本能に任せ暴れ回る巨大な怪物。
アルトリア――アーサー王の記憶の中には似たような存在と戦った記憶はないわけではなかった。
アルトリア――アーサー王の記憶の中には似たような存在と戦った記憶はないわけではなかった。
ただ、それでも今まで技量の優れた剣士を相手にしていた感覚からその意識に切り替えるには少し時間がかかった。
剣を振りかざして直進するも、その進行先に振り下ろされた前脚がイリヤの進行を留めていた。
一瞬止まるのが遅ければ足の下敷きになっていただろう。
剣を振りかざして直進するも、その進行先に振り下ろされた前脚がイリヤの進行を留めていた。
一瞬止まるのが遅ければ足の下敷きになっていただろう。
飛び上がって剣でその顔を斬りつける。
顔面を斬られた痛みでその巨大な頭を引くも、すぐに立て直し、反対側に着地しようとしたイリヤへと尻尾を叩きつけた。
かろうじて防御が間に合ったが、その膨大な質量はイリヤの体を大きく弾き飛ばす。
顔面を斬られた痛みでその巨大な頭を引くも、すぐに立て直し、反対側に着地しようとしたイリヤへと尻尾を叩きつけた。
かろうじて防御が間に合ったが、その膨大な質量はイリヤの体を大きく弾き飛ばす。
体勢を宙で立て直して着地するイリヤ。
視線を前に向けると、その意識はエラスモテリウムオルフェノクの頭部のある一部分に向いていた。
視線を前に向けると、その意識はエラスモテリウムオルフェノクの頭部のある一部分に向いていた。
「…ルビー、あの場所って」
怪物の頭部。
うっすらと、人型に見えるなにかが埋め込まれているように思えた。
うっすらと、人型に見えるなにかが埋め込まれているように思えた。
『調べてみましたが、あの怪物の意識は全て怪物本体にあります。
あれはただ、かつてそうあった者の残骸にすぎないでしょう』
「……」
『巧さんと一緒に戦ってきたイリヤさんに言うのも酷かもしれないですが、敢えて言いましょう。
――あれは、もう私達には救えない存在です。イリヤさんや巧さんの前に立ちふさがった黒化英霊や聖杯から呼び出された存在と変わりません』
あれはただ、かつてそうあった者の残骸にすぎないでしょう』
「……」
『巧さんと一緒に戦ってきたイリヤさんに言うのも酷かもしれないですが、敢えて言いましょう。
――あれは、もう私達には救えない存在です。イリヤさんや巧さんの前に立ちふさがった黒化英霊や聖杯から呼び出された存在と変わりません』
イリヤの方を向いたエラスモテリウムオルフェノクの頭部。そこからいくつもの巨大な針がイリヤ向けて撃ち出される。
進もうとした足を止めて飛来する針を切り払うも、その場に静止していたイリヤへと角を突き出して突撃をかけてきた。
進もうとした足を止めて飛来する針を切り払うも、その場に静止していたイリヤへと角を突き出して突撃をかけてきた。
それがイリヤへと衝突しようかという一瞬前、イリヤの背後から飛来した青い炎がその巨体を弾きあげた。
顔面を覆う炎に怯むエラスモテリウムオルフェノク。
顔面を覆う炎に怯むエラスモテリウムオルフェノク。
イリヤが顔を上げると、青い炎を纏った黒い竜の姿があった。
「イリヤスフィール!」
その後ろから、もう一匹の竜の背中に乗ったNが呼びかけてきた。
「Nさん!」
「大丈夫か。
あれは僕たちが相手をしていたんだが、急に狙いを変えたようで」
「大丈夫か。
あれは僕たちが相手をしていたんだが、急に狙いを変えたようで」
あの怪物が意識を変えるきっかけになった相手へと目をやる。
エラスモテリウムオルフェノクの攻撃範囲に入らない場所でランスロットと刃を交えているが、今向かっても入り込めないと感じた。
エラスモテリウムオルフェノクの攻撃範囲に入らない場所でランスロットと刃を交えているが、今向かっても入り込めないと感じた。
まずはこの怪物をどうにかしなければ。
「もし問題がないなら彼の背に。リザードン、問題ないか?」
「グゥ」
「グゥ」
首を縦に振りつつイリヤに背を向けるリザードン。
その背に捕まるイリヤ。
その背に捕まるイリヤ。
こちらへとエラスモテリウムオルフェノクが突撃してきたと同時に、二匹は飛び立った。
宙を飛ぶ二匹の竜に対し、エラスモテリウムオルフェノクは針を飛ばして迎撃する。
宙を飛ぶ二匹の竜に対し、エラスモテリウムオルフェノクは針を飛ばして迎撃する。
