富良洲高校。
一ノ瀬宝太郎や九堂りんねの母校であり、地下に設置された錬金アカデミーの隠れ蓑としても機能する場所。
一時期はグリオンに乗っ取られる事件もあったが、今宵の訪問者達にそういった過去は知る由もない。
真紅の王による隕石群の破壊からどうにか生き延び、チェイス一行が到着したのがこの場所だった。
移動中も目を覚まさず、未だ意識が現実へ戻って来ない千佳とはるか。
意識は健在であれども、消耗は決して軽くない果穂。
彼女達を休ませる為にもっと近場の施設、例えば当初の目的地だった久留間運転免許試験所が選択肢に無かった訳ではない。
ただ先の戦闘で猛威を振るった宇蟲王の脅威を思えば、少しでも離れたエリアの方が良いのではと考えた結果。
チェイスにとって縁の深い施設は候補から外れ、こうしてドライブとは別のライダーに馴染み深い場所へ来たのである。
一ノ瀬宝太郎や九堂りんねの母校であり、地下に設置された錬金アカデミーの隠れ蓑としても機能する場所。
一時期はグリオンに乗っ取られる事件もあったが、今宵の訪問者達にそういった過去は知る由もない。
真紅の王による隕石群の破壊からどうにか生き延び、チェイス一行が到着したのがこの場所だった。
移動中も目を覚まさず、未だ意識が現実へ戻って来ない千佳とはるか。
意識は健在であれども、消耗は決して軽くない果穂。
彼女達を休ませる為にもっと近場の施設、例えば当初の目的地だった久留間運転免許試験所が選択肢に無かった訳ではない。
ただ先の戦闘で猛威を振るった宇蟲王の脅威を思えば、少しでも離れたエリアの方が良いのではと考えた結果。
チェイスにとって縁の深い施設は候補から外れ、こうしてドライブとは別のライダーに馴染み深い場所へ来たのである。
到着しバイクを降りても変身は解かずに、はるかと千佳をそれぞれ運びながら進む。
元々人間以上の身体機能を持つチェイスは勿論、ナーゴに変身中の果穂なら人間一人抱き上げるのは容易い。
気絶した二人共チェイスが運んでも問題は無いが、万が一奇襲された場合を想定し片手は自由にしておきたかった。
果穂としても自分に手伝える事なら断る理由も最初からなく、任せてくださいと承諾。
尤も襲われる事態には発展せず、広い校舎内で見付けた保健室へ何事も無く着いた。
元々人間以上の身体機能を持つチェイスは勿論、ナーゴに変身中の果穂なら人間一人抱き上げるのは容易い。
気絶した二人共チェイスが運んでも問題は無いが、万が一奇襲された場合を想定し片手は自由にしておきたかった。
果穂としても自分に手伝える事なら断る理由も最初からなく、任せてくださいと承諾。
尤も襲われる事態には発展せず、広い校舎内で見付けた保健室へ何事も無く着いた。
「……」
「ん……」
「ん……」
ベッドに寝かせた二人は顔色が良いとは言えない。
片や死んでもおかしくない重傷を負い、片や9歳の肉体には酷な消耗に蝕まれた。
それでも両名共に、死へ誘う手を振り払い命は繋がったまま。
恐怖し何も出来なかったとしても責められない状況で、千佳が必死に回復呪文を唱えたから。
絶望的な光景が何度広がろうと、生きることを誰もが諦めなかったから。
二人共に生きているのだと改めて実感する。
片や死んでもおかしくない重傷を負い、片や9歳の肉体には酷な消耗に蝕まれた。
それでも両名共に、死へ誘う手を振り払い命は繋がったまま。
恐怖し何も出来なかったとしても責められない状況で、千佳が必死に回復呪文を唱えたから。
絶望的な光景が何度広がろうと、生きることを誰もが諦めなかったから。
二人共に生きているのだと改めて実感する。
「千佳ちゃん……はるかさん……」
生きられなかった、助けられなかった人達がいるのを忘れたつもりはない。
けれど上下する胸が、微かに聞こえる声が、そっと握った手から伝わる温もりが。
彼女達が目の前にちゃんといる証明になって、果穂へ安堵を齎す。
勿論、一番最初に出会った彼と永遠の別れにならなかったこともだ。
けれど上下する胸が、微かに聞こえる声が、そっと握った手から伝わる温もりが。
彼女達が目の前にちゃんといる証明になって、果穂へ安堵を齎す。
勿論、一番最初に出会った彼と永遠の別れにならなかったこともだ。
「果穂」
その彼、チェイスに名を呼ばれ振り返る。
薬品棚から傷薬やガーゼを取り出し、どことなく難しい顔でいた。
何に使う気なのだろう、と分かり切った疑問は抱かない。
自分達三人共に傷を負っており、死ぬ程では無いが放置して良いものでもない。
手当てに使う物が見付かったなら、今更使用に躊躇も無い筈。
薬品棚から傷薬やガーゼを取り出し、どことなく難しい顔でいた。
何に使う気なのだろう、と分かり切った疑問は抱かない。
自分達三人共に傷を負っており、死ぬ程では無いが放置して良いものでもない。
手当てに使う物が見付かったなら、今更使用に躊躇も無い筈。
「これは俺がやって良いのだろうか……」
「……あ、そ、そうですよね」
「……あ、そ、そうですよね」
チェイスの言わんとする内容を理解し、納得と同時に頬を赤くし果穂の目が泳ぐ。
負傷箇所は手足以外にもあり、当然衣服を脱がす必要がある。
寝ている少女達にそれをやって本当に良いものか、チェイスの懸念は最もだ。
所謂邪な欲望を向けるような男でないとは果穂も十分理解しているが、やはり異性の面から見て大丈夫ですとは即答出来なかった。
負傷箇所は手足以外にもあり、当然衣服を脱がす必要がある。
寝ている少女達にそれをやって本当に良いものか、チェイスの懸念は最もだ。
所謂邪な欲望を向けるような男でないとは果穂も十分理解しているが、やはり異性の面から見て大丈夫ですとは即答出来なかった。
「むむむ…!じゃあ、あたしが二人の手当てをしても良いですか?」
険しい、と言うには少々迫力に欠ける顔で悩んだ末に自分が引き受けると返答。
同じ事務所の霧子程手際良くとはいかないだろうけど、出来ない訳ではない。
手当てに必要な道具一式を受け取る。
同じ事務所の霧子程手際良くとはいかないだろうけど、出来ない訳ではない。
手当てに必要な道具一式を受け取る。
「すまない。お前も疲れているのに働かせてばかりだ」
「あたしはまだまだ大丈夫ですっ。二人の怪我は放って置けないし、それにチェイスさんこそ休まなくて良いんですか……?」
「お前から貰った道具を使えば、損傷個所は治る。第一俺は人間のように疲れはしない」
「あたしはまだまだ大丈夫ですっ。二人の怪我は放って置けないし、それにチェイスさんこそ休まなくて良いんですか……?」
「お前から貰った道具を使えば、損傷個所は治る。第一俺は人間のように疲れはしない」
メカ救急箱の使用回数はまだ残っている。
おまけにロイミュードの体は体力消耗とは無縁。
なので心配無用と伝えるも、果穂が納得した様子は見られない。
おまけにロイミュードの体は体力消耗とは無縁。
なので心配無用と伝えるも、果穂が納得した様子は見られない。
「でも……痛かったり、疲れたりするのは、体だけじゃないと思います」
「……」
「……」
じゃあどこがと、聞き返すまでも無く分かった。
機械の体であるも涙は流せるロイミュードな故に。
失恋の誇らしい痛みに頬を濡らし己や、ブレンの喪失へ悲しみの雨を降らせたハートとメディック。
優れた視覚センサーでも捉えられない心という箇所への、形容し難い痛み。
刀使の少女と偽りの魔王、肩を並べて戦った仲間の死による無力感。
人を守ると言っておきながら果たせなかった現実が、目に見えない傷となっているんじゃないか。
そう問い掛けられたら、否定は出来ない。
機械の体であるも涙は流せるロイミュードな故に。
失恋の誇らしい痛みに頬を濡らし己や、ブレンの喪失へ悲しみの雨を降らせたハートとメディック。
優れた視覚センサーでも捉えられない心という箇所への、形容し難い痛み。
刀使の少女と偽りの魔王、肩を並べて戦った仲間の死による無力感。
