第一回放送

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

第一回放送  ◆EboujAWlRA



おはよう、皆。
夜が明けて陽も姿を出して、まず最初の定時放送の時間だよ。
定時放送、つまり入った瞬間に首輪が爆発する『禁止エリア』と新たな死亡者の発表の時間ってこと。
禁止エリアについては、最初に言ってなかったけど許してね。
何処かに身を隠している間に他の皆が死んで優勝って言うのは……やっぱりどこか違うと思うんだ。

ああ、そうだ。この放送を知ってる人も居るでしょ?
その人なら分かると思うけど、ここで僕が与えるのは『死者の発表』と『禁止エリアの発表』の二つだけだよ。
そして、それは嘘偽りのない確かな真実だから。
僕は誤報を絶対に流したりはしない、それが企画運営のルールだし僕は嘘が嫌いだからね。
……どう受け止めるかは君たち次第なんだから、僕がここで幾ら言ってもしょうがないけど。

さて、まず最初に禁止エリアの発表から行くよ。
死亡者の発表で唖然として聞き忘れた、なんてことがないためにね。
ちなみに禁止エリアの場所をメモ帳に書いておくか、地図へ直接に印をすることをおススメしようかな。
ああ、腕とかマジックで書いちゃうのも良いかもね。
じゃあ、行くよ。

ちょうど一時間後の7:00から【I-2】が禁止エリアになるよ。
その二時間後。今から三時間後の9:00に【G-7】。
で、その二時間後で今から五時間後の11:00に【J-8】。

僕が言った、この三つが『禁止エリア』だよ。
禁止エリアの数が多いと思った人も居るかな?
まあ、禁止エリアの増える数に関しては時間が経つにつれて増えたり減ったりするかもね。
そこはケースバイケース、進行状況次第さ。

じゃあ、次の『死亡者の発表』に行こうか。
自分が殺したい相手はちゃんと死んでいたか、自分の探し人は生きているか。
何人死んだか、それを確認する時間だよ。
これもメモ帳に書くか、名簿に直接線を引くかをした方が良いんじゃないか。
ゆっくり読むから落ち着いて聞いてね。


この計十六人が六時間で死んだ人間。
『六時間でこれだけ』と思うのか、『六時間しか経っていないのにこんなに』と思うのか。
それは受け取る君たちに任せるよ。

それじゃあこれで終わりだよ、放送の大体の流れは分かったね。
まだまだ始まったばかりだから……君たちの健闘を祈るよ。
出来る事なら、もう一度こうやって僕の声を聞けるようにね。


   ◆   ◆   ◆


時計の回る音が、カチコチと響きわたっている。
ゆったりと針の動く音を聞いている、薄い色素をした長髪の少年がそこにいた。
少年の名はV.V.、今からおよそ六時間前に参加者たちに殺し合いの開催を宣言したその人だ。

今は定時放送と言う作業を終えて一先ずの休息を取っている最中だ。

「時の流れ……か。僕もそういう物を感じる年なんだね」

止まることのない無情な時の流れを感じさせる、古い時計。
その時計をV.V.は何の脈絡もなくポツリと置かれた巨大な姿見越しに眺める。
遅々と回る短針と、その短針よりもさらに遅く思い出したように長針が回る。

死者の十六人の中にV.V.の甥にあたり、いの一番に反抗したルルーシュの名があった。
意外、と言うわけではない。
戦闘実験第六十八番プログラムを思い出させるこの殺し合いは、知恵や力『だけ』で確実に生き残れるようなものではないのだ。

「とは言え、マリアンヌの息子の死亡は予想よりも大分早かったかな」

姿見越しに動き始める時計を眺めながらV.V.はポツリと呟く。
外見は幼い少年そのものだが、V.V.は六四年の時を過ごしてきたのだ。
参加者の一人であるC.C.ほどではないが、近しいものとの別離も幾度となく経験している。

「シャルルに似た君のことは嫌いじゃなかったんだけどね」

まるで他人事のようにV.V.は軽く呟く。
少なくとも肉親の情を感じさせる色はない。
どちらかと言えば、その事実に暗い喜びを感じているように見える。
彼の内心を知るのは彼だけ、少なくとも今の世界に他人の心境を完全に悟れる人間は居ないのだ。

他人には知ることができない何かを抱いたまま、また六時間後にV.V.は放送を行う。
殺し合いが起こるまでV.V.は作業的にそれを行うだけだ。
これが終わるのはあの島に立っている人間が一人になった時だけ。

時計は、静かに動き続ける。


時系列順で読む


投下順で読む


000:不幸の星・序章 V.V. 122:第二回放送



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー