杉下右京の正義 ◆EboujAWlRA
バトルロワイアル会場に車の排気音が響いた。
釣られるように城戸真司、泉新一、翠星石の三人は音の方向へと意識を向ける。
そこにはオープンバギーが丁寧な運転でこちらへと向かってきていた。
オープンバギー、つまりフロントも剥き出しの車であるため、それに乗る人間の姿も目視できた。
眼鏡をかけた皺の目立つ壮年の男性とに制服を座った短髪の女子学生の二人だ。
釣られるように城戸真司、泉新一、翠星石の三人は音の方向へと意識を向ける。
そこにはオープンバギーが丁寧な運転でこちらへと向かってきていた。
オープンバギー、つまりフロントも剥き出しの車であるため、それに乗る人間の姿も目視できた。
眼鏡をかけた皺の目立つ壮年の男性とに制服を座った短髪の女子学生の二人だ。
『車か、随分と堂々とした連中だな。それと、あの制服は最初に見せしめにされた女生徒同じもののようだ』
新一の右手に寄生しているミギーが淡々と言葉を吐く。
ミギーの言葉に視線を上げると、確かに助手席の女生徒は記憶の中にある第一の被害者・小早川ゆたかと同じ制服を着ていた。
ミギーの言葉に視線を上げると、確かに助手席の女生徒は記憶の中にある第一の被害者・小早川ゆたかと同じ制服を着ていた。
「おい、ミギー……あれってまさか?」
だが、新一にはそれ以上にあの二人が寄生生物・パラサイトではないか、という疑問が浮かんでいた。
田村玲子と後藤と、新一が知っているだけでもパラサイトは二匹も混じっている。
その二匹が居る以上、他のパラサイトが居ても不思議ではない。
また、パラサイトは外見で判断することは不可能であるため、新一の疑問は当然とも言える。
田村玲子と後藤と、新一が知っているだけでもパラサイトは二匹も混じっている。
その二匹が居る以上、他のパラサイトが居ても不思議ではない。
また、パラサイトは外見で判断することは不可能であるため、新一の疑問は当然とも言える。
『いや、あれに乗っている二人はパラサイトではないな』
しかし、ミギーはその新一の言葉を即座に否定する。
パラサイトとパラサイトは互いにテレパシーのようなもので感じあう事ができる。
そのパラサイトであるミギーが相手はパラサイトでないと断言したのだから、パラサイトではないのだろう。
新一はミギーの言葉に胸をなでおろすが、すぐに気を引き締めなおす。
パラサイトとパラサイトは互いにテレパシーのようなもので感じあう事ができる。
そのパラサイトであるミギーが相手はパラサイトでないと断言したのだから、パラサイトではないのだろう。
新一はミギーの言葉に胸をなでおろすが、すぐに気を引き締めなおす。
「いや、でも殺し合いに乗ったって可能性も……」
「車に乗ってるだけに、ですぅ?」
「車に乗ってるだけに、ですぅ?」
茶化すような場違いな言葉に、新一も真司も目を丸くして翠星石へと視線を向ける。
その視線に翠星石はハッと顔を赤く染めて、「冗談にもならねえですね」と自身の言葉にツッコミを入れる。
姉妹である真紅の死を受け入れたはいいが、未だに動揺しているのだ。
ミギーはその翠星石の言葉を拾わず、新一の言葉をつなげる。
その視線に翠星石はハッと顔を赤く染めて、「冗談にもならねえですね」と自身の言葉にツッコミを入れる。
姉妹である真紅の死を受け入れたはいいが、未だに動揺しているのだ。
ミギーはその翠星石の言葉を拾わず、新一の言葉をつなげる。
『パラサイトではないことがわかっただけで、殺し合いに乗っているかどうかまではわからないな。
あの車でそのまま我々を轢き殺そうとしてくるかもしれないぞ』
「じゃあ隠れるか?」
「いや、もう遅いんじゃないのか? それに、スピード落としてる」
あの車でそのまま我々を轢き殺そうとしてくるかもしれないぞ』
「じゃあ隠れるか?」
「いや、もう遅いんじゃないのか? それに、スピード落としてる」
先ほど、すべてを守ると決意を新たにした真司はライダーデッキを構えたまま呟く。
