「な、なんだよこれ……」
会場のどこかで一人の男が驚き戸惑っている。
いきなりの殺し合い、それも体を入れ替えてとなれば、ある種当然の反応と言えよう。
彼――体だけでなく精神も一応男である――の名前は、緒方まひろ。
どこにでもいるとは到底言えない、元高卒ニートの二十歳。現女子中学生である。
いきなりの殺し合い、それも体を入れ替えてとなれば、ある種当然の反応と言えよう。
彼――体だけでなく精神も一応男である――の名前は、緒方まひろ。
どこにでもいるとは到底言えない、元高卒ニートの二十歳。現女子中学生である。
なぜこんな経緯なのかというと、飛び級で大学に入れるほど優秀な妹が作った薬を飲まされ、女体化の上幼くなり、さらにはどんな根回しがあったのか中学校に編入しているからである。
正直、一行で説明していいものではない。
正直、一行で説明していいものではない。
とはいえ、殺し合いには関係のない話だ。
ここで大事なのは、まひろが体の変化を一度経験していることである。
ここで大事なのは、まひろが体の変化を一度経験していることである。
「そうだ! とりあえず今の俺の体についてなんか分かるものないか!?」
体の変化という常識外の経験を持っていたまひろは、戸惑いもそこそこに割り切り、今自分が誰の体になっているのかを把握しようとした。
経験値の存在により、彼は変化に戸惑う時間が一般人よりは短かったのだ。
とりあえずデイバックを漁っていると、今の自分の体について書かれた資料が出てきた。
経験値の存在により、彼は変化に戸惑う時間が一般人よりは短かったのだ。
とりあえずデイバックを漁っていると、今の自分の体について書かれた資料が出てきた。
「えっと、この体の持ち主の名前は……つげくに、みちかつって読むのかこれ?」
少々読み方に困りつつも読み始めるまひろ。
すると、この体の持ち主は継国巌勝といい、戦国時代の武士であることが分かった。
彼は更に資料を読み進めようとするが――
すると、この体の持ち主は継国巌勝といい、戦国時代の武士であることが分かった。
彼は更に資料を読み進めようとするが――
ザザザザザザザッ
という大きな足音が聞こえるので一度中断。
音のする方を見ると、そこには今のまひろと同じく戦国時代のような着物を纏い、包丁をこちらに向け、恐ろしい目をした男が迫ってきている。
例えどんな小さな子供でも分かるほど明らかに、殺し合いに乗っている参加者がそこにいた。
音のする方を見ると、そこには今のまひろと同じく戦国時代のような着物を纏い、包丁をこちらに向け、恐ろしい目をした男が迫ってきている。
例えどんな小さな子供でも分かるほど明らかに、殺し合いに乗っている参加者がそこにいた。
「やべっ!!」
まひろは迫って来る男に向けて迷うことなく後ろを向き、全速力で走り出す。
体の本来の持ち主は武士なので逃げることを恥じるかもしれないが、今の持ち主は一般人なので別に気にはしない。
彼はただ、継国巌勝の体のスペックの高さを信じ、逃げようとするだけだ。
それは間違いではないだろう。
継国巌勝は武士だ。それも鍛錬を重ねてきた剣士だ。身体能力は決して低くはない。
体の本来の持ち主は武士なので逃げることを恥じるかもしれないが、今の持ち主は一般人なので別に気にはしない。
彼はただ、継国巌勝の体のスペックの高さを信じ、逃げようとするだけだ。
それは間違いではないだろう。
継国巌勝は武士だ。それも鍛錬を重ねてきた剣士だ。身体能力は決して低くはない。
だがスペックの高さのみを当てにするのなら、覚悟しなければならないことがある。
それは、より高いスペックの相手には勝てないということだ。
それは、より高いスペックの相手には勝てないということだ。
ザシュッ!
必死に逃げたが、包丁を持った男は継国巌勝の肉体が出せるスピードより圧倒的に速く、まひろに即座に追いつき、心臓を突き刺した。
血を流し倒れ伏すまひろを、男は無感動に見下ろす。
血を流し倒れ伏すまひろを、男は無感動に見下ろす。
(みはり……)
己の死を悟ったまひろが最期に思い浮かべるのは、妹であるみはりのこと。
薬を飲まされ女の子にされた時は憤慨したものの、友達ができたり疎遠になった妹と再び距離が近くなったことで、それも悪くないと思い始めた矢先にこの様だ。
死んでも死にきれないが、彼の思いだけで現実は変えられない。
薬を飲まされ女の子にされた時は憤慨したものの、友達ができたり疎遠になった妹と再び距離が近くなったことで、それも悪くないと思い始めた矢先にこの様だ。
死んでも死にきれないが、彼の思いだけで現実は変えられない。
「ダメな兄貴で、ごめんな……」
まひろは妹への謝罪の言葉を最期に、この世を去った。
【緒方まひろ@お兄ちゃんはおしまい!(身体:継国巌勝@鬼滅の刃) 死亡】
◆
「まず一人なの……」
自らが手を下したまひろを見下しながら、包丁の男が呟く。
まひろを殺した際に返り血を浴びているので、血塗れの和服男が佇んでいることになるが、酷く不気味な構図だ。
しかし、彼にはそんな考えに思い至れる知能はない。
まひろを殺した際に返り血を浴びているので、血塗れの和服男が佇んでいることになるが、酷く不気味な構図だ。
しかし、彼にはそんな考えに思い至れる知能はない。
否、正しくは『彼女』というべきだろう。なぜならば、男の体にある精神は少女の物だからだ。
ここで男の中にある精神について説明しよう。
ここで男の中にある精神について説明しよう。
彼女の名前はメリーさん。
電話を掛けながら少しずつ電話先の相手に近づき、最後には背後に立つ都市伝説でお馴染みのメリーさんである。
もっとも、彼女は元々の話とは違い少女ではなく、埼玉に上京してきた男子大学生、内原平和の命を狙っているが。
電話を掛けながら少しずつ電話先の相手に近づき、最後には背後に立つ都市伝説でお馴染みのメリーさんである。
もっとも、彼女は元々の話とは違い少女ではなく、埼玉に上京してきた男子大学生、内原平和の命を狙っているが。
メリーさんは元々、平和に捨てられた人形として彼の命を狙うべく、電話を掛けながら少しずつ彼に近づいていった。
そして紆余曲折の末彼が住むアパートにたどり着きそうになったその時、彼の隣の部屋の邪教の信者たちが生贄として彼女を捧げた結果、なぜか彼女は異世界に転移していた。
その世界はいわゆるファンタジー世界で、レベルとかもあるテンプレなナーロッパだった。
そこで彼女は強くなり、魔王を倒して元の世界に帰り今度こそ平和の寝首を掻くと決意した――
そして紆余曲折の末彼が住むアパートにたどり着きそうになったその時、彼の隣の部屋の邪教の信者たちが生贄として彼女を捧げた結果、なぜか彼女は異世界に転移していた。
その世界はいわゆるファンタジー世界で、レベルとかもあるテンプレなナーロッパだった。
そこで彼女は強くなり、魔王を倒して元の世界に帰り今度こそ平和の寝首を掻くと決意した――
ところでこの殺し合いだ。
メリーさんも当然の如く困惑し、平和に電話したが繋がらない。
異世界に行っても通じたのに、と思ったが彼女は即座に思考を放棄し、とりあえず殺し合いに優勝することにした。
彼女ははっきり言って根本的に知能が低く短絡的で、おまけに基本的に問題を皆殺しで解決しようとする質だった。
メリーさんも当然の如く困惑し、平和に電話したが繋がらない。
異世界に行っても通じたのに、と思ったが彼女は即座に思考を放棄し、とりあえず殺し合いに優勝することにした。
彼女ははっきり言って根本的に知能が低く短絡的で、おまけに基本的に問題を皆殺しで解決しようとする質だった。
もし平和と電話がつながっているなら、彼が何とか主催を倒すように誘導で来たかもしれないが、そんな未来はもうない。
メリーさんは縁も所縁も、おまけに罪もない人間を一人殺した。そしてそれを幸先がいい、としか思っていなかった。
メリーさんは縁も所縁も、おまけに罪もない人間を一人殺した。そしてそれを幸先がいい、としか思っていなかった。
そんな彼女だから、支給品もロクに見ていない。
自分のスマホと適当な包丁があったので満足し、今の自分の体が何者になっているのか興味もない。
後で元の体に戻してもらおうとは思っているが、それだけだ。
そんな彼女だから、決して存在しないだろう。
自分のスマホと適当な包丁があったので満足し、今の自分の体が何者になっているのか興味もない。
後で元の体に戻してもらおうとは思っているが、それだけだ。
そんな彼女だから、決して存在しないだろう。
今の体の持ち主の名前が継国縁壱といい、さっき殺した男の体、継国巌勝の弟であることを、メリーさんが知る機会など。
【メリーさん@あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。(漫画版)】
[身体]:継国縁壱@鬼滅の刃
[状態]:健康、返り血を浴びている
[装備]:包丁@ファイナルファンタジーシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、メリーさんのスマホ@あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。(漫画版)
[思考・状況]基本方針:優勝して元の世界へ帰って、今度こそあの人を殺すの
1:とりあえず見つけた人を殺すの
2:元の体は返して欲しいの
[備考]
参戦時期は1話終了後です
[身体]:継国縁壱@鬼滅の刃
[状態]:健康、返り血を浴びている
[装備]:包丁@ファイナルファンタジーシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、メリーさんのスマホ@あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。(漫画版)
[思考・状況]基本方針:優勝して元の世界へ帰って、今度こそあの人を殺すの
1:とりあえず見つけた人を殺すの
2:元の体は返して欲しいの
[備考]
参戦時期は1話終了後です
※緒方まひろ(継国巌勝)の遺体、デイバック(基本支給品、ランダム支給品0~3)が会場のどこかに放置されています。
【包丁@ファイナルファンタジーシリーズ】
メリーさんに支給。
FFにおいてトンベリが使う包丁。
作品によって即死攻撃であることも多いが、このロワでは攻撃力高めの包丁として扱う。
メリーさんに支給。
FFにおいてトンベリが使う包丁。
作品によって即死攻撃であることも多いが、このロワでは攻撃力高めの包丁として扱う。
【メリーさんのスマホ@あたしメリーさん。いま異世界にいるの……。(漫画版)】
メリーさんに支給。
彼女が持つスマホ。なぜか異世界に行っても現代日本の住人、内原平和の電話に繋がる謎のスマホ。
だがこのロワでは外部とは連絡がつかない。
このロワの会場にある施設、あるいは他の参加者に支給された携帯、スマホにならば使用可能、かもしれない。
メリーさんに支給。
彼女が持つスマホ。なぜか異世界に行っても現代日本の住人、内原平和の電話に繋がる謎のスマホ。
だがこのロワでは外部とは連絡がつかない。
このロワの会場にある施設、あるいは他の参加者に支給された携帯、スマホにならば使用可能、かもしれない。
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