ここに作品タイトル等を記入
更新日:2023/09/30 Sat 19:55:08
「ふぅ……こんなもんかな……。」
青白い月光が開け放った窓から差し込む館の一部屋で、ふぅ、と赤と黒のツートンカラーの髪の小柄な少女…レティシアが呟く。
彼女の目の前に広がるのは来客用に綺麗に掃除され、綺麗に整理整頓された部屋だ。
「ふぅん。綺麗になったね。でもボクとしてはもう一アクセント欲しいところだね。」
鈴を転がしたような、少し軽い口調で“レティシア”が言うと、何処からか取り出した一輪の真っ赤な薔薇を机の花瓶に差す。
「相変わらずキザだな、お前。」
それを“レティシア”が何処か荒々しい口調で揶揄うように言う。
「ま、キミにはこの美的センスが分からないかな?」
「んだと?」
「ちょ、ちょっと。喧嘩はやめて欲しいな。」
喧嘩腰になる“二人”にレティシアが割って入る。グルルと互いを牽制し合う二人をどうしたものかとレティシアが困っていると。
「お邪魔しまーす、蒼海でーす!」
玄関から客人の少女、蒼海マコトの声がする。その声にレティシアは少し驚いた後胸を押さえ。
「……見てても良いけど、しばらく静かにしててね…?」
レティシアがそう呟くと“二人”は渋々と言った具合で静かにする。
“二人”が静かになったのを確認してから、レティシアは部屋から出ると、入り口でキョロキョロしている蒼海に声をかける。
「…マコト。こっち。」
「あ!レティシアさん!」
レティシアが声をかけるとマコトが手を振りながらこちらへ笑顔を向け、レティシアの方へと向かってくる。
彼女は上がって来たマコトを部屋へと案内する。
「レティシアさん、先日はありがとうございます!お礼の、パン持って来ました!」
「……ん、お茶入れるからそこに座って。」
そう言うとレティシアはビニール袋いっぱいのパンを持ったマコトに“二つ”しかない席に着くように勧めるのだった。
青白い月光が開け放った窓から差し込む館の一部屋で、ふぅ、と赤と黒のツートンカラーの髪の小柄な少女…レティシアが呟く。
彼女の目の前に広がるのは来客用に綺麗に掃除され、綺麗に整理整頓された部屋だ。
「ふぅん。綺麗になったね。でもボクとしてはもう一アクセント欲しいところだね。」
鈴を転がしたような、少し軽い口調で“レティシア”が言うと、何処からか取り出した一輪の真っ赤な薔薇を机の花瓶に差す。
「相変わらずキザだな、お前。」
それを“レティシア”が何処か荒々しい口調で揶揄うように言う。
「ま、キミにはこの美的センスが分からないかな?」
「んだと?」
「ちょ、ちょっと。喧嘩はやめて欲しいな。」
喧嘩腰になる“二人”にレティシアが割って入る。グルルと互いを牽制し合う二人をどうしたものかとレティシアが困っていると。
「お邪魔しまーす、蒼海でーす!」
玄関から客人の少女、蒼海マコトの声がする。その声にレティシアは少し驚いた後胸を押さえ。
「……見てても良いけど、しばらく静かにしててね…?」
レティシアがそう呟くと“二人”は渋々と言った具合で静かにする。
“二人”が静かになったのを確認してから、レティシアは部屋から出ると、入り口でキョロキョロしている蒼海に声をかける。
「…マコト。こっち。」
「あ!レティシアさん!」
レティシアが声をかけるとマコトが手を振りながらこちらへ笑顔を向け、レティシアの方へと向かってくる。
彼女は上がって来たマコトを部屋へと案内する。
「レティシアさん、先日はありがとうございます!お礼の、パン持って来ました!」
「……ん、お茶入れるからそこに座って。」
そう言うとレティシアはビニール袋いっぱいのパンを持ったマコトに“二つ”しかない席に着くように勧めるのだった。
窓越しに友達も会話しながら下校する少女を見ながら、デスクに座って頬杖をつく大松が資料とにらめっこしている邦治に話しかける。
「いやー、若いねぇ。歳取ると若い子達が羨ましいよ。」
「そうですね。」
「お前アレくらいの時何してた?」
「何って……普通に部活やって、遊んでましたよ。」
「お前話広げるの下手くそだなぁ。」
「自分、不器用ですので……」
なんて言いながらも、くっくっと笑う大松に邦治は呆れたように。
「それに、若い頃なんて思い出したくもない事もありますよ。先日のあの子達のように、怒られた事の方が多いかもしれない。」
「まぁ、若さ故の過ちって奴がねぇ。」
邦治が言った“あの子達”お聞いて大松は山の廃墟に入り込んで不審者に追われた四人を思い出す。
嘘かとも疑ったが、三人の恐慌具合はとても演技とは思えなかった。それにしては、追われたと思わしき青い髪の子……蒼海マコトと言ったか、彼女はえらくあっけからんとしていたが。
一応彼女達四人を保護して、それぞれの家に送り届けたが、警察ごとになったのだ。親の焦り具合と心配そうな顔を見れば、自分達が去った後こってりと絞られた事だろう。
まぁ、これに懲りて危険な場所に行かないようにしてくれればよいのだが。
なんて邦治が思っていると、大松が時計を見て、言う。
「おっ、そろそろ見回りの時間や。いけるか?」
「了解です。」
邦治は立ち上がると、帽子やベストを着込み、大松に続く。
警察署を出て、何となく背伸びをした邦治が見上げた空は入道雲がモクモクと浮かぶ青空が広がっていた。
「いやー、若いねぇ。歳取ると若い子達が羨ましいよ。」
「そうですね。」
「お前アレくらいの時何してた?」
「何って……普通に部活やって、遊んでましたよ。」
「お前話広げるの下手くそだなぁ。」
「自分、不器用ですので……」
なんて言いながらも、くっくっと笑う大松に邦治は呆れたように。
「それに、若い頃なんて思い出したくもない事もありますよ。先日のあの子達のように、怒られた事の方が多いかもしれない。」
「まぁ、若さ故の過ちって奴がねぇ。」
邦治が言った“あの子達”お聞いて大松は山の廃墟に入り込んで不審者に追われた四人を思い出す。
嘘かとも疑ったが、三人の恐慌具合はとても演技とは思えなかった。それにしては、追われたと思わしき青い髪の子……蒼海マコトと言ったか、彼女はえらくあっけからんとしていたが。
一応彼女達四人を保護して、それぞれの家に送り届けたが、警察ごとになったのだ。親の焦り具合と心配そうな顔を見れば、自分達が去った後こってりと絞られた事だろう。
まぁ、これに懲りて危険な場所に行かないようにしてくれればよいのだが。
なんて邦治が思っていると、大松が時計を見て、言う。
「おっ、そろそろ見回りの時間や。いけるか?」
「了解です。」
邦治は立ち上がると、帽子やベストを着込み、大松に続く。
警察署を出て、何となく背伸びをした邦治が見上げた空は入道雲がモクモクと浮かぶ青空が広がっていた。
「キミの口に合うか、分からないけど。」
レティシアはそう言うと白磁のティーポットからカップに紅茶を注ぐ。弧を描いてカップに注がれる紅茶からベリー系の甘酸っぱい匂いがマコトの鼻腔をくすぐる。
