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巡りゆく星たちの中で > 戦闘よりも平和を、管理よりも連携を

―統合実務連絡班発足から三週間後。
シナリスⅥ、ピースギア第二臨時本部内部。

絶え間なく流れるホログラム表示と、低く唸る演算音が統連班室を満たしていた。
中央モニターには星系図と複数の物流ルートが重なり、刻一刻と数値が更新されている。

防衛班副班長は手元の端末を確認し、わずかに眉を上げた。

防衛班副班長「……第七居住区の生活支援ルート、統連班経由で再調整が入った。到着まで五分短縮だ。」

生活支援班員は一瞬言葉を失い、すぐに安堵の息を吐いた。

生活支援班員「正直、最初は半信半疑でしたけど……。この速度なら、今日の配給遅延は出ませんね。」

整備班員も隣で頷く。

整備班員「こっちも同じだ。部品搬入、前は予定が崩れるのが当たり前だったのに、今は事前通知が来る。整備計画が立てられるだけで、現場はだいぶ楽になる。」

防衛班副班長は小さく苦笑した。

防衛班副班長「皮肉な話だな。統連班ができて、一番恩恵を受けてるのは俺たち中間層だ。」

生活支援班員「上からの命令待ちだけじゃなく、こっちから調整を投げられる。
それだけで現場の空気が変わりました。」

統連班室の中央では、AI調整担当KAEDEが無機質な視線でモニターを見つめている。
複数の要望、警戒情報、物流優先度が同時に処理され、淡々と整理されていく。

KAEDE「第十七ルート、再計算完了。搬送班B、優先順位を第三位へ変更します。」

オペレーター「了解。班間チャットに反映しました。」

そのやり取りを、後方からイズモと綾音が静かに見守っていた。
二人の前には、稼働率とトラブル発生率の推移グラフが浮かんでいる。

綾音「思ったより混乱は少ないわね。正直、初動はもっと荒れるかと思ってた。」

イズモは画面から目を離さず答える。

イズモ「完全な統制は狙っていない。全体が互いの状況を“見える”ようにすれば、自然と調整は始まる。そう設計した。」

綾音は小さく笑った。

綾音「いかにも、あなたらしい。」

その時、室内に警告音が走る。
通信ウィンドウが展開され、異次元接触班のマークが表示された。

通信「こちら異次元接触班。シナリス星系外周部、輸送船団が次元嵐に巻き込まれ遅延中。統連班、支援要請。」

空気が一瞬張り詰める。
だがKAEDEは即座に処理を開始した。

KAEDE「ルートを再設定。待避所候補を三か所提示。生活支援班、防衛班へ同時通知を開始します。」

イズモは静かに息を吸う。

イズモ「連絡が詰まれば、全体が止まる。だからこそ――」

綾音「“繋ぎ続けること”が要なのね。」

別室では、中間層班長たちによるフィードバック会議が行われていた。
疲労の色は濃いが、表情には以前より余裕がある。

中間層班長A「正直、順応できている班と、まだ戸惑っている班はあります。」

中間層班長B「特に古参班は独自ルールへの執着が強い。変化を受け入れるまで時間がかかりそうだ。」

中間層班長C「それでも、班間トラブルは四八%減少している。
数字は嘘をつかない。」

壁面モニターには“班間調整:正常”の表示が灯っていた。

防衛班副班長「……問題が消えたわけじゃない。
また同じ壁にぶつかる。」

生活支援班リーダー「理念と現場判断の温度差は、完全には埋まらないからな。」

その場に、イズモが入室する。

イズモ「それでも前へ進む。
ピースギアは理想だけでは成り立たない。
現実だけでも、いずれ形骸化する。」

モニター越しにKAEDEが言葉を重ねた。

KAEDE「理念の再定義を提案します。“戦闘よりも平和を、管理よりも連携を”。」

綾音「……いい言葉ね。」

会議室に、静かな同意が広がる。

整備班員「昔は、上が何を考えてるかわからないって不満ばかりでした。
でも今は、話せる場所がある。」

生活支援班リーダー「前よりは……組織として、ひとつに近づいた気がする。」

防衛班副班長「また問題は起きる。でもその時は――」

イズモ「班同士で、解決できる。」

統連班室のホログラムには、新たな理念が静かに灯り続けていた。

戦闘よりも平和を、管理よりも連携を。
ピースギア・シナリス星系第二臨時本部。
統合実務連絡班。

最終更新:2025年12月16日 20:53