ザッ。
ワシらは、再び都の入り口へとやって来ていた。
しかし、何かがおかしい。
ワシらが撤退したつい数時間前まで、
都の中は大騒ぎになっていた。
それはそのはず、都を治めていたお代官が
化け物だったとあれば皆逃げ出そうとするじゃろう。
しかし今はまるで人がいなくなってしまったかのように、
都は静寂に包まれていた。
まさか、大仁田の奴……この都の住民たちを、
全て喰らい尽くしてしもうたのか?
いや、全員を食うには流石に時間が足りんはず。
ワシらは、再び都の入り口へとやって来ていた。
しかし、何かがおかしい。
ワシらが撤退したつい数時間前まで、
都の中は大騒ぎになっていた。
それはそのはず、都を治めていたお代官が
化け物だったとあれば皆逃げ出そうとするじゃろう。
しかし今はまるで人がいなくなってしまったかのように、
都は静寂に包まれていた。
まさか、大仁田の奴……この都の住民たちを、
全て喰らい尽くしてしもうたのか?
いや、全員を食うには流石に時間が足りんはず。
では、これは一体どうした事じゃ……?
「どうする、猫。いきなり予想とは違う事態だが……」
「行くしかなかろう。ここまで来て、退く訳には行かん。
何かあるにしても突っ込んで強行突破する。
なに、ワシらならすぐに死ぬ事はないじゃろ」
「また力技でござるな……。
しかし、策を練り直している暇もなさそうでござるな。
今回は、そこの脳筋の案に乗ったでござる」
「おい、誰が脳筋じゃ誰が。
ワシは単純かつ明快な突破方法をしっかり考えてじゃな」
「どうする、猫。いきなり予想とは違う事態だが……」
「行くしかなかろう。ここまで来て、退く訳には行かん。
何かあるにしても突っ込んで強行突破する。
なに、ワシらならすぐに死ぬ事はないじゃろ」
「また力技でござるな……。
しかし、策を練り直している暇もなさそうでござるな。
今回は、そこの脳筋の案に乗ったでござる」
「おい、誰が脳筋じゃ誰が。
ワシは単純かつ明快な突破方法をしっかり考えてじゃな」
「ぐだぐだ言い争ってねぇで行くぞ!!こうしてる間にも
誰かが食われてるかも知れねぇんだろ!!」
「お、おいおい、待つでござるよ彼岸花!!
拙者も行くでござる!!」
ダッ、と彼岸花が一人で駆け出し、
それを追いかけてござる鼬も走り出す。
まずいの。このままでは皆散り散りになってしまう。
各個撃破されてしまうのだけは避けねば……!!
誰かが食われてるかも知れねぇんだろ!!」
「お、おいおい、待つでござるよ彼岸花!!
拙者も行くでござる!!」
ダッ、と彼岸花が一人で駆け出し、
それを追いかけてござる鼬も走り出す。
まずいの。このままでは皆散り散りになってしまう。
各個撃破されてしまうのだけは避けねば……!!
「はーい、皆さん落ち着いて下さいね。
勝手に一人でどこかへ行かない。団体行動の基本ですよ〜」
シャンッ、と後ろから音が鳴ったと思うと、
『何か』がワシらの身体を通り抜けて行くのを感じた。
目を凝らして見ると半球状の薄い膜のような物が
ワシらの周りを覆っている。
お構いなしに走って行こうとする彼岸花とござる鼬は、
『それ』に正面からぶつかって尻餅をついた。
「いでぇッ!?なんだこれ!?」
「ぬっ……これは……!
陰陽師!其方の仕業でござるか!」
勝手に一人でどこかへ行かない。団体行動の基本ですよ〜」
シャンッ、と後ろから音が鳴ったと思うと、
『何か』がワシらの身体を通り抜けて行くのを感じた。
目を凝らして見ると半球状の薄い膜のような物が
ワシらの周りを覆っている。
お構いなしに走って行こうとする彼岸花とござる鼬は、
『それ』に正面からぶつかって尻餅をついた。
「いでぇッ!?なんだこれ!?」
「ぬっ……これは……!
