「さて、どうしたもンだかな?」
今では遠ざかり、ほとんど見えなくなった廃城を背に、
白亜の鎧を着た“黒騎士”は誰に語りかけるでもなく、
そうつぶやいた。
――黒騎士(Black Knight)
これは、本来特定の階級を指し示す言葉ではない。
一般的には決まった主君との明確な主従関係を持たぬ
自称騎士達、自由契約の傭兵を指す言葉である。
多くの騎士達は盾等に自身の出自を表す紋章が描かれており、
その象徴を何よりも誉としている。
だが、黒騎士の場合はそういった紋章を持たない、
あるいは持つ事が出来ない為黒く塗りつぶされている。
紋章を持つ意味が無い故に。
紋章を持つ事が許されぬ身分であるが故に。
さらに、そういった者達は手入れの簡略化の為、
鎧が錆びぬようその全身を黒く塗装を施すので
その出で立ちは必然的に全て黒へと変貌する。
まさに、なるべくして黒き騎士となるのである。
その出自と、徹底した合理の結果によって。
ただし、黒騎士とはその出で立ち以外の部分、
――たとえば精神性までもが黒く染まっているからこそ
そう呼ばれるのだと揶揄する者達も多い。
「黒」という色彩自体が不吉であり、恐怖や絶望を象徴する色であるがゆえに。
そして大抵の場合、それは真実でもある。
彼等はその心にもその出で立ちに劣らぬ程の暗き陰が差し、
決して人には言えぬ過去を持つ者達が多い。
リーベリアの暗黒騎士ジークしかり。
アカネイアの黒騎士カミュしかり。
ガリシアの暗黒騎士ランスロットしかり。
リィンバウムの黒騎士
ルヴァイドしかり。
テリウスの
漆黒の騎士しかり。
彼らの中には、確かに主君に仕える者達も存在する。
但し、彼らにとっての真の主君であり、
何より優先するものは「己の信条」。
仮初の主君に仕える理由も、己の理想や野望の実現といった
目的の一致である場合がほとんどとなる。
そしてその真なる主、見えざる専制君主の命によっては
何の躊躇いもなく人倫にもとる暴虐を為し、
これまでの立場を容易に翻すことさえもありうる。
それが騎士道に反し、度し難い裏切りと見なし糾弾する者もあるが、
本人にすれば決してそうではない。
己の騎士道に、誰よりも、何よりも忠実に仕えた結果なのである。
「黒騎士」
黒は闇であり、静寂であり、停滞を意味する色。
そして全ての色を集めた色こそが黒であり、格の高さを示す色。
玄人(くろうと)の玄が元は黒から転じた言葉であるように、
黒はその世界への並ならぬ奥深さをも意味する色である。
――だからこそ、
他者に染められる事はない。
他者に惑わされる事はない。
他者と主を共にする事はできない。
他者と思いを分かち合う事もできない。
その黒き防具に覆われた心の深淵は、
誰にも理解する術はない。
誰一人隣に並び立てるものがない、
――気高く悲しき、孤高の騎士。
人は揶揄だけでなく、その生き様に対して
畏敬の念さえも込めて彼らをこう呼ぶのだ。
「黒騎士」と。
そういった意味では、たとえ神々しき白亜の鎧を身に包もうとも、
ガフ・
ガフガリオンはまさしく黒騎士と呼ぶに相応しい存在であった。
◇ ◇
まずは何よりも生存を優先する。
この先、しばらくは城に戻らぬほうがよいだろう。
あの赤毛の小娘が徘徊している可能性がある。
レシィという少年からも、充分に情報は頂いた。
異世界と召喚の事を聞き出せただけでもまずは幸運だったと言えよう。
あの少年から生命を賭してまで救ってやるほどの利用価値は、もはやない。
赤毛の小娘もいずれは倒すべき存在なのだろうが、それは後回しで構わない。
あの様子では、自信過剰ゆえにいずれ足元をすくわれるだろう。
他の参加者と噛み合わせ、消耗した後でじっくりと倒せばよい。
やがて、城が完全に見えなくなったところで足を止める。
流石に、この年で重装備のまま全力疾走を続けるというのは少々堪えた。