人を守ると言っておきながら果たせなかった現実が、目に見えない傷となっているんじゃないか。
そう問い掛けられたら、否定は出来ない。
「学校の中を見て回って来る。俺達以外の者が潜んでいるとも限らん。戻って来た時は……俺も、少し休んでおこう」
「は、はい!じゃあそれまで千佳ちゃん達はあたしが守りますっ!」
「は、はい!じゃあそれまで千佳ちゃん達はあたしが守りますっ!」
アッシュフォード学園程豪華でなくとも広い施設だ。
偶々移動中に会わなかっただけで、実は先客がいる可能性は十分にある。
友好的な者ならともかく、反対であればのんびり休んでもいられない。
そういった事態にならないのを願おう。
偶々移動中に会わなかっただけで、実は先客がいる可能性は十分にある。
友好的な者ならともかく、反対であればのんびり休んでもいられない。
そういった事態にならないのを願おう。
保健室にいる人数が三人になり、まずははるかと千佳の手当てから始める。
引き受けた以上は手を抜く気もサボる気も最初からない。
失礼しますと返事がないのを承知で断りを入れ、そっと衣服に手を掛けた。
引き受けた以上は手を抜く気もサボる気も最初からない。
失礼しますと返事がないのを承知で断りを入れ、そっと衣服に手を掛けた。
◆◆◆
「あなたたちって本っ当に空気読めないよねー」
声色に確かな苛立ちを秘め、間近の機械兵を切り裂く。
両腕のアームを振り回し、狂ったように襲い掛かった敵は哀れ真っ二つ。
これで地面に散らばる残骸がまた一つ増えた。
掠り傷すら付けられず返り討ちにされた連中への感傷を、NPCが抱こう筈もなく。
スパイクや歯車を叩き付けんとするも、案の定標的には当たらない。
カメラアイが靡く桜色の長髪を僅かに捉えた時にはもう、彼らは原型を留めずスクラップの仲間入りを果たした。
両腕のアームを振り回し、狂ったように襲い掛かった敵は哀れ真っ二つ。
これで地面に散らばる残骸がまた一つ増えた。
掠り傷すら付けられず返り討ちにされた連中への感傷を、NPCが抱こう筈もなく。
スパイクや歯車を叩き付けんとするも、案の定標的には当たらない。
カメラアイが靡く桜色の長髪を僅かに捉えた時にはもう、彼らは原型を留めずスクラップの仲間入りを果たした。
「あっ、ごめんごめん。脳みそもないポンコツにこんなこと言っても意味ないよね。うっかりしちゃった☆」
残った片腕で立ち上がろうとする兵士の頭部を踏み付け、軽く力を籠める。
核となるパーツは呆気なく粉砕、今度こそ沈黙。
害鳥が散らかした生ゴミを見るような視線を向けるのも束の間、すぐに興味も失せその場を去って行く。
核となるパーツは呆気なく粉砕、今度こそ沈黙。
害鳥が散らかした生ゴミを見るような視線を向けるのも束の間、すぐに興味も失せその場を去って行く。
参加者の心身状態を考慮せずにNPCは襲い掛かる。
風都タワー周辺における戦闘で、精神的な疲弊の激しいミカと篝も例外ではない。
命からがら撤退し、篝が起きるのを待とうとしたが群れを成して現れたのが今しがたの集団。
タイミングを考えない襲撃へストレスを感じながらも、一体残らず破壊してやった。
ロボットタイプのモンスターな為、フルートバスターで操れはしなかったが今更この程度の相手に遅れは取らない。
風都タワー周辺における戦闘で、精神的な疲弊の激しいミカと篝も例外ではない。
命からがら撤退し、篝が起きるのを待とうとしたが群れを成して現れたのが今しがたの集団。
タイミングを考えない襲撃へストレスを感じながらも、一体残らず破壊してやった。
ロボットタイプのモンスターな為、フルートバスターで操れはしなかったが今更この程度の相手に遅れは取らない。
「もうちょっと待っててね、篝ちゃん」
背負った少女からの返事は無く、代わりに聞こえたのはか細い声での謝罪。
それが自分に向けてのものでないとは分かっている。
殺人と裏切りの重圧に苛まれて尚も正しい道を選び、藻掻き続けた青年。
本当だったら、自分が選択を誤らなければ今も篝の傍にいただろう彼。
キラ・ヤマトという、この地でミカが新たに犯した罪の象徴。
届かない声を背中で紡がれ、内に抑えた罪悪感が肥大化し続ける。
全て投げ出し逃げたくなる衝動を跳ね除け、足早に篝を休ませられる場所まで向かった。
それが自分に向けてのものでないとは分かっている。
殺人と裏切りの重圧に苛まれて尚も正しい道を選び、藻掻き続けた青年。
本当だったら、自分が選択を誤らなければ今も篝の傍にいただろう彼。
キラ・ヤマトという、この地でミカが新たに犯した罪の象徴。
届かない声を背中で紡がれ、内に抑えた罪悪感が肥大化し続ける。
全て投げ出し逃げたくなる衝動を跳ね除け、足早に篝を休ませられる場所まで向かった。
戦闘を聞き付けた別のNPCや殺し合いに乗った参加者との接触を避け数十分。
辿り着いたのは少年少女が通う学び舎。
トリニティと比べればランクは大きく落ちるとはいえ、一々気にする状況ではない。
中へ入り目に付いた近場の部屋、校長室の扉を開けた。
殺し合いで再現されたレプリカの学校に、部屋の主は当然の如く不在。
それなりの金を掛けただろう来客用のソファーへ、そっと篝を寝かせる。
辿り着いたのは少年少女が通う学び舎。
トリニティと比べればランクは大きく落ちるとはいえ、一々気にする状況ではない。
中へ入り目に付いた近場の部屋、校長室の扉を開けた。
殺し合いで再現されたレプリカの学校に、部屋の主は当然の如く不在。
それなりの金を掛けただろう来客用のソファーへ、そっと篝を寝かせる。
「……ごめんね」
屈んで顔を覗き込み、頬が濡れているのが分かった。
指先で目尻の雫を掬い、呟いた謝罪はミカ本人以外誰にも聞こえない。
指先で目尻の雫を掬い、呟いた謝罪はミカ本人以外誰にも聞こえない。
(やっぱり、私はどこに行っても同じだね……)
キヴォトスから殺し合いの会場に変わったとて、自分が周囲に不幸を撒き散らす魔女なのは変わらない。
子供染みた発想で、セイアを病院送りにしようとアリウスに手を貸した時から一緒。
アリウスがセイアのヘイロー破壊を目論んだのを知らなかったと、そんなもの言い訳にしかならない。
現にセイアはミカとの和解を拒み、強く責め立てたのだから。
何より、補習授業部の担任として先生をトリニティに招いた件。
あれが原因で廻り廻って先生はアリウスに命を狙われる羽目になった。
味方でいてくれた大人ですら、自分のせいで死ぬかもしれない状況に追いやったのだ。
極め付けがキラの氷竜化。
散々差し伸ばされた手を振り払っておきながら、自分が下手を踏んだ時にはキラに代償を支払わせた。
挙句の果てに、何一つ悪くない篝へ精神的な負担を強いる始末。
改めて考えても最悪の二文字以外に言葉が見付からず、乾いた笑いが漏れる。
子供染みた発想で、セイアを病院送りにしようとアリウスに手を貸した時から一緒。
アリウスがセイアのヘイロー破壊を目論んだのを知らなかったと、そんなもの言い訳にしかならない。
現にセイアはミカとの和解を拒み、強く責め立てたのだから。
何より、補習授業部の担任として先生をトリニティに招いた件。
あれが原因で廻り廻って先生はアリウスに命を狙われる羽目になった。
味方でいてくれた大人ですら、自分のせいで死ぬかもしれない状況に追いやったのだ。
極め付けがキラの氷竜化。
散々差し伸ばされた手を振り払っておきながら、自分が下手を踏んだ時にはキラに代償を支払わせた。
挙句の果てに、何一つ悪くない篝へ精神的な負担を強いる始末。
改めて考えても最悪の二文字以外に言葉が見付からず、乾いた笑いが漏れる。
(でも……まだ終わってない)
自分のせいでキラが凍てつく竜へ堕ちたのなら、ケジメを付けなければならない。
手を汚す前に何としてでも止める。
優勝という己の方針を考えれば明らかな矛盾だろう。
あのまま放置し参加者を減らすのに利用する方が、きっとよっぽど賢い。
理解しているがしかし、もう既にキラと篝を単なる殺害対象としては見れなくなった。
どう足掻いたって復讐を、自分を利用しておきながら何も失わずにいる錠前サオリへの憎悪は捨てられないけど。
救われるかもしれなかったキラの可能性を潰した責任は果たすつもりだ。
手を汚す前に何としてでも止める。
優勝という己の方針を考えれば明らかな矛盾だろう。
あのまま放置し参加者を減らすのに利用する方が、きっとよっぽど賢い。
理解しているがしかし、もう既にキラと篝を単なる殺害対象としては見れなくなった。
どう足掻いたって復讐を、自分を利用しておきながら何も失わずにいる錠前サオリへの憎悪は捨てられないけど。
救われるかもしれなかったキラの可能性を潰した責任は果たすつもりだ。
「…羽織るのとか持ってきてあげた方が良いかな」
余り意識しなかったが、学校内はどこか肌寒く感じる。
暖かいブランケットなど気の利いた物は校長室には見当たらない。
早目に休ませてあげたいとこの部屋を選んだが、多少時間を食っても保健室を探すべきだったか。
ちょっぴり後悔しても今更だ、他の教室に行き拝借してくるしかあるまい。
他にも起きた時の為に、喉を潤せるのも必要だろう。
支給品には食料や水の類は入っておらず、現地調達しろと言いたいらしい。
不親切極まりないと呆れながら、音を立てないように出入り口へ向かう。
暖かいブランケットなど気の利いた物は校長室には見当たらない。
早目に休ませてあげたいとこの部屋を選んだが、多少時間を食っても保健室を探すべきだったか。
ちょっぴり後悔しても今更だ、他の教室に行き拝借してくるしかあるまい。
他にも起きた時の為に、喉を潤せるのも必要だろう。
支給品には食料や水の類は入っておらず、現地調達しろと言いたいらしい。
不親切極まりないと呆れながら、音を立てないように出入り口へ向かう。
「篝ちゃんのこと見ててあげて。何かあったら知らせに来てね」
その際、リュックサックから取り出した手のひらサイズの物体に指示を出しておく。
NPCを片付けた際、幾つかのドロップアイテムも入手出来た。
内の一つが今話しかけている物。
篝を置いて学校を出る気は無くとも、少しの間目を離す以上は念を入れて損はない。
なるべく早く戻って来るつもりで校長室を後にした。
NPCを片付けた際、幾つかのドロップアイテムも入手出来た。
内の一つが今話しかけている物。
篝を置いて学校を出る気は無くとも、少しの間目を離す以上は念を入れて損はない。
なるべく早く戻って来るつもりで校長室を後にした。
○
そして富良洲高校に集まった参加者の内、一人と一体が遭遇することとなった。
負傷者を残し単独で校内の探索に動いた男と少女。
だだっ広い廊下にてバッタリ出くわし、チェイスとミカが睨み合う。
負傷者を残し単独で校内の探索に動いた男と少女。
だだっ広い廊下にてバッタリ出くわし、チェイスとミカが睨み合う。
「あっれー?他にも誰か来てたんだ。まっ、ここ結構広いしすぐには気付けないよね」
おどけた口調と能天気を絵に描いたような笑み。
毒気を抜くか不快感を煽るか、対峙する相手によって齎す効果は違う。
此度はそのどちらでもなく、感情の読み取れない真顔をミカにぶつけるばかり。
毒気を抜くか不快感を煽るか、対峙する相手によって齎す効果は違う。
此度はそのどちらでもなく、感情の読み取れない真顔をミカにぶつけるばかり。
「何者だ?殺し合いに乗っているのか?」
「えぇ…そんなド直球で聞く?こんな可愛い女の子が話しかけて来たんだし、もうちょっと乗っかってくれても良くない?」
「……」
「分かったから!その無言で風船みたいに威圧感を膨らませないで!」
「えぇ…そんなド直球で聞く?こんな可愛い女の子が話しかけて来たんだし、もうちょっと乗っかってくれても良くない?」
「……」
「分かったから!その無言で風船みたいに威圧感を膨らませないで!」
ちょっぴりむくれた風を装いつつも、相手がどのような男かを見極める。
冗談が通じる類では無く、良くも悪くも生真面目な堅物の印象が強い。
こちらの話にきちんと耳を傾けてはくれる。
殺し合いで出会った男はキラ以外、問答無用で殺しに来る輩ばかりだったがようやくそうじゃないのが現れた。
冗談が通じる類では無く、良くも悪くも生真面目な堅物の印象が強い。
こちらの話にきちんと耳を傾けてはくれる。
殺し合いで出会った男はキラ以外、問答無用で殺しに来る輩ばかりだったがようやくそうじゃないのが現れた。
「少なくともあなたと喧嘩するつもりはないよ。変な気を起こさなければ、だけど」
争う意図はない。
但し殺し合いに乗っていないとは言わず、明確なスタンスを伏せた上での返答。
そこに気付かず警戒を緩める、等と単純な男ではないらしい。
初対面の、それも衣服に返り血が付着した相手には至極当然の反応か。
場を蝕む緊張感は未だ薄れずに両者を包み込む。
但し殺し合いに乗っていないとは言わず、明確なスタンスを伏せた上での返答。
そこに気付かず警戒を緩める、等と単純な男ではないらしい。
初対面の、それも衣服に返り血が付着した相手には至極当然の反応か。
場を蝕む緊張感は未だ薄れずに両者を包み込む。
「乗っていないとは言わないのか」
「そりゃあねえ。場合によっては抵抗も止む無し、でしょ?えっ、もしかして襲われても手を出すなって言い出すタイプ?」
「違う」
「即答いただきましたー☆じゃあ良いよね。はいっ!次は私が質問する番!」
「そりゃあねえ。場合によっては抵抗も止む無し、でしょ?えっ、もしかして襲われても手を出すなって言い出すタイプ?」
「違う」
「即答いただきましたー☆じゃあ良いよね。はいっ!次は私が質問する番!」
のらりくらりと躱しながらも会話は続行。
相手を見極めたいのはミカも同じだ。
キラを止めるのに協力可能な参加者として、篝に引き合わせるべきか否か。
腹に良からぬ物を秘めているようなら、自分が対処しておかねばなるまい。
相手を見極めたいのはミカも同じだ。
キラを止めるのに協力可能な参加者として、篝に引き合わせるべきか否か。
腹に良からぬ物を秘めているようなら、自分が対処しておかねばなるまい。
「まずおにいさんの名前から教えてくれない?っていうか、名乗りもせずにいきなり問い質すのって大分失礼だと思うけど?」
「……それも、そうか」
「あっ、そこは納得するんだ」
「……それも、そうか」
「あっ、そこは納得するんだ」
妙な所で物分かりが良く、却ってミカの方が少々困惑を抱く。
生真面目というよりは天然の気でもあるのだろうか。
どうでもいいことを考えるミカの内心を知らず、低い声で己を表す四文字を告げる。
チェイス。グローバルフリーズが起きた夜、ハート達の手で再改造を受けた際に付けられた名前。
ガッチャードから続く名簿列に、確かそんな名があったのを思い出す。
仮面ライダーの関係者、それもエターナルと違っていきなり襲い掛かったりはしない。
篝に会わせても問題無い方へ少し傾けた。
生真面目というよりは天然の気でもあるのだろうか。
どうでもいいことを考えるミカの内心を知らず、低い声で己を表す四文字を告げる。
チェイス。グローバルフリーズが起きた夜、ハート達の手で再改造を受けた際に付けられた名前。
ガッチャードから続く名簿列に、確かそんな名があったのを思い出す。
仮面ライダーの関係者、それもエターナルと違っていきなり襲い掛かったりはしない。
篝に会わせても問題無い方へ少し傾けた。
「チェイスおにいさんね。うん、バッチリ覚えたよ。それじゃあこっちも教えてあげなきゃフェアじゃいないよね。私は聖園ミカ、よろしく――」
最後まで言い切る前に、言葉を引っ込めた。
名乗った瞬間、チェイスの雰囲気が明らかに一変。
立っているだけで感じる重苦しさは、向こうの警戒度が跳ね上がった証拠。