「ありがとうございます!」
そう言うと、マコトは何の躊躇いもなく、グイッと飲む。そして静かにカップを下ろすと。
「熱い!!けど美味しいです!」
堂々と言い放つ彼女にレティシアは少し顔を引き攣らせながら、同じく自分も紅茶を口につけ、言う。
「う、うん。そりゃ、淹れたてだからね……あの、火傷しないよう、ゆっくり飲んでね?」
「はい!」
元気よく返事をするマコト。しばらく紅茶を啜る音が室内に響いた後、静寂を破るようにかしこまったように背筋をピンと伸ばしてマコトが言う。
「あの、先日は助けて頂いてありがとうございます!レティシアさんがいなかったら、私、どうなってたか…。」
「い、いいよ。気にしなくて。私、このベリーのパンが食べたかっただけだし。」
そう言って、レティシアはマコトが持って来たパンをチラと見る。
「ベリーがお好きなんですか?」
「う、うん。……私、ドラキュリアだけど、血が苦手だから。」
何処か恥ずかしそうにレティシアが呟く。
「へー、そうなんですね。ところで、質問良いですか?」
相槌を打った後、挙手してマコトは尋ねる。
「?何?」
「その、ドラキュリアって何です?昨日の女の人も、自分はドラキュリアだー、とか言ってたけど。」
マコトの質問にレティシアは鳩が豆鉄砲を喰らったような、キョトンとした顔をした後。
「あっ、そっか。そうだよね。説明してなかったよね。」
レティシアはそう言うと、コホンと咳払いをして。
「“ドラキュリア”って言うのは、私達の種族名。キミが“ニンゲン”って言うカテゴリに含まれるのと同じ。」
「ほー。」
「“ドラキュリア”の特徴は“ニンゲン”と同じ身体的特徴を持つけど、絶対的な違いは“眼の色が左右で違う”ことと、“エヴェイユ・プリュリルが生えている”ことかな。」
「え、エヴェ……なんて?」
「この角のこと。」
レティシアはそう言うと彼女の頭から生えている眼のような水晶が輝く角をピコピコと動かす。
「へー、その角そんな名前なんですね。」
「これから放つ超音波で目を閉じても地形を把握したり、技や吸い取った“オードヴィ”の制御に必要なの。」
「“オードヴィ”?」
マコトがキョトンとして尋ねると。
「私達ドラキュリアは他の生命体から“オードヴィ”、つまりは生命エネルギーを吸い取って、自分の力にする事が出来るの。」
「えっ、じゃあ昨日のドラキュリアは…」
「多分、キミから“オードヴィ”を吸い取ろうとしてたと思う。」
「あの、ちなみに吸い取る方法って。」
マコトの質問にレティシアはキラリと光る、鋭い牙を口から覗かせると。
「貴方の身体にこの牙を突き立てて、血ごと“オードヴィ”を吸い取ってた思う。“オードヴィ”は血に多く含まれてるから。」
それを聞いたマコトはゾッとする。
「つまり……あのままだと血を吸われてミイラになってたってこと…!?」
「うーん、流石によっぽどお腹空いてないとミイラになるほどは吸わないかな……太っちゃうし。」
「そんな軽いノリで……あっ、でもレティシアさん血が苦手なんですよね?」
「うん…どうしても昔から無理でね。あの鉄臭さとエグ味がどうにも合わなくて…ベリーとか果物の方がよっぽど美味しいよ。」
「その、ドラキュリアなのに血を吸わなくて大丈夫なんですか?」
マコトの質問にレティシアは少し困ったように笑うと。
「私達は別に絶対に血を吸わなきゃ生きていけないワケじゃないよ。まぁ、吸った方が強くはなるけど…」
レティシアが呟くように言うと、紅茶を啜る。マコトはそうか、と納得する。そして、ふとあの女性、ベレニスが言っていた事を思い出す。
「そう言えば、あのドラキュリアが言ってた“ル”の自分が“ノ”にどうこう言ってたけど、アレは?」
マコトが尋ねると、レティシアは少し気難しい顔になると。
「……ドラキュリアは身分を重要視する階級社会なの。そして、名前にその身分を示す“ノ”や“ル”が入る。例えば私の名前、レティシア・ノ・ロクムみたいにね。」
「へー……ちなみに“ノ”はどれくらいの地位なんですか?」
マコトが何の気なしに尋ねると、レティシアは苦笑しながら。
「階級は上から“ヴィ”、“ブル”、“ル”、“ジョ”、“ブロ”、“ノ”だから“ノ”の私は1番下だよ。ただの一般人。」
「え!?……それだと昨日の人は…」
「うん、三番目に偉い人……だね。」
困ったように笑うレティシアにマコトは血相を変える。
「えっ、えっ!?良いの!?助けて貰ってなんだけど、そんな偉い人蹴り飛ばしちゃって…!?」
「うーん……それはあまり気にしなくて良いかなぁ……」
「な、なんで!?」
焦ったようなマコトと対照的にどこか呆気からんとした様子で彼女は答える。
「…ドラキュリアはプライドが高いから。多分死んでも他人に下の階級のドラキュリアにボコボコにされたなんて、言わないだろうし。しばらくは大丈夫だと思う。」
「そ、そんなものなの……?」
一抹の不安を抱えながら、紅茶に口をつけようとして気づく。どうやら話に夢中になっていたせいで、いつの間にか飲み干してしまっていたようだ。
「……おかわり、いる?」
「あ、貰います。」
レティシアはそう言うと、空になったティーカップに紅茶を注ぐ。カップを満たす琥珀色の液体を見ながら、ふと彼女は呟く。
「…でも、まさかホントに来るなんて思わなかったな。」
「へ?」
マコトが間の抜けたような声を上げる。そんな彼女にレティシアは苦笑しながら言う。
「いや、だってあんな事があったんだよ?…もう関わりたくない、近づきたくない、って思うのが普通じゃない?」
「え?」
「え?」
何故か困惑気味の彼女に、逆に困惑するレティシア。すると、彼女は真っ直ぐな瞳をレティシアに向けながら。
「レティシアさんのこと怖いなんて思ってないよ?だって、レティシアさん良い人だもん。」
「……へ?」
「だって、私を助けてくれたんだもの。絶対悪い人じゃないって、私ピンッときたの!」
マコトの言葉にレティシアは顔を真っ赤にして、言葉に詰まる。
「えっ、へっ……」
「私、昔から人を見る目はある、って言われてるから間違いないよ!」
それでも構わずキラキラとした視線を向ける彼女にレティシアが戸惑っているとピロピロと電子音が鳴り響く。
「あっ、ごめんなさい。」
マコトはレティシアに断りを入れて、通話に出る。
「もしもし?お母さん?今?えーっと、友達のとこ。うんうん。あー、はい。分かった。はーい。」
マコトはそう言って通話を切ると、レティシアに向き直り、手を合わせて頭を下げる。
「ごめんなさいっ、お母さんから帰ってくるよう言われちゃったから、今日はここで失礼します!」
「あ……うん。じゃあお開きにしようか。」
「ホントにごめんなさい!でも、楽しかったです!また来ますね!」
そう言うとマコトは立ち上がり、屋敷を後にする。その姿を窓から見ながら、ふとレティシアは空を見上げる。
空は日が沈みかけ、青から紅蓮に染められていく。それを見た彼女は呟く。
「……また来る、かぁ。」