そして真司の言葉通り、オープンバギーはスピードを落としながら近づいてくる。
新一たちにも、車に乗った二人の顔がくっきりと見えるようになる。
運転手の男性は眼鏡をかけた皺の目立つ壮年の男性だ、背はあまり高くない。
助手席に座った女生徒は、ミギーの言葉通り確かに見せしめにされたゆたかと同じ制服だ。
そして真司の言葉通り、オープンバギーはスピードを落としながら近づいてくる。
新一たちにも、車に乗った二人の顔がくっきりと見えるようになる。
運転手の男性は眼鏡をかけた皺の目立つ壮年の男性だ、背はあまり高くない。
助手席に座った女生徒は、ミギーの言葉通り確かに見せしめにされたゆたかと同じ制服だ。
『新一、様子見のために私は口を閉じる。下手なことはするなよ』
ミギーの言葉と同時に、キキっと小さなブレーキ音を立てて車は完全に動きを止めた。
そして、その眼鏡をかけた上品な雰囲気を持つ男性がにこやかな表情のままに車から降りてきた。
そして、その眼鏡をかけた上品な雰囲気を持つ男性がにこやかな表情のままに車から降りてきた。
「突然申しわけありません。もしや、貴方は『翠星石』さんでは?」
言葉通り突然な問いに、真司たち三人は思わず虚を付かれる。
しかし、手を上げながら降りてくる二人に敵意がないことを察することも出来た。
新一と真司は翠星石に視線を移し、翠星石は心得たと頷いた後に口を開く。
しかし、手を上げながら降りてくる二人に敵意がないことを察することも出来た。
新一と真司は翠星石に視線を移し、翠星石は心得たと頷いた後に口を開く。
「確かに私は翠星石ですぅ……でも、なんで翠星石のこと知ってるですか?
って言うか、お前誰ですか?」
「ああ、これは失礼しました。私としたことが、自己紹介という大切なことを忘れていたなんて」
って言うか、お前誰ですか?」
「ああ、これは失礼しました。私としたことが、自己紹介という大切なことを忘れていたなんて」
眼鏡の男性は照れ笑いを浮かべる。
その立ち振る舞いを見るかぎりでは、この男性が悪人とは思えなかった。
もちろん、一見しただけで善人と悪人を見分けられるほどの眼力を持っている人間はこの三人の中には居ない。
だからこそ、三人は緊張を解くことはしなかった。
その立ち振る舞いを見るかぎりでは、この男性が悪人とは思えなかった。
もちろん、一見しただけで善人と悪人を見分けられるほどの眼力を持っている人間はこの三人の中には居ない。
だからこそ、三人は緊張を解くことはしなかった。
ペコリと頭を下げた眼鏡の男性・杉下右京の言葉に反応して、女生徒・岩崎みなみも小さく頭を下げる。
だが、その顔は曇った表情を貼りつけており、なにかに追い込まれているように見えた。
新一たちは少々みなみの表情に引っかかりを感じながらも、お辞儀を返す。
だが、その顔は曇った表情を貼りつけており、なにかに追い込まれているように見えた。
新一たちは少々みなみの表情に引っかかりを感じながらも、お辞儀を返す。
「あ、どうも。俺は城戸、城戸真司です」
「俺は泉新一です……って、警視庁?」
「警視庁の人ってことは警察官じゃないか!」
「俺は泉新一です……って、警視庁?」
「警視庁の人ってことは警察官じゃないか!」
順に真司と新一が右京の警視庁という言葉に反応を示す。
だが、僅かではあるが警戒を解いた新一に対して、真司の様子はむしろ警戒を深めたようだった。
警官であろうと一人の人間であり、それだけで信用できないということは過去の出来事で身にしみている。
だが、僅かではあるが警戒を解いた新一に対して、真司の様子はむしろ警戒を深めたようだった。
警官であろうと一人の人間であり、それだけで信用できないということは過去の出来事で身にしみている。
「ええ、警察手帳があればいいのですが、生憎にも手帳も手錠も奪われてしまったようでして」
刑事だというのにこんな様では懲戒免職ものですねぇ、と笑いながら答える。
右京の懐の深い物言いは、確かに刑事といった荒事に通じた職業であることを考えれば説得力があった。
