緊張

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緊張  ◆.WX8NmkbZ6



 警視庁特命係の杉下右京は、危険な状況に慣れている。
 しかしそれを差し引いてもなお、現在右京を取り巻いている環境はとても穏やかとは呼べない。

「田村さん、今お話しした仮説が間違っているというのなら……あなたの口から、本当の事をお聞かせ下さい」

 銃を構えた右京の目の前には槍を携えた赤髪の少女。
 背には右京を盾にして隠れるメイド服の女。
 槍を持った少女は右京の銃を前にしているにも関わらず、視線を右京ではなくその後ろの女へ向けている。

 右京が警戒しているのは、目前の少女ではない。

「あなたは、何者ですか?」

 右京の背後に立つ女が何か言い返そうとする気配があったが、それは小さな溜息に変わる。
 そして、くぐもった笑いが聴こえてきた。

「ククッ……なるほど。
 この殺し合い、どうあっても一筋縄ではいかないという事か」


「私達、ここで別れましょう」

 男女の別れ話の出だしのような口調で、車の助手席に体育座りをしている猫背の男、Lはそう言った。
 運転席の右京、その後ろにいた青年南光太郎は思考の海から抜け出して顔を上げる。
 その場でただ一人、光太郎の隣りに座る女子高生高崎みなみだけは顔を伏せたままだった。

 第一回放送から休憩する事しばし、四人は思い思いに心の整理をしながら過ごす。
 その中でLが導き出した方針は、『今』このグループを分割する事だった。
「あなたの事ですから、リスクは既に承知の上なのでしょうねぇ」
「はい、勿論です。
 これからする話は、右京さんには決して気分の良い話にはならないでしょうが……」
「分かっています、それも覚悟の上です」
 右京自身も、現状に限界を感じていたのだろう。

「右京さんのおっしゃる通り、リスクは低くありません。
 この中で、常識から外れた相手と戦えるような人は光太郎君しかいませんから。
 しかし殺し合いの開始から七時間近く経過し、参加者の四人に一人が犠牲になっている……時間が惜しいんです。
 別れるのは戦闘要員と合流してからと考えていましたが、それではやはり遅い」
 Lはグループを分ける理由を簡潔に纏めるが、問題はこの先だ。
「グループのメンバーですが、私と右京さんは別行動になります。
 それぞれのグループの司令塔として動く事になりますので、これは確定です。
 そして、光太郎君は私と……みなみさんは右京さんと行動して下さい」
「そんな……!」

 Lが思っていた通り、みなみの声が上がった。
 現状ではLのみなみに対する嫌がらせと取られても無理はない。
 Lが説明を足そうとすると、先に右京が誤解を招かないよう補足した。
「みなみさん、先に申し上げておきますがLさんは保身の為におっしゃっているのではありませんよ。
 他に分けようがないからです」
「はい、確かに唯一の戦力である光太郎君と一緒に行動する私の方が、右京さんや岩崎さんより安全です。
 しかし私と右京さんが同行する――つまりみなみさんと光太郎君が同行するのでは、グループ分けの意味がありません。
 そして何より、岩崎さんは私と行動したくないでしょう?」
 みなみはそれ以上、何も言えなかった。
 Lの言葉も右京の言葉も正論で、守られる側のみなみに口を挟む余地はない。
 光太郎もまた、みなみを守れなくなる事を憂いてか唇を噛み締めて俯く。

「次に方針ですが、二つに分かれたグループのうちの片方の目的地は警察署です。
 警察署にはこれから人が集まりますが、それは殺し合いに乗っている側の標的となり得ます。
 一刻も早く向かい、集まった参加者を保護しなければなりません」
 地図を指先で摘まんで持ち上げ、後ろの二人にも見えるように広げる。
「危険人物から他の参加者を守る為、こちらには光太郎君と私が向かいます。
 それから途中にある図書館、総合病院にも立ち寄る予定です」
 警察署を示していた指をスライドさせて現在位置のE-4と結ぶと、その線上には図書館と総合病院がある。
 そしてLは一度指をE-4から離すと、D-7を示した。

