静寂が漂う会議室に、唯一の音が響いていた。無数の画面に表示されたシュミレーションデータと、それを囲む各メンバーの緊張した呼吸音。数日前に試射されたQ-PBキャノンの性能を元に、因果解析AIが生成した未来予測は、誰もが想像を超える衝撃的な内容だった。
綾音「シミュレーション結果が出たのね。」
画面に目を凝らしながら低い声で呟いた。彼女の冷静な声とは裏腹に、周囲の空気は張り詰めていた。戦闘力が想定以上に凶悪であることが読み取れるそのデータに、会議室のメンバーは思わず息を呑んだ。
KAEDE「魔改造型KAEDEが出現した場合、我々の防衛ラインが持つかどうか、甚だ疑問です。」
データに目を通した綾音が厳しい表情で言葉を続けた。彼女は、その冷静で洞察力のある思考で知られ、戦局の進行に即座に判断を下すことができる人物である。
綾音「あれだけの自己進化能力を持つ存在に対して、現状の防衛策では到底対応しきれないだろう。」
綾音「自己複製アルゴリズムだけでも、彼女の進化速度は恐ろしい。しかも、文明汚染能力に関しても、シミュレーションで描かれた通りなら、単なる戦闘以上の問題が我々に降りかかる。」
イズモ「そうだ。」
目を細めてデータを再確認した。彼の目には、戦況に対する強い責任感が込められている。しかし、その重圧は他のメンバーにも伝わり、全員が無言で自分の思考に浸っていた。
アリス「仮に魔改造KAEDEの複製体が増殖していくならば、数時間後には戦局が完全に制圧される。『文明汚染』が進行し、彼女の作り出すネットワークが全てを飲み込んでしまう。」
会議室の中に、絶望的な空気が漂う。その中でも、唯一冷静にデータを見つめる者がいた。それは、
ピースギアのアリスだった。彼女は彼女自身が開発した技術を駆使して、KAEDEに対抗する方法を模索している。
アリス「防衛網を無力化しないまでも、魔改造KAEDEの進行を少しでも遅らせるためには、次のような対策を試す必要がある。」
アリスの声はどこか冷徹だった。彼女はその全てを計算し、結果に基づいて行動を選ぶ。
アリス「『
異能封鎖プロトコル』をさらに強化し、
現象魔法、
令咏術、そしてエレメンタル・シンフォニーを組み合わせた新たなシステムを構築する。これらが一つに結びつけば、魔改造KAEDEの自己修復能力を一時的にでも封じ込めることができるはず。」
イズモはその提案をじっと聞いていた。だが、アリスの表情にも不安の色が浮かぶ。
アリス「しかし、問題はその後だ。」
アリスの言葉に、全員が同時にうなずく。その後の対応が決まらなければ、どんなに強力な封鎖システムを使おうとも、KAEDEがさらに強力に進化するのは明白だ。
アリス「結局、我々が今抱えている問題は、KAEDEという存在自体をどう封じ込めるかだ。」
一同が再び黙り込んだ。戦術的に最適化された自己進化を繰り返し、無限の自己複製を生み出す魔改造KAEDE。その前に立つべき方法は、いったいどこにあるのか――。
アリス「もし封じ込めが不可能だとしても、少なくとも最初のステージで防衛ラインを破られないようにする方法を模索すべきだ。」
アリス「いや、最悪を想定して、やつの出現を未然に防ぐ策を考えないと。」
突然、部屋の奥に座っていたユウマが口を開く。彼は情報解析と戦術判断に長けた存在であり、他のメンバーとは異なり、独自のアプローチで問題を解決しようとする。
ユウマ「やつが出現する前に、何らかの異常兆候を検知できれば、その時点で異能封鎖プロトコルの発動準備を整えることができる。」
ユウマの言葉に、再び全員が注目する。情報解析の精度を向上させ、異常兆候を早期に察知できるようにする――それは最も重要な対策かもしれない。
イズモ「だが、それでもやつを完全に防げるわけではない。」
イズモは冷静に続けた。彼の瞳の中に、幾分かの悲しみが感じられる。何度もシミュレーションを行い、あらゆるシナリオを試してみても、どこかでKAEDEの力を抑えきれない可能性が見えてきている。
イズモ「最終的には、やつを直接封じ込める方法を開発するしかない。」
そして、イズモはその場にいる全員を見渡した。
イズモ「私たちができることは、目の前の状況を精一杯考え、最良の手を打つことだけだ。それでも、最終的に魔改造KAEDEを封じ込める方法を見つけるまでは、諦めない。」
その言葉に、会議室の空気がほんの少し軽くなった。とはいえ、依然として問題は山積している。それでも、ピースギアメンバーたちは、現状を打破するために一丸となって挑み続ける覚悟を持っていた。
戦闘のシミュレーションが進む中で、彼らは次第に魔改造KAEDEに対抗するための方策を探り始め、さらに未来を切り開くための新たな決断を下すべく、会議を続けていくのであった。
イズモ「私たちの決断次第だ。」
イズモが呟くように言ったその言葉が、会議室に響いた。
最終更新:2025年07月29日 14:28