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惑いのフレイムヘイズ

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惑いのフレイムヘイズ  ◆.WX8NmkbZ6



 森の中で長い黒髪を靡かせて、疾風の如き速度のシャナが走っていた。
 危険人物である田村玲子を追うという目的を持って駆けていたのだが、その速さは次第に緩んでいく。
 そして追い始めてから僅か数分で足を止めた。

 杉下右京に会うまでは玲子の足跡を頼りに追跡していたが、今は幾ら進んでもそれが見付られない。
 右京とシャナから逃走した時の、変形した頭部を利用した移動をしているのだろう。
 だが木の枝などに残った僅かな痕跡から追う事は可能。
 また施設に身を寄せている確率が高いので、廃洋館や展望台をあたれば発見出来るかも知れない。
 それでも、シャナは彼女を追うのをやめた。

 シャナの目的はこの殺し合いを止める事ではない。
 一刻も早くここから出る、それだけだ。
 その為危険人物が会場内を闊歩していてもシャナにとっては問題ない。
 それで首輪解除に使えるような参加者を殺して回られては困るが、玲子はシャナの前で劉鳳の首輪を回収している。
 ただの化物ではなく知恵があり、彼女なりに首輪を解析しようとしているように見えた。
 ならば放置して、適当に不要な参加者の口減らしをして貰った方が助かる。
 参加者が減っていれば、シャナが殺し合いに乗らざるを得なくなった時の手間が省けるのだ。

 また玲子の首輪に関心はあったが、シャナは緑髪の少女の首輪を右京に渡してしまった。
 今のシャナは首輪を一つも所持しておらず、この場で彼女の首輪を手にしたとしても他の首輪と比較出来ない。
 よって慌てて彼女の首輪を奪いに行く必要はなかった。
 それに文字通り人間離れした能力を持つ玲子ならば、シャナが殺す前に殺される確率も低いだろう。
 次に会った時は確実に仕留める、それで充分だ。
 その頃には彼女の持つ首輪や他の参加者の支給品も増えているはずなので一石二鳥と言えた。

 ならばとシャナは新たな目的地を考える。
 差し当たっての目標は首輪の解析が出来る参加者との接触、サンプルとなる首輪の収集、コキュートスの捜索。
 既に死亡したルルーシュのような、主催者を知る参加者から情報収集もしておきたい。
 殺し合いに乗る以外の帰還方法を考えるならこれらは不可欠だ。

 首輪については、積極的に参加者を殺して回るつもりはなかった。
 城戸真司と会話した時は柄にもなく感情的になってしまったが、他の参加者と無闇に衝突しては動きにくくなるからだ。
 特に泉新一や真司のような理屈の通じない参加者の前で人間を殺害するのは面倒である。
 よって弱者や技術者まで殺してしまうような危険人物は人目に付かぬよう殺すが、初めから参加者を殺す為に行動する必要はない。

 第一回放送の時点で死者は十六人、順当に行けば現在は二十人を越えているだろう。
 参加者のうちの三人に一人が死亡している。
 そう考えると、殺人を犯さずとも死体を探せば効率的に首輪が手に入るはずだ。
 それに危険人物を殺せばその者が殺した者の支給品も手に入るので、コキュートスを見付け易くなる。
 焦る必要はない。

 それから会場の地図を思い出し、頭の中で広げる。
 シャナの現在位置はC-3。

 殺し合いの開始から半日、積極的な参加者は施設が集まる東へ向かっているはずだ。
 森の木々の間からでさえ爆発や火災が確認出来る点からも、多くの参加者が東にいると分かる。
 逆に西にいるのは、殺し合いから逃げ回っている力のない者。
 或いは移動出来すにいる怪我人、死人。
 はたまたそういった弱者を狩る者か。
 右京は西へ向かっていたが、警官という職業から考えると車での弱者の回収を目的としているのだろう。
 つまり首輪の収集や不要な参加者の口減らしをするなら西。
 他の有用な参加者と接触するには東。
 首輪のサンプルを技術者との接触の前に用意しておきたいシャナにとって、より目的に合っているのは西だ。

「……」

 真司や新一は、シャナと別れた場所から道路へ出て南下しているだろう。
 翠星石という弱者を連れている以上、山道よりも歩き易い道路を選ぶのが自然だからだ。
 また北の山岳方面よりも南の方が他の参加者と出会う機会も増える。
 殺し合いを止めようと考えている真司や新一ならそちらを選ぶはずだ。
 そしてその場合、翠星石の歩調に合わせていれば西のB-1からD-1付近を彷徨いている可能性が高い。

 シャナは彼らに会いたくなかった。
 自分の中にある奇妙な感覚の正体が、分からないから。

 敵までも助けようとする新一の抱く感情は、人間のただの感傷に過ぎないと思った。
 しかしそれを心地良いと感じてしまった自分自身への戸惑いが今も残っている。
 人の生活、人との関わり、どれも必要ない。
 世界を救う使命を帯びたフレイムヘイズ、炎髪灼眼の討ち手に必要なのは討滅の力だけ。
 そう思っていたはずなのに、新一や真司はその合理的な思考を掻き乱す。
 それを鬱陶しいと思いながら、どうして心地良さを感じてしまったのか。
 その理由が分からないから会いたくない。
 シャナには他者との交流で生まれる感情が分からない。

 しかし彼らの存在が自分の目的に左右してくるのは何となく癪だった。
 彼らに会いたくないからと東に向かう事に、どうしてか敗北感を覚える。
 故にシャナは自身の合理的な判断に従って西へ足を向けた。

 彼らに出会う事になったとしても構わない。
 フレイムヘイズにとって、それは些末事に過ぎないのだ。

 幼い炎髪灼眼の討ち手は、胸に芽生えた小さな違和感から目を逸らし続ける。


【一日目 昼/C-3 山中】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[装備]:ゲイボルグ@真・女神転生if...、ビルテクター@仮面ライダーBLACK
[支給品]:基本支給品(水を一本消費)
[状態]:健康、力と運が上昇、極度のイライラ
[思考・行動]
1:首輪を解除できる人間とコキュートスを探す。首輪解除が無理なら殺し合いに乗る。
2:首輪解除の邪魔になるような危険人物には容赦しない。
3:西へ向かい、役に立たない人物や死体から首輪を回収する。
4:真司に対する苛立ち。彼が戦いを望まなくなった時に殺す。
5:玲子の首輪に関心、次に会ったら殺す。
6:主催者について知っている参加者がいれば情報を集める。


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