「出来ればD-7周辺も観察してから行きたいのですが、これは光太郎さんと私の歩行スピードを見極めた上で行くかどうか決めます。
 展望台や水族館、遊園地も見ておきたいところですが、そこまでしている間に警察署が襲撃されては困るので諦めました」
 D-7は放送前に炎上した地域の中心部だ。
 警察署への到達も急がなければならないが、Lはここで起きた爆発に関心があった。
 延焼の規模や種類を見極める事で、参加者、或いは支給品の危険度を確かめられる。
「しかしあの地域は黒煙で目立っていますから、危険人物が集まっているかも知れません」
 右京からの当然の指摘に、Lは答える。
「そこは光太郎君を信頼しています」
「任せて下さい……その時は、俺が戦います」

 この会場内にどれだけの危険人物が闊歩しているかは分からない。
 それでも光太郎はLの言葉を受けて力強く頷く。
 劉鳳を助けられなかった時のような後悔は絶対にしたくないと、言外に告げていた。

「そして右京さん達のグループには色々やって貰います。
 移動も多くなりますから、車はこちらのグループが所有した方がいいでしょう。
 まず目指すのは――翠星石さんとの合流です」
 LはA-2を指す。
 翠星石との接触を決めたのは、つい先程の事だ。

 休憩しながらLと光太郎が改めて詳細名簿を確認した時、光太郎は翠星石の名を見て驚嘆の表情を見せた。
 それが劉鳳と共にいた少女の名だと気付いたのだ。
――もう駄目ですぅ~翠星石は汚れてしまったのですよ……
 予備知識が無ければ『翠星石』を人の名前だと思う人間はいない。
 そして光太郎は参加者名簿を確認してはいたものの、シャドームーンの名の方に気を取られてしまっていた。
 だからその時ようやく、少女の名前が分かったのだ。
 職業欄に書かれた『ローゼンメイデン第三ドール』という言葉、それに名簿の『翠星石』が本名であった事には不可解さを覚えた。
 しかし、彼女が保護対象である事に変わりはない。

「とは言え、最初に光太郎君が目撃してから時間が経ち過ぎています。
 移動している可能性も高いですから、彼女の捜索に関しては早めに切り上げて下さい」
「見捨てるんですか!?」
 今度は光太郎が声を上げる。
 本当は自ら助けに行きたいぐらいなのだろう。
「私としても、出来れば助けたい……しかし右京さん達には南西部にも向かって戴きたいんです。
 その為には時間が足りない」
「この広い会場の中で、出来るだけ多くの参加者と接触して協力を呼びかけていかなくてはなりません。
 ……それでも、翠星石さんの事は手を尽くしますよ」
 Lと右京に言われては、光太郎も引き下がるしかなかった。

 翠星石について一段落すると、Lは今度は南西の島を指差す。
「翠星石さんの捜索の後は南下し、ホテル、カジノ、モール、小病院と順に回って参加者を探して下さい。
 ただしF-1付近では小規模ですが爆発が起きていますから、既に殺し合いが行われている可能性が高い……充分に注意して下さい」
「その後は総合病院を経由して警察署へ、ですね」
 Lが言うよりも早く右京が締め括るとそこで説明は終わり、Lと光太郎は早々に車を降りた。


 右京はみなみを守りながら、また翠星石と合流すれば翠星石も守りながら、この殺し合いの場を回らなければならない。
 始めにLが告げた通り、右京にとって良い話とは言えないだろう。
「……すみません。
 戦える光太郎君と私が回った方がリスクが少ないのは確かなんですが――」
「拠点の守りを薄くする訳にはいかない……そうでしょう?」
 しかし、右京はそれを分かった上で承諾する。
「僕は自分の役割を果たすだけです」
「右京さん……それでも危険を感じたら逃げて下さい。
 必ずまた会いましょう」
「ええ。生きて、また」

 互いに変わり者であるが故に、二人とも自分に似た人物に出会った事はなかった。
 出会った場所が殺し合いの場でさえなければ、きっと積もる話もあったはずだ。
 社交性がなく、マイペースで、目的の為なら時に手段を選ばない、そして正義は必ず勝つと信じる切れ者。
 二人は再会を約束し、手を握り合った。


 光太郎は助手席へ移ったみなみの横に立ち、声を掛ける。
「ごめんな、みなみちゃん。
 君を守るっって、約束したのに」
「光太郎さんは……悪く、ないです……」
 危険な場所を回る恐怖と、光太郎と離れる寂しさと、そういった感情が入り交じり、みなみは僅かに震えていた。
 光太郎はそのみなみの手を取り、優しく包み込む。
「今度こそ、約束だ。
 警察署でまた会おう……その時俺は、必ず君を守るから」
 不安も寂しさも、拭い切れない。
 それでもみなみはほんの少しだけ笑顔を見せ、頷く。