陰陽師!其方の仕業でござるか!」
「いかにも。これはわたくしの術のひとつ、
『絶対不可侵領域』。わたくしが許可した者以外、
この空間から出る事も入る事もできません。
皆さん、足並みを揃えて行きましょう。
調子を乱されてしまえば相手の思う壺。
心を落ち着かせ、心頭滅却すれば鬼も神も
赤子同然。さぁ、参りますよ」
うーむ……この娘、想像以上に強かじゃの。
何より、妖に囲まれて神と戦いに行くという
非常事態にありながら泰然自若としておる。
まだ若いのに、心の強さはまるで歴戦の勇士のようじゃな。
『絶対不可侵領域』。わたくしが許可した者以外、
この空間から出る事も入る事もできません。
皆さん、足並みを揃えて行きましょう。
調子を乱されてしまえば相手の思う壺。
心を落ち着かせ、心頭滅却すれば鬼も神も
赤子同然。さぁ、参りますよ」
うーむ……この娘、想像以上に強かじゃの。
何より、妖に囲まれて神と戦いに行くという
非常事態にありながら泰然自若としておる。
まだ若いのに、心の強さはまるで歴戦の勇士のようじゃな。
それにしても、『絶対不可侵領域』か。
こんな強力な結界を軽々と扱えるとは、
暁星家……侮れん力を持っておるの。
錫杖をシャンシャンと鳴らしながら、光を筆頭に
ワシら即席の軍団は少しずつ人気のない都を進んでいく。
そして、都の中心部───先程までワシらが戦っていた、
彼岸花の処刑台にやって来た。
そこには……。
こんな強力な結界を軽々と扱えるとは、
暁星家……侮れん力を持っておるの。
錫杖をシャンシャンと鳴らしながら、光を筆頭に
ワシら即席の軍団は少しずつ人気のない都を進んでいく。
そして、都の中心部───先程までワシらが戦っていた、
彼岸花の処刑台にやって来た。
そこには……。
「遅かったですねぇ。皆さんお揃いで。
いよいよ覚悟は決まったという訳ですか?」
鬼ではなく、人間の姿に戻った大仁田が
煙管をふかしながら優雅に腰掛けていた。
しかしワシらの目に入って来たのは、
余裕を見せる大仁田の姿ではなく……。
「……やってくれたのぉ。
住民たちがいないのはおかしいと思うたが」
処刑台の周囲に、まるで廃人のように蠢く
かつての住人達の姿があった。
いよいよ覚悟は決まったという訳ですか?」
鬼ではなく、人間の姿に戻った大仁田が
煙管をふかしながら優雅に腰掛けていた。
しかしワシらの目に入って来たのは、
余裕を見せる大仁田の姿ではなく……。
「……やってくれたのぉ。
住民たちがいないのはおかしいと思うたが」
処刑台の周囲に、まるで廃人のように蠢く
かつての住人達の姿があった。
狐が消えた今、人々の心は妖術で操り放題。
これまでのような生易しい洗脳ではなく、
完全に己の奴隷にしてしまったと言う訳か。
こやつ……ここまで下衆であったとはな。
いや、今更か。
子供の命など何とも思わぬような奴じゃからな。
「元・神様が聞いて呆れるのぉ、大仁田よ。
人間なぞ、己のための道具でしかないと言う事かの?」
これまでのような生易しい洗脳ではなく、
完全に己の奴隷にしてしまったと言う訳か。
こやつ……ここまで下衆であったとはな。
いや、今更か。
子供の命など何とも思わぬような奴じゃからな。
「元・神様が聞いて呆れるのぉ、大仁田よ。
人間なぞ、己のための道具でしかないと言う事かの?」
「……知っていましたか。はっ、妖風情が
随分と人間に肩入れするのですねぇ。
我々人外にとってヒトなどエサでしかない。
そこらの獣と何ら変わりはないでしょう。
人間だけを優遇するのはむしろ差別に当たります。
全ての命を平等に扱ってこそ、神の所業と言うものですよ」
「抜かせ。オヌシのやり方は明らかに人間への
憎しみに満ちておる。
オヌシがなぜ神から鬼へと堕したのかは知らんが、
人間に何かされたのじゃろう?個人的な恨みで
動いとるくせに、な〜にが『神の所業』じゃ」
「……………………」
随分と人間に肩入れするのですねぇ。
我々人外にとってヒトなどエサでしかない。
そこらの獣と何ら変わりはないでしょう。
人間だけを優遇するのはむしろ差別に当たります。
全ての命を平等に扱ってこそ、神の所業と言うものですよ」
「抜かせ。オヌシのやり方は明らかに人間への
憎しみに満ちておる。
オヌシがなぜ神から鬼へと堕したのかは知らんが、
人間に何かされたのじゃろう?個人的な恨みで
動いとるくせに、な〜にが『神の所業』じゃ」
「……………………」
大仁田の顔から余裕の笑みが消えた。
煙管を捨ててスッと立ち上がる。
カカカ、今の挑発は効いたようじゃの。
今のこやつは再び『人々からの信仰』を手に入れた、
神に近い存在。
覚悟して挑まねば……。
「オオオオオオオオオオ………!!!」
メキッ、ビキ、バキッ……!!!
