―統合実務連絡班発足から3週間後、シナリスⅥ・本部内部―
防衛班副班長「……第七居住区の生活支援ルート、統連班経由で調整入った。これまでより5分短縮されてる。」
生活支援班員「あのシステム、正直半信半疑だったけど……これなら助かります。」
整備班員「俺らも。パーツ搬入予定、毎回遅れまくってたのが最近は事前通知まで来る。」
防衛班副班長(ふっと苦笑し)「皮肉だな。いざ統連班ができたら、一番恩恵受けてるのは俺たち中間層だ。」
生活支援班員「上から一方通行じゃなくて、こっちからも要望出せるのが大きいんでしょうね。」
(統連班室内、中央モニターには各班からの要望リストが並ぶ。そこではAI調整担当の
KAEDEが座標位置や進行状況を確認しながらオペレーションを行っていた。)
KAEDE「第17ルート、再計算完了。搬送班B、優先順位第3へ繰り下げ。」
オペレーター「了解しました。班間チャットに反映済み。」
(イズモと綾音も後方でその様子を見守っていた。)
綾音「意外ね……最初はもっと混乱するかと思ったけど。」
イズモ「完全な統制は無理でも、全体が互いを見る仕組みを作れば自然とまとまる。そう設計した。」
綾音「あなたらしい。」
(その時、統連班に一本の通信が入る。)
通信「こちら異次元接触班。
シナリス星系外周部での輸送船団、次元嵐による遅延発生。統連班、支援要請願います。」
KAEDE「ルート再設定。待避所候補を3か所提示。生活班および防衛班に連絡中。」
イズモ「やはり、どこかで連絡網が詰まっていると全体が止まる。だからこそ――」
綾音「“繋ぎ続けること”が大事なのね。」
(別室では、中間層班長たちが集まり、統連班運用後のフィードバック会議が始まっていた。)
中間層班長A「正直なところ、うまく回っている班もあれば、まだ馴染めない班もあります。」
中間層班長B「特に古参班ほど、独自ルールに固執していて変化を嫌う傾向が強い。」
中間層班長C「だが、それでも以前よりは状況がいい。班間トラブル件数は48%減少。」
(統連班システムモニターには“班間調整:正常”という表示。)
防衛班副班長「……それでも、問題は根本的に消えたわけじゃない。」
生活支援班リーダー「組織理念と現場判断、その温度差は完全には埋められないからな。」
イズモ(会議室に入室しながら)「それでも進まなければならない。
ピースギアは理想だけでは存在できないし、現実だけでも形骸化する。」
KAEDE(モニター越しに)「理念の再定義を提案します。“戦闘よりも平和を、管理よりも連携を”。」
綾音「いい言葉じゃない。」
(会議室内、静かにうなずく者が増えていく。)
整備班員「……昔は“上が何考えてるかわからない”って文句ばかりだった。でも、こうして話し合える場があるなら。」
生活支援班リーダー「前よりは……組織としてちゃんと“ひとつ”になれたかもしれないな。」
防衛班副班長「またいつか、同じような問題は起きるかもしれない。でもその時は――」
イズモ「今度は、班同士で解決できるはずだ。」
(静かに灯り続ける統連班室のホログラム表示。そこにはピースギアの理念が新たに追加されていた。)
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戦闘よりも平和を、管理よりも連携を。
ピースギア・シナリス星系第二臨時本部
統合実務連絡班
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最終更新:2025年07月14日 19:44