順位発表の衝撃から一日が経った。
時間はレース開始時刻寸前。
妹紅、ジョニィ、ジャイロはスターティング・グリッドに馬を並べていた。
「このステージの優勝候補は『サンドマン』だとさ。賭けが始まって彼が1番人気……どう思う?」
「ん? オレじゃあ無いのか?」
「アタシ何位?」
馬上で新聞を広げているジョニィの話に、ジャイロと妹紅が食いついた。
「残念だけどジャイロは9番人気だね。僕は6番人気。妹紅はなんと3番人気だ」
「へぇ、アタシが3番人気ね……成績は芳しくなかったけどね」
「それ以前に見た目があるだろ。君の見た目はすごく……なんというか……ごくり。目に留まる」
「なるほどね。そういえばここでサンドマンが優勝しちまったらヤバイんじゃないの?」
「そうだね。このステージで優勝されたら合計点数200ポイントの上タイムボーナス2時間だ。それだけは絶対に封じたい」
「アイツ、一日に100キロ以上走るの?」
「恐らく……アリゾナは奴のホームグラウンドだ。それに……」
ジョニィが左の方向を見た。
その先には一人のカウボーイの姿が。
「あそこにいるマウンテン・ティムは2番人気の優勝候補だ」
すまし顔で準備を進めるマウンテン・ティムをジャイロは指差して、
「変な帽子だよなアイツ……踏みつけてやりたいね。まだ頭の上に乗っかっている間に踏みつけたいね」
ニヤニヤ笑う。
不死鳥は失敗を恐れない 第拾話 『スピードはともかく理由を説明しろッ!』
「アイツ、凄いイケメンだけど腕前もすごいよ」
妹紅はジャイロと違ってきつい表情を浮かべた。
「馬の蹄の音が全く聞こえなかった。気づかないうちに追いつかれてゴール寸前でアタシとジョニィが追い抜かれていたんだからね」
「あんな変な帽子に迫られていて気付かなかったって? ニョホホ」
「アタシは前だけ見てたからね。後ろ見ていたら順位は2ケタになるわよ」
ジャイロと妹紅はにらみ合いを始める。
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
ジョニィは視線で火花を作っている二人を遮り、地図を広げた。
「僕が思うに、このステージは『水場探し』の戦いになると思うんだ」
広げられた地図には、多くの三角マークが付けられている。
「いかに水を切らさず、この砂漠を進むか……」
ジョニィが地図を見ていると、突然妹紅が思い出したかのような表情をして、「あ! 水場と言えば……」
手を叩いた。
「「な、何だよ急に……」」
二人が視線を妹紅に向けると、妹紅はしばらく黙り込んで、
「いや、やっぱり止めておこう。この話はこの時にするには不吉すぎる」
首を横に振った。
「ニョホホ。びびっちゃったのか?」
「ああん? ジャイロてめぇ喧嘩売ってんの?」
また二人は視線で火花を散らし始める。
しばらくすると、妹紅が「フン!」と言わんばかりに視線を逸らし、
「ああいいよ! 話してやる! 今思い出したこと全て話してやるからよーくききなさいよ!」
「ニョホ。それでこそだぜ」
妹紅は咳払いを一回して、口を開いた。
「まあ、まだこの辺りの土地がアメリカになったばかりの頃、この辺りを通っていた騎兵隊26名が全滅した。なぜか解る?」
二人は、息をのんだ。
「事故が起きたわけでもなく、ならず者の集団に襲われたわけでもない。それなら何故全滅したか? それは今年に限って水場が枯れていたからよ」
二人は、顔を見合わせて、渋い表情をした。
「騎兵隊は次の水場を目指してさまよった。だけど、砂漠ってのはとんでもなく暑くてね。日中気温は摂氏50度にも及ぶ。乾きに渇き、彼らは何も見えなくり、それでも歩き続けた」
「な、何も見えくなりながら歩き続けたってどういう事?」
引きつった表情でジャイロは妹紅に質問した。
「いい質問ね。答えは簡単。乾きすぎて彼らの眼球にひびが入っていたからよ」
二人の顔は、青ざめた。
「そして騎兵隊のみんなは無限の砂漠に迷い込み、ゆっくりと焼き殺されましたとさ。おお、めでたくないめでたくない」
聞かなきゃよかった……
その思いで二人の頭の中はいっぱいになった。
「ま、そうならないためにも水場は肝心ね」
死んでも生き返る妹紅はフランクな表情で笑うが、死んだら生き返らない二人にとっては笑って済む出来事ではない。
「そうだな。で、この三角マークが水場の印だ」
ジョニィは、地図上の三角マークを指差す。
残り二人は、地図を注目した。
「ここをスタートしたら、北の方向50メートルに水場がある。もし砂漠に迷ってこれを見つけられなかったらリタイアじゃなくて死に近くなる」
真剣な表情で、説明をするジョニィ。
「方位磁石は、役に立つか?」
ジャイロは、ポケットから方位磁石を取り出してみせる。
「たぶん役に立つと思うよ」
ジョニィは、手元のコルクを弄りながら、生返事をする。
「夜になったら方角はわかるんだけどね……」
妹紅も厳しい表情をして、背中に背負ったリュックを見る。
“いよいよセカンド・ステージのスタート時刻です!”
