「レンツェン、待ってってば!」
「全く、これだからガキは…早くしろ」
わっはっは、ごきげんよう貴様ら。
金色のスタッフに高級靴を装備した奇行…ではなく貴公子、
レンツェンハイマーとは俺のことだ。
「早くしろ、って言っても……草が邪魔だよ。やっぱり道をいこうよ」
「これだからガキは。街道は見通しがいい上に、すぐ近くに森がある。
もし気配を完全に消せるようなスナイパーが森に潜んでいたら…
幽霊作戦再びとなるではないか!」
「すごーい、レンツェン!そんなことまで考えてるんだ!」
「わっはっは、伊達に天才策略家と呼ばれておらんわ!」
「ところで…けはいって?」
このガキは俺様の役立たずな部下のチキだ。
リュナンならば捨て置いていくような役立たずな上におつむの弱いガキだが、
心優しい俺様はこいつを保護者のもとに連れて行く決意をした。
しかし、その真の目的は『コバンザメ作戦』のため。
こいつを送り届けた恩を着せ、腕が立つというこいつの仲間に護衛をさせるという
低コストかつハイリターンな完璧な作戦だ。
ストレスを考慮に入れるのを忘れていた。中コストに引き上げだ。
「ねぇねぇ…こっちにみんながいるの?さっきの道のほうがたくさんの人がいそうだけど…」
チキが不安そうな声で俺に尋ねた。
俺様は凛々しい顔を引き締め答える。
「お前の仲間がいるかどうかは運次第だ。ただ、こちらは見通しがいい草原だ。
もしお前の仲間を見かけたらお前が気付け」
「でも……こんな格好じゃ見えないよ」
「危ないヤツに気付かれないためだ、従え」
そう、俺様のナイスな判断で、見通しがいいこの草原でこちらからは一方的に見ることができるが
向こうからは見えないように…俺達は四つん這いになって北上している。
歩みは遅いため、もう陽が西へと進んでいるがまだ右手に砂漠が広がっている。
つまり、まだE-3。
安全第一、俺はシュラムの死神が与えた教訓を胸に四足歩行を実行する。
こらそこ、どう見ても奇行師です本当にありがとうございましたとか思ったそこのお前、
俺がラゼリアに戻ったら極刑。
「……………ねぇレンツェン」
俺が見えざる何かにツッコミを入れていると、またしてもチキが話しかけてきた。
「なんだ、俺は忙しいのだ。さっさと言ってきびきび進め」
「わたしたちが通ってきたところ、草が倒れてて誰か通ったってわかるよ」
「……………」
……神様。たびたびすいません。
私は自分のことが大好きです。とっても頭もいいと思っています。
でも、人間って誰でも失敗したりしますよね?
なんでよりによって今日という日に限って次々と失敗するんですか?
私のバラ色………いや、この際地味な色でもいいのでとりあえず人生を返して下さい。
「なんで今更言うんだヲマエは!?これはイカン、すぐにここから離れるぞ走れ!!」
「え………でも立ち上がると…」
「わがまま言うな行くぞ!」
グダグダ言うガキを抱え、俺様猛ダッシュ。移動力6+高級靴の力は伊達ではない!
【E-3/平原/1日目・日中】
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:やや疲労、爆走中、やすらぐかほり
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア、エルメスの靴@FFT
[思考]1:敵意のある者は徹底的に避ける
2:チキの仲間に取り入り、自身の護衛をさせる
3:チキの仲間を扇動し、リュナンらを襲わせる
4:チキの仲間を確保しそびれた場合、リュナンらに平謝りし、自身の護衛をさせる
5:首輪を解除できそうな者を従える
6:手段を問わず、とにかく生還する
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:健康
[装備]:シャンタージュ@FFT
[道具]:やたらと重いにぎり(柄部分のみ確認、詳細不明)
[思考]1:レンツェンといっしょ
2:仲間をさがす
3:首輪かゆい
4:かえりたい
◆
「ふン…」
城に着き、入り口や他の場所に待ち伏せや罠がないことを確認していた
ガフガリオンと
レシィ。
何かに気付いて、ガフガリオンは鼻を鳴らした。
「どうしたんですか、ガフおじいさん?」
「これを見るンだ。誰かが通った跡がある。どうやら、この城には先客がいたみたいだな」
ガフガリオンが顎を指した先には、倒れた草の跡。
城の出口すぐ近くの道から、その跡は続いている。
草の倒れ方を見ても、二足歩行で通ったのではないことは一目瞭然だった。
「…追いかけるんですか?」
不安そうな声で尋ねるレシィ。
彼の故郷の幻獣界メイトルパでは、こういった獣道を残す獰猛な獣や亜人が結構いたりする。
「いや、この城のどっか安全そうなところで腹ごしらえだ。
腹が減っては戦はできンとも言うからな」
最初に召喚された場所には、四足歩行するような奴はいなかったような気もするが、
自分の常識が通じるとは限らない。
ここは、当初の予定通りにことを進めるとしよう。
安全を確認した城門を、剣を右手に握ったまま警戒を緩めることなくガフガリオンはくぐって行く。
