負傷……不要
病……不要
背信……不要
悪……不要
なら、あとに残るのは?
◆
「どういう…ことなんだ…?」
理解が追い付かないとは正にこのこと。
両目を見開き、口から漏れるは困惑をこれでもかと煮詰めた言葉。
両目を見開き、口から漏れるは困惑をこれでもかと煮詰めた言葉。
一目見て、強いと感じさせる青年だった。
短く切り添えた髪は青、空の色ともまた違う鮮やかさは夜闇に包まれても存在感を損なわない。
顔立ちもまた、それに見合う造りである。
ハンサム、美男子、イケメン、俗な言葉で表すならそれらがこうも似合う男は滅多にいない。
短く切り添えた髪は青、空の色ともまた違う鮮やかさは夜闇に包まれても存在感を損なわない。
顔立ちもまた、それに見合う造りである。
ハンサム、美男子、イケメン、俗な言葉で表すならそれらがこうも似合う男は滅多にいない。
青年…トランクスが現状を正しく理解するのに少しばかりの時間を要した。
何も彼が判断力と冷静さに欠けた、言わば顔だけの愚図という事とは断じて違う。
しかしながらトランクスは先の光景、呪詛師が最悪のパフォーマンスを行う少し前に戦いを終えたばかり。
何も彼が判断力と冷静さに欠けた、言わば顔だけの愚図という事とは断じて違う。
しかしながらトランクスは先の光景、呪詛師が最悪のパフォーマンスを行う少し前に戦いを終えたばかり。
人間0計画。
人造人間の脅威が去ったのも束の間、神をも恐れぬ邪悪の所業により未来世界は再び大混乱に陥った。
何よりも最悪なのは計画を実行したのが正真正銘の神であること。
正義の名の元に地球人を全滅寸前へと追いやった。
過去へ跳び、父や尊敬する戦士達との協力を経て、死闘の末に神を撃破。
しかし神はしぶとく生にしがみ付き、あろうことか時空すらも越え地球人の抹殺を目論み、最終的には失敗に終わる。
全宇宙を統べる王の手で、自身が滅ぼした未来世界共々完全な消滅という形で以て。
人造人間の脅威が去ったのも束の間、神をも恐れぬ邪悪の所業により未来世界は再び大混乱に陥った。
何よりも最悪なのは計画を実行したのが正真正銘の神であること。
正義の名の元に地球人を全滅寸前へと追いやった。
過去へ跳び、父や尊敬する戦士達との協力を経て、死闘の末に神を撃破。
しかし神はしぶとく生にしがみ付き、あろうことか時空すらも越え地球人の抹殺を目論み、最終的には失敗に終わる。
全宇宙を統べる王の手で、自身が滅ぼした未来世界共々完全な消滅という形で以て。
帰るべき元の世界を失ったトランクスは、分岐した別の未来へ向かう事を選んだ。
不安が無い訳ではない、だが一人では無い。
両親や仲間に見送られ最愛のパートナーと共に旅立った、その筈がこんな場所に連れて来られてしまっている。
不安が無い訳ではない、だが一人では無い。
両親や仲間に見送られ最愛のパートナーと共に旅立った、その筈がこんな場所に連れて来られてしまっている。
タイムマシンは見当たらない、マイも傍におらず気を感じ取れない。
時空を渡る際にトラブルが発生し、意識を失い夢でも見てるんじゃあないか。
困惑から生じる弛んだ想像は、頬に伝わる夜風の冷たさで急速に引き締まる。
断じて夢ではない、マイが自分を揺さぶり起こし悪趣味な光景とおさらばとはいかない。
自分は本当に殺し合いを強制され、一参加者としてこの地にいるのだ。
時空を渡る際にトラブルが発生し、意識を失い夢でも見てるんじゃあないか。
困惑から生じる弛んだ想像は、頬に伝わる夜風の冷たさで急速に引き締まる。
断じて夢ではない、マイが自分を揺さぶり起こし悪趣味な光景とおさらばとはいかない。
自分は本当に殺し合いを強制され、一参加者としてこの地にいるのだ。
羂索なる、少女の皮を被った怪人物の目的は不明。
何を得ようとデスゲームを開いたのか。
大それた目的などない、娯楽の延長に過ぎないのか。
圧倒的に情報が足りない現状、ハッキリしてるのは一つ。
羂索の望みが何であろうと、トランクスは殺し合いを決して認めない。