イリヤとNの直感で回避する二匹のリザードン。
Nのリザードンが火炎放射を放ち灰色の巨体を炎で炙るも、相手を打破するほどのダメージを与えられている様子はない。
Nのリザードンが火炎放射を放ち灰色の巨体を炎で炙るも、相手を打破するほどのダメージを与えられている様子はない。
「ゾロアーク!!」
Nの声が響くと共に、どこからともなく周囲の景色が歪む。
次の瞬間、大量に分身したリザードンがエラスモテリウムオルフェノクの周囲を囲む。
ポケモンの技の影分身のようなものだが、ゾロアークの見せた幻影だ。
ポケモンの技の影分身のようなものだが、ゾロアークの見せた幻影だ。
一斉に迫りながら、その爪を、炎を纏った体を、翼を巨体に叩き付けていく。
無論多くは幻影。そんな光景を見せていたとしても実際に攻撃を当てているのは2匹のリザードンだけだ。
無論多くは幻影。そんな光景を見せていたとしても実際に攻撃を当てているのは2匹のリザードンだけだ。
だというのに、エラスモテリウムオルフェノクはまるで幻影など見えていないかのように、正確に本物のリザードン達を狙い撃つかのように針を射出した。
かろうじて回避する2匹。
かろうじて回避する2匹。
どうやら相手は視覚ではなく動物的な勘でこちらの場所を把握している。
幻影に惑わされる理性など、持っていないと言わんばかりに。
幻影に惑わされる理性など、持っていないと言わんばかりに。
やがてその前脚を大きく浮かせて、地面へと叩きつける。
揺れる地面がゾロアークの体勢を崩し、幻影が消滅。
同時に、息を潜めて気配を隠していたゾロアークがエラスモテリウムオルフェノクに認識される。
揺れる地面がゾロアークの体勢を崩し、幻影が消滅。
同時に、息を潜めて気配を隠していたゾロアークがエラスモテリウムオルフェノクに認識される。
「不味い、逃げろゾロアーク!!」
叫ぶN。しかし体勢を整えるのが間に合わない。
射出された針がゾロアークの元へと届く。
射出された針がゾロアークの元へと届く。
「はあっ!!」
次の瞬間、メガリザードンから飛び降りたイリヤがゾロアークの前でその針を切り払う。
すんでのところだった迎撃。しかしその奥からエラスモテリウムオルフェノクの巨体が迫る。
すんでのところだった迎撃。しかしその奥からエラスモテリウムオルフェノクの巨体が迫る。
ゾロアークの体を抱えて地を蹴るイリヤ。
決して軽いものではないが、セイバーの力を得た今なら抱えることができる。
決して軽いものではないが、セイバーの力を得た今なら抱えることができる。
リザードンの背に乗るイリヤ。しかしイリヤと共にゾロアークも乗せたことでリザードンの飛ぶ高度が下がる。
「戻ってくれ、ゾロアーク!」
ボールを掲げてゾロアークへと向ける。発された光がゾロアークへと当たり、その体がモンスターボールの中に収納されていく。
幻影が見破られた以上、地を移動するしかなく怪我も軽くはないゾロアークを出しておくことは危険が大きい。
幻影が見破られた以上、地を移動するしかなく怪我も軽くはないゾロアークを出しておくことは危険が大きい。
Nの騎乗したリザードンが火炎放射や竜の怒りを放って牽制しつつ、イリヤの乗ったリザードンが爪や炎を纏った体で接近戦を仕掛ける。
同時にイリヤも、メガリザードンの背からエラスモテリウムオルフェノクの肉体に飛び降り聖剣でその体にダメージを与えていく。
対するエラスモテリウムオルフェノクも、針の射出で迎撃しつつ接近してきたリザードンには牙や爪を振るい続ける。
同時にイリヤも、メガリザードンの背からエラスモテリウムオルフェノクの肉体に飛び降り聖剣でその体にダメージを与えていく。
対するエラスモテリウムオルフェノクも、針の射出で迎撃しつつ接近してきたリザードンには牙や爪を振るい続ける。
リザードンの攻撃はダメージは確かに与えている様子だが、まだエラスモテリウムオルフェノクを倒すには至らない。
一方でエラスモテリウムオルフェノクの攻撃は一撃で致命傷になり得る危険な攻撃だ。
一方でエラスモテリウムオルフェノクの攻撃は一撃で致命傷になり得る危険な攻撃だ。
「…こうなったら…」
焦れたイリヤは、その手の聖剣に魔力を集中させる。
真名を解放し、膨大な魔力をぶつければあの巨体とてひとたまりもないだろう。
真名を解放し、膨大な魔力をぶつければあの巨体とてひとたまりもないだろう。
