もう何時間こうしているんだろうか?
あの女性を誤ってとはいえ手に掛けてしまった僕は贖罪の為にも
この戦いを終わらせなければならない。
だけど、僕は痛感してる。
一人の力では全てを救うことは出来ない。
それは今までのことが物語ってきている。
僕、一人の力では戦争を終える事はできなかった。
ホームズや仲間達の協力があったからこそあの激しい戦いも乗り越えることが出来たのだから。

…仲間は必要なんだ。

だけどここでこうして当てもなく、ただ誰かが来るのを待っているだけでいいのだろうか?
街道沿いの森に隠れ城を監視し続けて、すでにかなりの時間が経過してる。
時間はそんなに経っていないのかもしれない。
日の位置からは大体、今が午前を過ぎて昼辺りだという目測は出来ているんだけど、
そもそも、ここが何処かが分からないからそれも自信が無い。

「…やっぱり待っているだけじゃ駄目だ、進まないと…」

立ち上がり、少し身体を伸ばす。
隠れていただけだった身体の関節が少し鳴っている。

ここで誰かが来る事はなかった。
いや、正確には一人の人物には出会えたが、残念だけど彼とは分かり合えそうもない。
そんな人物を放っておくことも気にはなるのだけれど、
見たところでは彼は丸腰だったし、
そんな人物を危険だからと言う理由だけで手に掛けることはできない。
僕は彼の事を知らない、もしかしたら彼は気が立っていただけなのかもしれない。
少し頭を冷やせば、出会ったばかりの人物に投石をするようなことも無いだろう。
…だといいのだけれど。

地図によると南東の方にも城と村があるみたいだし、そちらに行ってみよう。
次は誰かに出会えるといいのだけれど…

ホームズ達は無事だろうか?
いや、きっと無事だと信じていよう。
皆で又、船旅を続けられるように。

でも、エンテ。
泣き言を言うけど…君に会いたい。

彼は向きを変えると城を背景に走り出す。
最早、この場所に自分を繋ぎ止めるようなものは無い。
そう決め込んで。
ほんの数時間の差異は彼にとって不幸というしかなかったのだろうか?
彼が離れた後に其処から彼が倒すことを決めていたものが出て来る事。
更に、その場所にまた新たな来訪者があった事は
すでに其処を離れた彼にとって関係の無い話なのかもしれないが。

リュナンが城から離れる決意をして暫く経った頃、
F-3の街道に向かって歩く奇妙な風体の二人がいた。
半裸でマフラーの少年ラハールと巨大なペンギンにしか見えないラムザの一行である。
何故かラハールの顔は青ざめ、やつれていたが…

「……………………」

「…………あの~、ラハールさん…様?」

びくっと一瞬ラハールの体が反応する。

(ちょっと調子に乗りすぎちゃったかな?
まさかここまで効果があるとは思わなかったし。)

先刻までラムザはラハールの弱点が綺麗な言葉だと聞き、
少し悪ふざけのつもりで話術師のアビリティを活かし延々と彼に
綺麗な言葉を浴びせ続けていたのだが、暫くするとラハールは無言になり
黙々とまるでラムザの事を無視するかのように歩き始めてしまった。
体は正直に反応し、たまにふらついていたが。

話を現在に戻す。

「…なんだ。」

ぽそりとラハールが呟く。

「あぁ、やっと返事をして頂けましたね。
時間的にはもう昼はとうに過ぎて結構な時間になってきたと思います。
ですから、この辺りで一旦小休止に致しませんか?
そろそろお腹も空いてきたと思いますし。」

わざと大袈裟な素振りで空腹をアピールする。
本当は其処まで空腹ではないのだが、
このままラハールをこの調子で放っておいたら
誰かに会った時に何をするか分かったものではないと判断した結果である。
…その場合の責任は自分にある訳だし。