右京の懐の深い物言いは、確かに刑事といった荒事に通じた職業であることを考えれば説得力があった。
「貴方や貴方の姉妹が人形であるという情報を持っていたもので、その整った顔立ちと小柄な体躯からそうではないか、と思ったのです」
真司の身体に隠れた翠星石へと、右京はやはり穏やかな笑みのまま言葉を返す。
「情報って、この子の知り合いにでもあったんですか?」
「いえ、支給品と私のちょっとした憶測です。
全ての参加者の背景が事細かに……とまでは行きませんが、ある程度の情報が記されたデータを私の仲間に支給されていまして」
「いえ、支給品と私のちょっとした憶測です。
全ての参加者の背景が事細かに……とまでは行きませんが、ある程度の情報が記されたデータを私の仲間に支給されていまして」
ある程度の情報、と聞いて新一は思わず抱え込むようにして右腕を左手で握り締める。
新一がパラサイトのミギーと同居をしている存在だと知られている可能性がある。
新一がパラサイトのミギーと同居をしている存在だと知られている可能性がある。
「……それは、その人の秘密とかも?」
「いえ、簡単なものですよ。職業と性別に年齢だけです。
職業欄を見ると犯罪者や革命家、流浪人など中々バラエティに飛んでいるようですね」
「いえ、簡単なものですよ。職業と性別に年齢だけです。
職業欄を見ると犯罪者や革命家、流浪人など中々バラエティに飛んでいるようですね」
「ただ世紀王や魔神皇などの聞き覚えのない単語が混じっているのが少々気にかかりましたが」と右京は付け加える。
それだけならば、ミギーのことを察しているとは思えない。
ミギーという人外の存在に対して、必ずしも好意的な反応を示すとは限らないからだ。
そして、その反応は同時に新一への懐疑心に繋がる可能性もある。
それだけならば、ミギーのことを察しているとは思えない。
ミギーという人外の存在に対して、必ずしも好意的な反応を示すとは限らないからだ。
そして、その反応は同時に新一への懐疑心に繋がる可能性もある。
「でも、それだけの情報でどうしてこの子が翠星石だってわかったんですか?」
「いえいえ、翠星石さんの項目は非常に個性的なため、意外とわかるものですよ。
なにせ、異様なまでに長寿で職業が人形なのですからねぇ。
私もこれには半信半疑と言ったところでしたが、あまりにも小柄な女性を見かけましたので、もしや、と思い声をかけさせて頂きました」
「いえいえ、翠星石さんの項目は非常に個性的なため、意外とわかるものですよ。
なにせ、異様なまでに長寿で職業が人形なのですからねぇ。
私もこれには半信半疑と言ったところでしたが、あまりにも小柄な女性を見かけましたので、もしや、と思い声をかけさせて頂きました」
稼働時間ではなく文字通り製造時から現在までの時間だとしたら、恐らくこの場に居る中で最も長いはずだ。
右京がその事実を受け止められたのは翠星石の姿を見てから、信じがたいほどの年齢だ。
右京がその事実を受け止められたのは翠星石の姿を見てから、信じがたいほどの年齢だ。
「翠色の服も着ていましたし、翠星石さんを探すという目的がありましたので、確信までは持てずとも声をかけさせて頂いたのです」
「翠星石を探してた、ですか?」
「翠星石を探してた、ですか?」
翠星石が小首を傾げながら尋ねる。
右京は相変わらず柔らかい表情を崩すことなく、だが少し言いづらそうに口を動かした後に翠星石の疑問に答える。
右京は相変わらず柔らかい表情を崩すことなく、だが少し言いづらそうに口を動かした後に翠星石の疑問に答える。
「おっと、これは回りくどくなってしまいました。
実は貴方が劉鳳さんと共に居た場面を見た人が居るんですよ」
実は貴方が劉鳳さんと共に居た場面を見た人が居るんですよ」
劉鳳、その名前に翠星石と真司がぴくりと反応を示す。
真司もその性格からか顔をうつむかせてしまう。
右京は真司の反応をしっかりと確認していたが、今は問い詰めることはしなかった。
