巡りゆく星たちの中で > 不安と信頼

相手側から返答があった。

『エルニウス、こちらH.L.F多国籍部隊、シュテファーン級アルヴァート。貴艦の意図を確認、保護を保証する。エレス・ニア第3軌道基地への誘導を提案。ピースギアの状況と技術の概要を共有願う。引き続き非敵対姿勢を維持』

艦橋の空気が少し張り詰める。通信音声は依然として冷静で抑制が効いており、まるで精密機械が応答しているかのように端的で無駄がない。しかし、そこには明らかに「情報の開示」と「技術の共有」という軍事的意図が透けて見えていた。

H.L.F多国籍部隊と名乗る軍隊ぽい?部隊はこちらに敵対しないが情報を開示したり技術を渡せと言った。

イズモ「う~んどうしよう」
頭をかきながら、操作盤をちらりと見やる。額にはわずかに汗が滲んでいる。

KAEDE「とりあえず情報と技術の共有はしましょう。ただし、こちら側に害を及ぼすような情報は渡さないようにしなければなりませんね。またピースギアの技術もある程度制限できるようにしておきましょう」
真剣な表情で、冷静に提案する。彼女の手元のタブレットには技術データの一部が暗号化された状態で映し出されていた。

イズモ「了解!そうしよう」
言葉の裏には、信頼の強さと慎重な決意が垣間見えた。

イズモ「にしても、うちのレベルの技術はありそう」
ふとモニターの一部を見ながら呟く。向こうの艦の構造をスキャンした情報が表示されていた。

イズモ「一応返信しとくか」
ターミナルに向かい、メッセージを入力する。

『こちらピースギア所属ポータル艦アリス級エルニウスの最上イズモ三佐、貴艦の対応に心から感謝する。状況等関してはエレス・ニア第3軌道基地に到着後共有する。』

イズモ「これで良しっと」
短く確認し、送信ボタンを押す。

KAEDE「そろそろ合流できますよ」
航行センサーに映る3隻の巨大な船が、隊列を整えて待っている。

イズモ「とはいえ、ここまで友好的に接されると警戒はするよね。」
表情は苦笑気味だが、目は鋭い。

KAEDE「一応、友好的にしつつ警戒はするべきですね」
淡々としながらも同意の色を見せる。

イズモ「にしてもあちら側の勢力は巨艦主義なのか?全長800m,全幅70mで主砲が見えない...」
スクリーンに映る艦影を見ながら分析するように語る。

KAEDE「そうね。でもなんていうか、威圧も感じないです」
艦橋の空気は穏やかだが、どこか不自然な静けさが漂う。

イズモ「だよなぁ……」
少し首をかしげつつ呟いた。

イズモ「こんな感じで普通に情報公開していいのかねぇ……分からん……」
視線は遠くの星を見つめている。

イズモ「こちらの技術はどうせ滅んだ文明の、組織のものなんだしいい気はするけどそれを悪用されてこっちの望まない使用方法として使われたり侵略のために使われてもなぁ」

KAEDE「心配なら消すという手もありだけど……選択肢に入れるべきじゃないですね。」
その声には、やや厳しさがにじんでいた。

イズモ「そうだな……」
小さくうなずく。

KAEDE「……でも」
ほんの少しだけ声が揺れる。

イズモ「?」
彼女の顔を覗き込む。

KAEDE「……信じてみるのもいいんじゃないですか?いままで交戦した敵艦と違って話は通じそうだし……変にタメ口しなければ対応できるレベルかと……」
その言葉には、希望と不安が入り混じっていた。

KAEDEはそういっているが若干ためらいを感じる。かろうじて航行できてるレベルで創造能力で自己防衛レベルの兵装しかない現状で技術レベルは同等とみていいクラスの戦艦に誘導されてる。正直、捕虜や奴隷にされても文句は言えない状況である。

イズモ「大丈夫。最悪脱走してこの艦に戻ってこえさえすれば相手側は関係なくなるよ」
あくまで軽く笑ってみせるが、その瞳は決して油断していなかった。

KAEDE「……わかったわ」
KAEDEは少し不安そうだがそのまま従った。未知の宙域の中で身寄りのないこの世界で唯一の味方の信用関係は強い命綱であるから手綱を放すわけにもいかなかったし、この相手のどこか懐かしい気配も気にかかったのだった……

イズモ「にしてもここの文明共立機構国際平和維持軍は規模は小さいけどうちの初動と似てる部分あるよね。」

KAEDE「そうね……たしかに……」

KAEDE「……イズモ」
KAEDEがモニターを見ながら話しかけてきた。どうやらこの先は信用してもよいだろうと判断するのだった……

イズモ「どうした?」

KAEDE「そろそろ相手側の誘導に従うわ」

イズモ「……わかった。それにしても相手が不安だって気持ちを察知してくれたのか……気配り上手だなお前」

KAEDE「……別にあんたのためじゃないしっ……」
KAEDEは不貞腐れたように言った。

イズモ「はいはい」

KAEDE「……でも、ありがとね……」ボソッ……

イズモ「ん?なんかいった?」

KAEDE「……なんでもない!」
KAEDEはプイっとあっちを向いた。

そして、相手側の3隻の船の誘導に従ってエレス・ニア第3軌道基地に向かうのだった……

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最終更新:2025年06月27日 20:03