現象魔法

現象魔法侯式ヴァンジェ語:shlunduunt tramtven、市民ヴァンジェ語:shûn dūt tàm tún/式術象発、英語:Phenomagic)とは、共立世界の異能技術の一系統である形而法術のうち、ヴァーンダート・オム(侯式ヴァンジェ語:vaandaat om、市民ヴァンジェ語:vāng hāk huõm/憧属理)による現象学に基づく現象術式を体系化したものである。


概要

 現象魔法はヴァーンダート・オムによる現象学に基づく魔法法術である。現象学は客観性が認識の主観性を基礎として構成される科学的思考とは全く異なり、認識は全て主観的なものとして主体の受け取る現象を現象として主観を出発点として一般的に分析しようとする世界認識である。
 例えば、科学ではりんごの存在の客観性は多数の証拠によって認められるが、現象学ではその証拠自体も人間が見出した主観性に基づくものであり、りんごの存在は結局の所は主観性の分析をしなければ認められないという立場となる。ここに基づいて、現象魔法は主観性に影響する魔法ということになっている。

危険性

 現象魔法は人間の素朴な認識を阻害したり、変更したりすることによって実現される。このため、多大な素朴認識の変更を行えば行うほどに、その周囲の人間や魔術師の精神を蝕んでいく。このため強度の強い現象魔法に関しては注意が必要になる。ラヴァンジェ諸侯連合体の「最終戦争」もこういった現象魔法の性質により、魔術師が発狂した状態で文明を滅ぼしたとの学説が一般的である。
 このため、最終戦争の後継国であるラヴァンジェは現象魔法の国際管理国家としての意識を強く抱いており、現象魔法の広がりに関しては極度に警戒する姿勢を持っている。

アポリア

詳しくは「アポリア」を参照。
現象魔法は現象魔術師機関によってその歪みなどを最小限にするように運用されているが、溜まった歪みが人間に影響しない代わりに世界に影響を与えて具現化し、意思を持った災害として化現することがある。これをアポリアと呼び、機関に所属する機動魔術師が対応に当たる。現象魔法を多用するラヴァンジェでは地震のような頻度で発生する災害であるため、対処も迅速に行われるが、その他の共立機構の加盟国では対応に遅れて犠牲者が増える場合も多い。

現象魔法の種類

 現象魔法には幾つか大別できる種類があり、これを属性と呼ぶ。

三大属性

意味系

 表象と本質を繋ぐ意味に対する介入を行う現象魔法を指す。最も一般的な現象魔法の属性であり、ほとんどの現象魔法はこれに属する。現象魔法を学ぶ魔術師が教科書的には最初に覚える属性であり、現象魔法の基礎である。
 現象と本質の間を繋ぐ意味を繋ぎ変えたり、切ったりすることで現実に影響を及ぼす。このため、素朴な現象自体や世界の根本たるイデアを弄ることがなくアポリアの原因となる歪みの発生も最も少ないとされる。

表象系

 表象・現象に対する介入を行う現象魔法を指す。現象自体に直接的に介入するため、魔術師への負荷が意味系とは違い大きいことが特徴である。歪みの発生は意味系より多いのは確かだが、それよりも主体への精神負荷の方がより大きなデメリットになっている。このため、むやみに発動することは避けられている。
 その代わりに発動できれば、即応的で明瞭な効果の魔法を期待することが出来る。

本質系

 本質・イデアに対する介入を行う現象魔法を指す。最も難しい現象魔法の属性であり、歪みの発生も三大属性のうち最も大きい。世界の根本たるイデアを弄るため、世界にどのような不可逆的な影響が出るのか効果が予測しづらく、昔から多くの本質系魔法が禁呪にされてきたこともあり、詳しいことは分かっていない。
 ラヴァンジェ諸侯連合体においては許可なく本質系魔法を発動することは違法である。

四つの補助属性

 補助属性は属性に加えて、現象魔法の表象的な行使のあり方を指す。外装とも呼ばれる。一般的に現象魔道士が魔法の発動に補助的に用いる道具である呪具と繋がっている。補助属性がなければ、現象魔法を発動させることが出来ないわけではないが非常に難しい。このため非常武力事態において、ラヴァンジェの武装部隊は呪具を持つ者を攻撃の意図があるとして無差別的に殺害することがある。
 素質がある者やクラックなどは補助属性無くして、現象魔法を発動できる。

言葉外装(レーデ)

 言語を用いた現象に対する介入を指す。自らの声帯と脳の前頭葉下前頭回にあるブローカー野と側頭葉上側頭回にあるウェルニッケ野を用いるため、呪具を用いるものは少ないが呪具化された辞書や万年筆などを用いる者もいる。最も一般的な補助属性であり、習得の難易度も低い。応用や他の外装との連携も柔軟にできるため、現象魔法学の臨戦教育においてはまず最初に教えられる外装である。呪文や詠唱魔法を中心に用いるため、現象介入の感覚さえ覚えられれば簡単に行使できるのが魅力だが、その代わりに意味系以外の属性とは相性が非常に悪いため、そこまで高度な魔法を発動できないという弱点もある。
言葉外装他者輻輳(アルター)
 言語外装の一形態であり、物質の固有周波数を利用する。現象魔術師の中では最も下劣で物質的な魔法と見做されており、学習する者は少ない。

物語外装(メルヒェン)

 物語を道具に用いた現象への介入を指す。具体的な呪具としては本、文書、札などである。魔導書を用いるタイプは行使に時間がかかり、即時的な反応が難しい代わりに強力で複雑な魔法を発動できる。物語外装(メルヒェン)一般に行使に時間が掛かるわけではなく、札などを使うタイプは紙人形などを飛ばしながらアグロ的な動きが可能である。ただ、呪具の種類が広いだけあって物語外装(メルヒェン)の使い手がお互いに呪具を交換して使ったり、魔法を同調させたりすることは難しい場合が多い。

音楽外装(ムジーク)

 音楽を利用した現象への介入を指す。具体的な呪具としては楽器、タクト、メトロノームなどである。音楽外装(ムジーク)は基本的にその音楽の流れを、現象介入に利用するためある程度詠唱時間が必要になる。このため詠唱中の防御のために他の人間を必要とするため、単独での行使に向いていない。その代わりに発動に成功した場合、その現象介入は強固に実行され、他の現象魔法による上書きは困難である。音楽外装(ムジーク)の使い手同士では、形式が非常に似るため、連携がしやすいと言われている。

時間外装(ツァイト)

 時間を道具に用いた現象への介入を指す。具体的な呪具としては懐中時計、腕時計、日時計など。ほとんどの人間が携帯できる時計を魔道具として用いる。ただし、時間外装(ツァイト)を用いる魔道士が必ずしも時を止めたり早めたりする魔法を使うというわけではない。現象魔法上における時間概念の定義によって発動の機序は大きく異なると共に世界の基礎に関する介入であるため難易度も上昇する。同じ時間外装(ツァイト)の魔道士でも連携はほぼ不可能である。

難易度による分類

基礎魔法

 様々な魔法系統の基礎となる魔法であり、魔術師が一番最初に習う魔法のプロトタイプ的なものである。難易度は非常に低く、現象魔法を専門としない一般人でも簡単に習得が出来る。しかし、出来ることは本当に些細な事である。
 言葉外装(レーデ)であれば、高度に訓練された基礎魔法を無詠唱(詠唱破棄)で実行が可能である場合もある。

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最終更新:2024年04月14日 18:25