 四人が思い思いに別れを告げると、車は発進した。


 森を右手に、海を左手に見ながら右京とみなみは西へ進む。
 翠星石に限らず他の参加者を見逃さないよう、みなみは森の方を注視していた。
 休憩を取っていたものの、表情に浮かぶ疲れや焦燥はそのままだ。
 それを見かねた右京は、みなみと一度きちんと話をすべきだと判断した。
「みなみさん……少し、お話が――」

 先に気付いたのは、運転の為に前方を見ていた右京の方だった。
 森から飛び出すような形で、人が道路上に現れたのだ。
 幸いスピードは余り出しておらず位置も離れていたので、余裕を持って停車する事が出来た。
「ここに隠れていて下さい」
 右京はみなみにそう言うとデイパックを取り、勢い良く車外へ出てその人物の方へ走る。
 デイパックに手を入れていつでも銃を取り出せる状態にし、距離を空けたまま声を掛けた。

「どうしましたか!?」
「助けて下さい、追われてるんです」
 メイド服を着た、黒い長髪の女だった。
 森を飛び出した勢いの割に息は切れておらず、冷静さを失っている様子はない。
 そして服は切れ、そこから血の滲む傷口が見える。

「私は警視庁特命係の杉下です。
 ますは話を――」
 森の中に光る紅い視線に、右京の背筋は凍りかけた。
 しかしすぐに我に返り、デイパックから銃を抜いてそちらへ構える。

 森林の中に立っていたのは十二、三歳の少女だった。
 眼と髪は灼けような赤。
 幼さを残しながらも鋭い眼差しは、見る者に圧倒的なプレッシャーを与える。
 森を出た少女は銃を向けられている事に頓着する様子はなく、自らのデイパックから槍を抜いた。

 右京がその少女の登場に気を取られている間に、メイド服の女は少女から逃げるように右京の背に隠れる。
 失敗したと、右京は思う。
 一見すれば危険人物は少女の方だが――

「退いて、そいつは人間じゃない」
「何か勘違いされてるようですけど。
 悪い冗談はやめて下さい」

 自分を挟んだ状態で行われる会話を聞きながら、右京は気付いていた。
 この二人は、どちらも危険人物であると。


(さて……どちらの姿で行動すべきだろうな?)

 食事を終えた田村玲子は、顔を玲子のものにするか篠崎咲世子のものにするかで悩んでいた。
 田宮良子の肉体を乗っ取った時は、肉体の主の顔も声も身分もそのまま拝借した。
 しかし今回は、無計画にそうする事は出来ない。

 問題となるのは放送だ。
 肉体は生きているが死亡した咲世子と、生存しているが肉体は死亡している玲子。
 この場合どちらが放送で呼ばれるのか――殺し合いの主催者であるV.V.の裁量次第だ。
 放送時の状況によっては、他の参加者から疑いの目を向けられる事もあるかも知れない。

 思考しながら首に触れると、指が冷たい金属の輪に当たる。
 咲世子の肉体を奪う際、まず咲世子の首を首輪ごと肉体から取り除いた。
 そして宿主である田宮良子の体から玲子本体を分離させる。
 その時、玲子は嵌められている首輪と接触した部分が変形しない事に気付いた。
 首輪から下、首輪から上は問題なく形を変えられるが、首輪を抜く事は出来ない。
 主催者のどのような技術によってそれが成されているのかは不明だ。

 咲世子の肉体に玲子本体が寄生し、玲子が元々付けていた首輪を嵌めた状態。
 参加者の生存状況の確認は恐らく首輪を用いて行っている。
 この予想が正しければ放送で名を呼ばれるのは咲世子の方であり、その後は咲世子の名は利用出来なくなる可能性が高い。
 逆に言えばそれまでは、玲子の姿でも咲世子の姿でも問題はない。
 そこまで考えた上で玲子は一先ず玲子の姿で過ごし、不都合が生じればその都度顔と名前を使い分ける事にした。
 幸いこの会場内に玲子と咲世子の二人の顔と名前が一致している参加者は多くない。

