デイブレイク ◆6XQgLQ9rNg



 漆黒の空が紺へと転じ、東方より巨大な光球がのっそりと顔を出し始める。
 緩慢に白んでいく世界の中、セッツァー・ギャッビアーニはふと空を見上げた。
 星の数が減っている。小さな瞬きの群れは、強大な輝きを放つ太陽光によって呑み込まれつつある。 
 消えゆく星々はまるで、夢破れ潰えた者たちを象徴しているようだった。
 だから、セッツァーは星の数を数えない。
 代わりに、徐々に眩さを増して行く太陽へと目を向ける。
 やがて空を支配するそれはまさしく、彼方の星の存在を許さない王者そのものだ。
 そこに近づくにはどうすればよいか。
 答えなど分かり切っている。

 同じように勝ち上がればいい。
 全ての敵を潰し、喰らい、呑み込み、踏み躙り、最後の最後まで倒れなければいい。
 完全なる勝者にこそ、リターンを手にする権利がある。
 純粋さすら感じるほどに単純だ。
 それはつまるところ、これまでセッツァーが生き歩んできた道と相違ない。
 そしてまた、その道はこれからも続いていくのだ。
 飽くなき欲望を糧に夢を追い求める限り、永劫に続いていく。

 それこそがセッツァー・ギャッビアーニというギャンブラーの生き様であり誇りであり矜持である。
 最高だ。もっとずっと、この道を進み続けたくてたまらない。
 そのためにも。
 夢を掴み取るためにも。
 セッツァーは勝ち筋をイメージする。
 誰が相手でも、勝ちを譲ってやるつもりなど欠片もない。

 ――どんな手を使ってでも誰が相手でも俺は勝つ。必ず、だ。

 それは先ほど、座礁船で改めて誓ったことでもあった。

 ◆◆

「どうせ死ぬのだ。面白ければ、それだけ生き延びるぞ?」
 その言の葉は威圧感と殺意を孕んでいながらも落ち着き払っていた。
 かつて交差した際、その男――ピサロは焦燥感に塗れていて、その無様さを取り繕う余裕すら見受けられなかった。
 高潔さは感じられても威厳に欠けるその様を、セッツァーはよく覚えている。
 それ故に、今の状況は空恐ろしい。
 必死に女を探していたはずの彼が、疲労はあれど焦りなど皆無な様子で一人、この場にいるのだ。
 何もなかったはずがない。
「……意外だな。あんたが俺たちの話に興味を示してくれるとは思わなかったぜ」
 完全なるポーカーフェイスで動揺を押し殺しながらも、セッツァーは思考を回し想像力を総動員し直感を手繰り寄せ、可能性をシミュレートする。

 女を見つけられずにいることはあり得ない。
 女を何処かに待機させて単身でここに来たか?
 それも考えにくい。
 置き去りにしては、また別離してしまうかもしれない。
 あれほど必死になって探していたのだ。そんなリスクを背負って単独行動するとは考えにくい。
 ひょっとするとピサロと彼の探し人以外の第三者がいるのかもしれない。
 だとしても、第三者に女を任せるとは思えなかった。
 そうなると、バニシュに類する魔法や、ジャファルの言う隠れ蓑のような道具を用い、近くに女が身を潜めているか。
 あるいは。
 共にいることができなくなったか。
 その落ち着きぶりからは前者であると考えるのが自然だが――それでも、判断材料が足りない。
 せめて奴の目的が分かればいいのだが。

「御託などいらぬ。話してみろと言っているのだ」
 剣呑さを露わにする男のプレッシャーは強烈で、時間稼ぎなど許してはくれそうにない。
 誰にも気取られぬよう所作一つに細心の注意を払いながら、ジャファルを窺う。
 彼もまた顔色一つ変えず得物の柄に手を掛け、黙しピサロを警戒しているようだった。
 ピサロ以外の存在を気にしているように見えないのは、隠れている者など存在しない証か。
「分かった、分かったよ」
 肩を竦め足を組み、堅い木製の椅子に座り直す。最悪な座り心地だった。
 泰然たる態度で、セッツァーは口を開く。
「まず、俺たちのスタンスを話しておく。俺――ああ、まだ名乗ってなかったな。セッツァー・ギャッビアーニだ。
こいつはジャファル。今は手を組んではいるが、俺たちは殺し合いに乗っている口だ」

