「おい見習い!いこうかと言ったのは貴様だろうが!!
 いつまでかかっている!?」

相も変わらず、洞窟前に怒号が響く。
叫んでいたのはまだ少年ともいえる魔王。
かたや――――

「………」

こちらも相も変わらず、手近な岩に座りうつむき加減に目を閉じて集中しているペンギン。
否、中身は青年。

「この俺様を無視するとはいい度胸だ!この鞘で貴様の脳天を「終わった!終わりましたから!!」

鞘の抜けない剣を今まさに振り下ろそうとした少年を、ペンギンはすんでのところで止めた。



「この俺様を死ぬほど待たせた罪は重いぞ。くだらん理由で待たせたのなら………」

少年ことラハールの周りに、怒気がもはや物理的な力を持つほどに膨らみ始めていた。
この催しが始まってから彼はストレスのみを溜め続けている。
そろそろ発散しないと本気でまずい。
何がと言うと現在の相方、ラムザの身が。

「ジョブチェンジとアビリティをセットしていたんです」

「…気でも違えたか、見習い?」

「今の僕は"シーフ"ですよ、ラハールさん」

「…貴様、いままでもこれからも見習い、だと言ってなかったか?」

「ええ、基本的にはそうです。ただ、今の状況ではシーフのほうがいいと思ったので」

「……意味が分からんのだが……やはり、人間というものにはまともな奴はいないのか…?」

さすがの魔王も、度重なるストレスに怒りを通り越し疲れを見せ始めていた。


「シーフのほうが都合がいいと言ったな、ラムザ。
 敵が出てきたら身ぐるみを剥いで捕獲して家来にでもするのか?」

「いきなり敵対心丸出しでは駄目だと言ったばかりでしょう。
 参加者に接触する際には基本的に情報交換を優先します。
 会話は僕がしますから…ラハールさんはできる限り、友好的にしてください。」

「友好的な魔王なんぞ聞いたことがないわ!」

と、反射的に反抗したラハールであったが、ラムザがきつい表情でこちらを見ているのを見て、

「……くっ…」

悪態をつきながらも、『善処する』と暗に示した。
"勧誘"されたときのラムザの話を思い出し、反発しても仕方ないということは分かっているのだ。

「ただ、こちらの話も説得も聞かずに襲い掛かってくるような相手がいた場合は、
 僕も遠慮する気はありません。
 僕も手助けしますから、ラハールさんも戦ってください。」

『戦ってください』あたりの言葉を聞いたあたりから、ラハールの表情が歪んだ。
まるで、お気に入りのおもちゃを与えられた少年の如く。

「クックック…任せておけ。俺様だけで片付けてやる」

なぜだか、戦力的には申し分ないのだがこれはこれで言いようのない不安がラムザを襲う。

「…強力なアイテムを持っている人がいないとも限らないと言ったでしょう…。
 くれぐれも暴走だけはしないでください…」

まだ戦闘どころか移動すらしていないのに、ラムザにも疲れが見え始めていた。


「ところでラハールさん、どこに向かいますか?」

「うむ。ここはG-3の洞窟前か。こんな端では技術者も誰も来ないだろう。
 街道に出るなりどこかに向かうにしても、北に行くのが一番だろう。
 今度こそ行くぞ、ラムザ!」


こちらは、ラムザ達が出発する数分前のこと。

ホームズ殿。あそこにプリニーの仲間がいるようじゃぞ」

サナキの言葉に、ああ、とだけ返事するホームズ。
もちろん、サナキよりも背丈が圧倒的に高いホームズの視界には捉えられていた。
なぜそれが分かっていて何も言わなかったかというと…

「………でかすぎやしないか?」

なにせ、隣に見える少年よりも背丈が高い。
ちなみに、その少年とプリニーは何やら話をしている。

「おい、あんなにでかい仲間がいたりするのか?」

「自分の知ってる限りじゃいないっす。それよりも隣にいるのは殿下っす。」

「殿下じゃと?」

皇帝である自分に何か通じるものを感じたのか、サナキが興味津々と聞いてくる。

「魔王っす。魔界で一番えらい悪魔っす。ちなみにオレの元の雇い主の主人っす」

「ふーん。ガキにしか見えないがなぁ。
 そういえば、ヴォルなんとかっておっさんに噛み付こうとした奴だな」

そういった話をしている間に、魔王とやけにでかいプリニーが北へと歩き始めた。

「どうする、ホームズ殿。行ってしまうぞ?話かけてみるか?」

ホームズが口を開こうとしたとき、先にプリニーが口を挟んだ。

「やめといたほうがいいっす。みんなが見てる前でふっとばされた、
 なんてことがあった後っすから、機嫌が悪いと思うっす。
 下手に話しかけると面倒なことになるっす」