アナウンスが、辺境の教会に響き渡った。
“ここより先は鉄道路線は敷かれていないので、列車は先回りする形でチェック・ポイントで待つことになります。なお、気球での追尾もコロラド川までが限界となります”
スタートを目前として、ディエゴはゴーグルをかけ、サンドマンは屈伸運動をする。
ポコロコも、馬の背に荷物を大量に積んでいる。
その様を見た妹紅は、心配になってきた。
「もっと荷物積むべきだったかな……」
そう考えたところでもう遅い。
10時ちょうどの花火が上がり、レースは始まった。
すぐに馬を走らせ、前へ出ようとする妹紅の横を、ジャイロが物凄いスピードで通り過ぎた。
「え……」
その姿を見て、唖然とした表情を浮かべたのは、ジョニィ。
「あら……」
揺れる馬上で、妹紅も呆然とジャイロを見る。
“ジャイロは完全に一人旅を演じるつもりだァーッ!”
興奮するアナウンスの声を背に、ジョニィは歯軋りをする。
「チクショウ……どうかしてるぞッ1,200キロもあるんだぞ……どういう性格なんだアイツは……」
片手を顔に当ててひとしきり嘆いた後、
「ああ~! ついていくとも! 行くともよォォォーッ!」
自棄気味に叫んで馬を加速させる。
「ジャイロの奴……自分勝手にもほどがあるだろ!」
妹紅もやや呆れ気味に首を振り、
「ちっくしょー! こうなったら地獄の果てまで追っかけてやるわよ!」
ジャイロ向けて全速前進。
二人はこのままジャイロが直進するかと思っていた。
しかし、ジャイロはその方向を90度曲げて走り出した。
「……なんだって!」
「……なんなのよアイツ!」
二人は口をそろえて驚いた。
それもそのはず。ジャイロが向かっている先は……
“砂漠だァーッ! ジャイロ・ツェペリ選手、砂漠のド真ん中を突っ切る方角へ走っているーッ! なんと50キロ先にある水場を無視するつもりです! しかもこの方角は150キロ先に水場があるかも解らない!”
ジャイロの暴挙に、妹紅とジョニィは口を揃えた。
「「お前何をやってるんだジャイロ・ツェペリィーッ! スピードはともかく理由を言えーッ!」」
←To be continued...
次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。ぶっちゃけ154がまた次回予告のネタを切らしたらしいぜ」
露伴「ネタ切れか……物書きにとっては誰もが通る道だな」
魔理沙「次回予告のネタを切らす物書きもどうかと思うけど」
露伴「僕が知っている作家にはあとがきのネタに悩む奴がいる」
魔理沙「そいつどんなあとがき書いてんだ……?」
次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない 第11話『サボテンパニック!』 お楽しみに!