 そう前置きをし、セッツァーは語る。 
 この座礁船に集おうとする者がいたこと。
 この場に現れたルーキーのこと。
 彼によってもたらされた情報のこと。
 その全てを、客観的事実として告げる。
 ジョウイの情報の真偽は定かではないと、丁寧に注釈も付ける。 
 隠す理由も偽る必要も見当たらない。
 今のピサロの行動理念が不透明な以上、いたずらに誘導を行うべきではない。
 まずは事実を告げ、出方を探るべきだった。  

 そうしてセッツァーは、知り得る全てを包み隠さず話し終える。
 その直後、セッツァーが次の句を継ぐ前に、

「――それで、貴様らはどうするつもりだ?」 

 ピサロが間髪入れず問うてくる。
 セッツァーはポーカーフェイスのまま、しかし内心で舌打ちをしてしまう。
 予想以上に、目の前の男は怜悧だった。
 それでもセッツァーは慌てない。
 ハッタリでもカマ掛けでも何でもいい。
 相手の腹の内を引き摺りだすための方策を、冷静に思索する。

 ◆◆

 昇りゆく太陽は眩く世界を照らしてゆく。
 美しく仄かに温かい朝日は、在りし日の記憶を目覚めさせる。
 思い出の中で笑むのは、愛しいエルフの女性。
 深緑の木々の下、淡い陽光に照らされて、彼女は微笑んでいる。
 彼女の周りには、多くの命が集っていた。
 動物がいて、虫がいて、植物がいて、魔物がいた。
 彼女を中心にして、あらゆる命が瑞々しく輝いていた。
 それは生命の息吹が満ちる、穏やかで優しい朝のはじまり。
 眩ゆくて幸せな光景。温もりに祝福された時。
 代わりなどないかけがえのない思い出。
 その幸福感ゆえに、今となっては痛みが伴う記憶。

 胸の奥がずきりと痛み、ピサロは歯を食いしばる。
 この痛みは罰だ。
 愚かしいこの身が、受けるべくして受けた罰なのだ。
 罪人の自覚を抱ピサロは往く。
 彼女のためではなく、彼女の愛した世界のためではなく、彼女を愛した生命たちのためではなく。
 ただ、自らの想いのために。想い愛し続けるために。 
 咎人のエゴだと知り彼女が望まないと理解していても止まらない。
 止められない。
 たとえ彼女に蔑まれ憎まれ絶望されようとも。
 生きた彼女を、もう一度だけ見たかった。
 彼女のことを顧みず、自らの想いだけのために全てを殺めるなどと、本当に身勝手なものだと、ピサロは自嘲する。

 だからこそ。
 あの座礁船で、ピサロは即座に殺害へと至らず問うたのだった。

 ◆◆ 

「――それで、貴様らはどうするつもりだ?」 

 実のところ、駆け引きだとか交渉だとかいったほどのものではなかった。
 ピサロの問いは、理性というより感情に根差していた。
 人間がどのように考え行動するか、単純に気になったのだ。
 気まぐれめいたそんな感覚に捉われたのは初めてであった。
 ロザリーを喪う以前から、ピサロは人間を滅ぼすべく活動を続けていた。
 エビルプリーストの姦計もあり、人間はすべからく愚かな存在であると信じ疑わず断定していた。
 それが誤っているとは思わない。
 他者を貶め踏み躙り利用し自身の強大な欲求を満たそうとする、薄汚く穢らわしい精神の宿主。
 それこそが人間であり、愚かなエゴの塊と同義である。
 だとするならば。
 同じではないか。

 最初は憎しみだった。
 ロザリーの命を奪った人間に対する憎悪のままに、殺戮を繰り返した。
 そして今は欲望のままに、ただロザリーを蘇らせたいがために殺戮を行うと決意した。
 醜い人間の命に価値など感じたことはない。
 むしろ存在しない方が世界のためだとすら思っている。
 だからこそ殺人行為に後悔はしていないし、これからも躊躇うなどあり得ない。

 だが、ピサロは思う。
 そのような選民主義的な蔑視や自己充足のための殺害など、まさに。

 ――醜悪な人間が取りうる、唾棄すべき行動そのものではないか。

 そのように気付いたのは、この手で灼いたロザリーの亡骸を埋葬してからだった。
 彼女の身を誰にも触れさせたくないと望み、彼女のためとは言わず自らのために剣を振るうと誓った、その時に。
 ピサロは気付き、自覚した。
 その望みが、誓いこそが。
 人間が抱き得るものと等しい、と。