食って掛かった少年と少女が呆気なく命を散らし、微塵の罪悪感を抱かぬ言動と態度。
同じだ、人造人間達やザマスと。
大切な人々を菓子でも喰らうように容易く奪う宿敵達と。
何を得ようとデスゲームを開いたのか。
大それた目的などない、娯楽の延長に過ぎないのか。
圧倒的に情報が足りない現状、ハッキリしてるのは一つ。
羂索の望みが何であろうと、トランクスは殺し合いを決して認めない。
食って掛かった少年と少女が呆気なく命を散らし、微塵の罪悪感を抱かぬ言動と態度。
同じだ、人造人間達やザマスと。
大切な人々を菓子でも喰らうように容易く奪う宿敵達と。
であれば、殺し合いでの方針は決まったも同然。
羂索とその協力者達を打ち倒し、これ以上意味なく人が殺される事態を防ぐ。
決意するまでが我ながら遅い、状況に振り回され過ぎだ。
父が見たら叱責されるに違いないと、僅かな苦笑いを浮かべる。
羂索とその協力者達を打ち倒し、これ以上意味なく人が殺される事態を防ぐ。
決意するまでが我ながら遅い、状況に振り回され過ぎだ。
父が見たら叱責されるに違いないと、僅かな苦笑いを浮かべる。
(そういえば…参加してるのはオレだけなのか?)
タイムマシンを動かしたタイミングで拉致されたのを考えれば、近くにいた者達も巻き込まれた可能性は低くない。
ベジータや悟空も参加者に相応しいと目を付けられたのか。
まさかマイやブルマまで参加させられたのでは。
彼ら彼女らの存在を手っ取り早く知る方法は、残念ながら手元に無し。
名簿が閲覧可能となるのは2時間後、気の探知もどういう訳か上手くいかない。
何と言えば良いのか、普段よりも精細さを著しく欠いている。
ベジータや悟空も参加者に相応しいと目を付けられたのか。
まさかマイやブルマまで参加させられたのでは。
彼ら彼女らの存在を手っ取り早く知る方法は、残念ながら手元に無し。
名簿が閲覧可能となるのは2時間後、気の探知もどういう訳か上手くいかない。
何と言えば良いのか、普段よりも精細さを著しく欠いている。
「…奴の言う制限はハッタリじゃないらしいな」
視線は手首へ落とされ、バングルをじっと見つめる。
自身の力を縛る枷にして、生を引き留める命綱。
バグスターという未知のウイルスによる消滅を、トランクスは侮らない。
あの悟空でさえ自分の世界では病に倒れたのだ。
サイヤ人の肉体だろうと蝕む病原体に、今更驚きはしなかった。
自身の力を縛る枷にして、生を引き留める命綱。
バグスターという未知のウイルスによる消滅を、トランクスは侮らない。
あの悟空でさえ自分の世界では病に倒れたのだ。
サイヤ人の肉体だろうと蝕む病原体に、今更驚きはしなかった。
バングルを着けたままでは本来の力を発揮不可能。
一方でバングルが無ければ消滅は免れない。
解決策はバグスターウイルスの特効薬を作り、体内から除去すること。
言うは易しでも実現可能かは別。
タイミリミットが設定され、尚且つそれが本当に出来るのかという問題も生まれる。
ブルマであれば可能かもしれないが、トランクスの望みとしてはこのような凄惨極まる催しに巻き込まれて欲しくない。
なら、自分がどうにかするしかない。
一方でバングルが無ければ消滅は免れない。
解決策はバグスターウイルスの特効薬を作り、体内から除去すること。
言うは易しでも実現可能かは別。
タイミリミットが設定され、尚且つそれが本当に出来るのかという問題も生まれる。
ブルマであれば可能かもしれないが、トランクスの望みとしてはこのような凄惨極まる催しに巻き込まれて欲しくない。
なら、自分がどうにかするしかない。
まずは他の参加者との接触だ。
リュックから取り出した剣を背負い、近場の参加者の位置くらいなら分かる筈と気を探り、
リュックから取り出した剣を背負い、近場の参加者の位置くらいなら分かる筈と気を探り、
「――――っ!!!」
ゾワリと、全身が総毛立った。
喉が異様に乾く、体中が不自然な程に重い、こめかみが軋み痛みを訴える。
無視など出来る訳が無い、圧倒的という他ない存在感。