大きな問題にはならずに済む筈だったが、事はそう簡単なものでは無くなったようである。
名乗った瞬間、チェイスの雰囲気が明らかに一変。
立っているだけで感じる重苦しさは、向こうの警戒度が跳ね上がった証拠。
大きな問題にはならずに済む筈だったが、事はそう簡単なものでは無くなったようである。
「…どうしたのおにいさん。私、何か変なこと言ったかな?」
まさか今更になっておどけた口調に怒りを覚えた、なんて理由ではあるまい。
チェイスの様子が変わったのはミカが名前を告げた直後。
名乗っただけでこうも警戒心を強めたのは何故か。
思い当たる節としては、梔子ユメの関係者と疑われているからかもしれない。
名簿の並びを見ても、羂索の体になった筈の少女と非常に近い位置に記載されている。
であれば実は主催者と関係してるなどの疑念を持たれたとて、無理もない話だろう。
チェイスの様子が変わったのはミカが名前を告げた直後。
名乗っただけでこうも警戒心を強めたのは何故か。
思い当たる節としては、梔子ユメの関係者と疑われているからかもしれない。
名簿の並びを見ても、羂索の体になった筈の少女と非常に近い位置に記載されている。
であれば実は主催者と関係してるなどの疑念を持たれたとて、無理もない話だろう。
実際は全く異なる理由だが。
「お前は、キヴォトスの…先生の教え子の一人なのか?」
「え……」
「え……」
ヒュッと、息を呑む音がいやに大きく聞こえた。
その名前が出て来る可能性を、全く考えていなかったつもりはない。
同じ島にいる以上、先生が他の参加者と会うのは不思議でも何でもなく当たり前。
しかしいざ本当に他者の口から先生の話が出ると、驚き思考が暫し止まってしまう。
再起動するまでに数秒を要し、金魚のように言葉無く口を開閉すること更に数秒。
絞り出した声は自分でも震えているのがハッキリ分かった。
その名前が出て来る可能性を、全く考えていなかったつもりはない。
同じ島にいる以上、先生が他の参加者と会うのは不思議でも何でもなく当たり前。
しかしいざ本当に他者の口から先生の話が出ると、驚き思考が暫し止まってしまう。
再起動するまでに数秒を要し、金魚のように言葉無く口を開閉すること更に数秒。
絞り出した声は自分でも震えているのがハッキリ分かった。
「先生に、会ったの?」
「……ああ」
「そっ、か……」
「……ああ」
「そっ、か……」
深く深く吐き出すように、零した言葉に籠められた想いは到底一言では説明が付かない。
嬉しいのか、悲しいのか、どちらでもない別のモノか。
ミカ自身に判断を付けられないソレの正体を、チェイスにも察するのは難しい。
何より、チェイスが『先生』に抱く感情はミカのとは到底別物なのだから。
嬉しいのか、悲しいのか、どちらでもない別のモノか。
ミカ自身に判断を付けられないソレの正体を、チェイスにも察するのは難しい。
何より、チェイスが『先生』に抱く感情はミカのとは到底別物なのだから。
「先生は、何か言ってた?」
そうとは知らずに、堪えるような笑みで問う。
どんな時間から呼ばれているにしても、きっと自分を含めた生徒の味方であろうとする大人のことを。
どんな時間から呼ばれているにしても、きっと自分を含めた生徒の味方であろうとする大人のことを。
予想とは全く異なる答えが返って来るとは知らずに。
「…俺が会ったあの男は、殺し合いに乗っている。自分の教え子もまた、この状況を楽しんでいると語った」
空気が凍り付くといった表現は、正にこの瞬間にこそ相応しい。
チェイスからすると、己が目で見た事実を口にしたに過ぎない。
悪評を広める意図も無ければ、ミカを誑かす悪意だって宿っていない。
『先生』が善人の仮面を被って近付き、自分と果穂を殺そうと襲い掛かった。
彼曰く、キヴォトスの生徒も殺し合いを楽しむ少女達だと。
少なくとも、チェイスと果穂にはそれらが起きた本当の事だった。
チェイスからすると、己が目で見た事実を口にしたに過ぎない。
悪評を広める意図も無ければ、ミカを誑かす悪意だって宿っていない。
『先生』が善人の仮面を被って近付き、自分と果穂を殺そうと襲い掛かった。
彼曰く、キヴォトスの生徒も殺し合いを楽しむ少女達だと。
少なくとも、チェイスと果穂にはそれらが起きた本当の事だった。
「………………………………………………………………」
しかし、ミカにとっては素直に受け入れられる内容では無い。
先生が自分と会う以前、補習授業部の件を引き受ける前の時間から参加しているかもしれない。
その可能性は大いに有り得るとは考えていた。
だけど、たとえ自分の知るよりも過去の先生だったとしても。
あの人が殺し合いに乗るかと聞かれたら、ミカは迷わず首を横に振る。
その可能性は大いに有り得るとは考えていた。
だけど、たとえ自分の知るよりも過去の先生だったとしても。
あの人が殺し合いに乗るかと聞かれたら、ミカは迷わず首を横に振る。
偽り以外を口にしない大人ならば、ミカの味方でもあると断言しなかった。
他者を喜んで傷付ける大人ならば、袋叩きにされた挙句コハル共々撃たれそうになった時助けに来なかった。
己以外はどうでも良い大人ならば、セイアと和解出来るように働きかけてはくれなかった。
他者を喜んで傷付ける大人ならば、袋叩きにされた挙句コハル共々撃たれそうになった時助けに来なかった。
己以外はどうでも良い大人ならば、セイアと和解出来るように働きかけてはくれなかった。
捨てられない復讐の為に優勝を決意し、殺すしかないと覚悟しても、それでも。
本当だったら、アリウスの手で始末されずに済んだあの人を手に掛けたくはない。
今の汚れ切った自分を見て欲しくなんかない。
本当だったら、アリウスの手で始末されずに済んだあの人を手に掛けたくはない。
今の汚れ切った自分を見て欲しくなんかない。
彼に向ける感情の正体を、まだ正確に口には出来ないけれど。
ナギサやセイアと同じ、先生だって失いたくない大切な一人だった。
ナギサやセイアと同じ、先生だって失いたくない大切な一人だった。
「お前は――っ!?」
黙り込んだミカに何かを言い掛け、その姿が視界から突如消えた。
何処へ行ったのかとの疑問を置き去り、戦士としての勘が告げる。
マズい事態になった、脅威に備えろと。
何処へ行ったのかとの疑問を置き去り、戦士としての勘が告げる。
マズい事態になった、脅威に備えろと。
動体センサーが至近距離で動く存在を感知。
ハッキリと捉えるのを待たずに、両腕を交差し防御を取る。
直後、衝撃が駆け巡り靴底が床に別れを告げた。
殴られ体が宙に浮いた、冷静に己の現状を弾き出した時にはもう遅い。
ガラス窓を砕いて外へと吹き飛ぶ。
ハッキリと捉えるのを待たずに、両腕を交差し防御を取る。
直後、衝撃が駆け巡り靴底が床に別れを告げた。
殴られ体が宙に浮いた、冷静に己の現状を弾き出した時にはもう遅い。
ガラス窓を砕いて外へと吹き飛ぶ。
まともに体を動かせないまま、哀れ地面に激突。
ただの人間であればそうなったろう末路も、ロイミュードであり歴戦の戦士が故に遠ざける。
不安定な状態から体勢を直し受け身を取った。
人なら骨の一本は覚悟しなくてはならない高所からの落下を、無傷で凌ぐ。
尤も、並以上の力を持つのはチェイスのみに非ず。
殴り飛ばした張本人は今の一発だけで済ませる気は無い。
ただの人間であればそうなったろう末路も、ロイミュードであり歴戦の戦士が故に遠ざける。
不安定な状態から体勢を直し受け身を取った。
人なら骨の一本は覚悟しなくてはならない高所からの落下を、無傷で凌ぐ。
尤も、並以上の力を持つのはチェイスのみに非ず。
殴り飛ばした張本人は今の一発だけで済ませる気は無い。
「ねえ」
「っ…!?」
「っ…!?」
声が聞こえた次の瞬間、首を絞め上げられ再び体が宙へ浮く。
俄かには信じ難い光景があった。