 認めよう。
 ピサロ自身の愚かさを、身勝手さを、醜悪さを、汚さを。
 あれほど憎悪し嫌悪した人間と、ピサロも大差のない存在なのだ。
 少し前までは決して受け入れられなかったであろうその自覚が芽生えていた。
 だからこそ、ピサロは興味を抱く。
 この者どもは、どうするのであろうか。
 殺し合いに乗っているらしい、自分とよく似た彼らは、一体どうするつもりなのであろうか。

「決めかねている、ってのが本音だ。奴が罠を張っている可能性が否定できねえからな。だからよ」
 セッツァーが砕けた賽を器へと投げ入れる。賽を叩きつけられた陶器が、小さく悲鳴を上げるように音が鳴った。
 その中身を一瞬だけ見て、セッツァーはピサロへと視線を向ける。
「意見がほしい。あんたならどうする?」 
「知れたこと。罠? 謀略? それがどうした?」
 考えるまでもなく答えなど決まっていた。
 故にピサロはマントを翻しセッツァーに背を向け、静かながら力に満ちた声で、逡巡なく即答する。
「――真っ向から捩じ伏せてくれる。全力でな……!」 
 罠が張ってあろうと策が巡らせてあろうと構うものか。
 賢しく卑劣な手段を用いられようとも止まるものか。
 止めさせて、なるものか。
 ピサロが抱く想いは――溢れ湧きだす欲望は、それほど甘っちょろいものではない。
 邪魔立てするものを斬り捨て立ちはだかる壁をぶち抜き障害を踏み砕く。
 その果てで今一度、ロザリーへと至るために。

 もう、ピサロには焦燥も弱みも惑いもない。
 皮肉にもロザリーの喪失により、ピサロは更に鋭く研ぎ澄まされていた。
 その鋭さをむき出しのまま、ピサロは床を軋ませ一歩を踏み出す。
 座礁船にもはや用は感じられなかった。
 今の話が真実だとすれば、真夜中の雨の下で戦った者たちが再び遺跡に集うことになる。
 そこには、奴がいる。
 かつて勇者と呼ばれていた男――ピサロと共に、ロザリーの命を絶った男がいる。 
 みっともなく喚き散らす彼の姿を、今更になってピサロは思い出し、内心で嘲笑う。
 彼――ユーリルを嘲笑したわけではない。ピサロは彼を笑えない。
 憎しみに突き動かされ冷静さを欠き闇雲に暴れるあのザマは、まさにかつてのピサロと同じであったのだから。

 ――本当に、変わらぬということか。魔族も人間も。勇者も魔王も。

 だからこそ勇者ユーリルも、ロザリーの信頼や友愛を手にできたのだ。
 しかし、だ。
 ユーリルはそれらを、無自覚にせよ裏切った。
 奴は今頃、そのことをどう受け止めているのだろう。
 悔やんでいるだろうか。嘆いているだろうか。心を痛めているだろうか。
 嗤っているだろうか。楽しんでいるだろうか。面白がっているだろうか。
 それとも。
 あの時の、憎悪の対象しか映っていない様子から考えるに。

 ロザリーを殺めたことすら気付いてはいないのではないだろうか。

 それだけは確かめなければならなかった。
 もしも仮に、ロザリーの死に気付いていないのだとすれば。

 それほど許せないことなど、ありはしない。

「おいおい、俺たちを殺さなくていいのか?」

 立ち去ろうとしたピサロは、その声に足を止めて肩越しに振り返る。

「貴様らなどいつでも殺せる。焦る必要などない」
「ほぅ……」

 セッツァーがにやりと頷いた、その瞬間。
 空気が、音もなく一瞬にして張りつめた。

 得物を引き抜く。
 左手のヴァイオレイターを前に、右手のヨシユキを真後ろに掲げた瞬間。
 左右の刃に、殺意が衝突した。
 ヨシユキと交差したのは死者の魂が宿った呪いの札。
 ヴァイオレイターと鍔迫り合うのは暗殺者の短剣。
 影すら追えぬほどの素早さでピサロの首を狩ろうとしたジャファルに、縫い針で延髄を刺すが如く精度で急所を狙ってきたセッツァー。
 そのどちらにも容赦も躊躇もなく、尖った殺気がピサロに突き付けられていた。