これに近い気配を一つ、トランクスは既に知っている。
無視など出来る訳が無い、圧倒的という他ない存在感。
これに近い気配を一つ、トランクスは既に知っている。
「ゴクウブラック…!?いや、だがこの気は……」
近いようでいて違う。
孫悟空の肉体を奪ったあの男ではない。
孫悟空の肉体を奪ったあの男ではない。
答え合わせの如く、気の正体がトランクスの前に現れる。
黒い男だった。
日に焼けたのでも、人種故の黒さでは無い。
命の宿る身体でありながら、ブラックダイヤモンドのような黒い肌。
四肢も胴も細い、トランクスの知る戦士達と比べれば華奢な体型。
しかし男を見て脆弱と口にできる者が、果たしてどこにいようか。
無駄な筋肉や脂肪を削ぎ落とし完成させた体の持ち主が、トランクスと視線を合わせる。
日に焼けたのでも、人種故の黒さでは無い。
命の宿る身体でありながら、ブラックダイヤモンドのような黒い肌。
四肢も胴も細い、トランクスの知る戦士達と比べれば華奢な体型。
しかし男を見て脆弱と口にできる者が、果たしてどこにいようか。
無駄な筋肉や脂肪を削ぎ落とし完成させた体の持ち主が、トランクスと視線を合わせる。
「…っ」
射抜かれた当人は鳥肌が止まらない。
これが本当に生きている者を見る目か。
人造人間やザマス達のような、見下し嘲笑うものは含まれない。
そもそも、感情らしい感情が微塵も宿っていない。
これが本当に生きている者を見る目か。
人造人間やザマス達のような、見下し嘲笑うものは含まれない。
そもそも、感情らしい感情が微塵も宿っていない。
「お前は…何なんだ……?」
乾いた声に一切表情を変えず、相手の口が開かれる。
「……私は…………神だ」
堂々と言い放ったのではない。
因縁深い界王神のように、自らの立場を絶対的と驕ってもいない。
淡々と、揺るがぬ事実を口にした。
自らを神と名乗る者など、現代においては狂人かジョークの類としか見なされないだろう。
だが少なくともトランクスは男の言葉にどこか納得してしまった。
界王神や破壊神といった、自身の知る神のどれとも一致しない。
けれど男が神であるとの言葉を、嘘偽りではないと頭が受け入れている。
因縁深い界王神のように、自らの立場を絶対的と驕ってもいない。
淡々と、揺るがぬ事実を口にした。
自らを神と名乗る者など、現代においては狂人かジョークの類としか見なされないだろう。
だが少なくともトランクスは男の言葉にどこか納得してしまった。
界王神や破壊神といった、自身の知る神のどれとも一致しない。
けれど男が神であるとの言葉を、嘘偽りではないと頭が受け入れている。
「………混じっているな……」
「なに?」
「人の血と……蛮族の血……戦を求む……穢れた血だ………私の世界に……戦を持ち込む悪は不要……」
「なに?」
「人の血と……蛮族の血……戦を求む……穢れた血だ………私の世界に……戦を持ち込む悪は不要……」
話がマズい方に向かってる気がしてならない。
初対面で自らに流れるサイヤの誇りを、悪意を感じずとも罵倒されて良い気分になろう筈が無い。
それについて面と向かって文句を言う暇は、どうやら無さそうだが。
初対面で自らに流れるサイヤの誇りを、悪意を感じずとも罵倒されて良い気分になろう筈が無い。
それについて面と向かって文句を言う暇は、どうやら無さそうだが。
男はトランクスに敵意を向けていない。
目の前にゴミが落ちているから片付ける。
汚れた箇所を見付けたから綺麗に拭き取る。
目の前にゴミが落ちているから片付ける。
汚れた箇所を見付けたから綺麗に拭き取る。
ごく当たり前の、特別な意味を持たない理由で、トランクス目掛け光線が放たれた。
「くっ…!」
男はその場から一歩も動かず、指の一本も動かさない。
攻撃は周囲に浮かぶ光球から。
冷えた空気をたちまち熱し、光の筋が戦士へ牙を剥く。
攻撃は周囲に浮かぶ光球から。
冷えた空気をたちまち熱し、光の筋が戦士へ牙を剥く。