チェイスよりも背の低い少女が、細腕を伸ばし持ち上げているなど。
笑えないジョーク染みた絵面は紛れもない現実。
そして当人達にとっては何一つとして面白くない状況だ。
俄かには信じ難い光景があった。
チェイスよりも背の低い少女が、細腕を伸ばし持ち上げているなど。
笑えないジョーク染みた絵面は紛れもない現実。
そして当人達にとっては何一つとして面白くない状況だ。
「よく聞こえなかったからさ、もう一回ちゃんと言ってくれるかな?」
寒気がする程に据わった目で射抜き、口の端を吊り上げ問う。
己自身を度々揶揄する、魔女らしい笑みで。
己自身を度々揶揄する、魔女らしい笑みで。
「誰が、殺し合いに、乗ってるって?ねえ?ねえ??ねえ???」
五指の力が強まり、いつへし折られても不思議はない。
拘束から抜け出すべくミカの腕に手を伸ばすも、その必要は無くなった。
首を絞める手は離れた、チェイスを片腕で大きく投げ飛ばすという形だが。
拘束から抜け出すべくミカの腕に手を伸ばすも、その必要は無くなった。
首を絞める手は離れた、チェイスを片腕で大きく投げ飛ばすという形だが。
「がっ…!」
鉄製の扉を破壊し、広々とした空間へ叩き付けられる。
全校朝礼や体育の授業、部活動にその他行事で多々使用される場所。
体育館には生徒も教職員も不在。
いない方が幸せだ、今からこの場は魔女が怒りを振り撒くステージとなる。
全校朝礼や体育の授業、部活動にその他行事で多々使用される場所。
体育館には生徒も教職員も不在。
いない方が幸せだ、今からこの場は魔女が怒りを振り撒くステージとなる。
「勝手に離れないで欲しいなー。もしかして鬼ごっこ?えー、女の子に鬼役させるってみっともないよー?って、ごめんごめん☆私が投げ飛ばしたんだもんね!」
扉の残骸を踏み付け砕き、己の狩場に魔女が入り込む。
馴れ馴れしい口調とは裏腹に、目は全く笑っていない。
全身から発せられるのは友好的とは到底言い難い、ドス黒い負の感情。
馴れ馴れしい口調とは裏腹に、目は全く笑っていない。
全身から発せられるのは友好的とは到底言い難い、ドス黒い負の感情。
双方にとって運が悪かったと、そう言う他ないだろう。
風都タワー周辺での戦闘が原因で、今のミカは精神的な余裕が全くと行って良い程ない。
自分のせいでキラを氷竜に変貌させた罪悪感。
余計な事ばかりをしてキラを追い詰めたグリオンらへの怒り。
目を覚まさず弱り切った篝を今だけは守らないと、キラに申し訳が立たないと己を追い詰め。
そんな非常に気が立っている時に齎されたのは、先生が殺し合いに乗っているなどとふざけた内容。
リボンズ・アルマークや大道克己、ギギストやグリオン、何よりミカ自身のような殺し合いを肯定する救いようのない悪と、先生を同類に仕立て上げられた。
これで冷静になれとは無理な話だった。
風都タワー周辺での戦闘が原因で、今のミカは精神的な余裕が全くと行って良い程ない。
自分のせいでキラを氷竜に変貌させた罪悪感。
余計な事ばかりをしてキラを追い詰めたグリオンらへの怒り。
目を覚まさず弱り切った篝を今だけは守らないと、キラに申し訳が立たないと己を追い詰め。
そんな非常に気が立っている時に齎されたのは、先生が殺し合いに乗っているなどとふざけた内容。
リボンズ・アルマークや大道克己、ギギストやグリオン、何よりミカ自身のような殺し合いを肯定する救いようのない悪と、先生を同類に仕立て上げられた。
これで冷静になれとは無理な話だった。
チェイスもまた、宇蟲王ギラという最上級の強敵相手にどうにか生き延びた後。
消耗の激しい少女達三人が別室におり、出会ったのは数時間前に戦った危険な男の教え子。
こうなることはどの道決まっていたのだろう。
消耗の激しい少女達三人が別室におり、出会ったのは数時間前に戦った危険な男の教え子。
こうなることはどの道決まっていたのだろう。
仮に先の場に篝が同席していたら。
チェイスの側にも果穂や、はるかと千佳が共にいたなら異なる展開になったかもしれない。
ミカを落ち着かせ、対話で互いの情報の矛盾を解明するのだって不可能では無かった。
現実にはそうならず、戦闘は最早避けられない。
チェイスの側にも果穂や、はるかと千佳が共にいたなら異なる展開になったかもしれない。
ミカを落ち着かせ、対話で互いの情報の矛盾を解明するのだって不可能では無かった。
現実にはそうならず、戦闘は最早避けられない。
(何だこの力は……)
少女の見た目からは想像も出来ないパワーに、驚愕を隠せなかった。
先生は戦闘の際仮面ライダーになったが、ミカは生身でこれだ。
羂索がわざわざ己の体に選んだ辺り、普通の人間には無いものがキヴォトスの少女にあるとは察していたが。
成程、殺し合いに乗っていない者へ向けられるとすれば脅威である。
先生は戦闘の際仮面ライダーになったが、ミカは生身でこれだ。
羂索がわざわざ己の体に選んだ辺り、普通の人間には無いものがキヴォトスの少女にあるとは察していたが。
成程、殺し合いに乗っていない者へ向けられるとすれば脅威である。
「もしもーし?聞こえてるー?私が話してるんだからさ、無視するのっておかしいよねっ!」
返事があろうとなかろうと、何をするかは同じ。
白いスカートを靡かせ、タイツ越しの細い脚で駆け出す。
文字だけ見れば少女の可憐な動作だが、拳を振り上げ弾丸の如き勢いで迫れば恐怖の対象だ。
大した威力のない一撃とは見れない、当たればチェイスであっても危険。
白いスカートを靡かせ、タイツ越しの細い脚で駆け出す。
文字だけ見れば少女の可憐な動作だが、拳を振り上げ弾丸の如き勢いで迫れば恐怖の対象だ。
大した威力のない一撃とは見れない、当たればチェイスであっても危険。
『BREAK UP』
ならばここからは、己も相応の力で以て対処する他無し。
生身相手に魔進チェイサーに変身するなど、本来なら有り得ない。
だが殺し合いでは元々の戦いにおける常識も当て嵌まらない。
それに死ねない理由は自分にだってある。
全身を機械仕掛けの装甲で覆い隠し、カメラアイが真紅に発光。
変身完了と同時にミカの拳を受け止めた。
生身相手に魔進チェイサーに変身するなど、本来なら有り得ない。
だが殺し合いでは元々の戦いにおける常識も当て嵌まらない。
それに死ねない理由は自分にだってある。
全身を機械仕掛けの装甲で覆い隠し、カメラアイが真紅に発光。
変身完了と同時にミカの拳を受け止めた。
「…へえ?それって仮面ライダー?何だか継ぎ接ぎっぽい見た目だけど」
軽口を叩きながらも伸ばした腕に力を籠める。
防いだ左手共々粉砕する気でいるが、相手は苦し気に呻くものの耐え切った。
仮面ライダー相手に幾度も渡り合った魔進チェイサーの強化グローブだ。
そう簡単に壊れる程軟な性能ではない。
防いだ左手共々粉砕する気でいるが、相手は苦し気に呻くものの耐え切った。
仮面ライダー相手に幾度も渡り合った魔進チェイサーの強化グローブだ。
そう簡単に壊れる程軟な性能ではない。
素手で壁を粉砕できるパワーがミカにはあれど、敵もまた持ち得る力は並以上。
しかし問題無い、素手で時間を掛ける前に武器を使うまで。
左手に握ったフルートバスターの切れ味を今更疑う気はない。
御刀とも打ち合えた威力を機械の体に味合わせてやる。
胴目掛け走らせた刃が、部品の雨を床一面に降らせる未来は訪れなかった。
ミカが得物を扱うのであれば、魔進チェイサーとて使わぬ手は無し。
変身用も兼ねた専用武装、ブレイクガンナーの強度は言わずもがな。
スパイク部分が刃を阻み逆に押し返す。
あらぬ方へと左腕が跳ね、ミカの体勢にも揺らぎが生じる。
しかし問題無い、素手で時間を掛ける前に武器を使うまで。
左手に握ったフルートバスターの切れ味を今更疑う気はない。
御刀とも打ち合えた威力を機械の体に味合わせてやる。
胴目掛け走らせた刃が、部品の雨を床一面に降らせる未来は訪れなかった。
