ステインは冷静に状況を見る。
変身道具は手元にある、あの姿(デザスト)になればこの男とも渡り合えるだろう。
呪文は一通り把握した。
あんな失態は二度と犯さない。
変身道具は手元にある、あの姿(デザスト)になればこの男とも渡り合えるだろう。
呪文は一通り把握した。
あんな失態は二度と犯さない。
眠って冷静になったぶん赤血操術も使用可能になったはずだ。
戦いの中で練度が上がった今、さきほど以上に強力な武器となるだろう。
戦いの中で練度が上がった今、さきほど以上に強力な武器となるだろう。
そうしてドライバーを手に取って────
(────ちがう)
ステインの手が止まる。
自分は今、何を考えていた?
こんなものに頼ってまで勝ちを目指すことが、己の信念なのか?
自分は今、何を考えていた?
こんなものに頼ってまで勝ちを目指すことが、己の信念なのか?
仮面ライダーデザスト。
赤血操術。
赤血操術。
確かに強い。
だが、それはもう〝ステイン〟ではない。
腐りきった社会を粛清するため、英雄回帰を目指すために費やした半生に──そんなものはあったか?
だが、それはもう〝ステイン〟ではない。
腐りきった社会を粛清するため、英雄回帰を目指すために費やした半生に──そんなものはあったか?
仮面を捨て、ヒーロー殺しとなった自分が仮面ライダーの力を借りるなど。
それこそ、この男に対して下した〝誇りを穢す〟という行為に他ならない。
それこそ、この男に対して下した〝誇りを穢す〟という行為に他ならない。
「おい、それ使わねぇのか?」
「こんなものに頼っていれば、また不覚を取るだろう」
「こんなものに頼っていれば、また不覚を取るだろう」
確かにそれもある。
慣れぬ力の向上は自身でも扱い切れず隙となり、思わぬしっぺ返しを食らう可能性が拭えない。
慣れぬ力の向上は自身でも扱い切れず隙となり、思わぬしっぺ返しを食らう可能性が拭えない。
だがそれ以上に。
この男とは、戦わなければならない。
ヒーロー殺しのステインとして。
赤黒血染として。
この堕ちた勇者を討つのは、自分でなければならない。
赤黒血染として。
この堕ちた勇者を討つのは、自分でなければならない。
「いくぞ」
「いつでも」
「いつでも」
千刀・鎩を携えて第二ラウンドを宣言する。
やみのせんしが破壊の剣を構えるのを見て、ステインは疾走した。
やみのせんしが破壊の剣を構えるのを見て、ステインは疾走した。
◾︎
力任せに振るわれた元勇者の一撃が大地を割る。
衝撃に身を任せるように破片を躱しながら飛躍するステイン。
蛇のように不規則な動きで迫る刃はやみのせんしの頬を掠めた。
衝撃に身を任せるように破片を躱しながら飛躍するステイン。
蛇のように不規則な動きで迫る刃はやみのせんしの頬を掠めた。
「さっきよりいい動きだぜ、アンタ」
それはお世辞ではない。
本来デザストに変身した方が身体能力はずっと上だ。やみのせんしとてそれは理解している。
けれど、戦いづらさで言えば今のステインの方がずっと厄介だった。
それが何故なのか──きっと、理屈ではないのだと思う。
本来デザストに変身した方が身体能力はずっと上だ。やみのせんしとてそれは理解している。
けれど、戦いづらさで言えば今のステインの方がずっと厄介だった。
それが何故なのか──きっと、理屈ではないのだと思う。
「本物の英雄(ヒーロー)とはなにか」
高速の刺突が繰り出される。
それを剣で受け流しながらも、ぽつりと漏れた声を元勇者は聞き逃さなかった。
それを剣で受け流しながらも、ぽつりと漏れた声を元勇者は聞き逃さなかった。
「貴様はそれを知っていたはずだ」
「ああ、かもな」
「ならばなぜ」
「知ってるだけさ。なろうとは思えなかった」
「ああ、かもな」
「ならばなぜ」
「知ってるだけさ。なろうとは思えなかった」
火花が散る。
ステインの不規則な刀剣を動体視力で無理やりに弾く。
防ぎきれぬ斬撃が絶えず身体に傷を作ることも構わず、やみのせんしは言葉を続けた。
ステインの不規則な刀剣を動体視力で無理やりに弾く。
防ぎきれぬ斬撃が絶えず身体に傷を作ることも構わず、やみのせんしは言葉を続けた。
「アンタは──いや、なんでもねぇ」
────なぜその道を歩まなかったんだ?
