じるほどだ。
「いやはや、その気というか存在感というか。まるでギラティナがあなたという形を取って権限したかのようですね」
「あながち間違いではないわね。アレには魔女の力の反動を押し付けて意識を完全に封じて、こっちで力だけを奪った形になるから」
「あながち間違いではないわね。アレには魔女の力の反動を押し付けて意識を完全に封じて、こっちで力だけを奪った形になるから」
と、ほむらの腕の時計の針がカチリ、と鳴り時間を戻すかのように動いた。
その手にはどこから連れてきたのか、白いウサギほどの大きさの小動物が収まっていた。
その手にはどこから連れてきたのか、白いウサギほどの大きさの小動物が収まっていた。
「隠れてないで出てくればいいのに。インキュベーター」
「アーニャ、これはどういうことかな?僕は君にほむらの監視を頼んでいたはずだけど」
「監視はしていたわ。私達にとって不利益になりそうなことをしないようにね。この子は使えると判断したから許したのよ」
「―――…まさか君にそんな人間らしい心が残っていたなんてね。見誤っていた僕のミスだ」
「アーニャ、これはどういうことかな?僕は君にほむらの監視を頼んでいたはずだけど」
「監視はしていたわ。私達にとって不利益になりそうなことをしないようにね。この子は使えると判断したから許したのよ」
「―――…まさか君にそんな人間らしい心が残っていたなんてね。見誤っていた僕のミスだ」
言葉の裏に自分に対する反骨の心があるように感じたキュウべぇは、そんな彼女と自分を戒める言葉を紡ぐ。
しかしその大多数はアーニャに対する抗議の念が強く感じられた。
しかしその大多数はアーニャに対する抗議の念が強く感じられた。
「さて、成功ということは私の行動権限について、もう少し広げてもらうということでいいですね」
「ええ、構わないわ。それが約束だもの」
「待ってくれ、僕は許可しないよ」
「そうね、一応アカギとシャルルの意見は伺っておいたほうがいいかもしれないわね」
「ええ、構わないわ。それが約束だもの」
「待ってくれ、僕は許可しないよ」
「そうね、一応アカギとシャルルの意見は伺っておいたほうがいいかもしれないわね」
自分の存在が疎かにされていると感じたキュウべぇが抗議の声を上げ、追ってアーニャがフォローするかのような言葉を投げる。
しかしその裏には、二人が許可するならば自分の意見は放置してもいいという考えが見えていた。
しかしその裏には、二人が許可するならば自分の意見は放置してもいいという考えが見えていた。
「それにしても、ゼロの持っていた魔女の力とアカギの連れた二匹と同格の存在をその身に取り入れるなんて、随分と無茶をしたわね」
「アリスに最初に会った時のソウルジェムの反応とあなたから聞いた魔女の力の情報を照らし合わせて可能性を見て、あとは、まあ、信じる心ね」
「アリスに最初に会った時のソウルジェムの反応とあなたから聞いた魔女の力の情報を照らし合わせて可能性を見て、あとは、まあ、信じる心ね」
ほむらの最後の言葉で笑いが吹き出してしまうアーニャ。口元を抑えて笑いながらも、問いかける。
「ふふふ…、今のあなたはもう魔法少女って呼べるような存在じゃないわね。いえ、一度死んで尚も蘇生した時点で今更かしら」
「そうね、今の私は―――」
「そうね、今の私は―――」
少し考えるように沈黙したほむらは、掴んでいたキュウべぇの体を放り投げて手を掲げながら告げた。
「世界に混沌をもたらす魔女の力と世界の反対側に住む存在の力を身に宿して、自身に与えられた死という運命にすら抗った存在。
そんな、世界の条理に抗ったような存在なんて、悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら」
そんな、世界の条理に抗ったような存在なんて、悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら」
悪魔ほむら。
そんな名が、今の自分にはとてもしっくりとくるような気がした。
今のほむらには知る由もないことだったが。
その姿、そしてその名はもしかすると有り得たほむらの可能性の未来のものと同じだった。
その姿、そしてその名はもしかすると有り得たほむらの可能性の未来のものと同じだった。
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、ギラティナと同化、魔女の力継承、悪魔化
[服装]:悪魔ほむらの衣装@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語、ギラティナの翼、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ 、右耳にピアス
[装備]:ダークオーブと化したはっきん玉、変質したほむらの盾
[思考・状況]
基本:アカギ達に協力、ないし利用し最終目標のための手はずを整える。
1:アカギを含む皆の動向を見て動く。
2:約束なのでアクロマの望むことを叶える。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきん玉はギラティナの力と魔女の力を完全に取り込み自身の因果と同調させたことでダークオーブ@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語へと変化しました。
その影響でギラティナの能力を使用することが可能です。
ギアス能力に当たる力も獲得しましたが詳細は後のSSにて明かしていきます。
※ギラティナの体はRガス@名探偵ピカチュウによってほむらの精神を移された後、ギアス継承の反動を押し付けられたことで力が弱まりほむらの体内に取り込まれています。
ギラティナ自身の意識が弱まっただけの状態であり死んではいません。
[状態]:健康、ギラティナと同化、魔女の力継承、悪魔化
[服装]:悪魔ほむらの衣装@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語、ギラティナの翼、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ 、右耳にピアス
[装備]:ダークオーブと化したはっきん玉、変質したほむらの盾
[思考・状況]
基本:アカギ達に協力、ないし利用し最終目標のための手はずを整える。
1:アカギを含む皆の動向を見て動く。
2:約束なのでアクロマの望むことを叶える。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきん玉はギラティナの力と魔女の力を完全に取り込み自身の因果と同調させたことでダークオーブ@魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語へと変化しました。
その影響でギラティナの能力を使用することが可能です。
ギアス能力に当たる力も獲得しましたが詳細は後のSSにて明かしていきます。
※ギラティナの体はRガス@名探偵ピカチュウによってほむらの精神を移された後、ギアス継承の反動を押し付けられたことで力が弱まりほむらの体内に取り込まれています。
ギラティナ自身の意識が弱まっただけの状態であり死んではいません。
157:零の話・仮面が砕ける時 | 投下順に読む | 159:マギアレコード「答えは心の中に」 |
時系列順に読む | ||
155:ReStart準備中 | 暁美ほむら | 160:第四回定時放送 |
マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア | ||
アクロマ | 161:ニャースとアクロマ・世界のカタチ | |
148:変わりたい少女達の話 | キュゥべえ | 160:第四回定時放送 |