無論、トランクスとて男相手に無防備を晒したつもりはない。
強張りながらも隙は見せじと己に喝を入れ、いつでも動ける準備は完了済み。
気を抜かぬ姿勢は正しく、即座の対応が叶った。
真横へ飛び退き光線を回避、哀れ贄と選ばれたのは背後の木々。
強張りながらも隙は見せじと己に喝を入れ、いつでも動ける準備は完了済み。
気を抜かぬ姿勢は正しく、即座の対応が叶った。
真横へ飛び退き光線を回避、哀れ贄と選ばれたのは背後の木々。
途端に立ち込めるすえた臭いには両者構う様子無し。
初撃へ見事対応してみせた戦士への称賛が、男の口から語れる事は無く。
言葉無き男へ代わり光球が輝きを増す、今度は複数同時にだ。
放たれる熱線の量も倍、位置を変えてトランクスを狙い撃つ。
初撃へ見事対応してみせた戦士への称賛が、男の口から語れる事は無く。
言葉無き男へ代わり光球が輝きを増す、今度は複数同時にだ。
放たれる熱線の量も倍、位置を変えてトランクスを狙い撃つ。
「問答無用か…!」
戦闘になる可能性が高いと分かってはいた。
敵意が無くとも、友好的なものもまた一切男に感じられなかったのだから。
故に悪態は一言に留め、迫る膨大な熱へと意識を集中。
鼻歌交じりに倒せる敵などと、口が裂けても言えない。
敵意が無くとも、友好的なものもまた一切男に感じられなかったのだから。
故に悪態は一言に留め、迫る膨大な熱へと意識を集中。
鼻歌交じりに倒せる敵などと、口が裂けても言えない。
地を蹴り男の元へと疾走。
真正面よりの光線を、上体を捩り躱す間も速度を緩めない。
続けて斜め上から発射、数歩分横へ動いて事無きを得る。
ほぼ同じタイミングにて頭上から襲来、脚の力が籠り速さが一段階上昇。
またも複数同時の発射を確認、問題無しだ。
真正面よりの光線を、上体を捩り躱す間も速度を緩めない。
続けて斜め上から発射、数歩分横へ動いて事無きを得る。
ほぼ同じタイミングにて頭上から襲来、脚の力が籠り速さが一段階上昇。
またも複数同時の発射を確認、問題無しだ。
両眼だけに頼っていてはあっという間に丸焦げ死体の完成。
空気の振動を肌で感じ、光線の発射音を耳で捉え、形容し難いにおいで位置を読み取る。
大袈裟な動きに出ては次の回避が間に合わない。
動作一つ間違うだけで即死確定の光の雨が降る中を、トランクスは無傷で駆ける。
修行と実戦、戦わねば数秒先の未来を拝む事すら叶わなかった絶望の世界を生き抜いた証。
培われた能力を存分に発揮し、ついに間合いへ到達。
空気の振動を肌で感じ、光線の発射音を耳で捉え、形容し難いにおいで位置を読み取る。
大袈裟な動きに出ては次の回避が間に合わない。
動作一つ間違うだけで即死確定の光の雨が降る中を、トランクスは無傷で駆ける。
修行と実戦、戦わねば数秒先の未来を拝む事すら叶わなかった絶望の世界を生き抜いた証。
培われた能力を存分に発揮し、ついに間合いへ到達。
抜刀の勢いを殺さず、男の胴体へと刃を走らせた。
元々愛用していた剣では無いが、不思議と力強さを覚える輝きを放っている。
嘗ての宇宙の帝王と同じ末路を名も知らぬ男が――
元々愛用していた剣では無いが、不思議と力強さを覚える輝きを放っている。
嘗ての宇宙の帝王と同じ末路を名も知らぬ男が――
「なっ!?」
辿らない、呆気ない決着は実現しない。
刀身は男の剥き出しの肌を撫でた、それだけだ。
どれだけ力を籠めても進まない、肉も骨も断てない。
己を攻める剣を視界に捉えて何故男が反応を見せなかったのか。
答えは単純、避ける必要が一切無かったからに過ぎない。
刀身は男の剥き出しの肌を撫でた、それだけだ。
どれだけ力を籠めても進まない、肉も骨も断てない。
己を攻める剣を視界に捉えて何故男が反応を見せなかったのか。
答えは単純、避ける必要が一切無かったからに過ぎない。
斬れぬ獲物へ苦戦するトランクスの瞳に、持ち上げられる腕が見えた。
瞬間、脳が大音量で警鐘を鳴らす。
細い指をピンと伸ばし作った貫き手。
無手のそれがどういう訳か、己を滅ぼす魔剣に思えてならない。