そう言うとレティシアは少し顔を綻ばせてティーカップを片付け始めた。
レティシアはそう言うと白磁のティーポットからカップに紅茶を注ぐ。弧を描いてカップに注がれる紅茶からベリー系の甘酸っぱい匂いがマコトの鼻腔をくすぐる。
「ありがとうございます!」
そう言うと、マコトは何の躊躇いもなく、グイッと飲む。そして静かにカップを下ろすと。
「熱い!!けど美味しいです!」
堂々と言い放つ彼女にレティシアは少し顔を引き攣らせながら、同じく自分も紅茶を口につけ、言う。
「う、うん。そりゃ、淹れたてだからね……あの、火傷しないよう、ゆっくり飲んでね?」
「はい!」
元気よく返事をするマコト。しばらく紅茶を啜る音が室内に響いた後、静寂を破るようにかしこまったように背筋をピンと伸ばしてマコトが言う。
「あの、先日は助けて頂いてありがとうございます!レティシアさんがいなかったら、私、どうなってたか…。」
「い、いいよ。気にしなくて。私、このベリーのパンが食べたかっただけだし。」
そう言って、レティシアはマコトが持って来たパンをチラと見る。
「ベリーがお好きなんですか?」
「う、うん。……私、ドラキュリアだけど、血が苦手だから。」
何処か恥ずかしそうにレティシアが呟く。
「へー、そうなんですね。ところで、質問良いですか?」
相槌を打った後、挙手してマコトは尋ねる。
「?何?」
「その、ドラキュリアって何です?昨日の女の人も、自分はドラキュリアだー、とか言ってたけど。」
マコトの質問にレティシアは鳩が豆鉄砲を喰らったような、キョトンとした顔をした後。
「あっ、そっか。そうだよね。説明してなかったよね。」
レティシアはそう言うと、コホンと咳払いをして。
「“ドラキュリア”って言うのは、私達の種族名。キミが“ニンゲン”って言うカテゴリに含まれるのと同じ。」
「ほー。」
「“ドラキュリア”の特徴は“ニンゲン”と同じ身体的特徴を持つけど、絶対的な違いは“眼の色が左右で違う”ことと、“エヴェイユ・プリュリルが生えている”ことかな。」
「え、エヴェ……なんて?」
「この角のこと。」
レティシアはそう言うと彼女の頭から生えている眼のような水晶が輝く角をピコピコと動かす。
「へー、その角そんな名前なんですね。」
「これから放つ超音波で目を閉じても地形を把握したり、技や吸い取った“オードヴィ”の制御に必要なの。」
「“オードヴィ”?」
マコトがキョトンとして尋ねると。
「私達ドラキュリアは他の生命体から“オードヴィ”、つまりは生命エネルギーを吸い取って、自分の力にする事が出来るの。」
「えっ、じゃあ昨日のドラキュリアは…」
「多分、キミから“オードヴィ”を吸い取ろうとしてたと思う。」
「あの、ちなみに吸い取る方法って。」
マコトの質問にレティシアはキラリと光る、鋭い牙を口から覗かせると。
「貴方の身体にこの牙を突き立てて、血ごと“オードヴィ”を吸い取ってた思う。“オードヴィ”は血に多く含まれてるから。」
それを聞いたマコトはゾッとする。
「つまり……あのままだと血を吸われてミイラになってたってこと…!?」
「うーん、流石によっぽどお腹空いてないとミイラになるほどは吸わないかな……太っちゃうし。」
「そんな軽いノリで……あっ、でもレティシアさん血が苦手なんですよね?」
「うん…どうしても昔から無理でね。あの鉄臭さとエグ味がどうにも合わなくて…ベリーとか果物の方がよっぽど美味しいよ。」
「その、ドラキュリアなのに血を吸わなくて大丈夫なんですか?」
マコトの質問にレティシアは少し困ったように笑うと。
「私達は別に絶対に血を吸わなきゃ生きていけないワケじゃないよ。まぁ、吸った方が強くはなるけど…」
レティシアが呟くように言うと、紅茶を啜る。マコトはそうか、と納得する。そして、ふとあの女性、ベレニスが言っていた事を思い出す。
「そう言えば、あのドラキュリアが言ってた“ル”の自分が“ノ”にどうこう言ってたけど、アレは?」
マコトが尋ねると、レティシアは少し気難しい顔になると。
「……ドラキュリアは身分を重要視する階級社会なの。そして、名前にその身分を示す“ノ”や“ル”が入る。例えば私の名前、レティシア・ノ・ロクムみたいにね。」
「へー……ちなみに“ノ”はどれくらいの地位なんですか?」
マコトが何の気なしに尋ねると、レティシアは苦笑しながら。
「階級は上から“ヴィ”、“ブル”、“ル”、“ジョ”、“ブロ”、“ノ”だから“ノ”の私は1番下だよ。ただの一般人。」
「え!?……それだと昨日の人は…」
「うん、三番目に偉い人……だね。」
困ったように笑うレティシアにマコトは血相を変える。
「えっ、えっ!?良いの!?助けて貰ってなんだけど、そんな偉い人蹴り飛ばしちゃって…!?」
「うーん……それはあまり気にしなくて良いかなぁ……」
「な、なんで!?」
焦ったようなマコトと対照的にどこか呆気からんとした様子で彼女は答える。
「…ドラキュリアはプライドが高いから。多分死んでも他人に下の階級のドラキュリアにボコボコにされたなんて、言わないだろうし。しばらくは大丈夫だと思う。」
「そ、そんなものなの……?」
一抹の不安を抱えながら、紅茶に口をつけようとして気づく。どうやら話に夢中になっていたせいで、いつの間にか飲み干してしまっていたようだ。
「……おかわり、いる?」
「あ、貰います。」
レティシアはそう言うと、空になったティーカップに紅茶を注ぐ。カップを満たす琥珀色の液体を見ながら、ふと彼女は呟く。
「…でも、まさかホントに来るなんて思わなかったな。」
「へ?」
マコトが間の抜けたような声を上げる。そんな彼女にレティシアは苦笑しながら言う。
「いや、だってあんな事があったんだよ?…もう関わりたくない、近づきたくない、って思うのが普通じゃない?」
「え?」
「え?」
何故か困惑気味の彼女に、逆に困惑するレティシア。すると、彼女は真っ直ぐな瞳をレティシアに向けながら。
「レティシアさんのこと怖いなんて思ってないよ?だって、レティシアさん良い人だもん。」
「……へ?」
「だって、私を助けてくれたんだもの。絶対悪い人じゃないって、私ピンッときたの!」
マコトの言葉にレティシアは顔を真っ赤にして、言葉に詰まる。
「えっ、へっ……」
「私、昔から人を見る目はある、って言われてるから間違いないよ!」
それでも構わずキラキラとした視線を向ける彼女にレティシアが戸惑っているとピロピロと電子音が鳴り響く。
「あっ、ごめんなさい。」
マコトはレティシアに断りを入れて、通話に出る。
「もしもし?お母さん?今?えーっと、友達のとこ。うんうん。あー、はい。分かった。はーい。」
マコトはそう言って通話を切ると、レティシアに向き直り、手を合わせて頭を下げる。
「ごめんなさいっ、お母さんから帰ってくるよう言われちゃったから、今日はここで失礼します!」
「あ……うん。じゃあお開きにしようか。」