ミカが得物を扱うのであれば、魔進チェイサーとて使わぬ手は無し。
変身用も兼ねた専用武装、ブレイクガンナーの強度は言わずもがな。
スパイク部分が刃を阻み逆に押し返す。
あらぬ方へと左腕が跳ね、ミカの体勢にも揺らぎが生じる。
「おっとっと、今のは危なかったな。ヒヤヒヤしちゃった」
生まれた隙へ入り込ませず、華麗に跳び一旦距離を取った。
生身ながら頑丈な肉体であるも、いらぬ傷は負わないに限る。
すっかり慣れた動作で機動鍵を取り出し、敵と同じく機械の鎧を纏う。
ガンダム・バルバトスルプスレクス。
火星出身の少年兵、鉄華団のエースが駆る機体をパワードスーツに落とし込んだ物。
ブジンソードのタイクーンに付けられた傷は少なくないが、使う分には何の支障もない。
生身ながら頑丈な肉体であるも、いらぬ傷は負わないに限る。
すっかり慣れた動作で機動鍵を取り出し、敵と同じく機械の鎧を纏う。
ガンダム・バルバトスルプスレクス。
火星出身の少年兵、鉄華団のエースが駆る機体をパワードスーツに落とし込んだ物。
ブジンソードのタイクーンに付けられた傷は少なくないが、使う分には何の支障もない。
(仮面ライダー、ではないな)
ベルトを用いない鋼鉄の戦士は、今までチェイスが遭遇を免れた相手。
最初の説明であったパワードスーツの一種だろうか。
疑問を懇切丁寧に答える相手では無く、こっちも最初から期待していない。
武器を用いたやり取りが望みなら、同じく持てる力で死を跳ね除ける以外に選択肢は無かった。
運動部のシューズが数え切れない程に踏んだ床が、ミカの踏み込みで粉砕。
生身以上の勢いで迫る敵に、魔進チェイサーも棒立ちでいる気はない。
最初の説明であったパワードスーツの一種だろうか。
疑問を懇切丁寧に答える相手では無く、こっちも最初から期待していない。
武器を用いたやり取りが望みなら、同じく持てる力で死を跳ね除ける以外に選択肢は無かった。
運動部のシューズが数え切れない程に踏んだ床が、ミカの踏み込みで粉砕。
生身以上の勢いで迫る敵に、魔進チェイサーも棒立ちでいる気はない。
『GUN』
遠距離形態に変えブレイクガンナーの引き金を引く。
あらゆる場面で自分を助けて来た、最も手に馴染む武器だ。
全機能は正常に働き、命中精度に低下は引き起こされない。
真正面から突っ込んで来たミカを、銃撃で強制的に止めてやる。
あらゆる場面で自分を助けて来た、最も手に馴染む武器だ。
全機能は正常に働き、命中精度に低下は引き起こされない。
真正面から突っ込んで来たミカを、銃撃で強制的に止めてやる。
「なに……?」
予想を裏切りミカは微塵も速度を緩めず、こちらへ向かって来る。
エネルギー弾は一発も撃ち漏らさず当たった。
にもかかわらず怯む様子は無く、銃撃を物ともしない。
機体保護に使われたナノラミネート装甲は、イモータルジャスティスの武装でも正攻法では突破出来なかった。
同じくブレイクガンナーもまた出力が足りない。
エネルギー弾は一発も撃ち漏らさず当たった。
にもかかわらず怯む様子は無く、銃撃を物ともしない。
機体保護に使われたナノラミネート装甲は、イモータルジャスティスの武装でも正攻法では突破出来なかった。
同じくブレイクガンナーもまた出力が足りない。
「あっれぇ?今何かした?痛くも痒くもないから気付かなかったよ」
アーマーの下で舌を出し悪戯っぽく微笑むも、殺意は全く揺るがない。
黄金の五指が生え揃った右手を振り被る。
黄金の五指が生え揃った右手を振り被る。
ギャラルホルンの精鋭部隊をも蹴散らした武装は、等身大サイズになっても健在。
ロイミュードを紙切れ同然に引き裂く魔爪へ、回避を選び真横へと跳ぶ。
見失った標的の代わりに破壊された床は無視、再度銃口を向け引き金に力を籠めた。
エネルギー弾を吐き出す前に、ミカがフルートバスターを投擲。
ブーメランの接近に銃撃を中断、右腕を振るい弾き返す。
ロイミュードを紙切れ同然に引き裂く魔爪へ、回避を選び真横へと跳ぶ。
見失った標的の代わりに破壊された床は無視、再度銃口を向け引き金に力を籠めた。
エネルギー弾を吐き出す前に、ミカがフルートバスターを投擲。
ブーメランの接近に銃撃を中断、右腕を振るい弾き返す。
ミカが持つ飛び道具は一つだけでは無い。
ガンダム・バルバトスはどの形態も近接戦をメインとした機体であるが、遠距離対応の武装も備わっている。
手首に内蔵された射撃兵装、200mm砲が火を吹く。
轟音を響かせ弾丸が雨霰と発射、機械の戦士を標的に殺意を籠めた鋼鉄が殺到。
ガンダム・バルバトスはどの形態も近接戦をメインとした機体であるが、遠距離対応の武装も備わっている。
手首に内蔵された射撃兵装、200mm砲が火を吹く。
轟音を響かせ弾丸が雨霰と発射、機械の戦士を標的に殺意を籠めた鋼鉄が殺到。
追加装甲越しに魔進チェイサーの視覚センサーが脅威を分析。
優先度の高い順から回避に動き、時には腕部装甲や得物を駆使して防御。
ドライブやマッハ、殺し合いではディケイドと言ったように高火力の武器を使う相手との戦闘は経験済み。
焦りも感じず対処に動くが、ミカの手数はこれだけに非ず。
優先度の高い順から回避に動き、時には腕部装甲や得物を駆使して防御。
ドライブやマッハ、殺し合いではディケイドと言ったように高火力の武器を使う相手との戦闘は経験済み。
焦りも感じず対処に動くが、ミカの手数はこれだけに非ず。
200mm砲を凌ぎ隙を伺う魔進チェイサーの頭上より刃が襲来。
後方へ大きく退がるも、一度躱した程度では無駄。
尾を思わせる武装、テイルブレードはミカの感覚に従い変幻自在な攻撃を可能とする。
重装甲のMSですら容易く両断する切れ味を、我が身で受ける気は更々無い。
複合モジュールにより弾き出された最適解を実行、ワイヤーブレードを掠らせもしない。
後方へ大きく退がるも、一度躱した程度では無駄。
尾を思わせる武装、テイルブレードはミカの感覚に従い変幻自在な攻撃を可能とする。
重装甲のMSですら容易く両断する切れ味を、我が身で受ける気は更々無い。
複合モジュールにより弾き出された最適解を実行、ワイヤーブレードを掠らせもしない。
無論、回避に専念しているだけでは無意味だ。
得物を振るう敵を直接叩く。
背後からの一撃を屈んで避け、前へ前へと突き進む。
得物を振るう敵を直接叩く。
背後からの一撃を屈んで避け、前へ前へと突き進む。
走る最中も隙を見付けてはブレイクガンナーを撃つ。
ダメージとなったエネルギー弾は未だ一発も見られず、却ってミカの攻撃は激しさを増すばかり。
あらゆる方向から貫かんと迫るテイルブレードに意識を割きつつ、近寄らせまいと放たれた銃撃にも対処。
弾丸とブーメランが時折命中し火花を散らすが足は止めない。
一度止まれば、どうぞ殺してくださいと己が身を差し出すのと同じ。
突っ立って的になるのだけは避けねばなるまい。
多少のダメージは捨て置き、更に大きく踏み込んだ。
ダメージとなったエネルギー弾は未だ一発も見られず、却ってミカの攻撃は激しさを増すばかり。
あらゆる方向から貫かんと迫るテイルブレードに意識を割きつつ、近寄らせまいと放たれた銃撃にも対処。
弾丸とブーメランが時折命中し火花を散らすが足は止めない。
一度止まれば、どうぞ殺してくださいと己が身を差し出すのと同じ。
突っ立って的になるのだけは避けねばなるまい。
多少のダメージは捨て置き、更に大きく踏み込んだ。
『BREAK』
格闘形態に変えブレイクガンナーの打撃力を強化。
スパイクを叩き付けるが反応できないミカではない。
杭のような爪で振り払い、今度は自分の番とばかりに攻めへ転じる。
スパイクを叩き付けるが反応できないミカではない。
杭のような爪で振り払い、今度は自分の番とばかりに攻めへ転じる。
「そっちから近付いて来たんだから、文句は言わないでねっ☆」