真司もその性格からか顔をうつむかせてしまう。
右京は真司の反応をしっかりと確認していたが、今は問い詰めることはしなかった。
「劉鳳さんのことは、非常に残念です。
彼の知り合いとも出会い、劉鳳さんが非常に正義感の強い人物であることを聞きましたからねぇ」
彼の知り合いとも出会い、劉鳳さんが非常に正義感の強い人物であることを聞きましたからねぇ」
すらすらと滑らかに言葉を口にしていくが、その顔は怒りと悲しみが織り交ざった表情が作られていた。
「その、劉鳳さんの知り合いっていうのは、もしかして……」
「そこのみなみちゃんですか」と、真司には最後まで言うことは出来なかった。
真司は劉鳳を殺した、それは誤魔化しようのない真実だ。
悪意を持って殺したわけではないが、劉鳳にも一切の非はなかった。
そこに悪があるとすれば、短慮であった真司以外の他にない。
だからこそ、今の真司は劉鳳の知り合いと会うこと以上の恐怖がなかった。
たとえ、いずれ行わければいけない償いであったとしても。
真司は劉鳳を殺した、それは誤魔化しようのない真実だ。
悪意を持って殺したわけではないが、劉鳳にも一切の非はなかった。
そこに悪があるとすれば、短慮であった真司以外の他にない。
だからこそ、今の真司は劉鳳の知り合いと会うこと以上の恐怖がなかった。
たとえ、いずれ行わければいけない償いであったとしても。
真司は思わずホッと胸をなでおろすが、その事実に自己嫌悪の情が浮かぶ。
その振る舞いに、右京は鋭く反応を示す。
だが、ここで言うべきかどうか、一瞬だけ迷いを示すが、少々顔をつらそうに歪めながら口を開いた。
その振る舞いに、右京は鋭く反応を示す。
だが、ここで言うべきかどうか、一瞬だけ迷いを示すが、少々顔をつらそうに歪めながら口を開いた。
「城戸さん、少々不躾ですが、貴方は劉鳳さんの死と関連していますね?
……ひょっとすると、直接的な原因になっているのでは?」
「ッ!?」
……ひょっとすると、直接的な原因になっているのでは?」
「ッ!?」
「推測ですがね」と付け加えるが、右京は確信に近い思いで抱いていた。
右京は笑みを消し、何も言わずにじっと真司を見つめる。
ゴクリと、唾を飲み込んだ後、うなだれながら真司は口を開いた。
右京は笑みを消し、何も言わずにじっと真司を見つめる。
ゴクリと、唾を飲み込んだ後、うなだれながら真司は口を開いた。
「俺が、殺したんです……劉鳳さんを。
だけどわざとじゃない! その、劉鳳さんがライダー……いや、とにかく人を殺したんだと勘違いして……!」
だけどわざとじゃない! その、劉鳳さんがライダー……いや、とにかく人を殺したんだと勘違いして……!」
真司が叫ぶように言い放つが、右京はまだ何も言わずに真司の次の言葉を待つ。
「もう二度と誰も殺さない、殺したくなんてない……劉鳳さんが守ろうとしていた命を絶対に俺が守ってみせる……!」
命に変えても、と真司は心を絞るような声を漏らした。
「なるほど、自衛の手段を持たない人を守るという考えは素晴らしいものです」
右京は眼鏡の下の瞳を柔らかい色に染めながら、真司の言葉に賛同する。
だが、その言葉の奥に僅かな危うさも感じ取っていた。
自身を犠牲にしてでも何かを守ろうとする危うさと、守ることを意識しすぎて敵対者を殺しかねない危うさを。
だが、その言葉の奥に僅かな危うさも感じ取っていた。
自身を犠牲にしてでも何かを守ろうとする危うさと、守ることを意識しすぎて敵対者を殺しかねない危うさを。
「ですが、人を殺すという考えは捨て切れていますか?」
「……」
「……」
真司は何も言わずに、右京の目を見て右京の真意を図ろうとする。
右京は無言の真司からその思いを感じ取り、言葉を続ける。
右京は無言の真司からその思いを感じ取り、言葉を続ける。
「正当な防衛の結果であろうと、襲われた人を救おうとした結果であろうと、貴方が人を殺したという事実は決して消えません」