周囲の安全を確認してから木陰で座り、ペットボトルの水を一口だけ含む。
呼吸が整い気分が落ちついてきたところで、思考を再開する。
さて、このゲームから生還するにはどの策を取るのが最善であるかだ。
1.出会った者達全てを打ち倒し積極的に優勝を狙う。
2.主催と敵対する達と手を組み、可能な限り仲間を集めてこの舞台からの脱出を図る。
3.人の寄り付かぬ所を探し、状況が安定するまで様子を伺う。
大きく分けて、この3つに分けられる。
一見全てが正しくもあり、そして全てがそのままでは論外でもある。
――まずは一番目。
脱出がほぼ不可能である以上、従順に優勝を狙うのが正しくも見える。
ただし、様々な異世界からこれだけの数の参加者を取り揃えているのである。
自分のような一度死んだ者達でさえ、わざわざ蘇らせてまで。
あの最初の見せしめとして死んだ超魔王バールとやらのように、
自分では手に負えなさそうな存在も中にはまだ存在することだろう。
そのような者達と正面切って争った場合、その生命は確実に潰えることになる。
第一、主催側にすれば褒章は元より帰還の約束など
気分次第でいつでも反故にしてしまっても構わない。
そこにこの策の致命的な欠陥がある。
それにこれだけの舞台と装備をも惜しげもなく全参加者にばらまくのだ。
このような贅を凝らした悪趣味な余興、今回だけで終わらせるとは思えない。
次回を予定しているのなら、優勝者を口封じに出る可能性もある。
この策を選ぶのは、他に手段がない場合のみと考えておいた方がいい。
――そして二番目。
脱出が“ほぼ”不可能という意味では、
逆を言えばほんの僅かでもその可能性が存在するということだ。
この忌々しい首輪を取り外し、舞台から脱出できればそれに越したことはない。
自分が倒されるリスクを背負い、この殺戮劇に加担し続ける必要もないのだ。
だが、この策にも問題点はある。
首輪の解除に、舞台からの脱出に失敗した場合は、
まず確実に巻き添えを喰らい死亡する事になる。
主催はその合図一つで特定の参加者を死に至らしめることができるのだ。
確かに、主催側としても死んだ人間を蘇らせてまで殺し合いをさせたい以上、
多少の反抗なら多目に見るだろう。むしろ微笑でもって迎えるかもしれない。
だが、ゲームの破壊といった致命的な障害となれば話は別だ。
もはや存在自体が有害でしかなくなった存在に対して決して容赦はしない。
支配者という存在は決して狭量ではないが、また寛容でもあり得ないのだ。
それはイヴァリースの支配者のやり方から充分に学んでいる。
そしてその失敗は、己以外がかき集めた「無能な味方」の失態が原因となる場合もある。
戦場では、強大な敵よりも無能な味方こそが何よりも恐ろしい存在となる。
しかも、このゲームの破壊を意図する連中――、
例えば
ラムザのようなお人良しは、喩え極限状況だからと言って
他人を「役立たずだから」という理由で冷徹に斬り捨てたりは決してできないだろう。
それは人間としては美点といえるのだが、戦場では悪徳でしかない。
これも安全が確保されない限り、安易に取るべき手段ではないだろう。
――最後に三番目。
これが一見一番の上策のように思える。
自らは決して手を汚さず、戦いに乗る強者同士が
噛み合うのを高見の見物を決め込めばいい。
いかなる強者といえども、最後の一人になった頃には何らかの手傷を負う筈だ。
その最後の一人のみを、隙を付いて悠々と始末すればいい。
すでにその為の武装も一式は手にしてある。
あるいは、完全に脱出の目途がついたところで、
リスクを背負うことなく共に脱出すればいい。
失敗に巻き込まれなくてすむなら、それが最善だ。
だがこれは短期的に見ればともかく、長期的に見れば最も下策とも言えよう。
優勝狙いの場合、確かに残る参加者も手傷は負うかもしれない。
だが、それまでに打ち破った他の参加者からの装備を奪い、