 そして今後会場内を動くにあたって他に不利な事があるとすれば、服。
 咲世子のメイド服は、頸動脈からの出血で出来た血溜まりに倒れていた為酷く汚れている。
 仕方なく、玲子は頭部を刃に変形させて咲世子の身体の数カ所を浅く斬り付けた。
 血で汚れた部分に合わせて傷を作れば、一般人の目なら欺けるだろう。
 応急的な対応に過ぎなかったが、とりあえずはこの状態で過ごさなければならない。

 落ちていた荷物、それに後で役立つかも知れない首輪を一通り自身のデイパックに詰めると、玲子は南西へ歩き出す。
 咲世子が出会った茶髪の男を『観察』しに行く為だ。
 時間がかなり経過しているので既に去ってしまっているだろうが、南西は数時間前に寄生生物の脳波を感じた方角でもある。
 今は感じられないとは言えそこにいたのが後藤か、泉新一か、それ以外なのかを知る手掛かりにはなるかも知れない。

 しばし進むと、木々が薙ぎ倒されている地帯が見つかった。
 咲世子の記憶を辿っても、ここが茶髪の男と接触した場所と見て間違いないだろう。
 人の気配が感じられなかった代わりに、不自然に盛り上がった地面に木が突き立てられていた。
 玲子には一見何か分からなかったが、少し考えてそれが墓の代わりなのだと気付く。
 墓の主は恐らく、咲世子の前で致命傷を負った劉鳳。
 更に進むと、今度は首を切断された少女の死体を発見した。
 こちらは殺し合いの開始直後に赤髪の少女に殺された者だ。

 玲子は自身の腹具合を確認する。
 咲世子の頭部と田宮良子の身体を食って空腹自体は収まったものの、消耗は大きい。
 そして腹が減る度に参加者を食うのでは、観察対象を自ら減らす事になってしまう。
 ならば食える時に食う――出来れば鮮度の低い死体になど手を出したくはなかったが、そこは我慢するところだ。

 頭部と顔がぐにゃりと輪郭を歪めると、鋭い歯の並んだ巨大な口と数本の細い触手が現れた。
 まずは少女の頭をバリバリとかじり、触手の先を刃へ硬質化させて死後硬直した胴体を斬り裂き、咀嚼する。
 少女の遺体を肉塊へ変えると、刃をスコップ状に変形させて土を掘り返した。
 地面の浅い場所から亡骸を発見するとこちらも手足をもぎ、肉を引き千切るようにして飲み込んだ。

 そのついでに首輪を回収する。
 少女の首輪がなくなっているところを見ると、首輪を収拾・解析して外そうとする参加者がいるのかも知れない。
 首輪があればそういった人物との交渉材料として使う事が出来る。
 最初に出会った男の首輪も回収しておくべきだったかと微かに悔いたが、すぐに瑣末事として切り捨てた。
 そして頭部の形を元に戻し、その場を立ち去ろうとした時――玲子の動きは止まる。

 食事の間、玲子は幾つもある眼をそれぞれ異なる方向へ向けて注意を払っていた。
 にも関わらず『その人物』が自ら姿を現そうとするまで、その気配に気付く事が出来なかったのだ。

 槍を持った黒髪の少女が、玲子の食事の一部始終を見届けていた。

「答えなさい。
 お前は何者なの?」

 髪の色こそ異なるものの、その顔には見覚えがあった。
 緑髪の少女の首を刎ねた張本人であり、咲世子が逃走を余儀なくされた程の実力者、危険人物。
 玲子が満腹である事を差し引いても、少女に対しては食指がまるで動かない。
 この少女は人の形をした、人でないものだ。
 ある意味寄生生物と同類であると玲子は判断する。

 目撃された相手がただの人間ならば即座に始末しているところだが、下手をすれば返り討ちに遭うだろう。
 答えるか、逃げるか。
 答えれば相手の反応を観察する事が出来る。

――だとするとわたしたちはいったい何なの?
――繁殖能力もなくてただ共食いみたいなことをくり返す…………
――こんな生物ってある?