「ホントにごめんなさい!でも、楽しかったです!また来ますね!」
そう言うとマコトは立ち上がり、屋敷を後にする。その姿を窓から見ながら、ふとレティシアは空を見上げる。
空は日が沈みかけ、青から紅蓮に染められていく。それを見た彼女は呟く。
「……また来る、かぁ。」
そう言うとレティシアは少し顔を綻ばせてティーカップを片付け始めた。
人通りの少ない通り道を、スーツ姿の中年サラリーマンが歩く。すると、向かい側から白と黒が入り混じった長い髪に、これまた黒白のオッドアイの少女が歩いてくる。
俗に言う白いフリルが沢山ついた黒いドレス……俗に言う“ゴスロリ”に身を包み、耳にはピアスをじゃらじゃらとつけた中々にインパクトのある出立ちに男性は思わず奇異の視線を向けてしまう。
しかし、そんな視線を向けられたにも関わらず、少女はニコッと笑顔を浮かべたまま彼へと近づいていく。
そして少女は男性の目の前に来ると、彼をまるで値踏みでもするかのようにジロジロと見つめる。
「……何ですか?」
少し不気味かつ不躾な態度に男性が少女に尋ねると、少女はふむ、と何か納得したように顔を上げ。
「今日の晩餐は、貴方に決めたわ。」
少女が放ったその言葉の意味を測りかねた男性が質問をするより先に少女の頭からギョロリとこちらからを睨め付けるような水晶を持った角が現れ、少女の背から赤黒い蝙蝠のような翼が生える。
「たまには、脂が乗った“プリシア”も乙なもの、ね。」
そう言って男性を見つめる彼女の眼は、既に目の前の捕食者の物へと変わっている。突然の事に男の思考が止まりかけるが、その瞳に本能で恐怖を感じた男性は悲鳴を上げながら逃げようとする。
「おっと。」
だが、彼女は逃げようと駆け出す彼の脚に腕から赤黒い鞭のようなものを伸ばし、絡ませる。
脚を取られ、男性は勢いよく転ぶ。そんな彼に、余裕綽々と言った具合にゆっくりと歩いて彼女が近づく。
「逃げちゃダメよ。このエリーズ・ジョ・カノムジャークの糧になれるのよ?むしろ光栄に思うべきだわ。」
彼女は舌舐めずりをする。逃れることの出来ない理不尽な恐怖を前に、男性に残されたのは恐怖の悲鳴を上げることのみであった。
俗に言う白いフリルが沢山ついた黒いドレス……俗に言う“ゴスロリ”に身を包み、耳にはピアスをじゃらじゃらとつけた中々にインパクトのある出立ちに男性は思わず奇異の視線を向けてしまう。
しかし、そんな視線を向けられたにも関わらず、少女はニコッと笑顔を浮かべたまま彼へと近づいていく。
そして少女は男性の目の前に来ると、彼をまるで値踏みでもするかのようにジロジロと見つめる。
「……何ですか?」
少し不気味かつ不躾な態度に男性が少女に尋ねると、少女はふむ、と何か納得したように顔を上げ。
「今日の晩餐は、貴方に決めたわ。」
少女が放ったその言葉の意味を測りかねた男性が質問をするより先に少女の頭からギョロリとこちらからを睨め付けるような水晶を持った角が現れ、少女の背から赤黒い蝙蝠のような翼が生える。
「たまには、脂が乗った“プリシア”も乙なもの、ね。」
そう言って男性を見つめる彼女の眼は、既に目の前の捕食者の物へと変わっている。突然の事に男の思考が止まりかけるが、その瞳に本能で恐怖を感じた男性は悲鳴を上げながら逃げようとする。
「おっと。」
だが、彼女は逃げようと駆け出す彼の脚に腕から赤黒い鞭のようなものを伸ばし、絡ませる。
脚を取られ、男性は勢いよく転ぶ。そんな彼に、余裕綽々と言った具合にゆっくりと歩いて彼女が近づく。
「逃げちゃダメよ。このエリーズ・ジョ・カノムジャークの糧になれるのよ?むしろ光栄に思うべきだわ。」
彼女は舌舐めずりをする。逃れることの出来ない理不尽な恐怖を前に、男性に残されたのは恐怖の悲鳴を上げることのみであった。
「……ん?」
「おう、永瀬。どうした?」
何かに気づいたのか、辺りを見回す邦治に大松が問いかける。
「…いや、今どこからか悲鳴のようなものが聞こえた気がして。」
邦治の言葉に大松が耳をすませるが、彼の耳には何も聞こえて来ない。
「悲鳴?俺には聞こえんかったが……方向はわかるか?」
「はい。…恐らくこっちです。」
永瀬が歩を進めると、大松もそれに続く。
「お前の聞き間違いやったらええんやけどなぁ。」
「俺も、そう願っていますよ。」
そう言いながらも、内心何事もなければ良いが…と願いつつ二人は人通りの少ない路地へと進んで行くのだった。
「おう、永瀬。どうした?」
何かに気づいたのか、辺りを見回す邦治に大松が問いかける。
「…いや、今どこからか悲鳴のようなものが聞こえた気がして。」
邦治の言葉に大松が耳をすませるが、彼の耳には何も聞こえて来ない。
「悲鳴?俺には聞こえんかったが……方向はわかるか?」
「はい。…恐らくこっちです。」
永瀬が歩を進めると、大松もそれに続く。
「お前の聞き間違いやったらええんやけどなぁ。」
「俺も、そう願っていますよ。」
そう言いながらも、内心何事もなければ良いが…と願いつつ二人は人通りの少ない路地へと進んで行くのだった。
「この道を通れば近道のハズ…!」
自転車を漕ぎながら、マコトは一刻も早く帰るべく、人通りが少ないものの、家へと早く帰れる裏道を走っていた。
(ここちょっと人少ないから不気味なんだよねぇ…)
なんて思いながらも、彼女が自転車を走らせていたその時。
何処からともなく、誰かの悲鳴が聞こえてくる。
「え?え?何?」
突然のことにマコトは驚きながらも、一旦自転車を止める。そして、声がした方に向かうか、一瞬逡巡するが。
(でも、もしかしたら何かあったのかも……)
マコトの中で、恐怖よりもしかしたら、何かあったかもしれない人を思いやる心が勝った。
声が聞こえた方を頼りにマコトは自転車を走らせる。さそしてものの数分で目星をつけた場所へと辿り着く。
辺りを見回すと、マコトの視線の先に、倒れている男性とそれに寄り添うように前屈みに座っている少女の後ろ姿が見える。
「あ、あの。大丈夫ですか!?」
倒れている男性に何かあったのか、寄り添っている少女が心配になり、声をかける。
マコトに声をかけられた少女は、声をかけられた事で彼女の存在に気付いたのか、こちらへと振り返る。
そしてその顔を見たマコトはギョッとしてその歩を止める。
何故なら、彼女の口の周りは血でベッタリと汚れており、何よりその頭の角と左右で異なる色の眼は、先程レティシアから聞いた“ドラキュリア”の特徴そのものだったからだ。
驚きのあまり、身体が強張り、動けないマコトを見た少女、エリーズは舌を出して口の周りの血を舐め取ると、マコトへと視線を向ける。
「あらあら。今日はツイてるわ。まさかメインディッシュだけじゃなくてデザートまでついてくるなんて。」
エリーズは立ち上がると、今度は標的をマコトに定め、彼女へと近づこうとする。
近づいてくる少女の姿をした怪物に対し、マコトの頭の中で本能は逃げろ、と警鐘を鳴らすが、恐怖で足が竦み、彼女が動けないでいると。