だがエラスモテリウムオルフェノクはまるでその危険性を察知したかのように、リザードンの攻撃を振り払ってイリヤへと突撃を仕掛ける。
『イリヤさん危ない!!』
「……!だったら!!!」
「……!だったら!!!」
と、剣を下ろしつつその場から動くこともなく。
エラスモテリウムオルフェノクの衝突と共にイリヤの体が光に包まれる。
エラスモテリウムオルフェノクの衝突と共にイリヤの体が光に包まれる。
「バーサーカー、もう少しだけ、付き合って…!!」
巨大な斧剣を背負い、小柄な肉体でエラスモテリウムオルフェノクの体を抑え込んでいる。
バーサーカーのカードを咄嗟に夢幻召喚したイリヤは、怪力をもってエラスモテリウムオルフェノクに対抗していた。
バーサーカーのカードを咄嗟に夢幻召喚したイリヤは、怪力をもってエラスモテリウムオルフェノクに対抗していた。
ただ剣を斬りつけてもその巨体もあってダメージが通りづらい。ならば打撃や質量をぶつける方が効果があるかもしれない。
ギリギリ、と拮抗する2つの体。
そこにメガリザードンの炎を纏った爪が顔面を斬りつける。
怯んだエラスモテリウムオルフェノク、その隙に力を込めて巨体を押し返す。
そこにメガリザードンの炎を纏った爪が顔面を斬りつける。
怯んだエラスモテリウムオルフェノク、その隙に力を込めて巨体を押し返す。
背負った斧剣を手に構え、前に駆け出すイリヤ。
頭頂部から放たれた針がイリヤを狙うも、斧剣を前面に構えて弾き飛ばしながら前進。
針が飛ばせない位置まで迫ったところで、その巨大な角に向けて思い切り斧剣を振り抜く。
頭頂部から放たれた針がイリヤを狙うも、斧剣を前面に構えて弾き飛ばしながら前進。
針が飛ばせない位置まで迫ったところで、その巨大な角に向けて思い切り斧剣を振り抜く。
衝撃で横に倒れ込むエラスモテリウムオルフェノク。その角に亀裂が入り、倒れ込む衝撃で根本から割れた。
すぐさま起き上がったエラスモテリウムオルフェノクは、角が砕かれたことを理解して怒りの咆哮を上げる。
すぐさま起き上がったエラスモテリウムオルフェノクは、角が砕かれたことを理解して怒りの咆哮を上げる。
その衝撃波のような風圧が荒ぶ鳴き声に対して、メガリザードンは対抗するように吠えた。
瞬間、その体から光が溢れ出し始めた。
瞬間、その体から光が溢れ出し始めた。
牙をむき出しにして突撃をかけるエラスモテリウムオルフェノク。
その正面に、リザードンの体を守るように立ったイリヤは、その大きく開かれた顎を斧剣でつっかえることで閉じるのを止める。
頭を前に押し出して、閉じる顎につっかえた武器ごとイリヤを押しつぶそうとする。
その正面に、リザードンの体を守るように立ったイリヤは、その大きく開かれた顎を斧剣でつっかえることで閉じるのを止める。
頭を前に押し出して、閉じる顎につっかえた武器ごとイリヤを押しつぶそうとする。
イリヤは手の武器を支えたまま、地を蹴って思い切りその下顎に向けて膝蹴りを叩き込んだ。
衝撃で斧剣と下顎が砕ける。流石に堪えられずエラスモテリウムオルフェノクの巨体が後ろに後退する。
衝撃で斧剣と下顎が砕ける。流石に堪えられずエラスモテリウムオルフェノクの巨体が後ろに後退する。
「………」
接近できない現状、リザードンに乗ったNは離れた場所からその姿を見る。
先程の戦いの傷も残っているだろうし、たった今も重症といえるほどのダメージを受けた。
なのに、未だ逃げよう、退こうという意志が感じられない。ただ、周りを破壊しようとするだけの怪物。
先程の戦いの傷も残っているだろうし、たった今も重症といえるほどのダメージを受けた。
なのに、未だ逃げよう、退こうという意志が感じられない。ただ、周りを破壊しようとするだけの怪物。
生命の進化の果てに得た姿がそんなものであることに虚しいものを感じつつも。
その姿は一歩間違えれば自分達人間もそれに近い化け物になってしまうのかもしれない。
他者を受け入れることがなく、この手も届かなかった父、ゲーチスのように。
その姿は一歩間違えれば自分達人間もそれに近い化け物になってしまうのかもしれない。
他者を受け入れることがなく、この手も届かなかった父、ゲーチスのように。
(だけど僕たちはそうはならない。誰の意志でもない僕のまま、僕のために生きてみせる…)
光に包まれたリザードンの目がこちらと合った。