「ふん!いいだろう俺様も腹が減ってきたしな、だがこれだけは憶えてろ!
次に俺様の前でふざけた真似をしたら命は無いと思え!!」

言うが否や、どかりとその場に座り込むとザックを降ろし、
食事の準備を始めてしまうラハールにラムザは唖然とする。

「ラハールさん…ここは目立ちすぎます、場所を変えませんか?」

平原のど真ん中、かくも目立つ場所で狙ってくださいと言わんばかりの行動。
自分から切り出したことだが、まさかこんな反応をするとは思いもよらなかった
ラムザが少し焦り気味に提案する。

「チッ!こんなものが食べ物だとでもいえるのか、益々気に喰わんぞあの人間め!」

だがラハールはそんなラムザの提案を無視と言う形で却下すると
ザックを乱暴に引っくり返し、中身の支給品ごと食料をぶっきらぼうに物色する。

「あの~、怒ってます?謝りますから場所を変えませんか?」

ペンギンの着ぐるみの影響なのか下手に顔色を窺いつつラハールにもう一度切り出してみる。

「フン!そうではない。
別に見つかっても構わんからこうしてるんだ。
襲ってくる奴がいるのなら、寧ろ俺様が手厚く持て成してやるぞ?
フハハハハ!!」

高らかに笑うラハールにこれがさっきのラムザの行為に対しての意趣返しであることに気づく。
これ以上は寧ろラハールを余計に調子づかせる事になると思い諦めたのかラムザも其処に座り込む。

「一蓮托生って事ですね、分かりました。
僕も何か起きたら巻き込まれます…ハァ…」

一つ溜息をつくと自分もザックを降ろし、ラハールとは違って丁寧に食料を取り出す。
その態度が気に入ったのか機嫌を良くしたラハールは更に高笑いする。

「お前も最初から素直にそうやって俺様に従っていればいいんだ!
ところでさっきの罰だ、お前のパンもこっちに寄越せ。」

寄越せと言っておいてラムザが取り出した瞬間に支給品の食料に合ったパンを強奪する。

「…もう好きにしてください。」

こうしてラハールの高笑いと共に一時の穏やかな時間が過ぎていったのであった。

食事を終えた二人は名簿を覗き込んでいた。
ラムザが確実な情報交換のためにも一度確認しておきたいと切り出したからだ。

「分かりました、取りあえずラハールさんの知っている人物の中で信用に値する人は
フロンさん、ゴードンさん、カーチスさんと…中ボス?の四人で良いんですね?」

四人の顔写真を確認した後、ラハールに尋ねる。

「まぁ、そうだろうな。
あの熱血愛マニアはこんなものには絶対に乗らないから、
今頃何処かで大好きな神様の教えとやらを説いて回っているだろう。
それに勇者共は俺様の家来だから俺様には逆らえん!
親…中ボスも多分大丈夫だ。」

最後だけ少し濁し気味に答える。
一瞬、ラムザが怪訝そうな顔をしていたがあまり触れられたくないのか
ラハールは一つ咳払いをすると話を変えた。

「あ~、それとだなこのエトナだがハッキリ言ってこいつは信用できん!
俺様の家来なんだが実際こいつには俺様を裏切った前科があるし、
あり得ん話だが何か寝首をかかれそうな気も気もするからな。」

「それって、家来って言うんですかね?」

ラハールの話に苦笑する。
(殺伐としてるなぁ)と思ったが口に出すのは止めた。

「俺様の話はこんなものでいいだろう。
ところでお前のところの話を聞くと、意外とお前も敵が多いんだな?
このアルガスガフガリオンウィーグラフ、それにあのヴォルマルフといい
顔に似合わずやることはやっているようだな。」

ラハールの言い方に自然とラムザの顔から笑みが零れる。
着ぐるみを着ているので外からは分からないが。

「クスッ、何ですかそのやることって?
でも、彼らが危険な事は確かです。
実力も確かですがガフガリオン以外の者達は人ではなく
魔に属する者だと憶えていてください。
彼らの存在は正直今でも何なのか、僕にも判断はつかないんですが。」