真司に苦悩の表情が出ていることを察しながら、右京は言葉を続ける。
罪には罰が与えられる、それは加害者にも被害者にも必要な儀式のようなものなのだ。
だからこそ罪を誤魔化してはいけない、罰に恩赦を与えてはいけない。
罪には罰が与えられる、それは加害者にも被害者にも必要な儀式のようなものなのだ。
だからこそ罪を誤魔化してはいけない、罰に恩赦を与えてはいけない。
「一人を殺すことも二人を殺すことも同じです。
そして、なにかを成そうするために自らの命を捨てることも同じなのです。
その全てが、命に対する冒涜なのですよ」
そして、なにかを成そうするために自らの命を捨てることも同じなのです。
その全てが、命に対する冒涜なのですよ」
眼鏡の奥に潜む、右京の瞳が鋭く光った。
僅かにたじろぐ真司に、さらに畳み掛けるようにして言葉を続けた。
僅かにたじろぐ真司に、さらに畳み掛けるようにして言葉を続けた。
「他者の命を奪う道が決して償いの道ではないように、自らの命を捨てる道も償いの道ではありません。
貴方だってわかっているはずですよ、城戸さん」
貴方だってわかっているはずですよ、城戸さん」
真司は右京の責めるような言葉に窮しながら、しかしどこか高揚した心のまま口を開く。
「だから……襲った相手に対しても命を奪わず、むしろ守るって言うんですか?」
「もちろんです。私は生き残っている全ての人を守るつもりです。
当然、その全ての人には悪意を持って人を殺して回っている人物も含めますよ。
誰も殺さないし、誰も殺させません。そして、V.V.なる少年を逮捕するのです」
「もちろんです。私は生き残っている全ての人を守るつもりです。
当然、その全ての人には悪意を持って人を殺して回っている人物も含めますよ。
誰も殺さないし、誰も殺させません。そして、V.V.なる少年を逮捕するのです」
真司は右京の言葉にゴクリと唾を飲み込む。
右京は真司に仲間になって欲しいと思いつつも、殺人犯として扱っているのだ。
右京は真司に仲間になって欲しいと思いつつも、殺人犯として扱っているのだ。
その右京の姿勢に、真司の心はこれ以上ないほどに高揚していた。
罪を認めその罪を償え、と言われた。
それは精神的な償いだけでなく社会的な償いもしろ、と。
思えば、それを求めていたのかもしれない。
罪を認めその罪を償え、と言われた。
それは精神的な償いだけでなく社会的な償いもしろ、と。
思えば、それを求めていたのかもしれない。
右京は殺人に後悔しているという真司の罪に目をつぶるつもりは一切ない。
それは己のために全てを踏み台に欲望を求めるライダーバトルよりも、よっぽどまともなことのように思えたのだ。
それは己のために全てを踏み台に欲望を求めるライダーバトルよりも、よっぽどまともなことのように思えたのだ。
「でも、それって少し危ない考えじゃないですか」
だが、真司が賛同の意を示すよりも早く、新一が割りこむように言葉を放った。
その瞳に込められていたものは、嘲りでも焦りでも冷たさもない。
ただ冷え切った怒りだけがあった。
その瞳に込められていたものは、嘲りでも焦りでも冷たさもない。
ただ冷え切った怒りだけがあった。
「ここにはパラサイトが……それこそ文字通りに人を食い物にするバケモノが二匹も居るんだ。
アイツらは言葉は通じるけど話は通じない……アイツらから見た俺たちはただの餌に過ぎないんだ!」
アイツらは言葉は通じるけど話は通じない……アイツらから見た俺たちはただの餌に過ぎないんだ!」
胸を抑えながら、新一は半ば叫ぶように右京に言葉を投げつける。
脳裏に浮かぶものは胸の傷がついた出来事、新一の母を殺しその身体を乗っ取ったパラサイトがつけた傷だ。
脳裏に浮かぶものは胸の傷がついた出来事、新一の母を殺しその身体を乗っ取ったパラサイトがつけた傷だ。
「それは田村玲子や後藤と言った寄生生物のことでしょうか」
「そうさ! アイツらは何人もの人間を食べてるんだ! 殺したんじゃない、食べたんだ!