そんな野暮なことは聞かない。
きっとステインだって目指したんだ。
本物の英雄(ヒーロー)になるために、オールマイトという目標の為に最大限の努力をしたはずだ。
そんな野暮なことは聞かない。
きっとステインだって目指したんだ。
本物の英雄(ヒーロー)になるために、オールマイトという目標の為に最大限の努力をしたはずだ。
そうして、味わったんだ。
数え切れない挫折を、知りたくない失望を。
自分には彼のようにはなれないと思い知らされたからこそ、世界を穢す贋物を粛清するという独自の道を歩んだんだろう。
数え切れない挫折を、知りたくない失望を。
自分には彼のようにはなれないと思い知らされたからこそ、世界を穢す贋物を粛清するという独自の道を歩んだんだろう。
たしかに信念なき殺戮をする自分とは違う。
けれど、それだけではない気がする。
自分とこの男の違いは、それだけではない。
けれど、それだけではない気がする。
自分とこの男の違いは、それだけではない。
「はぁッ!」
「ぐっ……!」
「ぐっ……!」
思考に遮られた太刀筋が鈍る。
ステインの回転斬りが太腿を浅く刻み、移動の妨げとなった。
ステインの回転斬りが太腿を浅く刻み、移動の妨げとなった。
「ホイミ……!」
「遅い!」
「遅い!」
回復呪文は悪手だった。
ステインには既にその呪文を見せているのだから。
一手遅れたやみのせんしの肩を鋭い刺突が刺し穿つ。
苦悶の声を漏らしながらも思考は冷静だった。
ステインには既にその呪文を見せているのだから。
一手遅れたやみのせんしの肩を鋭い刺突が刺し穿つ。
苦悶の声を漏らしながらも思考は冷静だった。
「ギラ!」
この至近距離では剣は振るえない。
ゆえに密着した状態のままステインの身体に手を当てがい、零距離での閃熱呪文を唱える。
間一髪身体を離すステインだがあくまで直撃を避けただけ。
脇腹が焼き焦げる音を聞いてステインは大きく距離を取った。
ゆえに密着した状態のままステインの身体に手を当てがい、零距離での閃熱呪文を唱える。
間一髪身体を離すステインだがあくまで直撃を避けただけ。
脇腹が焼き焦げる音を聞いてステインは大きく距離を取った。
「は、ぁ…………はぁ、……!」
「…………っ、……」
「…………っ、……」
疲弊が色濃く現れはじめている。
喋る余裕などとうにないはずなのに、それでも互いは言葉を交わすことをやめようとしなかった。
喋る余裕などとうにないはずなのに、それでも互いは言葉を交わすことをやめようとしなかった。
「アンタは、俺をなんだと思う?」
「……変わらん。貴様が堕ちた英雄(ヒーロー)であろうとなかろうと、明確な意思も思想もなく他者を殺めるなど……粛清の対象だ」
「じゃあ、意思があれば人を殺していいのかよ?」
「それが世のためならば」
「……変わらん。貴様が堕ちた英雄(ヒーロー)であろうとなかろうと、明確な意思も思想もなく他者を殺めるなど……粛清の対象だ」
「じゃあ、意思があれば人を殺していいのかよ?」
「それが世のためならば」
振り掛かる絶剣をやり過ごしながらステインは迷いなく答える。
やはり、違う。
自分が同じ問いを投げられたらきっと言葉が詰まるはずだ。
なのにこのステインという男は迷わない。
善悪を自分の中で完成させているからこその芸当だ、おいそれと真似できるものではない。
やはり、違う。
自分が同じ問いを投げられたらきっと言葉が詰まるはずだ。
なのにこのステインという男は迷わない。
善悪を自分の中で完成させているからこその芸当だ、おいそれと真似できるものではない。
「アンタの言うオールマイトが人を殺したら、それも認めるってのか?」
それは、心の底から湧き出した疑問だ。
この男はなんて答えるのだろうか。
この男はなんて答えるのだろうか。
ステインのそれは盲信に近い。