“ルカヴィ”…自分の、いやイヴァリースに暮らす全ての人達の人生を狂わせた“悪魔”。
聖石に封じられていた彼らが一体何なのかは分からない。
だが、自分達が彼らを倒したのは確実だった筈だった。
ヴォルマルフは最後の戦いにおいて自分の命を使い、
聖アジョラを名乗る“ルカヴィ”を召喚して死んだ。
…筈だった。
だが現に今こうして彼によって又、誰かが犠牲になる争いをさせられている。

自分の手元にある聖石をじっと覗き込みながらラムザが考えを巡らせていた時、
不意にラハールが口を開いた。

「おい、考え事は止めだ!どうやら客が来たぞ!」

ラハールの言葉に振り返り、辺りを確認する。
確かに茶髪の重厚な鎧を着た青年が
自分達が目指していた北側からやってくるのが見える。
あちらもこちらには気づいているようだが、ゆっくりとこちらに近寄ってきている。

「どうやら、僕達と接触を図っているようですね。」

ラムザの呼びかけにラハールは答えない。
代わりに彼の顔は歓喜の表情に変わっていっている。
そんなラハールの様子に胸騒ぎを覚える。

「なぁ?」

先刻と同じように突如、口を開くラハールに不意をつかれ、
少し驚きながらも自分の中の胸騒ぎをかき消す為に何かを答えようとする。
だが、ラムザが何かを喋るよりも早くラハールは満面の笑みで質問する。

「血の匂いをさせた奴がこっちに来ている場合。
…そいつは俺様達の敵だと思っていいんだよな?」

【F-3/平原/1日目・午後】
【ラムザ@FFT】
[状態]: 健康、後頭部にたんこぶ
[装備]: プリニースーツ@ディスガイア
[道具]: 支給品一式、ゾディアックストーン・サーペンタリウス@FFT、サモナイト石詰め合わせセット@サモンナイト3
[思考]1:ヴォルマルフ、ディエルゴの打倒
    2:白い帽子の女性(アティ)と接触しディエルゴについての情報を得る
    3:ゲームに乗った相手に容赦はしない
    4:ラハールの暴走を抑える
[備考]:原作終了時からの参加
    現在プリニースーツを身に付けているため外見からではラムザだとわかりません。
    ジョブはシーフ、アビリティには現在、話術・格闘・潜伏をセットしています。
    ジョブチェンジやアビリティの付け替えは十分ほど集中しなければなりません
    自分の魔法に関することに空白のようなものを感じている。(主に白魔術)

【ラハール@ディスガイア】
[状態]: 健康
[装備]: フォイアルディア@サモンナイト3(鞘つき)
[道具]: 支給品一式
[思考]: 1:遂に戦えるぞ!
     2:自分を虚仮にした主催者どもを叩き潰す
     3:そのためなら手段は選ばない
     4:何とかして首輪をはずしたい
     5:とりあえず今の状態を打開するまではラムザに同行
[備考]:原作終了時からの参加、ただしバールなどには勝ってはいません
    名簿を見ていません
    フォイアルディアはサモンナイト3番外編に出てきた魔剣、
    アティ・ベルフラウ・イスラしか鞘から抜くことはできません

【リュナン@ユトナ英雄戦記ティアリングサーガ】
[状態]:脇腹に打撲、肩に軽い痛み(痛みは大分引いている)
[装備]:ロマンダ銃/弾切れ@FFT
[道具]:潰れた合成肉ハンバーグ@TO ラミアの竪琴@FFT、不明道具(シーダのもの)
    支給品一式、食料2人分
[思考]:1:ホームズ達他、仲間を探す
    2:レンツェンは見つけ次第抹殺
    3:出来ればヴォルマルフを倒したい
    4:目の前の人物(鳥?)達と接触してみる。
054 希望を着た悪魔 投下順 056 彼女らの邂逅
052 過信禁物 時系列順 063 獅子王リチャード
034 適切適当 ラムザ 064 毒はただただ回っていく
034 適切適当 ラハール 064 毒はただただ回っていく
032 そしてオレは駆け出した... リュナン 064 毒はただただ回っていく
最終更新:2009年04月17日 11:01