倫理とか道徳とか、そういう前提が俺達とは何もかもが違うんだよ!」
「そうさ! アイツらは何人もの人間を食べてるんだ! 殺したんじゃない、食べたんだ!
倫理とか道徳とか、そういう前提が俺達とは何もかもが違うんだよ!」
激昂とはまさしくこのことなのだろう。
空中に木霊する新一の叫びに、真司や翠星石、みなみは目を丸くする。
だが、右京は顔を引き締めたまま新一へと返答する。
空中に木霊する新一の叫びに、真司や翠星石、みなみは目を丸くする。
だが、右京は顔を引き締めたまま新一へと返答する。
「泉新一くん、でしたね。なるほど、パラサイト生物のことについてなにか思う所があるようですね」
その新一の態度から、新一もまたパラサイトが起こした事件の被害者なのだと右京は察した。
どこか現実味のなかったパラサイト事件にも、確かに被害者はいるのだという事実が右京の胸に義憤を起こす。
だが、それでも右京は言わなければいけなかった。
誤魔化すという行為は真実を濁らせ、真実の濁りはやがて大きな事件を巻き起こすからだ。
すぅっと短く息を吸い込んで、新一の胸中を思いながらはっきりと言葉を口にした。
どこか現実味のなかったパラサイト事件にも、確かに被害者はいるのだという事実が右京の胸に義憤を起こす。
だが、それでも右京は言わなければいけなかった。
誤魔化すという行為は真実を濁らせ、真実の濁りはやがて大きな事件を巻き起こすからだ。
すぅっと短く息を吸い込んで、新一の胸中を思いながらはっきりと言葉を口にした。
「あえて言いましょう、そこに例外はありません」
「なっ……!?」
「彼らに物事を判断する理性があるのなら、それは我々のような一個人が裁くべきことではありませんよ」
「なっ……!?」
「彼らに物事を判断する理性があるのなら、それは我々のような一個人が裁くべきことではありませんよ」
その言葉に新一が言葉を失い、信じられないものを見る目を右京へと向ける。
田村玲子の冷徹さも、後藤の現実離れした恐ろしさも身にしみている新一にとっては信じられない言葉だった。
田村玲子の冷徹さも、後藤の現実離れした恐ろしさも身にしみている新一にとっては信じられない言葉だった。
「だから、アイツらを……あの後藤を捕獲する? 冗談じゃない、殺したほうがよっぽど安全じゃないか!」
誰も殺させないという理想は立派だが、現実味がない。
この年配の男性にパラサイトを取り押さえることが出来るとは到底思えない。
いや、仮に取り押さえることが出来たとしても、本当に安全を確保するたまならばパラサイトは息の根を止めるべきだ。
パラサイトがどんなに言葉を繕おうと、人間を食べることをやめたパラサイトは居ないのだから。
この年配の男性にパラサイトを取り押さえることが出来るとは到底思えない。
いや、仮に取り押さえることが出来たとしても、本当に安全を確保するたまならばパラサイトは息の根を止めるべきだ。
パラサイトがどんなに言葉を繕おうと、人間を食べることをやめたパラサイトは居ないのだから。
「泉くん、彼らが人の姿をして人の生活をしているのなら、それは法で裁かれるべき存在です」
「アイツらは死刑になるに決まってる、大勢の人が犠牲になってるんですよ!
だったら、わざわざ生かしておく必要なんてないでしょう!?
杉下さんはアイツらのことを何も知らないからそんなことを言えるんだ!」
「アイツらは死刑になるに決まってる、大勢の人が犠牲になってるんですよ!
だったら、わざわざ生かしておく必要なんてないでしょう!?