さらに手に負えぬ存在へと化している可能性もある。
そもそも、ゲームの終盤まで生き残る連中というのは、
生き残るべくして残っただけの実力を有したものとなる。
そんな連中から絶好の隙など、見いだすのは至難の業となる。
むしろこちらが隙を突かれる可能性すらありえる。
さらに、その辺りの行動も主催は想定しているのであろう。
傍観者が決して絶対の有利とはならないように。
殺し合いを奨励し、否応なく加速させる為に。
そうでなければ、皆が皆気付いた時点で同じ行動を取る事態となる。
それに、積極的なこのゲームへの貢献者には、
それなりの救済措置さえ用意するかもしれない。
さらに、もし支給品の中に負傷を完全に癒すような支給品が
配られていた場合(おそらくそれはありえることだろう)、
何らかの“救済措置”が積極的な貢献者達に行われた場合、
最後の一人がそれを手にすればこちらの命運は確実に尽きる。
それに、脱出が上手く行きそうな場合であったとしても。
その目途がついた頃を見計らっておめおめと姿を晒したところで、
その日和見を決め込んだ意図は参加者全員の察する事となる。
「お前など一切信用できぬ」と周囲の不興を買うのは確実だ。
そうなれば、いかにラムザのようなお人良しでも周囲の不満を抑えきれないだろう。
よくて脱出の交換条件に追手からの殿という一番危険な場所に立たされるか、
最悪の場合は唯一人この舞台に置き去りにされる可能性も現れる。
――ならば、今しばらくはできるだけ多くの情報収集に徹し、状況を見極めることだ。
利用価値のない者は人知れず始末してその装備を奪い、自らの糧とする。
ゲームに関する貴重な情報を持つ者がいれば、それを出来るだけ引き出す。
苦境に陥っているものがいれば、救助して恩を高値で売り付ける。
あとは人脈の一つにでもするか、最悪の場合矢避けの楯にでもすればいい。
この段階で露払いをできるだけ行っておけば、
対主催集団にすり寄る無能な味方は減らせるだろうし、
最低でも難敵の強化阻止に繋がる。
対主催側に協力して脱出するにせよ、このゲームに乗り優勝を狙うにせよ、
生き延びるためにはこれが一番最適な手段となる。
だが、それができるのは序盤のみだ。
時間が立てば、弱者や愚者は真っ先に淘汰され
このゲームに乗った者達の力を増させることになる。
そしてもし仮に生き延びた強者であっても、
時間が立てば状況に絶望して殺人鬼と堕し、
情報交換どころではなくなる者も増え続けるだろう。
そして本人は無能であっても世渡りに長けた者どもは、
利用価値のある存在と友好的な人間関係を素早く構築して
周囲に殺害されにくい立場を築き上げるだろう。
そうなれば間引きも至難の業となり、脱出の可能性も潰える。
――だからこそ、今この時こそが一番積極的に動く必要がある。
気が乗らないが、これが考えうる中でもっとも現実的な案である。
事を優位に運ぶには、常に何らかのリスクを背負わなければならない。
それが、序盤に可能な限り他の参加者に出会い、情報収集を行うのが、
将来的に見て最もリスクが少ないと判断しただけのこと。
先行投資とでも考えればいい。今は戦力と情報を蓄える時期だ。
三つのうちいずれの策を取るにせよ、状況を見極めてからでも遅くはない。
幸いにも、既に武器も手に入った。大抵の事は己の手で為せる。
まずは人の寄り集まりそうな所を優先しよう。
だが、必ずこちらが先に相手を発見する必要がある。
出会った人物がこのゲームに乗った殺人鬼であれば
厄介事が増えるだけなのだから。まずは見極めが必要だ。
そして、友好的であった場合も距離感の取り方も問題となる。
少なくとも頼られる程の好印象は与えておくべきだろうが、
いつでも別行動が取れる程度の関係にとどめておくべきだ。
下手な慣れ合いは、自由な行動を阻害する。
そのため、第一優先で探すべきはラムザの小僧と、
あとはあの白い帽子を被った赤毛の女か。