オールマイトのやることならば全て受け入れる、というのがやみのせんしの予想だった。
善人を殺そうが悪人を殺そうが変わりない、崇拝の対象であると。
世のためであればそれも仕方がない、むしろ汚れ役を買うなど称えられる行為だと。
そう答えるだろうと思っていた。
オールマイトのやることならば全て受け入れる、というのがやみのせんしの予想だった。
善人を殺そうが悪人を殺そうが変わりない、崇拝の対象であると。
世のためであればそれも仕方がない、むしろ汚れ役を買うなど称えられる行為だと。
そう答えるだろうと思っていた。
けれどステインにとってその質問は。
「────〝彼〟が人を殺すなどありえんッ!!」
万が一にも投げてはならない愚問だった。
気圧されたやみのせんしの腕を切先が走る。
尾を引く血の線をどこか他人事のように眺めながらぼんやりと考える。
尾を引く血の線をどこか他人事のように眺めながらぼんやりと考える。
(幸せもんだな、オールマイトさんよ)
ステインにここまで言わしめる英雄(ヒーロー)は、果たしてどんな男なのだろうか。
きっと自分では届かない場所にいるのだろう。
出会ったこともないのにやみのせんしが思い描いた英雄像は奇しくも、本物のオールマイトのそれと全く同じものだった。
きっと自分では届かない場所にいるのだろう。
出会ったこともないのにやみのせんしが思い描いた英雄像は奇しくも、本物のオールマイトのそれと全く同じものだった。
────ああ、たしかに。
そんな男の背中を見ちまったら。
世に蔓延る中途半端な善人なんて、全部贋物(ニセモノ)に見えちまうよな。
そんな男の背中を見ちまったら。
世に蔓延る中途半端な善人なんて、全部贋物(ニセモノ)に見えちまうよな。
後退するやみのせんし。
追撃を嫌った行動だがその気のなかったステインにとってはありがたい。
僅かに生まれた時間で刀に付着した血を舐めとる。
その行為の意図を汲めず、しかし最大限の警戒を保ったままやみのせんしは────固まった。
追撃を嫌った行動だがその気のなかったステインにとってはありがたい。
僅かに生まれた時間で刀に付着した血を舐めとる。
その行為の意図を汲めず、しかし最大限の警戒を保ったままやみのせんしは────固まった。
「な…………!?」
動けない。
指先一本すら言うことを聞かない。
なんだこれは、一体なにをした。
考えを巡らせたところで身体が動くことはない。浮かび上がる疑問符は意味もなく消えてゆく。
指先一本すら言うことを聞かない。
なんだこれは、一体なにをした。
考えを巡らせたところで身体が動くことはない。浮かび上がる疑問符は意味もなく消えてゆく。
この事象を説明できる者は生憎、今まさにトドメを刺さんとするステイン一人だけだ。
「終わりだ、元勇者(ヒーロー)」
脳天を狙い繰り出される刺突。
抵抗すらままならない堕ちた勇者の旅は呆気なく幕を下ろすこととなる。
抵抗すらままならない堕ちた勇者の旅は呆気なく幕を下ろすこととなる。
「────レミーラ」
それは、彼自身にしか扱えぬ呪文。
歴代の勇者も、これから先生まれる子孫にも扱えない。勇者(アレフ)オリジナルの技。
歴代の勇者も、これから先生まれる子孫にも扱えない。勇者(アレフ)オリジナルの技。
暗闇を〝光〟で照らすというちっぽけな呪文。
けれど、一寸先も見えぬ洞窟を鮮明に照らし出すというその輝きは。
闇(ステイン)にとっては眩しすぎた。
けれど、一寸先も見えぬ洞窟を鮮明に照らし出すというその輝きは。
闇(ステイン)にとっては眩しすぎた。
「──────!!」
声にならぬ悲鳴を上げたヒーロー殺しは目を覆い立ち竦む。
攻撃どころではない、思考そのものが正常に働かない。
強烈な目の痛みと驚愕が一瞬にしてステインの脳を真っ白に染め上げた。