煙管を捨ててスッと立ち上がる。
カカカ、今の挑発は効いたようじゃの。
今のこやつは再び『人々からの信仰』を手に入れた、
神に近い存在。
覚悟して挑まねば……。
「オオオオオオオオオオ………!!!」
メキッ、ビキ、バキッ……!!!
擬態である人の姿は消え去り、
奴の真の姿……巨大な鬼が姿を見せる。
しかし、その風貌は明らかにこれまでとは異なっていた。
筋肉はさらに盛り上がり、あちこちに棘が生え、
黒くうねった髪は背中まで伸び、
鋭い角は天を衝かんばかりに長く太くなっている。
これが「ただの鬼」じゃと?
そんな生易しいものではないぞ……!!
奴の真の姿……巨大な鬼が姿を見せる。
しかし、その風貌は明らかにこれまでとは異なっていた。
筋肉はさらに盛り上がり、あちこちに棘が生え、
黒くうねった髪は背中まで伸び、
鋭い角は天を衝かんばかりに長く太くなっている。
これが「ただの鬼」じゃと?
そんな生易しいものではないぞ……!!
「ははははは!!
力が漲る、かつての私に迫る勢いだ……!!
貴様ら小蝿など一捻りしてくれよう!!!」
大仁田はいきなり全開と言わんばかりに、
"夜"の妖術を詠唱し始める。
先程よりも明らかに速度が上がっている。
妖力が強くなっているからか……!!
じゃが、今回はこちらにも対抗策がある!
力が漲る、かつての私に迫る勢いだ……!!
貴様ら小蝿など一捻りしてくれよう!!!」
大仁田はいきなり全開と言わんばかりに、
"夜"の妖術を詠唱し始める。
先程よりも明らかに速度が上がっている。
妖力が強くなっているからか……!!
じゃが、今回はこちらにも対抗策がある!
「全くうるさい鬼さんですねぇ。
せっかくお天道様が照らして下さっていると言うのに、
夜にしようなんて不届きです。
─── 『晴天:天照』!!!」
せっかくお天道様が照らして下さっていると言うのに、
夜にしようなんて不届きです。
─── 『晴天:天照』!!!」
カッ!!!!!!
大仁田が"夜"を展開した、直後。
光の術がそれを切り裂いた。
眩い陽の光が辺りを暖かく照らし、
ワシらの身体に力が満ちていく。
この術は……ただ闇を打ち払うだけでなく、
味方に妖力を分け与える効果まであるのか!
光の術がそれを切り裂いた。
眩い陽の光が辺りを暖かく照らし、
ワシらの身体に力が満ちていく。
この術は……ただ闇を打ち払うだけでなく、
味方に妖力を分け与える効果まであるのか!
「な、なんだこれは……!!
小娘、貴様何をした!?」
「見ての通りです。闇を祓い、
光をもたらすわたくしの術、『晴天:天照』。
……あぁ、自己紹介がまだでしたね。
わたくしは暁星光。以後、お見知り置きを」
ぺこり、と丁寧に頭を下げる光。
うぅむ、戦いの中でも自己紹介を忘れぬ余裕。
将来さらなる大物になりそうじゃ。
小娘、貴様何をした!?」
「見ての通りです。闇を祓い、
光をもたらすわたくしの術、『晴天:天照』。
……あぁ、自己紹介がまだでしたね。
わたくしは暁星光。以後、お見知り置きを」
ぺこり、と丁寧に頭を下げる光。
うぅむ、戦いの中でも自己紹介を忘れぬ余裕。
将来さらなる大物になりそうじゃ。
「おのれ……人間如きが私の闇を消し去るなど……
そんな事があってはならない!!