あの召喚された時の状況から考えて、あの二人は生き延びていれば
まず反主催側の中心人物となるだろう。主催側と因縁もあるようだから。
これらの二人からは、情報をなるべく多く仕入れる必要がある。
それと、多少のリスクは伴うかもしれないが、もう一人候補がいる。
あの
ヴォルマルフと同じ金色の甲冑と、赤いマントを身につけた金髪の騎士――。
あれは間違いなくミュロンド・グレバトス教会の神殿騎士団のみが身に付けるものだ。
あの場にいた時は後姿だけで確証は取れなかったが、体格と名簿から考えるに辺り、
“あの”元骸旅団の頭目
ウィーグラフである可能性が極めて高い。
もしあの若造であれば、率いていた骸旅団が壊滅したが故に教会の庇護を求め、
神殿騎士団の傘下に加わっていた(あるいは未だ傘下にいる)と考えるべきなのだろう。
そして、ヴォルマルフの裏切りによって(あるいは内応して)
この舞台に参加者の一人として放逐されたということになる。
もしそうであれば、あの若造は元神殿騎士として
極めて有益な情報を所持している可能性がある。
むろん、あの進行役であるヴォルマルフとて愚かではないだろう。
あえて数ある部下の中からあの若造を参加者として選んだ以上、
以前からさほど大した情報を与えていないか、あるいは露見する事を
逆手にとって出鱈目な情報ばかりあの若造に与えている可能性もある。
あるいはもっと酷く、ウィーグラフも裏切られたフリをして未だ内応している可能性もある。
もっとも、それは可能性としては極めて低いのだが0というわけではない。
だが、人間というものはまったくの虚構から嘘をつく事は出来ない。
精巧に作られた嘘であればあるほど、
ある程度の事実を下敷きにする場合が極めて多い。
こちらは充分に情報を引き出した上で、それを見極めればよい。
裏切りや騙し合いなら、こちらに一日の長がある。
五十年戦争の中で、あの男の事はよく知っている。
戦場で青臭い理想論ばかり吐いていた生真面目な若造が
にわか仕込みの虚言を労したところで、
そう易々とこちらが謀られるとは思えない。
もし、ウィーグラフが敵であるか役立たずであった場合は、
周囲に彼にとって不利となる情報をばらまき、
参加者同士を噛み合わせるといった使い道もある。
何しろ、マント以外はあのヴォルマルフと同じ出で立ちだ。
その気になれば悪評はいくらでも流せるし、
そうなればもはや言い訳のしようがないだろう。
あの若造、個人的な戦闘力だけは折り紙付きと来ている。
窮地に陥れてやれば、さぞや人減らしに貢献してくれることだろう。
だが、これはカードの一つとして今は温存しておくことにしよう。
なんにせよ、今後のこちらの出方を決めるのはあの若造次第だ。
――――さて、兎にも角にも情報収集と露払いが第一だ。
思考を纏めると、そのまま北上への移動を再開する。
すでに体力も十分に回復した。
勿論、目指すはC-3の村だ。
既に太陽も西に傾きつつあった。
おそらく、あの村には夜露を凌ぐべく多くの人が集まっていることだろう。
必然的に、他の参加者との遭遇率は跳ね上がる事になる。
それは好機でもあり、同時に危機でもある。
それをどう活かすかは、己の才覚次第だ。
――なんにせよ、用心だけはせねばならンな。
周囲から目撃される恐れのある見晴らしの良い場所は極力避け、
白亜の甲冑と同じ色をした花畑の中を選んで歩く。
やがて日がさらに大きく傾き、全てを赤く染めだした頃に、
ガフ・ガフガリオンは彼ら二人と出会った。
戦場の死体が腐乱した死臭とも異なる、形容しがたい猛烈な異臭と共に。
一人は前髪をも妙齢の女性のように伸ばし、
胸元を開いたいかにもな自惚れ屋っぽい優男。
そしてもう一人は、先ほど思考の中にあった
金色の甲冑に身を包んだ若造、ウィーグラフ・フォルズ。
――ほう、早速見つかったか。聖アジョラの加護でもあるのかも知れンな?