攻撃どころではない、思考そのものが正常に働かない。
強烈な目の痛みと驚愕が一瞬にしてステインの脳を真っ白に染め上げた。
「惜しかったな、ステイン」
ようやく視界が取り戻された頃には拘束具から抜け出したやみのせんしの姿が映された。
絶望的な状況────自身の個性はあくまで初見殺しでしかないため、二度とは通用しないだろう。
絶望的な状況────自身の個性はあくまで初見殺しでしかないため、二度とは通用しないだろう。
「俺は、負けてはならない」
けれど、立ち上がる。
なにを相手にしようと、あの男ならば絶対に挫けぬはずだから。
なにを相手にしようと、あの男ならば絶対に挫けぬはずだから。
「本物(オールマイト)が築き上げた世を穢す者を正すためッ! 彼の意思を継ぐためッ! 今ここで貴様を討つッ!!」
吼える。
己を奮い立てる叫びが耳をつんざく。
己を奮い立てる叫びが耳をつんざく。
この瞬間、互いに理解した。
次の一撃でこの勝負は決まる、と。
破壊の剣を構える元勇者へ、ステインは全身全霊を持って加速した。
次の一撃でこの勝負は決まる、と。
破壊の剣を構える元勇者へ、ステインは全身全霊を持って加速した。
◆ ◆ ◆
ああ、そうか。
アンタがなぜこんなに眩しく見えたのか、今ようやく分かったよ。
そして、俺がなぜこんなに心を乱されてんのかも────なんだよ、答えがわかっちまえば簡単だったじゃねぇか。
アンタがなぜこんなに眩しく見えたのか、今ようやく分かったよ。
そして、俺がなぜこんなに心を乱されてんのかも────なんだよ、答えがわかっちまえば簡単だったじゃねぇか。
俺はさ。
ずっと、誰かにとっての特別(ヒーロー)になりたかったんだ。
アンタにとってのオールマイトみたいにさ。
ずっと、誰かにとっての特別(ヒーロー)になりたかったんだ。
アンタにとってのオールマイトみたいにさ。
────つまんねぇ男だな、テメェは。
本当に、そう思う。
ローラ姫を殺した時点でそんな願い、捨てたつもりだったのに。
勇者なんだから当然だろ、って態度で責任を押し付けてくる奴らの声に負けて。
『はい』か『いいえ』しか選べない世界に嫌気が差して。
なれたかもしれねぇヒーローの道を捨てたっていうのによ。
ローラ姫を殺した時点でそんな願い、捨てたつもりだったのに。
勇者なんだから当然だろ、って態度で責任を押し付けてくる奴らの声に負けて。
『はい』か『いいえ』しか選べない世界に嫌気が差して。
なれたかもしれねぇヒーローの道を捨てたっていうのによ。
たしかに可哀想なやつだよ、俺は。
取り返しのつかねぇことをしちまった現実から逃げるために、無理やり自分が正しいと思い込んでたんだからさ。
自分でも気づかなかったけどよ、図星だったから──それを認めたくなくて、殺意で抑え込んでたんだ。
取り返しのつかねぇことをしちまった現実から逃げるために、無理やり自分が正しいと思い込んでたんだからさ。
自分でも気づかなかったけどよ、図星だったから──それを認めたくなくて、殺意で抑え込んでたんだ。
ありがとよ、ステイン。
もう迷わねぇ、アンタを見習って生きていく。
もう迷わねぇ、アンタを見習って生きていく。
俺は、俺だ。
これから先選ぶ道は、全部俺自身が決めたことだ。
他人の声なんてどうでもいい。
俺が掲げた〝自由〟の道は誰にも邪魔させねぇ。
これから先選ぶ道は、全部俺自身が決めたことだ。
他人の声なんてどうでもいい。
俺が掲げた〝自由〟の道は誰にも邪魔させねぇ。
だから、
俺はもう、過去(すべて)を捨てる。
俺はもう、過去(すべて)を捨てる。
◆ ◆ ◆
ばきり、と。
根元から折れる刀の破片と共にステインの身体が地を転がる。
どくどくと溢れる血液がアスファルトの溝を伝い、排水溝へと流れ落ちる。
かひゅ、と。呼吸にもならない空気が漏れる音を響かせるステインへ馬乗りになった。
