薄明かりだけが続く、無骨な炭鉱道。
4つの足が響かせる音のみがこだまする。
「そろそろ出口かな…」
「距離的にはもうすぐだろう」
……会話は弾まない。
(や…やりにくい…)
脳天気を地でいく
マグナにとって、アルフォンス・
タルタロスとの2人きりは
楽しいものではなかった。
必要最低限のことしか会話が成立しない。
この雰囲気の中、1時間も2時間も歩き続けてるだけでマグナは疲労していた。主に精神を。
(…コイツも全くしゃべらないしなぁ)
チラっと肩に目を遣ると、相変わらずちょこんと突っ立ってる鳥。
普通の鳥ならめまぐるしく首を回してあたりを伺ったり
どっかに飛んでいったりしそうなものだが、前をジーッと警戒するように見続け、
たまにタルタロスのほうを見るくらいだった。
そんな空気にそろそろ耐えられなくなってきたところで、
前方に白く輝く何かが見えてきた。
「よ……ようやく出口か…」
「そのようだな」
坑道を出ることで、この異様に緊迫した空気から少しは解放されるかも…
そう思うと、マグナは少し気が抜けついでに腹も減ってきた。
「外に出たらちょっと休憩しない?
俺はもうお腹が…ムガッ!?」
彼にとっては切実な提案は、タルタロスの右手によって遮られた。
口にまわした右手でマグナの顔面を掴み、そのまま今来た坑道のほうに引っ張る。
「いひゃひゃひゃ…く…くひふぁ…」
「静かにしろ。人がいる」
近づきつつあった気配に気付いたときには、
ホームズは
サナキの手を掴み
反射的に近くの茂みに飛び込んでいた。
「どうしたんじゃ、ホームズ殿!?」
「洞窟の中から人の足音がした。気をつけろ!」
「ってオレは無視っすか」
ぼやきつつも、のそのそと
プリニーも茂みへと入ってくる。
「向こうも俺達に気付いたみたいだな…」
洞窟の入り口のほうから漂ってくる警戒と殺気。
ハイドハンターとして戦い抜いてきた彼の第六感はそれを察知した。
「くそっ、短時間にやけに色んな奴と会うな…」
(一瞬しか見えなかったが…他の2人はともかく…
あの男の身のこなし、この間合いの取り方。相当腕の立つ者のようだな)
タルタロスは冷静に現状を考えてはいるが、あまりよろしい状況ではないのは明らかだ。
相手が手練なのは間違いない。
既にこちらからの死角に移動している。迂闊に出て行っては格好の的になる可能性もある。
だからといって入り口付近で様子を伺っていても、何か爆発物を投げ込まれでもすれば全滅だ。
おまけにこんな狭い坑道でドラゴンアイズを装備し竜と化しても、
身体が壁に挟まれて身動きできなくなる可能性もある。
ここは退くべきか?
しかし退いても袋小路だ。
いや…まて。
「マグナ、貴公から出ろ」
「な、なんで俺!?」
「貴公のほうが人相がいい。私が出るよりは戦闘になる危険は少ない」
「確かに…って人相も何もないだろ、この状況で!?」
マグナは気が進まない様子だ。危険を考えると当然だろう。
だが、出て行ってもらわないとタルタロスは困るのだ。
できる限り優先して、自身の無駄な消耗は避けなければならないのだから。
「安心しろ。いざとなれば私も援護する。
……それに貴公には私にはない不思議な魅力がある。
貴公に剣を突きつけたとき、状況次第では、私は貴公を殺していた。
躊躇することは全くなかっただろう。
だがどうだ?今の私は貴公を信用し、背中を預けてもいいとさえ思えてきている。
数時間前に殺そうとした男を、だ。
数多くの人間と関わってきたが、貴公ほど短時間で信用できると思った者はいなかった。
大丈夫だ。貴公の清純さはきっと届く」
確かに、マグナは清純な男だ。
一般的な感覚を持った人間が相手なら、頼りになるかどうかは別としても
タルタロスよりも信が置けるだろう。
だが、今のタルタロスの説得は建前でしかない。
マグナが出て行くことで情報交換ができるようならそれもよし。
蜂の巣にされるようなら―――――それもよし。
並の相手ならまだしも、潜伏しているのはかなりの実力者と踏んでいる。
この状況下で"いざとなった"ところで、タルタロスは援護する気などさらさらなかった。
それどころかそうなった場合は、撤退する前に敵を増やさないためにも
マグナの息の根を確実に止めなければならない。
思考は、既にそちらへと移っていた。
もちろん"清純な"マグナは、タルタロスがそんなことを考えているとは知る由もない。
不安に顔をしかめていたが、渋々首を縦に振ってくれた。
「うう…わかったよ。おい、お前。今から危なくなるかもしれない。
すぐそこで外に出れるし別に飛んで逃げてもいいんだぞ?」
こんな時ですらマグナは自分の肩にいるあの鳥を気遣う。
尤も、鳥のほうはというと聞いちゃいないかのように無視しているが。
そんな様子の鳥を見て、ため息をついた後、マグナは外へと歩き始めた。
陽の光がまぶしいのだろう。逆行気味でマグナの動きはあまりよくは見えない。
右腕で陽の光を遮り、何度か強くまばたきをした後、マグナは大きく息を吸い込んだ。