「忘れるなよ。俺たちも、お前を殺せるんだぜ?」

 それだけ言うと、セッツァーが死の札をしまいジャファルが納刀する。
 彼らが放つ刺々しい殺気が波にさらわれるように引いていく。
 ピサロが怒気を込め、ヨシユキの切っ先をセッツァーに突き付ける。
 だが彼は、不敵に笑って見せた。

「勘違いしないでくれ。あんたと事を構えようってわけじゃない。
ここでやり合うのは、お互い不利益だと思ってるんだ」

 ピサロは口を開かずセッツァーを睨む。
 それでも彼は動じず、無言を肯定と解釈したらしく続ける。

「このまま俺たちがやり合ったとしたら、どちらが勝とうが無事じゃあ済まない。
そうなったらどうだ? ここで勝っても、最後まで生き残る可能性が激減するとは思わないか?」

 素直に頷かなかったのは、意地があったからだ。
 理性的に判断すれば、それは認めざるを得ない事実である。
 これまで、ピサロは数多くの人物と戦ってきた。
 拳に心を乗せた格闘家。
 怒りと絶望によって覚醒した伐剣者。
 導かれし者である占い師。
 炎使いと呼ばれるハンター。
 そして、夜の雨の下に集った者たち。
 全員を、ピサロは覚えている。
 もしも彼らが取るに足らない雑魚ばかりなら、印象にすら残っていないはずだ。
 今なお生き延びている者たちは更なる強者であると想像できる。
 そんな想像を砕こうとするかのように、ピサロは奥歯を噛み締める。
 なのに表情は、辛苦や悔恨や屈辱に耐えるようにしかならなくて、だからすぐに顎から力を抜いた。
 噛み砕けないのならせめて呑み下そうと、潮の香りを吸い込んで。
 ジャファルとセッツァーを、精一杯睥睨する。

「故に――手を組めと言いたいのか?」 
「物分かりがよくて助かるぜ」
 大仰に頷き、不遜にも口の端を吊り上げるセッツァーに、失笑をぶつけてやる。
「ジョウイとやらを捨て置いた口でよく言う」
「奴は信用できない。あんたはできる」
 セッツァーは立ち上がり、ピサロへと手を伸ばす。
 武器を持っていないその手が、武器を構えたままのピサロに差し伸べられる。
「あんたは紛れもなく、俺たちに近い存在だからな」
 しゃあしゃあと言ってのける男に抱くのは、不愉快さと嫌悪だった。
 こちらを見通したかのような傲慢さも、裏切りを前提とした薄っぺらい言葉も、ピサロの気分を害するだけだった。
 それでも。
「ふん……」
 顔を顰めたまま、ピサロが武器を収めたのは。
 セッツァーの瞳で煌めく執着と、ジャファルの瞳を染める意志に、少なからず共感を覚えてしまったからだ。
 それらを否定することは、即ち、今ここにいるピサロ自身を否定することのように感じられた。
「いいだろう」 
 セッツァーの手は取らない。
 そこまでの行為は、プライドが許さない。
 たとえ人間と魔族が同じであったとしても、ピサロをピサロ足らしめる高潔さを失ってはならない。
 だから、褪せぬ貫録と衰えぬ高貴さで、声を紡ぎだす。

「手を貸してやろう。貴様ら人間のためではなく、私の目的のために」

 ◆◆

 陽の光が闇を払い、世界が白くなっていく。
 徐々に強さを増す陽光と姿を消して行く闇の狭間で、ジャファルもまた東の空を見やる。
 西へと伸びる影ではなく天空へ上る太陽へと、自然に目が向いていた。
 昔は、朝陽に感慨を抱きはしなかった。
 強いて夜明けに抱く印象を上げるならば、仕事がやりにくくなることによる忌避感くらいだった。
 けれど今は違う。
 今は、夜明けの時に好感を抱いていると断言できる。
 ジャファルのような闇に生きる人間にも等しく降り注ぐ輝きは心地よかった。
 美しく澄み渡る光が、暗闇の世界を照らす。
 感じることはただ一つ。

 ――ニノのようだ。

 奪う者であり常に死と共にあったジャファルに、生命の輝きを与えてくれたニノ。
 彼女はジャファルを、闇から救い上げてくれた。生きる意味と価値と尊さを教えてくれた。
 嬉しいと思えるのも、楽しいと感じられるのも。
 ニノのおかげであり、ニノが生きていてくれるからである。
 幸福というものを、ジャファルは知ることができた。
 感謝している。愛している。
 そんな感情を得られたのもまた、ニノがいてくれたからに相違ない。
 ただそれでも、今になってジャファルは改めて思う。