杉下さんはアイツらのことを何も知らないからそんなことを言えるんだ!」
新一の喉を枯らすほどの叫びを聞いて、右京は目を固く閉じる。
語調からして新一はパラサイトに対して憎しみの念を持っているのは間違いないだろう。
それでも、右京は言葉を曲げる訳にはいかなかった。
目をゆっくりと開いて言葉を放つ。
語調からして新一はパラサイトに対して憎しみの念を持っているのは間違いないだろう。
それでも、右京は言葉を曲げる訳にはいかなかった。
目をゆっくりと開いて言葉を放つ。
「裁判の結果、犯人に与えられる罰が死であることは当然あり得るでしょう。
ですが、決して個人が死を与えて良い理由にはなりません」
ですが、決して個人が死を与えて良い理由にはなりません」
今度こそ新一は言葉を失った。
理知的に見えるこの杉下右京という初老の男性は、新一なんかよりもよっぽど狂っている。
新一の目には、それこそ法律の奴隷のように見えた。
理知的に見えるこの杉下右京という初老の男性は、新一なんかよりもよっぽど狂っている。
新一の目には、それこそ法律の奴隷のように見えた。
だが、杉下右京という人間の本質は決して奴隷ではない。
杉下右京の正義とは真実を誤魔化さないことだ。
妥協という誤魔化しは真実を濁らせ、その瞬間に尊い真実は価値を失ってしまう。
だから、彼は一切の妥協もせずに彼の正義を貫くのだ。
杉下右京の正義とは真実を誤魔化さないことだ。
妥協という誤魔化しは真実を濁らせ、その瞬間に尊い真実は価値を失ってしまう。
だから、彼は一切の妥協もせずに彼の正義を貫くのだ。
「だからこそ、私は誰も殺させはしません。
たとえ相手がどんな悪人であろうと、たとえどのような哀しい理由があろうと……人が人の命を奪って良い道理などありはしないのです」
たとえ相手がどんな悪人であろうと、たとえどのような哀しい理由があろうと……人が人の命を奪って良い道理などありはしないのです」
だが、その正義は素足で薄氷の上を走り続けるようなもの。
走ることそれ自体が鋭い痛みを味合わせ、まっすぐ走ることもまた困難である。
そして何よりも、道そのものが突然壊れてなくなってしまう危険もある。
走ることそれ自体が鋭い痛みを味合わせ、まっすぐ走ることもまた困難である。
そして何よりも、道そのものが突然壊れてなくなってしまう危険もある。
「恐怖に侵され自己の保身のために行った殺人も、復讐の炎に焦がされた末の殺人も私は許しません。
……私だけでなく、どうか皆さんにもこの決意をして頂きたいのです。
私という個人の力だけではどうしても限界があるのですから」
……私だけでなく、どうか皆さんにもこの決意をして頂きたいのです。
私という個人の力だけではどうしても限界があるのですから」
暴走の末に全てを無に帰してしまかもしれない、あまりにも高潔な杉下右京の正義。
それがこの殺し合いを打破する突破口となるのか、あるいは殺し合いを加速させる起爆剤となるのか。
それがこの殺し合いを打破する突破口となるのか、あるいは殺し合いを加速させる起爆剤となるのか。
『どうやら、杉下という男は人間の非自然的な要素をありったけかき集めたような人間だな』
新一は呆然とした頭に響く、ミギーのどこまでも冷静な声を聞いた。
【一日目昼/E-1道路】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン、真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、確認済支給品(0~2)
[状態]健康
[思考・行動]
1:殺し合いから脱出。
2:蒼星石、クーガー、かなみと合流する。
3:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
4:水銀燈を含む危険人物を警戒。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン、真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、確認済支給品(0~2)
[状態]健康
[思考・行動]
1:殺し合いから脱出。
2:蒼星石、クーガー、かなみと合流する。
3:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
4:水銀燈を含む危険人物を警戒。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式×3(朝食分を消費)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済み支給品(1~4) 、劉鳳の不明支給品(1~3)
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:多くの人に危険人物の情報を伝える。
1:右京の言葉に強い共感。
2:やっぱり戦いを止めたい。
3:劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感。
4:翠星石のことは守り抜きたい。
5:シャナを倒し、彼女の罪をわからせる。
[装備]無し
[所持品]支給品一式×3(朝食分を消費)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済み支給品(1~4) 、劉鳳の不明支給品(1~3)
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:多くの人に危険人物の情報を伝える。
1:右京の言葉に強い共感。
2:やっぱり戦いを止めたい。
3:劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感。
4:翠星石のことは守り抜きたい。
5:シャナを倒し、彼女の罪をわからせる。
【泉新一@寄生獣(漫画)】
[装備]無し
[所持品]基本支給品(水一本と朝食分を消費)、拡声器@現実、イングラムM10(32/32)@バトルロワイアル、傷薬×4@真・女神転生if...
