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巡りゆく星たちの中で > 破壊するモノ

空間跳躍を終えた宇宙強襲揚陸艦アトラス・レギオンは、危険領域ノクターナル・コラプスの外縁軌道に静かに姿を現した。
漆黒の宇宙に浮かぶ巨艦は、異界への門を塞ぐ番人のようでもあり、船体全周には多層干渉シールドが展開されている。
今回の作戦は共立機構との事実上の共同作戦だったが、その実態はある新兵器の実戦試射であり、ピースギアは監視と指揮のために同行していた。

ポータル艦アリス級エルニウスの司令室。
無数のホログラムが浮かぶ中、システムコンソールの前に立つのは、ピースギア現行司令官・綾音だった。
彼女の視線は、モニター越しではなく、窓の向こうに広がる変異領域そのものを射抜いている。

綾音「……確定事象コードKAEDE-Ω。因果スキャン・セクター7の予測では、接触開始は遅くとも公歴2000年末。こちらの戦力整備は、まだ完全じゃない」

指先が操作した端末に、共立機構が発行した高次兵装試射許可証が映し出される。
それは実験であると同時に、失敗が許されない現実の戦争への一歩だった。

綾音「だからこそ、今なのよ。これは掃討じゃない。未来そのものへの反撃……その第一撃」

艦内通信が一斉に開かれる。
緊張を帯びた声が、艦全体へと響いた。

綾音「全隊員へ通達。試作兵装Q-PBキャノン、照射準備開始。目標はノクターナル・コラプス中核部、キメラ集積域E-17。制圧部隊は展開後、誘導を最優先。干渉波形の取得を忘れないで」

一方、降下用シャトルの内部。
迎撃隊の戦術指揮官ライネルは、静かに自身の装備を確認していた。
腕に巻かれた制御バングルには、かつてこの地で命を落とした父トーマの刻印が残っている。

ライネル「……因果を超える変異体、か。そんな化け物が相手なら、こっちも非常識で行くしかない。Q-PBキャノン……初の実戦投入がここになるとはな」

隣で副官セラ=ヴォルカンがスーツの出力を調整しながら応じる。

ヴォルカン「空間構造そのものを破壊する兵器よ。理論上はね。普通のキメラには過剰だけど、ここはノクターナル・コラプス。最初から理屈が通じない場所だわ」

ライネル「なるほど。狂気には狂気を、ってわけだ」

シャトルの視界が開く。
眼下には灰色の大地が広がり、崩壊した構造物の残骸と、不可視の生命反応が無数に蠢いていた。
この領域では、キメラは生態ではなく現象として存在している。

上空では、母艦レグルスのQ-PBキャノンが起動段階に入っていた。
武装格納区画が開き、四基の収束リングが低く唸りながら回転を始める。
陽電子発生炉が赤く脈動し、艦そのものが巨大な生物のように呼吸していた。

綾音「変異型KAEDEは、空間境界を踏み越えて侵攻する概念災害。迎え撃つには、概念そのものを破壊する力が必要。これは予行演習じゃない……未来を賭けた試金石よ」

突如、大地が悲鳴を上げた。
E-17地点に巨大な空間歪曲反応が発生し、周囲のキメラが異常な共鳴を始める。
それらが融合し、質量と形状の限界を超えた塊状同化型変異キメラが姿を現した。

ヴォルカン「嘘……質量反応が理論値を完全に逸脱してる……!」

ライネル「迷うな。あれが標的だ。レナ、ビーコン展開!」

レナ「了解。ターゲットマーカー照射、完了!」

戦術AIの無機質な声が響く。

《Q-PBキャノン、収束準備完了。照射エネルギー閾値突破。最終承認を要求》

綾音は一瞬だけ目を閉じ、そして告げた。

綾音「……撃て」

四つの収束リングが共鳴し、時空が軋む。
音のない咆哮と共に、白光が天から降り注いだ。

E-17一帯は、まるで最初から存在しなかったかのように消失する。
大地の震えも、キメラの気配も、すべてが虚無へと還った。

ライネル「……これが、あんたの戦い方か。なら俺も行くぜ、じいさん。未来が相手でも、抗い続けてやる」

最終更新:2025年12月17日 20:55