「動くなっ!その場で止まれ!」
男の声が響く。二人が視線を向けた先には、二人の男性警察官の姿があった。
「……チッ。余計なものまでついてきてるわね。」
「…その、口元。何があったか署で聞かせて貰おう。」
倒れた男性、怯える少女、そして口元を血に染めた少女を見た警察官、邦治が何となく事情を察して、少女、エリーズへと近づく。
だが、露骨に不満そうな態度を隠しもしないエリーズを観察していた大松が、目を見開く。
「永瀬!ヤバい!避けろ!」
「ッ!」
大松が叫ぶと同時に、エリーズが腕を振るい、赤黒い鞭が邦治と大松に向かって飛ぶ。
大松の言葉で咄嗟に身を屈めた邦治はその一撃を回避する事が出来たが、大松は回避しきれず、防御の構えこそ取るが、鞭が直撃し、大きく吹き飛ばされ、道路へと叩きつけられる。
「ごっ……!」
「大松さん!」
邦治が大松に向かって叫ぶ。だが、エリーズはいつの間にか邦治のすぐ側に来ていた。
「なっ」
「貴方、邪魔だから秒で死んでくれる?」
エリーズが拳を振るう。その拳が身体に直撃する寸前に邦治は素早く腕を挟み込んで防御するが、その細腕のどこにそんな力があるのか、攻撃を受けた邦治は数歩後退させられ、しかも防御した腕がビリビリと痺れる。
(何と言う力だ……!?これが少女の力か…!?)
「チッ、しぶといなぁ。」
エリーズはまたもや赤黒い鞭を振るう。振るわれた鞭は今度は激しく邦治を打ち据え、あまりの衝撃に邦治は地面に倒れる。
「ぐっ……!?」
「チッ、無駄な時間を食ったわね。」
倒れた邦治に背を向け、エリーズはマコトへと向き直る。
「……!」
ここにいてはまずいと、強張る脚を無理矢理引きずり、マコトは走り出す。
「逃す訳ないじゃない。」
逃げようとするマコトを捉えようと彼女を鞭で捕まえようとするが、ガクンっと何かが引っ掛かったような感覚があり、鞭が動かない。
「何?」
エリーズが鞭の先を見つめると、そこには先程激しく打ち据えられ、倒れたはずの邦治が、地面に倒れながらも、エリーズの鞭にしがみついて、その攻撃を妨害していた。
「なっ」
「…俺の前で、誰かを傷つけることは許さん…!」
「なんなのよ貴方…!」
エリーズが力任せに振り払おうとするが、邦治は死に物狂いでそれを抑えにかかり、その結果、彼女は満足に鞭を振るう事が出来ない状態に陥る。
「チィッ!少しはしたないですが…!」
そう言うと、エリーズが口に手を当てると、ブッと黒い粘性の塊を噴き出す。それはマコトの足元に着弾すると、地面に吸着し、拘束する。
「きゃっ!?」
「何っ」
急に足元を固定され、勢い余って倒れ込んだ彼女を見て、邦治が驚くと同時にエリーズは邦治を思い切り蹴り飛ばす。
「がっ…」
「全く…“プリシア”ごときが私に刃向かったって数秒程度しか持たないわよ。」
そう吐き捨てると、エリーズは鞭をしまい、何とか逃れようとする彼女へ視線を移す。
「わっ、何これ取れない…!」
何とか足に引っ付いた粘液を取ろうとするが、岩のように硬く固まったそれはマコトではまったく取れない。エリーズは慌てる彼女を見て、獲物を甚振る猫のように薄ら笑いを浮かべながら、ゆっくりと近づく。
「邪魔が入ったけど、その分ゆっくり、ゆぅ〜くり食べて差し上げますわ。」
加虐的な笑みを浮かべるエリーズ。徐々に近づいてくる恐怖にマコトは目を閉じると、大声で叫ぶ。
「誰か!誰か助けてー!」
一縷の望みを賭けた絶叫。エリーズはそんな彼女を嘲笑う。
「はっ、馬鹿ね。叫んだって誰も来やしないし、仮に“プリシア”風情が二、三人来たところで…」
エリーズがそう言いかけた次の瞬間、空から紫の影が降り立つと同時に神速が如き速さでエリーズを思い切り蹴り付ける。
「何──ッ!!?」
突然の乱入者に対応出来なかったエリーズが吹き飛ばされながら目を丸くし、その人影の姿を見たマコトが目を輝かせる。
「レティシアさん!」
乱入者、レティシアはマコトへと振り返ると心配そうに尋ねる。
「悲鳴が聞こえたから来てみたら……大丈夫?怪我はしてない?」
「うん、ちょっと擦りむいちゃったけど。」
レティシアにマコトはエヘヘと怪我をしたところを振って、健在であると伝えようとする。
しかし、マコトの怪我を見た瞬間、ドクンッとレティシアは自分の心臓が高鳴るのを感じる。
マコトの擦りむいた箇所から少量ではあるが、血が流れている。
流れる真紅の液体。それがレティシアには宝石のように煌めいて見え、その鼻腔を甘い香りが擽る。目が離せない。口の中に唾が溢れる。思わず気分が高揚し、一つの思考がレティシアを支配する。
“あぁ──なんて美味しそうなんだろう。”
「レティシアさん!」
だが、マコトが青い顔をして叫ぶと同時に、レティシアはハッと我に返り、自分に向けて飛んでくる鞭の存在に気づくと、倒れ込むようにしてその攻撃をかわす。
「まさか“同族”に邪魔されるなんて思わなかったわ。獲物の横取りは感心しないよ?」
額に青筋を浮かべながらこちらを笑顔で睨むエリーズ。
(……今、私は何を……いや、今は……。)
レティシアはパンっと両手で頬を叩いて気を取り直すと、彼女に振り向いて構える。
臨戦態勢に入った彼女を見て、エリーズの怒りはさらに高まる。
「そう、あくまでもそういう態度を取るんだ。なら…」
エリーズはそう言うと両手の鞭をしならせ、レティシアへと飛ばす。
「痛い目を見ても知らないわよ!!」
空気を切り裂き、しなる鞭をレティシアは身を屈めて避ける。鞭を掻い潜りながらレティシアが近づこうとしたその時。
「させるか!」
近づこうとしたレティシアに対し、エリーズが鞭を巧みに操り、横から蛇のように鞭がレティシアに襲いかかる。
「ッ」
レティシアはそれに気づくと間一髪、跳躍してその攻撃を避ける。
「逃さないわァッ!」
空中へと逃げたレティシアにエリーズはさらに鞭を飛ばすが、レティシアは空中で錐揉み回転をして、続く追い討ちを回避しながら地面へと降り立つ。
「厄介な鞭……」
「フフッ。見込み違いだったようね。けど。後悔後先立たず──恨むなら自分の愚かさを恨むのね!」
そう言うとエリーズはレティシアに向けて鞭を飛ばす。音を立てて唸り、向かってくる鞭を見据えるとレティシアはフゥと一息ついて。
「……はぁ、仕方ない。」
そう言うと両手をクロスさせ、力を込めると両腕から赤黒い蝙蝠の翼状の刃が飛び出る。
「一気に片付ける。」
レティシアが地面を切って爆発的な加速力でスタートを切る。
当然迎撃の為に振るわれた鞭がレティシアへと向かうが、レティシアはそれに対し、腕を振るい、腕の刃が目にも止まらぬスピードで、鞭をドンドンと切り裂いていく。
「“小夜曲・血斬”(セレナーデ=ブラム・トラッシェント)」
鞭を細切れにしながら突進してくるレティシアに、負けじとエリーズも鞭を振るうが、振るった鞭は振るった先からレティシアによって細切れにされ、無力化される。
「んなっ、そんなっ…!?」
そしてとうとうレティシアは鞭を完全に無力化し、エリーズの目の前に現れる。