瞬間、脳が大音量で警鐘を鳴らす。
細い指をピンと伸ばし作った貫き手。
無手のそれがどういう訳か、己を滅ぼす魔剣に思えてならない。
防御の選択は真っ先に外す。
具体的な理由は無い、ただトランクスの直感が告げた。
男の攻撃を我が身で受け止めてはならない。
戦場での勘というやつは馬鹿にできない、逆らわずに全力で後退。
具体的な理由は無い、ただトランクスの直感が告げた。
男の攻撃を我が身で受け止めてはならない。
戦場での勘というやつは馬鹿にできない、逆らわずに全力で後退。
舞空術を維持し、地から足が離れたまま距離を取る。
五指がトランクスの血で浴びる結果にはならず、再度だらんと腕は下げた。
チラと、剣の当たった箇所を見やれば極細の赤い一本線。
目を凝らさねば気付けないが、確かに傷が付けられている。
男を知る者がいれば驚愕の光景もトランクスには関係無い。
五指がトランクスの血で浴びる結果にはならず、再度だらんと腕は下げた。
チラと、剣の当たった箇所を見やれば極細の赤い一本線。
目を凝らさねば気付けないが、確かに傷が付けられている。
男を知る者がいれば驚愕の光景もトランクスには関係無い。
光球が男の元を離れ、トランクスを取り囲む。
どこにも逃がしはしない、無駄に死から逃れた代償を払う時だ。
一斉に放たれた熱線により、光の檻へ閉じ込められる。
回避、防御、迎撃。全てが悪足掻きと知るがいい。
目も眩む絶望に包まれた青年の最期がここに――ない。
どこにも逃がしはしない、無駄に死から逃れた代償を払う時だ。
一斉に放たれた熱線により、光の檻へ閉じ込められる。
回避、防御、迎撃。全てが悪足掻きと知るがいい。
目も眩む絶望に包まれた青年の最期がここに――ない。
「はああああああああああああああああっ!!!」
檻が消し飛ぶ。
男が齎す絶望を上回る輝きが、希望という名の衣を纏い現れた。
逆立ち黄金色に光る髪、爆発的な気の上昇に大気が絶叫。
喪失と引き換えに覚醒を果たした力。
もう二度とあの時と同じ悲劇を繰り返さない決意の証明、超サイヤ人だ。
男が齎す絶望を上回る輝きが、希望という名の衣を纏い現れた。
逆立ち黄金色に光る髪、爆発的な気の上昇に大気が絶叫。
喪失と引き換えに覚醒を果たした力。
もう二度とあの時と同じ悲劇を繰り返さない決意の証明、超サイヤ人だ。
「魔力の……急激な上昇を感知……」
呟きに感情は籠められずとも、トランクスの変化に無反応ではいられなかったらしい。
光球を操作し青で構成された馬を召喚。
蹄が地を蹴り付け突撃、叩き伏せ引き摺り回すつもりだ。
だが遅い、敵が通り過ぎたと気付かぬ内に首が落ちた。
霞と化す馬には目もくれず男へ急接近、剣を納め拳を叩きつけた。
光球を操作し青で構成された馬を召喚。
蹄が地を蹴り付け突撃、叩き伏せ引き摺り回すつもりだ。
だが遅い、敵が通り過ぎたと気付かぬ内に首が落ちた。
霞と化す馬には目もくれず男へ急接近、剣を納め拳を叩きつけた。
「せりゃあああああああっ!!」
殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴り続ける。
拳一発が必殺級、常人ならば原型を留めず周囲へ散らばる肉片に早変わり。
そのような殴打の暴風を幾度も叩きつけられ、尚も男は涼しい顔。
無駄の二文字を完璧に取り除いた動きで両腕を駆使、トランクスの猛攻を捌く。
筋肉の張りはトランクスが上、にも関わらず皮一枚すら裂けなかった。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴り続ける。
拳一発が必殺級、常人ならば原型を留めず周囲へ散らばる肉片に早変わり。
そのような殴打の暴風を幾度も叩きつけられ、尚も男は涼しい顔。
無駄の二文字を完璧に取り除いた動きで両腕を駆使、トランクスの猛攻を捌く。
筋肉の張りはトランクスが上、にも関わらず皮一枚すら裂けなかった。
(くっ…動きのキレが悪い…!これも制限ってやつか…!)