根元から折れる刀の破片と共にステインの身体が地を転がる。
どくどくと溢れる血液がアスファルトの溝を伝い、排水溝へと流れ落ちる。
かひゅ、と。呼吸にもならない空気が漏れる音を響かせるステインへ馬乗りになった。
この勝負、元よりステインの勝機は薄かった。
素の身体能力も、手数の多さもやみのせんしが大きく上回っている。
第三者の介入しない純粋な勝負となれば当然ステインの敗北は濃厚だったはずだ。
素の身体能力も、手数の多さもやみのせんしが大きく上回っている。
第三者の介入しない純粋な勝負となれば当然ステインの敗北は濃厚だったはずだ。
なのになぜ、彼がここまで渡り合えたのか。
デザストの能力向上? 赤血操術による搦手?
いや、違う。
デザストの能力向上? 赤血操術による搦手?
いや、違う。
それは一重に、〝覚悟〟の差。
実際のところこの戦いが長引いた要因としては精神的(メンタル)の影響が大きい。
迷いを持ち、それを掴めぬまま戦うやみのせんし。
対して贋物を断罪するためと明確な目的を抱えて戦うステイン。
実際のところこの戦いが長引いた要因としては精神的(メンタル)の影響が大きい。
迷いを持ち、それを掴めぬまま戦うやみのせんし。
対して贋物を断罪するためと明確な目的を抱えて戦うステイン。
それが、接戦の正体だ。
拮抗が崩れた原因はすなわち、やみのせんしが迷いを捨てたことにある。
拮抗が崩れた原因はすなわち、やみのせんしが迷いを捨てたことにある。
精神の条件はこれで五分。
となればあとに残るのは身体能力の差。
やみのせんしが答えを見つけ出した時点で、この結果はほぼ決まっていた。
となればあとに残るのは身体能力の差。
やみのせんしが答えを見つけ出した時点で、この結果はほぼ決まっていた。
「なぁ、俺の仲間にならねぇか? そうすれば手当てもしてやるし、アンタの粛清も手伝ってやる。悪い条件じゃねぇだろ」
提案した二択は奇しくもかつて自分が投げられたものだった。
絶対的な危機にこそ人間は本性を表す。
死にかけの状態で甘い蜜を垂らせばおおよその人間は『はい』と答えざるを得ないはずだ。
絶対的な危機にこそ人間は本性を表す。
死にかけの状態で甘い蜜を垂らせばおおよその人間は『はい』と答えざるを得ないはずだ。
けれど。
きっと、この男は。
きっと、この男は。
「────ことわ、る……!!」
ああ、やはり。
自分と違って間違えなかった。
自分と違って間違えなかった。
ふ、と笑みが漏れる。
鏡を見ているつもりだったのに、まるで違う生き様を見せつけられて。
自分もこうなれたのだろうか、と。叶わぬ夢を見た。
鏡を見ているつもりだったのに、まるで違う生き様を見せつけられて。
自分もこうなれたのだろうか、と。叶わぬ夢を見た。
「この世には輪廻転生ってもんがあるらしい。世界樹に芽吹く葉は一枚一枚が命で、死して落ちた後は再び別の命となり芽吹くんだってよ」
それは、勝者のエゴでしかない。
命を握る者にのみ許された〝憐れむ〟という特権。
けれど、それは紛れもない本心であった。
命を握る者にのみ許された〝憐れむ〟という特権。
けれど、それは紛れもない本心であった。
「もしもアンタが生まれ変わって、まだこんなクソみたいな世界に希望を見い出せたんなら。そん時は────」
きっとこんな陳腐な言葉、気休めにもならないだろう。
けれど、それでもいい。
エゴを押し通してこそ自由の証明なのだから。
受け取ってくれ、せめてもの礼を。
けれど、それでもいい。
エゴを押し通してこそ自由の証明なのだから。
受け取ってくれ、せめてもの礼を。
「────なれたらいいな、そんな本物(ヒーロー)に」
罪人の首へ、死神の鎌が振り下ろされた。
【赤黒血染(ステイン)@僕のヒーローアカデミア 死亡】
◾︎