「満腹まで食べちゃダメですよ!?お腹がいっぱいになると眠くなるし、
お腹を怪我した時に傷がひどくなることがあるんですから!」
「お前のご主人とは違うンだ。そんなマヌケなこと指図するんじゃねぇ!」
「指図じゃないですよぅ!あ、待ってくださいよガフおじいさん!」
レシィも慌てて城門をくぐった。
城の2階にある一室。
奥行きがあるやや広い、しかし入り口は窓と扉が1つずつという、おそらくは城に仕える者のための
食堂のような部屋で、二人は食事を摂っていた。
あいにくと、食料などの使えそうなものは無かったが―――
この部屋なら、侵入者相手に闇の剣で先手を取れると踏んでの判断である。
「レシィ、そういえばお前の支給された武器は何だったンだ?」
腹6分目程度で食事をやめ、水を口に軽く一杯。
喉を通る水分に軽い幸せを感じた後に、ガフガリオンは口を開いた。
余裕があるときにできる限りの情報を得ておく必要がある。
既に、レシィの知り合いの情報は聞いておいた。
警戒心の強そうなやつも何人かはいるようだが、基本的には"いい人"らしい。
こちらも
ラムザと
アグリアスについてだけ軽く話をしておいた。
ラムザの妹や聖石を持っていた野郎のことも話そうかとも思ったが、大したことも知らないし話す必要もない。
ここまで来たら、次の情報だ。
利用価値のあるこの男について、それなりには情報を得ておく必要がある。
いざとなればどういう行動をするか、させるかの指針になるから。
すぐに支給品のことを聞いては、この臆病そうな男は警戒したかもしれない。
だがしばらく行動を共にし、食事を摂り、気を許している今なら問題ないだろう。
「実は……これです」
案の定、すぐさま見せてくれる。
そういって、荷物の中から取り出したのは一本の剣。
鍔は鳥が羽を開いたような形をしていて、柄にも変わった紋様が刻まれている。
そして、鞘に納められているにも関わらず感じる、不思議な力。
「…魔剣だな。下手に触らンほうがいいぞ」
魔剣は効果が大きい分、それなりのリスクを負うことが多いことはガフガリオンも知っている。
単なる名剣のほうが、安定して役に立つものだ。
「それが……触るも何も鞘から抜けないんです、この剣。ガフおじいさんなら抜けるかも…」
そう言って、ちょっと申し訳なさそうな顔をして剣を渡そうとしたレシィを、
ガフガリオンは手で制した。
「下手に触るなと言っただろ。もし抜けたとして、何が起こるか分かったもンじゃねえ」
レシィは知らなかった。当然である。使い手に会ったとはいっても、戦うところを見たわけではない。
それどころか、レシィがその人に会った頃には、この剣は既に生まれ変わっていたのだから。
碧の賢帝。
アティ達の窮地をたびたび救ってくれるも、アティの魂を喰らおうとしたいわくつきの剣。
ガフガリオンの言う通り、本来なら抜ける状況でも抜くべきではない剣なのだ。
果たして、適格者のもとへと渡ることはあるのだろうか。
それが、何を起こすかは定かではないが―――
「レシィ、行くぞ。部屋数も結構あるようだし、地下もあるみたいだ。
きびきび調べるぞ」
ガフガリオンにとっては、魔剣の情報自体は大した重要性はない。
レシィについての大体の必要情報は得た。支給されたアイテムに関してはまた折をみて聞こう。
ガフガリオンは荷物を背負い立ち上がった。
「は、はいっ」
荷物に剣を押し込め、何も知らないレシィも立ち上がった。
【E-2/城前/1日目・日中】
【レシィ@サモンナイト2】
[状態]: 健康
[装備]: サモナイト石[無](誓約済・何と誓約したものかなど詳細は不明)@SN2or3
[道具]: 支給品一式(1/2食消費) 碧の賢帝(シャルトス)@SN3 支給アイテム×1(詳細は不明)
[思考]1:ガフおじいさんと城の探索。
2:
マグナ達と合流する。
3:マグナにガフおじいさんに貸している剣を渡す。
4:殺し合いには参加せず、極力争いごとは避ける。
【ガフ・ガフガリオン@FFT】
[状態]:健康
[装備]:(血塗れの)マダレムジエン@FFT、ゲルゲの吹き矢@TO、絶対勇者剣@SN2
[道具]:支給品一式×2(1/2食消費) 支給アイテム×1(詳細は不明)
[思考]:1:(どんな事をしてでも)生き延びる
2:E-2の城を調査。場合によっては拠点化・罠を張るなど行動。
3:一応、マグナとやらは捜してやる。
4:必要があれば、もしくは足を引っ張るようならレシィでも殺す。
5:アグリアスには会いたくない。
参考:幽霊作戦
攻めてくるリュナン軍と市街戦になったレンツェンが考案した作戦。
隠密行動に優れたスナイパー(弓使い)などを茂みに潜ませ、気配もなく攻撃させるという作戦。
気配を完全に消しているため、攻撃してきた瞬間しか場所を判断できず、反撃するチャンスはそこしかない。
しかも相手は弓などの遠距離攻撃をしてくるためこちらも遠距離攻撃ができる人でないと反撃できない。
こういった話だけを聞くと確かにいい作戦に聞こえる。
最終更新:2009年04月17日 09:21