「このっ」
エリーズが苦し紛れに腕を振るが、レティシアはそれを腕で防御し、叩き落とすと、その顎に掌底を叩き込む。
「ぐべっ!?」
顎を打ち上げられ、仰け反り、隙だらけになった胴体にレティシアは怒涛の勢いでジャブを連打で叩き込む。
「しっ!」
とてつもない勢いのラッシュを叩き込まれ、えづいて固まるエリーズをレティシアはさらに蹴り飛ばす。
「ぐべっ」
そのままエリーズは地面を滑るように倒れ込む。
「ぐっ、ぐっ……こんな、馬鹿な、私が一方的に…!?」
「……今すぐここを立ち去れば、もう攻撃しない。だから立ち去って。」
「何ですって……」
構えを解き、こちらを見下ろしながらそう言ってのけるレティシアに、エリーズは目を見開く。
最早目の前にいる相手は敵ですらないとでも言うのか。心底自分を馬鹿にしたような態度にエリーズの頭に一瞬で血が昇る。
「ちょっと上手くいったからって、調子に乗るなァッ!」
エリーズは一瞬で鞭を精製すると、レティシアに飛ばす。しかしレティシアは脚から蝙蝠の翼状の刃を精製すると、脚を振るう。その瞬間バスンッという音を立てて、鞭が切断される。
「なっ、」
「…忠告はしたよ。」
「ぐっ、このまま良いようにやられてたまるか!」
エリーズはそう言うと二つの鞭がより一層太く、大きくなり、レティシアへと向かっていく。
「“ブラム・ジュメレ・フエット”!!」
「レティシアさん!」
見るからに強力な一撃にマコトが叫ぶ。だが、レティシアは一言。
「……大丈夫。」
レティシアがそう言うと、脚から出現させた刃が赤黒い輝きを増していく。
「哀歌・血別“エレジア=ブラム・セパラシオン”」
向かってくる巨大な二振りの鞭に向かってレティシアは脚を振るい、彼女が振るった足から赤黒い刃が放たれる。
放たれた刃は二振りの鞭とぶつかる。しかし、二つの攻撃はぶつかり合い、一瞬拮抗したものの、刃が鞭に薄く斬り込んだのが見えた──次の瞬間バスンッと大きな音を立てて鞭が切断される。
「なっ」
エリーズが切断された鞭に呆気に取られた一瞬。その一瞬の間に、レティシアが迅雷の如き速さでエリーズまでの距離を侵略し、その射程内に彼女を捉えていた。
「なっ、速ッ」
「再演“アンコール”!」
エリーズが防御を取るより先に動いたレティシアの回し蹴りと共に繰り出した刃の一撃が彼女の身体を横一文字に斬り裂く。
レティシアの必殺の一撃を受け、エリーズは信じられない、と言った様に目を大きく見開き、切り裂かれた部位を見下ろす。
「そ、そんな。この私が手も足も……!?」
エリーズはそう言うと赤黒い霧となって霧散する。それを見届けたレティシアはふぅ、と一息つくとマコトの方へと振り返る。
「レティシアさん!」
「……待ってて、今自由にしてあげる。」
レティシアはマコトの方へと近づくと、彼女の足に絡みついている粘液を脚を振って軽い調子で蹴り壊す。
「ありがとうレティシアさん!」
「……ううん。気にしなくていいよ。」
レティシアは立ち上がって礼を言うマコトから目を背けながら言う。不思議そうに首を傾げるマコトをよそにレティシアは振り向くと。
「……それじゃあ、気をつけて帰って。私はもう、戻るから。」
レティシアはそれだけ言うと、マコトが返事を返すより先に月が浮かぶ夜空へと飛び去ってしまう。
「あっ……まだお礼言いたかったのに。」
彼女が飛び去った夜空を見上げてそうぼやくが、すぐにあっ、と声を出すと。
「あ、あぁ!そう言えば倒れた人達!大丈夫ですか!?」
マコトはそう声を上げて倒れている人々に駆け寄っていく。幸い倒れていた三人は気こそ失っていたが、マコトが声をかけると、少し呻いて意識を取り戻す。
その様子に彼女はホッと、安堵するのだった。
自転車を漕ぎながら、マコトは一刻も早く帰るべく、人通りが少ないものの、家へと早く帰れる裏道を走っていた。
(ここちょっと人少ないから不気味なんだよねぇ…)
なんて思いながらも、彼女が自転車を走らせていたその時。
何処からともなく、誰かの悲鳴が聞こえてくる。
「え?え?何?」
突然のことにマコトは驚きながらも、一旦自転車を止める。そして、声がした方に向かうか、一瞬逡巡するが。
(でも、もしかしたら何かあったのかも……)
マコトの中で、恐怖よりもしかしたら、何かあったかもしれない人を思いやる心が勝った。
声が聞こえた方を頼りにマコトは自転車を走らせる。さそしてものの数分で目星をつけた場所へと辿り着く。
辺りを見回すと、マコトの視線の先に、倒れている男性とそれに寄り添うように前屈みに座っている少女の後ろ姿が見える。
「あ、あの。大丈夫ですか!?」
倒れている男性に何かあったのか、寄り添っている少女が心配になり、声をかける。
マコトに声をかけられた少女は、声をかけられた事で彼女の存在に気付いたのか、こちらへと振り返る。
そしてその顔を見たマコトはギョッとしてその歩を止める。
何故なら、彼女の口の周りは血でベッタリと汚れており、何よりその頭の角と左右で異なる色の眼は、先程レティシアから聞いた“ドラキュリア”の特徴そのものだったからだ。
驚きのあまり、身体が強張り、動けないマコトを見た少女、エリーズは舌を出して口の周りの血を舐め取ると、マコトへと視線を向ける。
「あらあら。今日はツイてるわ。まさかメインディッシュだけじゃなくてデザートまでついてくるなんて。」
エリーズは立ち上がると、今度は標的をマコトに定め、彼女へと近づこうとする。
近づいてくる少女の姿をした怪物に対し、マコトの頭の中で本能は逃げろ、と警鐘を鳴らすが、恐怖で足が竦み、彼女が動けないでいると。
「動くなっ!その場で止まれ!」
男の声が響く。二人が視線を向けた先には、二人の男性警察官の姿があった。
「……チッ。余計なものまでついてきてるわね。」
「…その、口元。何があったか署で聞かせて貰おう。」
倒れた男性、怯える少女、そして口元を血に染めた少女を見た警察官、邦治が何となく事情を察して、少女、エリーズへと近づく。
だが、露骨に不満そうな態度を隠しもしないエリーズを観察していた大松が、目を見開く。
「永瀬!ヤバい!避けろ!」
「ッ!」
大松が叫ぶと同時に、エリーズが腕を振るい、赤黒い鞭が邦治と大松に向かって飛ぶ。
大松の言葉で咄嗟に身を屈めた邦治はその一撃を回避する事が出来たが、大松は回避しきれず、防御の構えこそ取るが、鞭が直撃し、大きく吹き飛ばされ、道路へと叩きつけられる。
「ごっ……!」
「大松さん!」
邦治が大松に向かって叫ぶ。だが、エリーズはいつの間にか邦治のすぐ側に来ていた。
「なっ」
「貴方、邪魔だから秒で死んでくれる?」
エリーズが拳を振るう。その拳が身体に直撃する寸前に邦治は素早く腕を挟み込んで防御するが、その細腕のどこにそんな力があるのか、攻撃を受けた邦治は数歩後退させられ、しかも防御した腕がビリビリと痺れる。
(何と言う力だ……!?これが少女の力か…!?)