 しかし玲子は答えを持っていなかった。
 少女の問い掛けへの回答を聞きたいのは、玲子の方なのだ。
「さっきは首まで変形していたけど、首輪は外れないみたいね。
 他の首輪にもそんな機能が付いているのか、それともその首輪だけ特別なのか……」
 思考に耽っている玲子を余所に、少女もまた思考する。
 そして少女の腰まで伸びた黒髪がなびくと、火の粉を撒いて赤い光を帯びた。
 黒く冷えた眼は灼眼となって煌めく。

「何にせよ、いいサンプルになりそうね」

 少女が言い終わるよりも早く、玲子は後方へ跳んだ。
 玲子がそれまで立っていた場所に槍が横薙ぎに振り抜かれる。
 玲子は逃げる事を選び、少女に背を向けて走り出した。

 寄生生物は人間の肉体の潜在能力を引き出す事が出来る。
 ただし力の加減を間違えれば骨折や脱臼といった形で体の方が壊れてしまう。
 その点、鍛えられた咲世子の身体は寄生生物と非常に相性が良かった。

 もしもこれで相手がこの少女でなければ、玲子は逃げ切る事が出来ただろう。
 しかし相手は玲子の想像さえ越えている。
 玲子も最初こそ頭部を変形させて木を少女に向かって切り倒し、道を阻もうとしていた。
 また、進路を蛇行させて少女を撒こうとしていた。
 にも関わらず少女はそれらを難なく避け、一度完全に振り切ったはずがまた追い付いて来た。
(……足跡か? 厄介だな)
 この少女は相手の姿が見えなくなっても相手の走った形跡を使って追跡する事が出来るらしい。

 別の手段で逃走する事も視野に入れた時、玲子が向かう方向から車の排気音が聴こえて来る。
 玲子は展望台を目印にしながら南、他の参加者と接触出来る可能性が高い道路を目指していた。
 危険人物でも一般人でも、この状況を打破する第三者の存在が必要だったのだ。
 出会えた参加者が殺し合いに乗っていなければ、自分が殺し合いに乗っていないと信じさせて味方につける。
 殺し合いに乗っていればこの少女と対立させ、隙を見て一人で逃げる。
 戦いの役に立たない弱者や味方に出来そうにない人物であったなら、殺して盾にでも使おう。
 そう考え、玲子は森の先にある道路へ身を躍らせた。


 シャナは真司との戦いを中断してその場を離れた。
 だが苛立った気分のままにしばらく辺りを歩き回った後、また同じ場所に戻って来る。
――さっき、死んだ劉鳳をあそこに埋めた……。
 真司の言葉を思い出したのだ。
 死体がある――つまり首輪がある。
 真司のような感情的な人間は、埋葬の前に首輪を回収するような事はしていないだろう。
 よってシャナは劉鳳の墓を暴く為に、この場へ再び訪れた。

 しかしゲイボルグで適当に掘り返そうとした時、人の気配を感じてシャナは茂みに隠れる。
 そのまま様子を伺っていると、墓の前にメイド服の女が現れた。
 本人のものか他人のものかは判別出来ないが、強い血の匂いを纏っている。
 更に様子を見ていると、女は近くにあった緑髪の少女の死体の方へ移動した。

 シャナは女の目的が読めないまま観察を続ける。
 すると女の頭は変形し、少女の死体を食らい始めた。
 女は”徒”でも”燐子”でもない、別の何からしい。
 人間でない事だけは確かで、女が劉鳳を食い終えたところでシャナは隠れるのをやめた。

「答えなさい。
 お前は何者なの?」

 質問への答えは返って来なかった。
 会話能力がないのかも知れない。
 しかし会話出来ないにせよ、会話する気がないにせよ、同じ事だ。
 相手は首輪の解除に特に役立ちそうにない危険人物。
 ならばやる事は一つ。

「何にせよ、いいサンプルになりそうね」

 ゲイボルグを払うが、読まれていたようで後方に回避された。
 シャナが想定していた以上に速い。
 森の中で振り回すには向かないゲイボルグは一度しまい、女の追跡を開始する。

 走っているうちに車の排気音を聴き、シャナは小さく舌打ちした。
 こうして追っているところを第三者が見れば、どちらが危険人物に見えるかは明らかだ。
 しかし相手は人を食う危険人物で、劉鳳の首輪を所持している。
 ここで逃がすわけにはいかない。
 森を出た女を追い、シャナもまた森を出た。
 拓けた場所で改めてゲイボルグを出し、第三者である新たな参加者へ向ける。