 ――俺は、ニノには相応しくない。

 そう思いいたったのは、数刻前、降りしきる雨の中、闇に包まれてニノと再会したあのときからか。
 いや、そうじゃない。
 ニノを生かすために、自分を含めた全てを殺すと決意したあのときからだ。
 分かっていた。
 こんなジャファルの行動を、ニノは決して望まないと。
 分かっていても、他の選択肢など見つけられはしなかった。
 物心ついたときから殺人の術を叩き込まれ刷り込まれ、道具として日常的に殺人に携わってきたのだ。
 殺人はジャファルの原風景であり、捨て去れないでいた。
 離れなく離せないのだ。
 血の臭いは鼻に染み着き首を斬る感覚は掌から消えず断末魔の声は残響し続け絶命の瞬間は見慣れている。
 もう、どうしようもない。
 どんなに純真で汚れのない輝きに晒されても、根本にこびりついた不浄さは拭えない。
 ジャファルに光は相応しくない。
 もしも相応しい光があるとするならば、裁きの輝きのみ。

 けれど。
 胸の内に宿る想いに、嘘だけは付きたくなかった。
 たとえ根底の穢れが消せなくとも、ニノへの慕情はジャファルのものだ。
 それは生まれて初めて持つ宝物。
 ほんとうに、ほんとうにたいせつな、宝物なのだ。
 誰にも渡せない。譲れない。これだけはずっと抱えて逝く。
 そのためにも。
 ニノを守る。
 必ず、ニノを生きて帰す。

 ジャファルは高さを増し光を強くする太陽から、同行者へと目を向ける。
 セッツァー・ギャッビアーニと、ピサロと名乗る青年。
 彼らもまた、東の空をただ眺めていた。
 不思議だった。
 示し合わせたわけでもないのに、ジャファルを含めた三人が自然と足を止め朝日へと見入っていたのだ。
 この殺し合いの場で、生命を否定するものたちが、揃って夜明けに思いを馳せている。
 ここにいる男たちは皆同類だという証のようだった。

 セッツァーは、求める者特有のギラつきを。
 ピサロは、郷愁めいた悲哀を。
 それぞれの双眸に映し、眩い光へと目を向けている。
 ジャファルは彼らの敵であり、彼らはジャファルの敵である。
 彼らがニノへと牙を剥いたその瞬間に、この同盟は決裂する。
 その時は、決して遠くない。
 それと同様に、自分の生命が潰えるときももうすぐだ。
 セッツァーたちと異なり、ジャファルの目的は最後まで生き残ることではない。
 だから。
 もう一度、ジャファルは朝焼けを見やる。
 それを咎める者などいはしない。

 光を放つ太陽、白と橙と紺のグラデーション。
 広大な平原と、彼方に広がる雄大な海。輝きを照り返す水平線。
 こんなちっぽけな、何処かも分からない島にいながらも、世界の広さを感じさせる光景。 
 既に夜の気配はない、美しい朝の訪れ。 
 それでも。

 決して払えぬ闇は、ここにある。


【B-7 二日目 早朝】

【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[状態]:健康
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6
    マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、基本支給品一式×1
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ニノを生かす。
2:遺跡へ向かう?
3:セッツァー・ピサロと仲間として組む。座礁船を拠点に作り替えるorジョウイの提案を吟味する?
4:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
5:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦
※セッツァーと情報交換をしました
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。


【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:好調、魔力消費(中)
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2、 シルバーカード@FE 烈火の剣、メンバーカード@FE 烈火の剣 、拡声器(現実) 回転のこぎり@FF6
    フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ、天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3 、小さな花の栞@RPGロワ
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:遺跡へ向かう?
2:ジャファル・ピサロと仲間として行動。座礁船を拠点に作り替えるorジョウイの提案を吟味する?
3:ゴゴに警戒。
4:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です
ヘクトルトッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。


【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)、心を落ち着かせたため魔力微回復、
    ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません)
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実
[思考]
基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる
1:遺跡へ向かいユーリルにロザリーのことを尋ねる。
2:セッツァー・ジャファルと一時的に協力する。
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。
 ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(同左)。


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128-2:アシュレー、『名』を呼ぶ(後編) セッツァー 134-1:龍の棲家に酒臭い日記(前編)
ピサロ
ジャファル


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最終更新:2011年09月02日 22:50