「俺達に戦う気はない!!話がしたい!その気があるなら出てきてくれ!!」
マグナの声があたりに響く。
この時点で攻撃が飛んでくることはなかった。
ほんの少し、間が空く。
「こっちも戦う気はねえ」
しばらくしてガサガサと茂みをかき分けるような音がした。
タルタロスの位置からは見えなかったが、おそらくはスナイパーが姿を現したのだろう。
そう判断し、ようやくタルタロスも外へと出た。
「……………………というわけで、俺達はようやく坑道から抜け出したところだったんだ」
説明が上手いわけでもないが、マグナはここにくるまでの経緯を説明した。
とはいっても地下倉庫に閉じ込められタルタロスと合流して坑道に出ただけだったが。
「ふーん……じゃあ次は俺が説明するか」
ホームズもかいつまんで今までのいきさつを語った。
こちらも、荷物としてこの出来損ないのペンギンを引き当て、
サナキという少女と出会ったというだけだった。
ちなみにその出来損ないのペンギンは説明の途中で不平をもらしていたが全員が無視。
「で、お前らはこれからどうするつもりなんだ?」
ホームズがマグナ達に尋ねた。
とはいわれても、実はまだ坑道を出た後の方針は決めていなかった。
「………私には特にアテはない。マグナ、貴公は何かアテがあるのか?」
タルタロスがマグナほうを見て、尋ねた。
「俺は…ネスを捜したい」
「ああ。ネスは召喚術が使えないと戦力としてはビミョーだけど、
頭もいいし何より機械に強い。うまくいけば……!」
そう言って、マグナは自分の首についた忌々しき首輪をトントンとつついた。
「なるほどな」
タルタロスは自分の口の端が吊り上がったのを感じた。
この情報を得ただけでも、殺さなかった価値があるというものだ。
「ホームズと言ったな。貴公達は何か方針はあるのか?」
「俺達は…ちょうどここであのヴォルなんとかってふざけたヤローに
噛み付こうとしたガキがここから発つのが見えてな。
あいつらと接触するかどうかをサナキと相談してると――――」
「我々が坑道から出てきた、というわけか」
「そういうことじゃ」
「でも…魔王とか言ってただろ、あの子供…。危険かもしれないし…
もしよかったら、ホームズ達も俺達と一緒に来ないか?」
この発言に、タルタロスは顔をしかめた。
外から見ても眉が少し動いた程度にしか見えなかっただろうが。
確かにこのホームズという男は味方にすれば心強そうだ。
だが、大人数になると目立つ分行動がとりづらくなるし、意見が割れる可能性もある。
しかも戦力にならない子供までパーティに加えるリスクを考えると…
総合すればあまりいい案とはいえない。
どうにかこの意見を取り下げさせようと口を開こうとすると―――
「悪いがお断りだ。俺達は俺達で行く」
「ホームズ?」「ホームズ殿?」
このままの流れで、てっきり5人で行動するものだと思っていた
マグナとサナキは素っ頓狂な声を上げた。
「タルタロス…だったっけ?
マグナだけが坑道から出てきたが――
あれ、お前の指示だな?」
ここで嘘をつくのは得策ではない。マグナの不信を買う。
「……そうだ」
「別にお前らが相談して決めたことだろうから俺はとやかく言うつもりはねえ。
仲間と協力するのも利用するのも勝手だ。
だがな、これだけは言っておく。
俺は仲間を裏切るような真似をする奴は絶対に許さねえ。それだけだ」
そう言い、ホームズはタルタロス達に背を向け、
「行くぞ。サナキ、プリニー!」
不機嫌そうに言い放ち、
「いきなり怒り出してどうしたんじゃホームズ殿!?」
「ぐぅぅ~ぐがががが…はひっ、話は終了っすか!?」
「………」
ドカッ!ざしゅぅ~……
「…だからなんでさっきから蹴るんすかぁ!?」
ついでに怒りをこめて寝転んでいたプリニーを思い切り蹴り飛ばした。
地面に思いっきり擦れながらも文句を言うプリニーはもちろん無視である。
「………」
そして去って行ったホームズ達に取り残される形で
マグナとタルタロスは再び二人きりになった。
「……仲間を裏切るとか…ホームズは何を言ってたんだ?」
「…私にも分からない」
ぼかしてみたが、タルタロスにはホームズの言いたいことは分かっていた。
危険な可能性のある場所にほぼ丸腰でマグナを出させたこと。
ホームズが姿を現してからタルタロスが姿を見せるまでに要した時間。
これらの要素から、マグナを囮として使い安全かどうかを見極め
最悪の場合は一人で撤退するつもりだったことを見抜いたのだろう。
当事者すら気付いてないというのに賞賛に値する洞察力だ。
自然と、手が剣の柄へと伸びていた。
優勝を狙うのなら、彼は確実に大きな障害となるだろう。
こちらの本性にも気付いている。悪い噂を流される前にホームズ達を消すか?と考える。
だが、
デニムやランスロット達がいる時点でそれはある程度は仕方のないことだった。
戦闘の余波でマグナと敵対すれば
首輪の解除の鍵を握る人物への接触も困難になりかねない。
「ところで…そろそろご飯食べない?
俺、ホントにもうハラペコでさぁ……」
タルタロスの思考は、マグナの間の抜けた声により中断された。
マグナが抑えている腹からは、確かに情けない音が聞こえてくる。
マグナの注意を引かないように、柄へと伸ばしていた手を静かに元に戻した。
「歩き詰めだったからな…少し休憩するか」
「やりぃっ!」
そう言ってマグナは無邪気に笑い、自分のバッグを漁り始めた。
本当に無邪気に―――苛立ちを感じるほどに。
「ちっ、ムナクソわりぃ……」
「さっきからどうしたんじゃ、ホームズ殿?
それに首輪をはずすせっかくのチャンスじゃったのに…」
タルタロスの動きから、マグナは利用されているということが分かった。
だからといって下手に口論して戦闘になっては…相手は剣も持っていたし
こちらにはサナキもいた。
最善かどうかは分からないが、決して悪い選択をしたとは思わない。が…
「…くそっ」
不機嫌なのは収まらない。
「…あの魔王とかいうガキ達は完全に見失ったな…
リュナンや
カトリにサナキの知り合い、それにネスティとかいう奴を捜すか」
ホームズはさっきのことを忘れようとして話題を転換してみた。
「もしかして、さっきのことを忘れようとして話題を転換しようとか考えたんじゃないっすか?」
「…………お前、あの男に投げつけて華々しく散らせてやろうか?」
ホームズのポケットの中の手は思い切り握り締められ、
こめかみあたりはヒクヒクと動いていた。
「勘弁してくださいっす」
この人、マジだと思ったプリニーはとりあえず謝罪した。
しかしあんまり誠意が感じられなかったという理由で結局ホームズに殴られた。
【G-3/洞窟前/1日目・日中】
【マグナ@サモンナイト2】
[状態]:健康 衣服に赤いワインが付着
[装備]:割れたワインボトル
[道具]:支給品一式(食料を1食分消費しようとしています) 浄化の杖@TO
予備のワインボトル一つ・小麦粉の入った袋一つ・ビン数個(中身はジャムや薬)
[思考]1:仲間を探す(ネスティ優先)
2:皆とともにゲームを脱出したい
[備考]:ユンヌ@暁の女神 が肩に止まっています
【ランスロット・タルタロス@タクティクスオウガ】
[状態]:健康
[装備]:ロンバルディア@TO
[道具]:支給品一式(食料を1食分消費しようとしています) ドラゴンアイズ@TO外伝
[思考]1:生存を最優先
2:参加者と接触し情報収集
3:ネスティとの接触
4:脱出が不可能な場合は優勝をする
【ホームズ@TS】
[状態]:健康
[装備]:プリニー@魔界戦記ディスガイア
[道具]:支給品一式(ちょっと潰れている)、不明(未確認)
[思考]1:
ラハール達を追いかけて話しかけるかどうかを決める。
2:あのおっさん(
ヴォルマルフ)はぶっ飛ばす。
3:リュナン、カトリ、ネスティと合流したい。
4:弓か剣が欲しい。
【サナキ@FE暁の女神】
[状態]:健康
[装備]:リブローの杖@FE
[道具]:支給品一式、手編みのマフラー@サモンナイト3
[思考]1:帝国が心配。
2:皆で脱出。
3:
アイクや姉上が心配。
備考:暁の女神エンディング後から参加。
【プリニー@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:ボッコボコ(行動にはそれほど支障なし)
[装備]:なし
[道具]:リュックサックのみ(水と食料も支給されていません)
[思考]1:とりあえずホームズに従う。
2:あのおっさんから給料貰ってはいるけど黙っとこう。
3:この主人マジで怖いっす。
最終更新:2009年06月19日 09:22