「…………はっ、」
ステインを殺めて暫く、やみのせんしは市街の中で剣を振るっていた。
彼との戦闘は大きな経験値となりレベルアップをもたらした。
全体的なステータスの向上をありありと感じ取れる。
彼との戦闘は大きな経験値となりレベルアップをもたらした。
全体的なステータスの向上をありありと感じ取れる。
それだけではない。
やみのせんしは、この戦いが生半可な力技で突破できるものではないということを知った。
元の世界ではステータスと呪文でゴリ押せていたが、得体の知れぬ強者を相手にするとなればまた危機に陥るだろう。
やみのせんしは、この戦いが生半可な力技で突破できるものではないということを知った。
元の世界ではステータスと呪文でゴリ押せていたが、得体の知れぬ強者を相手にするとなればまた危機に陥るだろう。
ゆえに、やみのせんしは剣技を磨く。
あのステインが見せた殺人術の真似事をしているうち、偶然会得した剣技。
はやぶさ斬り、そしてしっぷう突き。
必要がなかったから覚えようとしなかっただけで、勇者の才覚を持つ者がこれを覚えられぬ道理などなかった。
あのステインが見せた殺人術の真似事をしているうち、偶然会得した剣技。
はやぶさ斬り、そしてしっぷう突き。
必要がなかったから覚えようとしなかっただけで、勇者の才覚を持つ者がこれを覚えられぬ道理などなかった。
「……こんなもんか」
鍛錬を終え、身支度を整える。
久しぶりの感覚だった。気持ちを改めて旅立つというのはこんなにも清々しい気持ちだったのか。
久しぶりの感覚だった。気持ちを改めて旅立つというのはこんなにも清々しい気持ちだったのか。
「さて、と。…………行くか」
堕ちた勇者は悪の道へ。
しかしその足取りに、もう迷いはなかった。
しかしその足取りに、もう迷いはなかった。
【エリアF-9/街中/9月2日午前8時30分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、MP消費(小)、『忍者』に興味(小)、決意
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
1:二度と迷わない。
2:過去との決別を証明するため、あの赤いの(アスラン)は次会った時に殺す。
3:まずは拠点を探す。病院を奏するつもりだったが、今地図でどのへんだ?
4:もう一人の俺(アレフ)はどうするか。
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:ダメージ(中)、疲労(中)、MP消費(小)、『忍者』に興味(小)、決意
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。
1:二度と迷わない。
2:過去との決別を証明するため、あの赤いの(アスラン)は次会った時に殺す。
3:まずは拠点を探す。病院を奏するつもりだったが、今地図でどのへんだ?
4:もう一人の俺(アレフ)はどうするか。
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
※ステインとの戦闘を経てはやぶさ斬り、しっぷうづきを習得しました。今後も戦闘の度に新たなる特技や呪文を習得するかもしれません。
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
046:堕悪・ヒーロー | 投下順 | 047:Brave Souls ─魔女の求める真実とはなにか─ |
時系列順 | 064:sideA Puppets Can't Control You | |
赤黒血染(ステイン) | GAME OVER | |
やみのせんし | 069:確立したモノ、揺らぐモノ、変わらぬモノ |