「チッ、しぶといなぁ。」
エリーズはまたもや赤黒い鞭を振るう。振るわれた鞭は今度は激しく邦治を打ち据え、あまりの衝撃に邦治は地面に倒れる。
「ぐっ……!?」
「チッ、無駄な時間を食ったわね。」
倒れた邦治に背を向け、エリーズはマコトへと向き直る。
「……!」
ここにいてはまずいと、強張る脚を無理矢理引きずり、マコトは走り出す。
「逃す訳ないじゃない。」
逃げようとするマコトを捉えようと彼女を鞭で捕まえようとするが、ガクンっと何かが引っ掛かったような感覚があり、鞭が動かない。
「何?」
エリーズが鞭の先を見つめると、そこには先程激しく打ち据えられ、倒れたはずの邦治が、地面に倒れながらも、エリーズの鞭にしがみついて、その攻撃を妨害していた。
「なっ」
「…俺の前で、誰かを傷つけることは許さん…!」
「なんなのよ貴方…!」
エリーズが力任せに振り払おうとするが、邦治は死に物狂いでそれを抑えにかかり、その結果、彼女は満足に鞭を振るう事が出来ない状態に陥る。
「チィッ!少しはしたないですが…!」
そう言うと、エリーズが口に手を当てると、ブッと黒い粘性の塊を噴き出す。それはマコトの足元に着弾すると、地面に吸着し、拘束する。
「きゃっ!?」
「何っ」
急に足元を固定され、勢い余って倒れ込んだ彼女を見て、邦治が驚くと同時にエリーズは邦治を思い切り蹴り飛ばす。
「がっ…」
「全く…“プリシア”ごときが私に刃向かったって数秒程度しか持たないわよ。」
そう吐き捨てると、エリーズは鞭をしまい、何とか逃れようとする彼女へ視線を移す。
「わっ、何これ取れない…!」
何とか足に引っ付いた粘液を取ろうとするが、岩のように硬く固まったそれはマコトではまったく取れない。エリーズは慌てる彼女を見て、獲物を甚振る猫のように薄ら笑いを浮かべながら、ゆっくりと近づく。
「邪魔が入ったけど、その分ゆっくり、ゆぅ〜くり食べて差し上げますわ。」
加虐的な笑みを浮かべるエリーズ。徐々に近づいてくる恐怖にマコトは目を閉じると、大声で叫ぶ。
「誰か!誰か助けてー!」
一縷の望みを賭けた絶叫。エリーズはそんな彼女を嘲笑う。
「はっ、馬鹿ね。叫んだって誰も来やしないし、仮に“プリシア”風情が二、三人来たところで…」
エリーズがそう言いかけた次の瞬間、空から紫の影が降り立つと同時に神速が如き速さでエリーズを思い切り蹴り付ける。
「何──ッ!!?」
突然の乱入者に対応出来なかったエリーズが吹き飛ばされながら目を丸くし、その人影の姿を見たマコトが目を輝かせる。
「レティシアさん!」
乱入者、レティシアはマコトへと振り返ると心配そうに尋ねる。
「悲鳴が聞こえたから来てみたら……大丈夫?怪我はしてない?」
「うん、ちょっと擦りむいちゃったけど。」
レティシアにマコトはエヘヘと怪我をしたところを振って、健在であると伝えようとする。
しかし、マコトの怪我を見た瞬間、ドクンッとレティシアは自分の心臓が高鳴るのを感じる。
マコトの擦りむいた箇所から少量ではあるが、血が流れている。
流れる真紅の液体。それがレティシアには宝石のように煌めいて見え、その鼻腔を甘い香りが擽る。目が離せない。口の中に唾が溢れる。思わず気分が高揚し、一つの思考がレティシアを支配する。
“あぁ──なんて美味しそうなんだろう。”
「レティシアさん!」
だが、マコトが青い顔をして叫ぶと同時に、レティシアはハッと我に返り、自分に向けて飛んでくる鞭の存在に気づくと、倒れ込むようにしてその攻撃をかわす。
「まさか“同族”に邪魔されるなんて思わなかったわ。獲物の横取りは感心しないよ?」
額に青筋を浮かべながらこちらを笑顔で睨むエリーズ。
(……今、私は何を……いや、今は……。)
レティシアはパンっと両手で頬を叩いて気を取り直すと、彼女に振り向いて構える。
臨戦態勢に入った彼女を見て、エリーズの怒りはさらに高まる。
「そう、あくまでもそういう態度を取るんだ。なら…」
エリーズはそう言うと両手の鞭をしならせ、レティシアへと飛ばす。
「痛い目を見ても知らないわよ!!」
空気を切り裂き、しなる鞭をレティシアは身を屈めて避ける。鞭を掻い潜りながらレティシアが近づこうとしたその時。
「させるか!」
近づこうとしたレティシアに対し、エリーズが鞭を巧みに操り、横から蛇のように鞭がレティシアに襲いかかる。
「ッ」
レティシアはそれに気づくと間一髪、跳躍してその攻撃を避ける。
「逃さないわァッ!」
空中へと逃げたレティシアにエリーズはさらに鞭を飛ばすが、レティシアは空中で錐揉み回転をして、続く追い討ちを回避しながら地面へと降り立つ。
「厄介な鞭……」
「フフッ。見込み違いだったようね。けど。後悔後先立たず──恨むなら自分の愚かさを恨むのね!」
そう言うとエリーズはレティシアに向けて鞭を飛ばす。音を立てて唸り、向かってくる鞭を見据えるとレティシアはフゥと一息ついて。
「……はぁ、仕方ない。」
そう言うと両手をクロスさせ、力を込めると両腕から赤黒い蝙蝠の翼状の刃が飛び出る。
「一気に片付ける。」
レティシアが地面を切って爆発的な加速力でスタートを切る。
当然迎撃の為に振るわれた鞭がレティシアへと向かうが、レティシアはそれに対し、腕を振るい、腕の刃が目にも止まらぬスピードで、鞭をドンドンと切り裂いていく。
「“小夜曲・血斬”(セレナーデ=ブラム・トラッシェント)」
鞭を細切れにしながら突進してくるレティシアに、負けじとエリーズも鞭を振るうが、振るった鞭は振るった先からレティシアによって細切れにされ、無力化される。
「んなっ、そんなっ…!?」
そしてとうとうレティシアは鞭を完全に無力化し、エリーズの目の前に現れる。
「このっ」
エリーズが苦し紛れに腕を振るが、レティシアはそれを腕で防御し、叩き落とすと、その顎に掌底を叩き込む。