「退いて。そいつは人間じゃない」

 この参加者ごと女を刺してしまいたいところだったが、最初に接触した少女のように出会い頭に殺してしまっては聞く事も聞けない。
 已むを得ず、その参加者に主導権を握らせる形で会話をする事にした。


 森を背にして立つシャナに、それと向かい合う形の玲子と右京の三人は膠着状態に陥っていた。
 そんな中、右京は自身を挟む形で睨み合う両者に向かって話し掛ける。
 どちらもいきなり攻撃しないところを見て、会話の余地ありと判断したらしい。
「私は警視庁特命係の杉下右京です。
 まずはお二人の名前を聞かせて下さい」
「……シャナ」
「……田村玲子です」
 玲子は名簿に記載された通りの名を答えた。
 下手な嘘を吐いて発覚した時、不信感を持たれては不利になると考えた為だ。

「『フレイムヘイズ』のシャナさんと、『寄生生物』の田村玲子さん。
 お間違いありませんか?」

 玲子はシャナと共に僅かに驚く。
 この二人の情報だけたまたま持っていた、という様子ではない。
 かと言って相手の思考を読んでいる訳でもなさそうだ。
 つまり、と玲子はあたりを付ける。
「……何か支給されたのかしら」
「はい、正確には僕の仲間に、詳細名簿が支給されました」
 玲子とシャナの名前から即答出来たあたり、右京はその内容を記憶しているのだろう。

「内容に間違いはないようですね、ではシャナさんにお伺いします。
 『化物』というのは?」
「そいつは人を食うわ。
 おまえも死にたくなければ離れた方がいい」
「先程も言いましたが、勘違いです。
 それを言うなら、私は彼女が緑の髪の女の子を殺害するのを見ました。
 杉下さんはまず彼女から離れるべきです」
 この状況下で、右京はどちらを信用するだろうか。
 恐らく――右京が玲子を信用する事はなく、味方にも付けられないだろう。

「シャナさん、田村さんのおっしゃる事は本当ですか?」
「後半は認める。
 首輪のサンプルが欲しかったから仕方なかったの。
 殺した後に死体を放っておいたら、そいつが食ってたわ」
 シャナは自身に不利であろうと有利であろうと、事実だけを淡々と述べた。
 対する右京はシャナの言葉に思うところがあるのか、拳を震わせている。
「だとすれば、疑問が一つ。
 あなたがここにいる私を殺さないのは何故でしょう?」
「お前には聞きたい事がある。
 お前が使える人間なら、生かしておいてもいい」

 右京が滲ませる感情は『怒り』だ。
 警察関係者という立場から殺人を容認出来ない為か、それとも別の何かか。
 玲子は右京に関心を抱くが、長くは観察出来ないと感じていた。
 それは、右京が警察関係者であるが故に。

「今度は田村さんに伺います。
 服に付いたその血は、いったいどなたのものでしょう?
 あなたのものだとすれば、いささか不自然です」
「彼女に斬られた時の出血と、目の前で人が殺された時に付いたものです」
 服の血痕の違和感は、警察関係者であれば一目で気付く事だ。
 玲子も一応適当に言い繕いはするものの、やはり右京は「それは妙ですねぇ」と疑問を口にしている。
 この程度で言いくるめられる程馬鹿な相手ではない。

「質問を変えます。
 『寄生生物』とは何ですか?」
「何の事か分かりません」
 誤魔化すのもそろそろ限界だ。
 そしてシャナが口を挟む。
「そいつが人を食う時、首から上だけが変形していた。
 追い掛けている間も首から下はそのまま」
「つまり詳細名簿の『寄生生物』という記載と照らし合わせると、田村さんは人間の身体に『寄生』した生物。
 田村さん自身は頭部のみの存在であり、人を食べる事で生きている。
 シャナさんのお話を全て信じるとすれば、こんな仮説を立てる事も可能です」
「そういう事」
 シャナは右京の纏めに満足いった様子だった。
 玲子もまた、限られた情報で考えられる可能性が無数にある中で最も正確に近い仮説を組み上げた右京に少しだけ感心した。

「田村さん、この仮説が間違っているというのなら……あなたの口から、本当の事をお聞かせ下さい」

 右京を味方に付けられないとなった時点で、逃げておくべきだったのかも知れない。
 玲子がそれをしなかったのは、右京という人間とシャナというある意味で寄生生物に近い存在に興味があったから。
 つまり、好奇心に負けたのだ。