「リザードン、彼を倒そう」
光が収まった時、そこにはエラスモテリウムオルフェノクを超える身長となったリザードンの姿があった。
体色は炎を思わせる橙色だが、メガリザードンのように口や翼からは炎が漏れ出している。
体色は炎を思わせる橙色だが、メガリザードンのように口や翼からは炎が漏れ出している。
Nの懐からロトム図鑑が飛び出す。
「キョダイリザードンロト!!さっき言ったように攻撃は3回が限界ロト!!」
「解説はいい、今の彼が使える技を教えてくれ!!」
「解説はいい、今の彼が使える技を教えてくれ!!」
視線の先では、顎の形を崩したエラスモテリウムオルフェノクがイリヤに、そしてリザードンに向けて走り出している。
武器を失いながらもその体を受け止めようと構えるイリヤ。
武器を失いながらもその体を受け止めようと構えるイリヤ。
「リザードン、ダイジェット!!」
リザードンに向けたNの指示。
咆哮と同時にリザードンの巨大な翼が風を巻き起こす。
風は渦を巻いて大きな竜巻を形作って、眼前を進行する巨獣へと襲いかかる。
咆哮と同時にリザードンの巨大な翼が風を巻き起こす。
風は渦を巻いて大きな竜巻を形作って、眼前を進行する巨獣へと襲いかかる。
暴風がエラスモテリウムオルフェノクの体を切り刻み進行速度を鈍らせるも、まだ止まるには至らない。
「…!ルビー!!」
その暴風を背に受けたイリヤは、ルビーに呼びかけながら一枚のカードを取り出す。
体からバーサーカーのカードを排出しながら、取り出したカード、ライダーのクラスカードを構え。
体からバーサーカーのカードを排出しながら、取り出したカード、ライダーのクラスカードを構え。
「夢幻召喚!!」
体が光に包まれると同時、白い光の翼が姿を表す。
純白の天馬に跨ったイリヤは、光の手綱を握りながら宝具の真名を叫ぶ。
純白の天馬に跨ったイリヤは、光の手綱を握りながら宝具の真名を叫ぶ。
「騎英の手綱(ベルレフォーン)!!!」
キョダイリザードンの巻き起こした風に乗って、進行するエラスモテリウムオルフェノクへと一直線に突撃するペガサス。
ダイジェットの突風によりこれまで以上に加速した一撃は、拮抗することもなくその体を押し返す。
巨体が浮かび上がり宙へと浮き、吹き飛ばして地面へと転がる。
ダイジェットの突風によりこれまで以上に加速した一撃は、拮抗することもなくその体を押し返す。
巨体が浮かび上がり宙へと浮き、吹き飛ばして地面へと転がる。
カーブを描いてリザードンの巨体の前に着地する天馬。
その目前で、吹き飛ばされた体から青い炎が立ち上り始めた。
今の一撃がエラスモテリウムオルフェノクの生命力を大きく削り取り、限界を迎えたのだろう。
今の一撃がエラスモテリウムオルフェノクの生命力を大きく削り取り、限界を迎えたのだろう。
体の末端部分から少しずつ灰化していく。だというのに、怪物は起き上がり吠え。
まるでその一撃に自身の生命力をかけるかのように走り出した。
まるでその一撃に自身の生命力をかけるかのように走り出した。
その様子にNもイリヤも顔を顰める。
ここまで戦い続けるのか、と。
ここまで戦い続けるのか、と。
「キョダイゴクエン!」
Nの指示と共に、リザードンの翼の炎が広がり、エラスモテリウムオルフェノクへと襲いかかる。
巨大な炎の翼に押さえつけられるエラスモテリウムオルフェノク。
巨大な炎の翼に押さえつけられるエラスモテリウムオルフェノク。
その体を焼き続けるも静止は一瞬だけ。すぐに進行を再開する。
だがイリヤが準備を整えるにはその一瞬で充分だった。
「―――今、解放してあげるから」
再度変わった姿は、マントと鎧を纏った騎士王のもの。
そしてその手の剣を構える体勢も整っていた。
そしてその手の剣を構える体勢も整っていた。
「―――約束された(エクス)、」
叫ぶは、星の聖剣の名。
「勝利の剣(カリバー)!!!!―――――」
エラスモテリウムオルフェノクの巨体を覆う炎と共に。
聖剣の放つ膨大な魔力の光が、その体に向けて撃ち出され。
聖剣の放つ膨大な魔力の光が、その体に向けて撃ち出され。
断末魔のような叫び声を上げたのを最後に、その巨体は炎と光の中に消えていった。
【エラスモテリウムオルフェノク@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト 死亡】