「ぐべっ!?」
顎を打ち上げられ、仰け反り、隙だらけになった胴体にレティシアは怒涛の勢いでジャブを連打で叩き込む。
「しっ!」
とてつもない勢いのラッシュを叩き込まれ、えづいて固まるエリーズをレティシアはさらに蹴り飛ばす。
「ぐべっ」
そのままエリーズは地面を滑るように倒れ込む。
「ぐっ、ぐっ……こんな、馬鹿な、私が一方的に…!?」
「……今すぐここを立ち去れば、もう攻撃しない。だから立ち去って。」
「何ですって……」
構えを解き、こちらを見下ろしながらそう言ってのけるレティシアに、エリーズは目を見開く。
最早目の前にいる相手は敵ですらないとでも言うのか。心底自分を馬鹿にしたような態度にエリーズの頭に一瞬で血が昇る。
「ちょっと上手くいったからって、調子に乗るなァッ!」
エリーズは一瞬で鞭を精製すると、レティシアに飛ばす。しかしレティシアは脚から蝙蝠の翼状の刃を精製すると、脚を振るう。その瞬間バスンッという音を立てて、鞭が切断される。
「なっ、」
「…忠告はしたよ。」
「ぐっ、このまま良いようにやられてたまるか!」
エリーズはそう言うと二つの鞭がより一層太く、大きくなり、レティシアへと向かっていく。
「“ブラム・ジュメレ・フエット”!!」
「レティシアさん!」
見るからに強力な一撃にマコトが叫ぶ。だが、レティシアは一言。
「……大丈夫。」
レティシアがそう言うと、脚から出現させた刃が赤黒い輝きを増していく。
「哀歌・血別“エレジア=ブラム・セパラシオン”」
向かってくる巨大な二振りの鞭に向かってレティシアは脚を振るい、彼女が振るった足から赤黒い刃が放たれる。
放たれた刃は二振りの鞭とぶつかる。しかし、二つの攻撃はぶつかり合い、一瞬拮抗したものの、刃が鞭に薄く斬り込んだのが見えた──次の瞬間バスンッと大きな音を立てて鞭が切断される。
「なっ」
エリーズが切断された鞭に呆気に取られた一瞬。その一瞬の間に、レティシアが迅雷の如き速さでエリーズまでの距離を侵略し、その射程内に彼女を捉えていた。
「なっ、速ッ」
「再演“アンコール”!」
エリーズが防御を取るより先に動いたレティシアの回し蹴りと共に繰り出した刃の一撃が彼女の身体を横一文字に斬り裂く。
レティシアの必殺の一撃を受け、エリーズは信じられない、と言った様に目を大きく見開き、切り裂かれた部位を見下ろす。
「そ、そんな。この私が手も足も……!?」
エリーズはそう言うと赤黒い霧となって霧散する。それを見届けたレティシアはふぅ、と一息つくとマコトの方へと振り返る。
「レティシアさん!」
「……待ってて、今自由にしてあげる。」
レティシアはマコトの方へと近づくと、彼女の足に絡みついている粘液を脚を振って軽い調子で蹴り壊す。
「ありがとうレティシアさん!」
「……ううん。気にしなくていいよ。」
レティシアは立ち上がって礼を言うマコトから目を背けながら言う。不思議そうに首を傾げるマコトをよそにレティシアは振り向くと。
「……それじゃあ、気をつけて帰って。私はもう、戻るから。」
レティシアはそれだけ言うと、マコトが返事を返すより先に月が浮かぶ夜空へと飛び去ってしまう。
「あっ……まだお礼言いたかったのに。」
彼女が飛び去った夜空を見上げてそうぼやくが、すぐにあっ、と声を出すと。
「あ、あぁ!そう言えば倒れた人達!大丈夫ですか!?」
マコトはそう声を上げて倒れている人々に駆け寄っていく。幸い倒れていた三人は気こそ失っていたが、マコトが声をかけると、少し呻いて意識を取り戻す。
その様子に彼女はホッと、安堵するのだった。
レティシアは屋敷に戻ると、そのまま奥へと進み、とある部屋に入ると、本棚のある本の内、とある一冊をグイと引っ張る。すると本棚がゴゴと音を立てて横へとスライドし、そこから地下へと続く階段が姿を現す。
その階段を降り、彼女は自身の部屋に入ると、電気もつけずに大小様々なクッションが置かれているベッドにその身を投げる。
ボスっといった音と共に身体をベッドに沈み込ませ、天井を見上げながら、未だドキドキと興奮して鼓動する心臓に手を当てる。
思い返すのはあの時助けた彼女の腕から流れる赤い血。どんなに振り払おうとしても、あの光景が頭に焼き付いて、他のことを考える事が出来ない。
「私……血が、苦手なハズなのに……」
彼女は思わず呟く。今までドラキュリアとして何回か人間の血を見る機会はあった。しかし、いくら見ても美味しそうとはとても思えず、口にしても、特に美味しいとは思えなかった。
しかし、今日見たマコトの血は……とても甘露で、吸い込まれるように蠱惑的な芳香を放っていた。
「私、どうしちゃったんだろ……」
初めて体験する感覚に、彼女は困惑しながら、問いを暗闇に投げかけるのだった。
その階段を降り、彼女は自身の部屋に入ると、電気もつけずに大小様々なクッションが置かれているベッドにその身を投げる。
ボスっといった音と共に身体をベッドに沈み込ませ、天井を見上げながら、未だドキドキと興奮して鼓動する心臓に手を当てる。
思い返すのはあの時助けた彼女の腕から流れる赤い血。どんなに振り払おうとしても、あの光景が頭に焼き付いて、他のことを考える事が出来ない。
「私……血が、苦手なハズなのに……」
彼女は思わず呟く。今までドラキュリアとして何回か人間の血を見る機会はあった。しかし、いくら見ても美味しそうとはとても思えず、口にしても、特に美味しいとは思えなかった。
しかし、今日見たマコトの血は……とても甘露で、吸い込まれるように蠱惑的な芳香を放っていた。
「私、どうしちゃったんだろ……」
初めて体験する感覚に、彼女は困惑しながら、問いを暗闇に投げかけるのだった。
To be continued……