魔理沙「次回も見てくれないと……」
露伴「ヘブンズドアー!『次回も読む』ッ!」
魔理沙「強引にもほどがありすぎるぜ……」
時間はレース開始時刻寸前。
妹紅、ジョニィ、ジャイロはスターティング・グリッドに馬を並べていた。
「このステージの優勝候補は『サンドマン』だとさ。賭けが始まって彼が1番人気……どう思う?」
「ん? オレじゃあ無いのか?」
「アタシ何位?」
馬上で新聞を広げているジョニィの話に、ジャイロと妹紅が食いついた。
「残念だけどジャイロは9番人気だね。僕は6番人気。妹紅はなんと3番人気だ」
「へぇ、アタシが3番人気ね……成績は芳しくなかったけどね」
「それ以前に見た目があるだろ。君の見た目はすごく……なんというか……ごくり。目に留まる」
「なるほどね。そういえばここでサンドマンが優勝しちまったらヤバイんじゃないの?」
「そうだね。このステージで優勝されたら合計点数200ポイントの上タイムボーナス2時間だ。それだけは絶対に封じたい」
「アイツ、一日に100キロ以上走るの?」
「恐らく……アリゾナは奴のホームグラウンドだ。それに……」
ジョニィが左の方向を見た。
その先には一人のカウボーイの姿が。
「あそこにいるマウンテン・ティムは2番人気の優勝候補だ」
すまし顔で準備を進めるマウンテン・ティムをジャイロは指差して、
「変な帽子だよなアイツ……踏みつけてやりたいね。まだ頭の上に乗っかっている間に踏みつけたいね」
ニヤニヤ笑う。
不死鳥は失敗を恐れない 第拾話 『スピードはともかく理由を説明しろッ!』
「アイツ、凄いイケメンだけど腕前もすごいよ」
妹紅はジャイロと違ってきつい表情を浮かべた。
「馬の蹄の音が全く聞こえなかった。気づかないうちに追いつかれてゴール寸前でアタシとジョニィが追い抜かれていたんだからね」
「あんな変な帽子に迫られていて気付かなかったって? ニョホホ」
「アタシは前だけ見てたからね。後ろ見ていたら順位は2ケタになるわよ」
ジャイロと妹紅はにらみ合いを始める。
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
ジョニィは視線で火花を作っている二人を遮り、地図を広げた。
「僕が思うに、このステージは『水場探し』の戦いになると思うんだ」
広げられた地図には、多くの三角マークが付けられている。
「いかに水を切らさず、この砂漠を進むか……」
ジョニィが地図を見ていると、突然妹紅が思い出したかのような表情をして、「あ! 水場と言えば……」
手を叩いた。
「「な、何だよ急に……」」
二人が視線を妹紅に向けると、妹紅はしばらく黙り込んで、
「いや、やっぱり止めておこう。この話はこの時にするには不吉すぎる」
首を横に振った。
「ニョホホ。びびっちゃったのか?」
「ああん? ジャイロてめぇ喧嘩売ってんの?」
また二人は視線で火花を散らし始める。
しばらくすると、妹紅が「フン!」と言わんばかりに視線を逸らし、
「ああいいよ! 話してやる! 今思い出したこと全て話してやるからよーくききなさいよ!」
「ニョホ。それでこそだぜ」
妹紅は咳払いを一回して、口を開いた。
「まあ、まだこの辺りの土地がアメリカになったばかりの頃、この辺りを通っていた騎兵隊26名が全滅した。なぜか解る?」
二人は、息をのんだ。
「事故が起きたわけでもなく、ならず者の集団に襲われたわけでもない。それなら何故全滅したか? それは今年に限って水場が枯れていたからよ」
二人は、顔を見合わせて、渋い表情をした。
「騎兵隊は次の水場を目指してさまよった。だけど、砂漠ってのはとんでもなく暑くてね。日中気温は摂氏50度にも及ぶ。乾きに渇き、彼らは何も見えなくり、それでも歩き続けた」
「な、何も見えくなりながら歩き続けたってどういう事?」
引きつった表情でジャイロは妹紅に質問した。
「いい質問ね。答えは簡単。乾きすぎて彼らの眼球にひびが入っていたからよ」
二人の顔は、青ざめた。
「そして騎兵隊のみんなは無限の砂漠に迷い込み、ゆっくりと焼き殺されましたとさ。おお、めでたくないめでたくない」
聞かなきゃよかった……
その思いで二人の頭の中はいっぱいになった。
「ま、そうならないためにも水場は肝心ね」
死んでも生き返る妹紅はフランクな表情で笑うが、死んだら生き返らない二人にとっては笑って済む出来事ではない。
「そうだな。で、この三角マークが水場の印だ」
ジョニィは、地図上の三角マークを指差す。
残り二人は、地図を注目した。
「ここをスタートしたら、北の方向50メートルに水場がある。もし砂漠に迷ってこれを見つけられなかったらリタイアじゃなくて死に近くなる」
真剣な表情で、説明をするジョニィ。
「方位磁石は、役に立つか?」
ジャイロは、ポケットから方位磁石を取り出してみせる。
「たぶん役に立つと思うよ」
ジョニィは、手元のコルクを弄りながら、生返事をする。
「夜になったら方角はわかるんだけどね……」
妹紅も厳しい表情をして、背中に背負ったリュックを見る。
“いよいよセカンド・ステージのスタート時刻です!”