こうして戦ってみれば自身の不調が嫌でも分かる。
弱い、本来の超サイヤ人への変身時に比べて力がイマイチ出ない。
気の消耗が激しいとはいえ、幾ら何でも疲れが大きい。
一方的な蹂躙が起こらない為の防衛措置。
殺し合いでのバランスを考えた仕様も、トランクスにとっては邪魔の一言に尽きる。
弱い、本来の超サイヤ人への変身時に比べて力がイマイチ出ない。
気の消耗が激しいとはいえ、幾ら何でも疲れが大きい。
一方的な蹂躙が起こらない為の防衛措置。
殺し合いでのバランスを考えた仕様も、トランクスにとっては邪魔の一言に尽きる。
最も、制限下にあっても爆発的な能力の上昇を可能にするのが超サイヤ人だ。
だというのに目の前の男は動揺一つ見せず対処を続け、未だ一発も届かない。
しかし勝機はある。
剣で斬り付けた時と違い、防御に動いているのは直撃を向こうも避けたい証拠。
超サイヤ人になった今ならば、有効打を与えられる筈。
だというのに目の前の男は動揺一つ見せず対処を続け、未だ一発も届かない。
しかし勝機はある。
剣で斬り付けた時と違い、防御に動いているのは直撃を向こうも避けたい証拠。
超サイヤ人になった今ならば、有効打を与えられる筈。
時間にすれば十秒経つか経たないか。
百を優に超えた打撃を中断、蹴りを放てば男は両腕を交差し防御。
当然の如く痣も付かないが幾らか距離を取らされた、機を逃さず技の構えに移る。
男も黙って的になるつもりはゼロ、背後へ浮遊させた廻剣を操作。
互いに準備は完了、眼前の敵へ放つのみ。
百を優に超えた打撃を中断、蹴りを放てば男は両腕を交差し防御。
当然の如く痣も付かないが幾らか距離を取らされた、機を逃さず技の構えに移る。
男も黙って的になるつもりはゼロ、背後へ浮遊させた廻剣を操作。
互いに準備は完了、眼前の敵へ放つのみ。
「魔閃光!!」
重ねた両掌に気を収束、左手で突き出した右手を押し出すように放出。
今は亡き師、悟飯がピッコロから学びトランクスへと継がれた技だ。
対する男も廻剣を弓状に構え、己が力を一点に集中。
只人ならば、目に触れただけで焼き潰される輝きの魔矢を放った。
今は亡き師、悟飯がピッコロから学びトランクスへと継がれた技だ。
対する男も廻剣を弓状に構え、己が力を一点に集中。
只人ならば、目に触れただけで焼き潰される輝きの魔矢を放った。
真っ向からの激突により空気は泣き叫び、震えが周囲を削り取る。
熱線を食い千切りながら魔矢が徐々に近付く。
押し返さんと踏ん張るがどこまで意味があるのやら。
思わず苦悶の声がトランクスの喉を上り、
熱線を食い千切りながら魔矢が徐々に近付く。
押し返さんと踏ん張るがどこまで意味があるのやら。
思わず苦悶の声がトランクスの喉を上り、
パキリという音が、二人の耳に届く。
「――――っ!?」
「……」
「……」
対照的な表情が見つめる先は同じ方向。
戦場より離れた場所、闇に隠れた位置に『彼女』はいた。
戦場より離れた場所、闇に隠れた位置に『彼女』はいた。
「っ……」
強大な力の衝突に掻き消されるより早く、トランクスが拾い上げた声。
少女の短い悲鳴。
対峙中の男の圧倒的な気に呑まれる程小さい、だけど確かに感じられる存在。
尻餅を付いた姿へ、戦う術を持たない非力な子供と分かった。
少女の短い悲鳴。
対峙中の男の圧倒的な気に呑まれる程小さい、だけど確かに感じられる存在。
尻餅を付いた姿へ、戦う術を持たない非力な子供と分かった。
(マズい……!)