そんな何の益体もない冗談事を考えつつ、二人の様子を慎重に眺める。
その二人組はそろって鼻を摘みながら
顔面に何かの汁を盛大に滴らせ、
蓋が空き引っ繰り返った金属の小箱と
その下に内容物を盛大にぶちまけられた弁当を
複雑な感情が籠った視線で睨みつけていた。
手塩にかけて育てた自慢の我が子が目の前で失われたような絶望の瞳で。
あるいは自分を裏切った愛する者を見つめるような、暗い情念に満ちた視線で。
二人は金属の小箱が乗っかった弁当と
対面の相棒を交互に眺めながら何かを罵り合っている。
あの異臭の発生源も、あの金属の缶から来ているようだ。
状況から察するにあれは食事前の事故で、
二人は敵対関係ということはなさそうだ。
むしろ揃って食事を取ろうとしているから考えて、
有る程度の信頼関係にはあるのだろう。
このゲームに乗っているとは、今の所考えにくい。
緊張感に欠けること夥しいが、大方あの異臭が漂う
食糧に関することで揉めているのだろう。
残念ながら、会話は遠くて内容まではよく聞きとれない。
こういった場でなければああいう喧嘩も微笑ましいが、
放っておけば取り返しの付かない事態になる恐れもある。
歴史においては宴会でスープ一杯を出し惜しみした
恨みによって滅ぼされた国というのも存在するのだ。
喰い物の恨みは恐ろしいものがある。空腹時なら尚更であろう。
――まさかとは思うが、ヴォルマルフもこれを計算に入れた上で
ハズレの食糧をあいつらに仕込んだわけじゃあるまいな?
だとしたら、やり方はセコいが相当な曲者かもしれンぞ。
だが、この事態はこちらにしてみれば好機でもある。
下らない争いではあるが、うまく仲裁すれば二人の印象もよくなるだろうし、
何より労せずして貴重な情報が手に入るだろう。
よし、どう切り出すべきか。
オレは慎重に頭の中で掛けるべき言葉を考えながら、
目の前の二人に近づいた。
【C-3・小山の麓/1日目・夕方(放送直前)】
【ガフ・ガフガリオン@FFT】
[状態]:健康
[装備]:(血塗れの)マダレムジエン@FFT、ゲルゲの吹き矢@TO、絶対勇者剣@SN2 天使の鎧@TO
[道具]:支給品一式×2(1/2食消費) 生肉少量 アルコール度の高い酒のボトル一本
[思考]:1:どんな事をしてでも生き延びる。
2:まずはラムザと赤毛の女(
アティ)を探して情報収集。邪魔者は人知れず間引く。
3:
マグナに会ったらレシィのことを伝えてやってもいい。
4:
アグリアスには会いたくない。
5:…それにしても、この臭いはなんとかならンのか?
[備考]:ガフガリオンが食事の準備中である
中ボスとウィーグラフの前に向かっています。
【シュールストレミングの缶詰@現実】
中ボスの食糧二日分として宛がわれていた巨大な缶詰。一食分で一個、合計六個与えられている。
スウェーデンで食されている缶詰で、ニシンを塩漬けにし、缶の中で発酵させた漬物の一種。
その強烈な臭いから、「世界一臭い缶詰」などと呼称されることもある。
具体的には、魚が腐った臭い、あるいは生ゴミを直射日光の下で数日間放置したような臭い。
しばしば下水やドブ川に喩えられ、最悪の場合は失神することもありうるという。
スウェーデン語でスール(Sur)は、「酸っぱい」を、ストロミン (stromming) はバルト海のニシンを意味する。
現実世界とイヴァリースとは当然のように言語が異なる為、
正確には「発酵ニシンの缶詰」「すっぱいニシンの缶詰」とでも呼ぶべきなのだろう。
缶詰は内部で発生した発酵ガスによって缶自体が膨れており、気圧差で破裂する危険さえある。
開封する際にそのガスによって汁が勢いよく飛び出すため、屋内で開けない事が推奨されている。
中ボスとウィーグラフの二人はこれを不用意に開けてしまったが為に、その顔面に汁を浴びてしまった。
【ジェニファーの手作り弁当@魔界戦記ディスガイア】
ウィーグラフの食糧二日分として宛がわれていた大盛りの手作り弁当。合計六つ与えられている。
本来はジェニファー達が魔界のピクニックに出かけた際に作られたもので、
中ボスが全て盗み食いした為本来は彼の胃袋の中に収められているはずだが
こうして支給品一式の食糧扱いで配布されている。
単なる美味しい食糧扱いで別段際立った効果はないが、
関係者にはさぞや郷愁を誘うカホリをしていたのかもしれない。
ただし、そのうちの手作り弁当一つの上に蓋の空いた件の缶詰が
盛大に乗っかっているので、その素晴らしきカホリも今や台無しである。
最終更新:2009年06月05日 10:01