アナウンスが、辺境の教会に響き渡った。
“ここより先は鉄道路線は敷かれていないので、列車は先回りする形でチェック・ポイントで待つことになります。なお、気球での追尾もコロラド川までが限界となります”
スタートを目前として、ディエゴはゴーグルをかけ、サンドマンは屈伸運動をする。
ポコロコも、馬の背に荷物を大量に積んでいる。
その様を見た妹紅は、心配になってきた。
「もっと荷物積むべきだったかな……」
そう考えたところでもう遅い。
10時ちょうどの花火が上がり、レースは始まった。
すぐに馬を走らせ、前へ出ようとする妹紅の横を、ジャイロが物凄いスピードで通り過ぎた。
「え……」
その姿を見て、唖然とした表情を浮かべたのは、ジョニィ。
「あら……」
揺れる馬上で、妹紅も呆然とジャイロを見る。
“ジャイロは完全に一人旅を演じるつもりだァーッ!”
興奮するアナウンスの声を背に、ジョニィは歯軋りをする。
「チクショウ……どうかしてるぞッ1,200キロもあるんだぞ……どういう性格なんだアイツは……」
片手を顔に当ててひとしきり嘆いた後、
「ああ~! ついていくとも! 行くともよォォォーッ!」
自棄気味に叫んで馬を加速させる。
「ジャイロの奴……自分勝手にもほどがあるだろ!」
妹紅もやや呆れ気味に首を振り、
「ちっくしょー! こうなったら地獄の果てまで追っかけてやるわよ!」
ジャイロ向けて全速前進。
二人はこのままジャイロが直進するかと思っていた。
しかし、ジャイロはその方向を90度曲げて走り出した。
「……なんだって!」
「……なんなのよアイツ!」
二人は口をそろえて驚いた。
それもそのはず。ジャイロが向かっている先は……
“砂漠だァーッ! ジャイロ・ツェペリ選手、砂漠のド真ん中を突っ切る方角へ走っているーッ! なんと50キロ先にある水場を無視するつもりです! しかもこの方角は150キロ先に水場があるかも解らない!”
ジャイロの暴挙に、妹紅とジョニィは口を揃えた。
「「お前何をやってるんだジャイロ・ツェペリィーッ! スピードはともかく理由を言えーッ!」」
←To be continued...
次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。ぶっちゃけ154がまた次回予告のネタを切らしたらしいぜ」
露伴「ネタ切れか……物書きにとっては誰もが通る道だな」
魔理沙「次回予告のネタを切らす物書きもどうかと思うけど」
露伴「僕が知っている作家にはあとがきのネタに悩む奴がいる」
魔理沙「そいつどんなあとがき書いてんだ……?」
次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない 第11話『サボテンパニック!』 お楽しみに!
魔理沙「次回も見てくれないと……」
露伴「ヘブンズドアー!『次回も読む』ッ!」
魔理沙「強引にもほどがありすぎるぜ……」