キラッと星が飛びそうなウインクを一つ飛ばし、返答待たずで腕を振り下ろす。
対する魔進チェイサーの武器は変わらずブレイクガンナー。
スパイクと爪が互いを砕くべく激突、どちらも破壊は免れ弾かれる。
一手早くミカが腕を引き戻し二撃目を放てば、数歩分だけ身を捩り回避。
再度距離は取らせない、左腕のフルートバスターが牙を剥く。
対する魔進チェイサーの武器は変わらずブレイクガンナー。
スパイクと爪が互いを砕くべく激突、どちらも破壊は免れ弾かれる。
一手早くミカが腕を引き戻し二撃目を放てば、数歩分だけ身を捩り回避。
再度距離は取らせない、左腕のフルートバスターが牙を剥く。
リーチは圧倒的に魔進チェイサーが不利であれど、その分スピーディーな動きが可能だ。
喰らい付く刃を防ぎ、がら空きの胴へ蹴りを放つ。
足先に溜めたエネルギーを一瞬で解放、生身の時を大きく超える威力を叩き出す。
とはいえ武装の豊富さのみならず、反射速度もMSの脅威の一つ。
腕部プレートで蹴りを防ぎ、当然の如く傷一つ付かない。
押し返し反対に敵の隙を作り出し、再度左腕で斬り付ける。
咄嗟の防御が間に合うも馬鹿に出来ない威力だ、体勢は更に大きく崩れた。
喰らい付く刃を防ぎ、がら空きの胴へ蹴りを放つ。
足先に溜めたエネルギーを一瞬で解放、生身の時を大きく超える威力を叩き出す。
とはいえ武装の豊富さのみならず、反射速度もMSの脅威の一つ。
腕部プレートで蹴りを防ぎ、当然の如く傷一つ付かない。
押し返し反対に敵の隙を作り出し、再度左腕で斬り付ける。
咄嗟の防御が間に合うも馬鹿に出来ない威力だ、体勢は更に大きく崩れた。
「もーらいっ!」
絶好のチャンスを見逃してやる理由は、探す方が難しい。
伸ばした腕の先には希少超合金製の爪。
武器を手にしなくとも腕自体が、標的を貫く槍と化す。
プロトドライブ以上の耐久性を誇る魔進チェイサーとて、直撃すれば無事で済まない。
だがここにはロイミュードの番人の死を望まない存在がいる。
銀色のミニカーが三台、縦横無尽に駆け回りミカを妨害。
小型ながら侮れない威力の体当たりで、強引に魔進チェイサーから引き離した。
伸ばした腕の先には希少超合金製の爪。
武器を手にしなくとも腕自体が、標的を貫く槍と化す。
プロトドライブ以上の耐久性を誇る魔進チェイサーとて、直撃すれば無事で済まない。
だがここにはロイミュードの番人の死を望まない存在がいる。
銀色のミニカーが三台、縦横無尽に駆け回りミカを妨害。
小型ながら侮れない威力の体当たりで、強引に魔進チェイサーから引き離した。
「痛いっ!?いたっ、ちょ、痛いってば!」
「すまん、助かった」
「すまん、助かった」
文句には耳を傾けず、頼もしい仲間達へ礼を告げる。
クラクションを鳴らし応じる姿はどこか微笑ましいが、和んでいる暇はない。
これまでの攻防で気を抜ける相手でないと、嫌でも思い知らされた。
クラクションを鳴らし応じる姿はどこか微笑ましいが、和んでいる暇はない。
これまでの攻防で気を抜ける相手でないと、嫌でも思い知らされた。
生身の時から持つ身体能力の高さを、MSを纏い更に磨きを掛けただけでなく。
近・中・遠、それぞれをカバー可能な武装と使いこなすセンス。
ディケイドに変身した先生とはまた異なる強さの持ち主だ。
近・中・遠、それぞれをカバー可能な武装と使いこなすセンス。
ディケイドに変身した先生とはまた異なる強さの持ち主だ。
銃を用いた荒事が日常茶飯事のキヴォトスにおいて、ミカの能力は非常に高い部類に位置する。
先生の指揮下に入ったアリウススクワッド相手に、単独で渡り合い。
負傷と精神面の影響込みとはいえ、錠前サオリを一騎打ちで下し。
ユスティナ聖徒会の足止めを、たった一人で夜明け近くまで引き受けた。
辿る筈だった正史で振るわれた力が、モビルスーツを纏い存分に発揮されている。
先生の指揮下に入ったアリウススクワッド相手に、単独で渡り合い。
負傷と精神面の影響込みとはいえ、錠前サオリを一騎打ちで下し。
ユスティナ聖徒会の足止めを、たった一人で夜明け近くまで引き受けた。
辿る筈だった正史で振るわれた力が、モビルスーツを纏い存分に発揮されている。
されど自分以上の力を持つ相手との戦いなど、チェイスにしてみれば今更珍しくもない。
この程度で己の戦意を折るのは不可能。
片手に収まった三台のチェイサーバイラルコアを全て読み込ませる。
この程度で己の戦意を折るのは不可能。
片手に収まった三台のチェイサーバイラルコアを全て読み込ませる。
『TUNE CHASER SPIDER』
『TUNE CHASER COBRA』
『TUNE CHASER BAT』
銀色の専用武装を三つ纏めて展開。
近接戦用のクロー、中距離戦用のウィップ、加えて飛行ユニットを背中に装着。
準備が整ったならやるべき事は一つだけ。
翼を振るい勢いを付けて接近、斬り付ければ敵も黙ってはいない。
爪と剣の二つを用いて迎撃、手数を活かして返り討ちにせんと激しく振るう。
フルートバスターをクローで挟み動きを封じられ、ならばと開いた五指で貫くべく腕を伸ばした。
近接戦用のクロー、中距離戦用のウィップ、加えて飛行ユニットを背中に装着。
準備が整ったならやるべき事は一つだけ。
翼を振るい勢いを付けて接近、斬り付ければ敵も黙ってはいない。
爪と剣の二つを用いて迎撃、手数を活かして返り討ちにせんと激しく振るう。
フルートバスターをクローで挟み動きを封じられ、ならばと開いた五指で貫くべく腕を伸ばした。
「うぇっ!?」
魔進チェイサーを切り裂く筈の腕が急に引っ張られ、素っ頓狂な声が飛び出る。
原因は右腕に巻き付いた鋼鉄製の蛇だ。
クローを装着済の右腕から伸びる鞭を、しゃらくさいと力任せに振り解く。
今度こそ爪を突き刺そうとした時には既に、魔進チェイサーの姿は目の前から消えていた。
原因は右腕に巻き付いた鋼鉄製の蛇だ。
クローを装着済の右腕から伸びる鞭を、しゃらくさいと力任せに振り解く。
今度こそ爪を突き刺そうとした時には既に、魔進チェイサーの姿は目の前から消えていた。
移動先は頭上と察すると同時にエネルギー弾が降り注ぐ。
宙を自在に飛び回り、真下からの銃撃を躱す。
天井が穴だらけになるも互いに知った事では無い。
標的への命中のみを意識して撃ち続ける。
宙を自在に飛び回り、真下からの銃撃を躱す。
天井が穴だらけになるも互いに知った事では無い。
標的への命中のみを意識して撃ち続ける。
「そんなの無駄――っ!?」
ラミネート装甲は突破できまいと高を括るも、間違いに気付き回避へ移行。
確かにブレイクガンナーではバルバトスの装甲を貫けないが、それは機体が万全だったらの話。
スザクとの戦いで損傷を受けた箇所は、肝心のエネルギー兵器への耐久性もほとんど期待出来ない。
いらぬ所で足を引っ張る黒い復讐者に苛立つ一方、魔進チェイサーは自身の狙いが間違いでないと確信。
連射速度を引き上げるが、一方的に狙われるのをミカも大人しく許してはやらなかった。
確かにブレイクガンナーではバルバトスの装甲を貫けないが、それは機体が万全だったらの話。
スザクとの戦いで損傷を受けた箇所は、肝心のエネルギー兵器への耐久性もほとんど期待出来ない。
いらぬ所で足を引っ張る黒い復讐者に苛立つ一方、魔進チェイサーは自身の狙いが間違いでないと確信。
連射速度を引き上げるが、一方的に狙われるのをミカも大人しく許してはやらなかった。
高く飛ぼうとも天井を突き破ってない以上、テイルブレードの射程範囲内だ。
目障りな害鳥を叩き落とす矢の如く、頭上目掛けて疾走。
予測できない動きのワイヤーブレードは、ある意味弾丸よりも厄介。
なれど対抗手段がゼロと言った覚えもない。
目障りな害鳥を叩き落とす矢の如く、頭上目掛けて疾走。
予測できない動きのワイヤーブレードは、ある意味弾丸よりも厄介。
なれど対抗手段がゼロと言った覚えもない。