自分だけでなく男も少女へ意識を割いた、男にハッキリ認識されてしまったのだ。
無機質な瞳が射抜くは少女の足。
激突の余波で飛んだ石か枝で切ったのか、白い足を汚す赤が見えた。
無機質な瞳が射抜くは少女の足。
激突の余波で飛んだ石か枝で切ったのか、白い足を汚す赤が見えた。
「己の足で歩くことも……ままならぬ者……不出来………」
何を基準に判断したのか理解が及ばない。
分かるのは男が少女にも牙を剥かんとしている事だけ。
そのたった一つがトランクスを動かす理由になる。
自分の目の前で、これ以上命は奪わせない。
幾度となく味わった絶望を、現実になどさせてたまるか。
分かるのは男が少女にも牙を剥かんとしている事だけ。
そのたった一つがトランクスを動かす理由になる。
自分の目の前で、これ以上命は奪わせない。
幾度となく味わった絶望を、現実になどさせてたまるか。
「っああああああああああああああ!!!」
更なる気の上昇を受け、矢を押し返すどころか消し去った。
自分が勝ったなどと阿呆のように喜ぶ素人ではない。
既に少女へ攻撃は放たれた。
サイヤ人の血を引く自分でさえ警戒する光線だ、少女が受ければどうなるかは考えるまでも無い。
自分が勝ったなどと阿呆のように喜ぶ素人ではない。
既に少女へ攻撃は放たれた。
サイヤ人の血を引く自分でさえ警戒する光線だ、少女が受ければどうなるかは考えるまでも無い。
「きゃっ……」
自分を焼き殺す光線が迫っていると、少女には理解ができない。
何が起きたか分からずあの世へ一直線、彼女一人なら避けられなかった結末。
悲惨な死を覆す青い風が吹かなければ、きっとそうなっただろう。
超サイヤ人に変身中の恩恵により、光線が撃たれた後にも関わらず一手早く少女の元へ到達。
抱きかかえるや否や、速度を更に上げて離脱。
何が起きたか分からずあの世へ一直線、彼女一人なら避けられなかった結末。
悲惨な死を覆す青い風が吹かなければ、きっとそうなっただろう。
超サイヤ人に変身中の恩恵により、光線が撃たれた後にも関わらず一手早く少女の元へ到達。
抱きかかえるや否や、速度を更に上げて離脱。
「えっ、わ、空飛んで…!」
「ごめん、今はじっとしててくれ」
「ごめん、今はじっとしててくれ」
信頼できる仲間がいれば任せられたが、不在である以上はトランクスが守らねばならない。
よって戦闘続行よりも少女を連れての迅速な撤退を選んだ。
殺し合いに乗った男の放置に全くの抵抗が無いと言えば嘘になる。
しかし腕の中の小さな命を投げ出すなんて真っ平御免。
よって戦闘続行よりも少女を連れての迅速な撤退を選んだ。
殺し合いに乗った男の放置に全くの抵抗が無いと言えば嘘になる。
しかし腕の中の小さな命を投げ出すなんて真っ平御免。
ある程度離れ、ようやっと超サイヤ人を解除。
疲労は普段よりも多いが動けない程でも無い、とにかく今は少女を安全な場所へ降ろすのが最優先だ。
疲労は普段よりも多いが動けない程でも無い、とにかく今は少女を安全な場所へ降ろすのが最優先だ。
◆◆◆
逞しい腕に守られるのは不思議な気分だった。
父とは違う。
兄とも違う。
大好きな『彼女』とも、全然違う。
多分、というか間違いなくこのお兄さんの方が『彼女』よりも力は強いのだろう。
本当は味方してあげたいけど、さっきの光景を見てしまったから仕方ない。
父とは違う。
兄とも違う。
大好きな『彼女』とも、全然違う。
多分、というか間違いなくこのお兄さんの方が『彼女』よりも力は強いのだろう。
本当は味方してあげたいけど、さっきの光景を見てしまったから仕方ない。
でも、安心できるのは『彼女』の方が何倍も上だ。
力で敵わなくても、愛の強さなら間違いなく最強。
力で敵わなくても、愛の強さなら間違いなく最強。
人を殺した、人を騙した、何人もの人を悲しい目に遭わせた。
全部自分の為に、自分との生活を守る為に。
だって『彼女』は自分をずっとずっと好きでいてくれて、自分も『彼女』が大好きだから。
全部自分の為に、自分との生活を守る為に。
だって『彼女』は自分をずっとずっと好きでいてくれて、自分も『彼女』が大好きだから。
もぞもぞと動き目をあっちこっちに向ける。
二人で暮らしたお部屋よりも、ずっと近くで見れる星空。
『彼女』と一緒に見れたら、きっと凄く幸せな気持ちになれるだろう。
二人で暮らしたお部屋よりも、ずっと近くで見れる星空。
『彼女』と一緒に見れたら、きっと凄く幸せな気持ちになれるだろう。
あの日、自分達を追い立てた火の海が最後に見た景色。
そんな結末で終わらせられない。
もっと二人で色んなものを見て、これから先も笑っていられる。
実現する事の無い夢物語を、本当に出来るチャンスを自分は手に入れた。
理想を叶える、頭をパカっと開いた女の人の言葉が嘘でないなら。
不思議な力が本当にあるなら、そこへ辿り着かない選択はない。
そんな結末で終わらせられない。