[状態]ダメージ(中)、疲労(少) 、背中に火傷(処置済み)
[新一の思考・行動]
1:シャナを倒す、殺さない。
2:生き残る。
3:右京の言葉に呆然。
4:ミギーの行動や言動の変化に疑問。
[ミギーの思考・行動]
1:シャナを倒す。
2:出来る限り周りに存在を知られないようにする。
3:生き残る。
4:杉下右京に呆れとも恐れともつかない妙な感想を抱いた。
5:感謝されると嬉しい……?
[装備]無し
[所持品]基本支給品(水一本と朝食分を消費)、拡声器@現実、イングラムM10(32/32)@バトルロワイアル、傷薬×4@真・女神転生if...
[状態]ダメージ(中)、疲労(少) 、背中に火傷(処置済み)
[新一の思考・行動]
1:シャナを倒す、殺さない。
2:生き残る。
3:右京の言葉に呆然。
4:ミギーの行動や言動の変化に疑問。
[ミギーの思考・行動]
1:シャナを倒す。
2:出来る限り周りに存在を知られないようにする。
3:生き残る。
4:杉下右京に呆れとも恐れともつかない妙な感想を抱いた。
5:感謝されると嬉しい……?
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]君島の車@スクライド
[支給品]支給品一式、S&W M10(6/6)、S&W M10の弾薬(24/24)@バトル・ロワイアル、ゼロの剣@コードギアス、首輪(魅音)
[状態]健康、強い決意
[思考・行動]
0:誰も殺さない、誰も殺させない。
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:亀山を殺害した人間とシャナ、玲子を逮捕する。
3:みなみに注意しながら同行する。
4:仲間を集い、参加者を警察署へ集める。
[装備]君島の車@スクライド
[支給品]支給品一式、S&W M10(6/6)、S&W M10の弾薬(24/24)@バトル・ロワイアル、ゼロの剣@コードギアス、首輪(魅音)
[状態]健康、強い決意
[思考・行動]
0:誰も殺さない、誰も殺させない。
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:亀山を殺害した人間とシャナ、玲子を逮捕する。
3:みなみに注意しながら同行する。
4:仲間を集い、参加者を警察署へ集める。
【岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式
[状態]健康、深い悲しみ
[思考・行動]
1:右京や翠星石たちと共に行動。
2:ゆたかとみゆきの仇を取りたい、その為の力が欲しい。
3:Lに対する強い嫉妬。
4:他の知り合いが心配。
5:カズマと光太郎にもう一度会いたい。
6:V.V.の言葉も頭の片隅に留めておく。
[装備]無し
[支給品]支給品一式
[状態]健康、深い悲しみ
[思考・行動]
1:右京や翠星石たちと共に行動。
2:ゆたかとみゆきの仇を取りたい、その為の力が欲しい。
3:Lに対する強い嫉妬。
4:他の知り合いが心配。
5:カズマと光太郎にもう一度会いたい。
6:V.V.の言葉も頭の片隅に留めておく。
[全体の備考]
※翠星石・泉新一・城戸真司で情報交換を行ったため、三者は互いの事情についてある程度は理解しました。
※上記の三人は浅倉威、水銀燈、後藤、シャナ、和服の青年(宗次郎)、メイド服の女(咲世子)を危険人物の認識しています。
また東條悟、田村玲子に関しても警戒するに越したことはないと判断しました。
※右京とみなみはミギーの存在を知りません。
※翠星石・泉新一・城戸真司で情報交換を行ったため、三者は互いの事情についてある程度は理解しました。
※上記の三人は浅倉威、水銀燈、後藤、シャナ、和服の青年(宗次郎)、メイド服の女(咲世子)を危険人物の認識しています。
また東條悟、田村玲子に関しても警戒するに越したことはないと判断しました。
※右京とみなみはミギーの存在を知りません。
時系列順で読む
投下順で読む
102:Reiner Rubin | 泉新一 | 120:二心同体(前編) |
城戸真司 | ||
翠星石 | ||
103:緊張 | 岩崎みなみ | |
杉下右京 |