『EXECUTION COBRA』
銃口を押し込み鋼鉄の鞭、テイルウィッパーにエネルギーを充填。
漲る力に急かされ魔進チェイサーの元を離れる。
直接振るうよりも更に自在な動きが可能なとなり、テイルブレードとぶつかり合う。
主への狼藉を許さぬ従者のように、飛行中のロイミュードには掠り傷一つ付けさせない。
この状態が長続きしないのは百も承知だ、得られた猶予で次なる動きに出る。
漲る力に急かされ魔進チェイサーの元を離れる。
直接振るうよりも更に自在な動きが可能なとなり、テイルブレードとぶつかり合う。
主への狼藉を許さぬ従者のように、飛行中のロイミュードには掠り傷一つ付けさせない。
この状態が長続きしないのは百も承知だ、得られた猶予で次なる動きに出る。
「うーわ、乱暴過ぎじゃない?」
体育館の天井に設置されたライトをもぎ取り、ミカへと投擲。
壁を破壊しダイナミックな脱獄を果たした自分を棚に上げ、軽く引きつつも床を蹴り回避。
飛び散るガラスを腕の一振りで払い除け、ふざけた真似に出た男へ得物を振り被る。
だがフルートバスターの投擲を待たず、魔進チェイサーは次なる手に出ていた。
壁を破壊しダイナミックな脱獄を果たした自分を棚に上げ、軽く引きつつも床を蹴り回避。
飛び散るガラスを腕の一振りで払い除け、ふざけた真似に出た男へ得物を振り被る。
だがフルートバスターの投擲を待たず、魔進チェイサーは次なる手に出ていた。
『EXECUTION BAT』
響く電子音声は、展開済の武装へ再びエネルギーが送られる合図。
鋼鉄の翼、ウィングスナイパーに紫の光が迸る。
ライトの投擲程度でどうにかなるとは最初から思っていない。
僅かなりとも動きを止められたなら上出来だ、加速の勢いを乗せた蹴りを真下へ放つ。
鋼鉄の翼、ウィングスナイパーに紫の光が迸る。
ライトの投擲程度でどうにかなるとは最初から思っていない。
僅かなりとも動きを止められたなら上出来だ、加速の勢いを乗せた蹴りを真下へ放つ。
「わざわざ突っ込んで来るなんて気が利いてるね!それともバカなだけかな?」
軽口を挟んで銃撃を見舞うも、物ともせずに急降下。
だったら真っ向から捻じ伏せてやるのみ。
右腕を槍に見立てて突き刺し、靴底とぶつかり合う。
脚諸共木っ端微塵に破壊してやらんと力を引き出し、
だったら真っ向から捻じ伏せてやるのみ。
右腕を槍に見立てて突き刺し、靴底とぶつかり合う。
脚諸共木っ端微塵に破壊してやらんと力を引き出し、
「……っ!」
軋みを上げる体に動きが硬直、拮抗は崩れ天秤は傾く。
押し負けるのは確定と理解しても、素直に蹴り飛ばされてはやらない。
敵の勢いを少しでも削ぐべく、開いた左手でフルートバスターを振るう。
押し負けるのは確定と理解しても、素直に蹴り飛ばされてはやらない。
敵の勢いを少しでも削ぐべく、開いた左手でフルートバスターを振るう。
尤も、魔進チェイサーには見抜かれた攻撃だ。
自由に動かせる手があるのはミカだけではない、すかさず照準を合わせトリガーを引く。
エネルギー弾は破損個所を正確に貫き、内部のミカにもダメージが届いた。
ラミネート装甲による威力低下が起こらなければ、流石に平然としてはいられない。
怯んだタイミングは最大のチャンス、とうとう押し負け蹴り飛ばされる。
自由に動かせる手があるのはミカだけではない、すかさず照準を合わせトリガーを引く。
エネルギー弾は破損個所を正確に貫き、内部のミカにもダメージが届いた。
ラミネート装甲による威力低下が起こらなければ、流石に平然としてはいられない。
怯んだタイミングは最大のチャンス、とうとう押し負け蹴り飛ばされる。
「こん…のぉっ!!」
「ぐ…っ!」
「ぐ…っ!」
それでも攻撃の機会を強引に手繰り寄せ、吹き飛ぶ最中に足を突き出す。
踵部分に仕込んだパイルバンカーを発射、金属製の杭が一直線に襲来。
咄嗟の判断で右腕のクローを盾に使ったが間に合わず、魔進チェイサーもミカ同様に床を転がった。
押し負けた理由も自分の体なのだから直ぐに分かった。
踵部分に仕込んだパイルバンカーを発射、金属製の杭が一直線に襲来。
咄嗟の判断で右腕のクローを盾に使ったが間に合わず、魔進チェイサーもミカ同様に床を転がった。
押し負けた理由も自分の体なのだから直ぐに分かった。
キラと篝との初戦に始まり現在に至るまで、ミカは連戦続きでロクに休めていない。
一般人を超える力のキヴォトスの人間とはいえ、傷や疲労は他の生物同様に付いて回る。
風都タワー付近でエターナルと戦った時と同じだ。
蓄積された疲労が足枷となり、肝心な場面で力を出せなかった。
軽くない消耗を抱えたまま、魔進チェイサーと戦えただけでも十分並外れてはいるが。
一般人を超える力のキヴォトスの人間とはいえ、傷や疲労は他の生物同様に付いて回る。
風都タワー付近でエターナルと戦った時と同じだ。
蓄積された疲労が足枷となり、肝心な場面で力を出せなかった。
軽くない消耗を抱えたまま、魔進チェイサーと戦えただけでも十分並外れてはいるが。
対するチェイスもまた、宇蟲王ギラとの戦闘からそう間を置かずにミカとぶつかった。
メカ救急箱の効果は継続中で、回復は進んでいるが即座に完治とはならない。
が、チェイスはミカと違い機械生命体ロイミュード。
生物ならばあって当然の肉体的疲労は、機械の体故に存在しない。
その為疲労が原因によるコンディションの低下も起こらず、ミカよりは万全に近い状態で戦闘が可能だった。
メカ救急箱の効果は継続中で、回復は進んでいるが即座に完治とはならない。
が、チェイスはミカと違い機械生命体ロイミュード。
生物ならばあって当然の肉体的疲労は、機械の体故に存在しない。
その為疲労が原因によるコンディションの低下も起こらず、ミカよりは万全に近い状態で戦闘が可能だった。
「この程度で勝った気になられたら、流石にイラっと来ちゃうかなぁ……!」
全身が訴える疲労もミカを止めるには至らない。
闘争へ駆り立てる怒りは依然として燃え盛ったまま。
この男は言ってはならないことを言った、やってはいけないことをやった。
つまらない冗談と鼻で笑い飛ばしてやれない、言うなれば地雷を踏んだのだ。
闘争へ駆り立てる怒りは依然として燃え盛ったまま。
この男は言ってはならないことを言った、やってはいけないことをやった。
つまらない冗談と鼻で笑い飛ばしてやれない、言うなれば地雷を踏んだのだ。
殺すしかないと決めておきながら、ムシの良い話だとは分かっている。
自分が皆から嫌われる魔女だとつくづく思う、セイアが和解を拒むのも当然だろう。
それでも、それでもこれだけはどうしても許せない。
自分が皆から嫌われる魔女だとつくづく思う、セイアが和解を拒むのも当然だろう。
それでも、それでもこれだけはどうしても許せない。
「スクラップになれば、もう何も言えなくなるよね!」
腰からメイスを引き抜くや間髪入れずに突進。
相手が起き上がるのを悠長に待ってやらない。
原型なんて留めない程に破壊し、二度とさっきのような事を言えなくしてやる。
鉄華団の悪魔と恐れられた少年のように、無慈悲な鉄槌を振り下ろす。
相手が起き上がるのを悠長に待ってやらない。
原型なんて留めない程に破壊し、二度とさっきのような事を言えなくしてやる。
鉄華団の悪魔と恐れられた少年のように、無慈悲な鉄槌を振り下ろす。
その寸前で、ミカの前に少女が飛び込んで来た。
046:そんな〝ヒーロー〟になるための歌 | 投下順 | 047:Brave Souls ─ガールズリミックス─ |
054:あんなに一緒だったのに/傷は消えず、仄暗く深き悲しみと共に | 時系列順 | |
044:命の冒涜者 | 柊篝 | |
聖園ミカ | ||
029:波瀾F:戦士の王国 | 花菱はるか | |
横山千佳 | ||
小宮果穂 | ||
チェイス | ||
014:テラー | 浅倉威 |