「…お前、あいつと知り合いなんだろ?
 もうちょっと、物事がうまく進むように働こうって気はないのか?」

「ないっす。自分の安全が一番っす」

「………」

ベギャメシゴキバキメギグシャ…………


北へと平原を歩いて突っ切りながら、ラハールが口を開いた。

「そういえば…戦闘になれば手助けすると言ったな。武器もない貴様がどう手伝うのだ?」

「"武器を盗む"のが効果的ですね。相手が女性なら"ハートを盗む"こともできますし」

「………恥ずかしくないのか、貴様は。お前も愛が素晴らしいとか言うクチか」

シラけた顔をして、どこか苦痛そうにラハールがラムザを見ている。

「別に否定はしませんよ。愛があるからこそ戦えるような人もいるんですから」

共に戦ってきたテンプルナイトの顔を懐かしみながら、ラムザが言ったが。

「やめろ……俺様は前向きな言葉が嫌いなのだ…」

「………愛は世界を救う」

「ぐはぁっ!」

「生物皆友達♪」

「や、やめろっ!!」

ムスタディオをやっつけろ☆」

「ぐわァァアアアッ!!」

【G-3/平原/1日目・昼】
【ラムザ@FFT】
[状態]: 健康、後頭部にたんこぶ 
[装備]: プリニースーツ@ディスガイア
[道具]: 支給品一式、ゾディアックストーン・サーペンタリウス@FFT、サモナイト石詰め合わせセット@サモンナイト3
[思考]1:ヴォルマルフ、ディエルゴの打倒
    2:白い帽子の女性(アティ)と接触しディエルゴについての情報を得る
    3:ゲームに乗った相手に容赦はしない
    4:ラハールの暴走を抑える
    5:そういえば名簿を見てなかった
[備考]:原作終了時からの参加
    現在プリニースーツを身に付けているため外見からではラムザだとわかりません。
    ジョブはシーフ、アビリティには現在、話術・格闘・潜伏をセットしています。
    ジョブチェンジやアビリティの付け替えは十分ほど集中しなければなりません
    自分の魔法に関することに空白のようなものを感じている。(主に白魔術)
    名簿を見ていません

【ラハール@ディスガイア】
[状態]: 健康
[装備]: フォイアルディア@サモンナイト3(鞘つき)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 1:自分を虚仮にした主催者どもを叩き潰す
     2:そのためなら手段は選ばない
     3:何とかして首輪をはずしたい
     4:鬱憤がたまっているので思い切り暴れたい
     5:とりあえず今の状態を打開するまではラムザに同行
[備考]:原作終了時からの参加、ただしバールなどには勝ってはいません
    名簿を見ていません
    フォイアルディアはサモンナイト3番外編に出てきた魔剣、アティ・ベルフラウ・イスラしか鞘から抜くことはできません

【G-3/洞窟前/1日目・昼】
【ホームズ@TS】
[状態]:健康
[装備]:プリニー@魔界戦記ディスガイア
[道具]:支給品一式(ちょっと潰れている)、不明(未確認)
[思考]:
1:ラハール達を追いかて話しかけるかどうかを決める。
2:あのおっさん(ヴォルマルフ)はぶっ飛ばす。
3:リュナンカトリと合流したい。
4:弓か剣が欲しい。

【サナキ@FE暁の女神】
[状態]:健康
[装備]:リブローの杖@FE
[道具]:支給品一式、手編みのマフラー@サモンナイト3
[思考]:1:帝国が心配。
    2:皆で脱出。
    3:アイクや姉上が心配。
備考:暁の女神エンディング後から参加。

【プリニー@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:更にボコボコ(行動にはあんまり支障なし)
[装備]:なし
[道具]:リュックサックのみ(水と食料も支給されていません)
[思考]:1:とりあえずホームズに従う。
    2:あのおっさんから給料貰ってはいるけど黙っとこう。
    3:この主人怖いっす。
  • プリニーについては本文準拠でお願いします。
  • ホームズの袋はプリニーを入れるためか、少し大きめですが中身は他の人と一緒です。

033 勇者と巫女とゾンビと 投下順 035 平行線な想い
031 もつれあう現実 時系列順 036 邪悪
015 魔王と見習い ラムザ 055 俺様全開!
015 魔王と見習い ラハール 055 俺様全開!
019 義賊と幼女とペンギン? ホームズ 047 気付く者気付かない者
019 義賊と幼女とペンギン? サナキ 047 気付く者気付かない者
最終更新:2009年04月17日 09:05