私の前から消えろッ!!!」
巨大な拳が光を襲う。
しかし光は動じる様子もなくするりとそれを躱す。
狐と同じく、力任せの相手をあしらうのは
得意なようじゃな。しかし、油断は禁物。
油断した狐はあやつの奥の手の前に敗れた。
まだこやつがさらなる手を隠している可能性は
捨てきれんからの。
そんな事があってはならない!!
私の前から消えろッ!!!」
巨大な拳が光を襲う。
しかし光は動じる様子もなくするりとそれを躱す。
狐と同じく、力任せの相手をあしらうのは
得意なようじゃな。しかし、油断は禁物。
油断した狐はあやつの奥の手の前に敗れた。
まだこやつがさらなる手を隠している可能性は
捨てきれんからの。
「ほれほれ、小娘だけに構っておって良いのか?
ワシらもおる事を忘れるなよ」
光に執心する大仁田の隙を狙い、
襟巻きを変形させた剣で腕や足を斬りつける。
流石の硬度じゃが、全く傷付かないわけでもなさそうじゃ。
これなら攻撃を続けていればいずれは……。
ワシらもおる事を忘れるなよ」
光に執心する大仁田の隙を狙い、
襟巻きを変形させた剣で腕や足を斬りつける。
流石の硬度じゃが、全く傷付かないわけでもなさそうじゃ。
これなら攻撃を続けていればいずれは……。
「鬱陶しいと言っている。
貴様らはこいつらの相手でもしていろ!!」
ズォッ、と大仁田の身体から再び闇が出現する。
しかし今度は空間を飲み込むのではなく
地面に広がっていき…そこから『何か』が顔を出した。
これは……小さな、鬼?!
「私に部下が1人もいないとでも思ったか?
小さくても鬼は鬼、舐めてかかると痛い目を見るぞ」
貴様らはこいつらの相手でもしていろ!!」
ズォッ、と大仁田の身体から再び闇が出現する。
しかし今度は空間を飲み込むのではなく
地面に広がっていき…そこから『何か』が顔を出した。
これは……小さな、鬼?!
「私に部下が1人もいないとでも思ったか?
小さくても鬼は鬼、舐めてかかると痛い目を見るぞ」
「キイィッ!!」
言葉を持たないらしい小鬼は、
牙を剥き出しにして襲いかかって来た!
「ふっ!!」
咄嗟に爪で喉笛を切り裂いた。ドバッと青い血が溢れ出す。
しかし……効いてはいるものの、即死はしておらん。
さらに、死なない限りは殺意剥き出しで
攻撃し続けてくるようじゃの。
これは見た目以上に厄介じゃぞ……!
言葉を持たないらしい小鬼は、
牙を剥き出しにして襲いかかって来た!
「ふっ!!」
咄嗟に爪で喉笛を切り裂いた。ドバッと青い血が溢れ出す。
しかし……効いてはいるものの、即死はしておらん。
さらに、死なない限りは殺意剥き出しで
攻撃し続けてくるようじゃの。
これは見た目以上に厄介じゃぞ……!
小鬼は無数に闇から湧いて来ている。
「この……放すでござるよ!!」
ござる鼬もまた小鬼に苦戦していた。
苦無で次々に小鬼の身体を切り裂いているが、
奴ら再生能力まで持っておるのか、
全く怯む事なく次々にござるの身体に掴みかかって行く。
「卑怯者め!!
部下など使わず正々堂々と戦ったらどうだ!!」
「ふん。私と戦うのに五人も六人もぞろぞろと仲間を
連れて来た貴様らに、そんな事を言われたくはないな」
うむ。ごもっとも。
「この……放すでござるよ!!」
ござる鼬もまた小鬼に苦戦していた。
苦無で次々に小鬼の身体を切り裂いているが、
奴ら再生能力まで持っておるのか、
全く怯む事なく次々にござるの身体に掴みかかって行く。
「卑怯者め!!
部下など使わず正々堂々と戦ったらどうだ!!」
「ふん。私と戦うのに五人も六人もぞろぞろと仲間を
連れて来た貴様らに、そんな事を言われたくはないな」
うむ。ごもっとも。