もっと二人で色んなものを見て、これから先も笑っていられる。
実現する事の無い夢物語を、本当に出来るチャンスを自分は手に入れた。
理想を叶える、頭をパカっと開いた女の人の言葉が嘘でないなら。
不思議な力が本当にあるなら、そこへ辿り着かない選択はない。
『彼女』が自分の為に色んなことをしてくれたから。
今度は自分が『彼女』の――『さとちゃん』の為に頑張る。
今度は自分が『彼女』の――『さとちゃん』の為に頑張る。
(だから、お兄さんにも力を貸して欲しいな)
帰る世界を失った青年を、帰る場所を取り戻さんとする少女は澱みの無い瞳で見つめた。
【トランクス(未来)@ドラゴンボール超】
状態:疲労(中)、飛行中
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:少女をどこか安全な場所に降ろす。
02:自分の知っている者が巻き込まれていないか気掛かり。特に母さんやマイがいたら…
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。
状態:疲労(中)、飛行中
服装:ジャケットと赤いスカーフ(いつもの)
装備:燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:羂索を倒し殺し合いを終わらせる。
01:少女をどこか安全な場所に降ろす。
02:自分の知っている者が巻き込まれていないか気掛かり。特に母さんやマイがいたら…
参戦時期:分岐した未来へ向かう直前。
備考
※殺し合いを破綻させない程度に能力を制限されています。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
状態:右ひざに切り傷、トランクスに抱っこされてる
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:生き残って願いを叶える
01:強い人がいっぱいいるなら、さくせんを考えないとだめだよね
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考
状態:右ひざに切り傷、トランクスに抱っこされてる
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:生き残って願いを叶える
01:強い人がいっぱいいるなら、さくせんを考えないとだめだよね
参戦時期:さとうと共に飛び降りを決行する直前。
備考
◆◆◆
離れて行く二人を暫し見つめ、ややあって視線を外す。
逃げられた事に悔しさも怒りも無い。
追跡は可能だが積極的に行う気も無い。
今殺すか後になって殺すか、順番が変わるだけ。
全ては些末、興味も引かれず心も震えない。
逃げられた事に悔しさも怒りも無い。
追跡は可能だが積極的に行う気も無い。
今殺すか後になって殺すか、順番が変わるだけ。
全ては些末、興味も引かれず心も震えない。
「戦を望み……血を降らせるか……ならば、私はお前達を断罪し……悪なき世界を創ろう……」
場所が変わろうと、見える景色が変化しようと。
男がやるのは同じ。
神として、否、最早神とも呼べぬ舞台装置の役割を果たすのみ。
男がやるのは同じ。
神として、否、最早神とも呼べぬ舞台装置の役割を果たすのみ。
内へ宿した己が不出来を引き摺り出す、日輪の輝きが現れるまで。
【アルジュナ・オルタ@Fate/Grand Oreder】
状態:疲労(極小)、ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。
状態:疲労(極小)、ダメージ(超々軽微)
服装:いつもの
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×1~3、ホットライン
思考
基本:一切の邪悪を断ち、世界を救う
01:全て些末……
参戦時期:創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ、19節でカルナと相対する前。
備考
※殺し合いが破綻しない程度に能力を制限されています。
【燦然と輝く王剣@Fate/Grand Order】
モードレッドが所有する剣であり宝具の一つ。
本来は王位継承の際に与えられる剣であり、王気を増幅する為に使われる。
モードレッドが所有する剣であり宝具の一つ。
本来は王位継承の際に与えられる剣であり、王気を増幅する為に使われる。
候補作073:それでも、ハッピーエンド/バッドエンドのその先で | 投下順 | 候補作075:滅亡遊戯と不滅の雷 |
時系列順 | ||
GAME START | トランクス(未来) | 008:夢中になれるモノが── |
神戸しお | ||
アルジュナ・オルタ | 015:linkage ─人間未満─ |