「あなたは、何者ですか?」

 ここまで核心に触れられては右京を生かしておくデメリットは大きい。
 しかし殺さずにおいた場合のメリット――観察対象としての興味深さもまた、小さくない。
 玲子は二つを天秤に掛ける。

「ククッ……なるほど。
 この殺し合い、どうあっても一筋縄ではいかないという事か」

 場の緊張が限界まで膨れ上がった時、玲子は既に頭部の一部を刃に変えていた。
「跳びなさい!!」
 シャナの声と同時に、右京は背後にいる玲子から逃れて斜め前の地面に転がり込むように跳ぶ。
 刃は玲子と右京の間で、シャナの槍によって止められていた。
「撃て。相手は人間じゃない」
 しかし右京は、構えていた銃をデイパックへ戻してしまった。
 対する玲子の頭は六つに枝分かれし、五つをシャナへ向け、一つを右京に向ける。
 少々頭が切れる程度の一般人には一つで充分と判断したのだ。
 シャナは槍の中央を持って胸の前で回転させ、襲い来る刃を絡め取った。
 右京は――


「向きはこれで合ってますか?」
「はい、このまま真っ直ぐです」
 山道を駆ける光太郎。
 そしてその背におぶられながら、木々の隙間から見える黒煙を確認するL。
 元々猫背のLがだらしなく光太郎に体重を預けている光景は、どことなく奇妙な図だった。

 初めこそ二人で歩いていたものの、光太郎がLを背負って走った方が速いという事でこの形になった。
 山道で人を担いでいるにも関わらずその速度は目覚ましく、二人はD-7にも立ち寄る事にする。

「Lさん……右京さん達は大丈夫でしょうか」
「今となっては無事を祈るしかありませんね。
 岩崎さんも、これ以上会場の空気に当てられないといいんですが」
 聞いても仕方のない事を、光太郎はつい聞いてしまう。
 対するLはそれに律儀に返答した。

 Lはみなみの心配をしている。
 世界一の名探偵であるLにとっても、みなみは守らなければならない弱者なのだ。
 そして会場内で犠牲者が出ている事にも心を痛めている。
 ただしそれを表現する為の能力が著しく欠如していた為に、Lの気持ちはみなみには伝わらなかった。
 Lに悪意はなく、みなみが悪かった訳でもない。
 光太郎は大切な仲間同士の行き違いに悲しみを覚える。
 それをLに素直に伝えるが、Lは気にしていないようだった。
「みなみさんの言い分はもっともです。
 それに私はこういう事には慣れています」

 言いながら、Lは手にした紙袋から小さな白い立方体を口に運ぶ。
 立方体――角砂糖は光太郎に支給されたもので、光太郎はLに無償で提供した。
 光太郎は放送後の休憩の時まで支給品を確認しておらず、Lと右京に言われてその存在を思い出したのだ。
 「私は改めて、あなたとお会い出来て良かったと思いました」と真顔で言われた時は反応に困ったが、実際Lには糖分が必要らしい。
 光太郎に支給された品の一つ目はこの角砂糖で、Lの手に渡った。
 二つ目は用途の分からない杖で、そのまま光太郎が所持している。
 そして最後の一つは、光太郎には無用であるとして右京の手に渡った。
 その品は――

「光太郎君、私達は私達の役目を果たしましょう」
「……はい」
 光太郎が道なき道を駆けて行く。
 後方の景色に、いつまでも後ろ髪を引かれながら。


【一日目 午前/E-5 山中】
【L@デスノート(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、角砂糖@デスノート
[状態]健康、頭部に軽い衝撃
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:警察署に向かい、他の参加者を保護する。
3:D-6で起きた爆発について調べる。

【南光太郎@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、炎の杖@ヴィオラートのアトリエ
[状態]健康、自らの無力を痛感して強い怒り 
[思考・行動]
1:この殺し合いを潰し、主催の野望を阻止する。
2:劉鳳を探しに行かなかったことへの後悔。
3:主催とゴルゴムがつながっていないか、確かめる。
4:信彦(シャドームーン)とは出来れば闘いたくない……。
5:Lと同行する。
※みなみを秋月杏子と重ねています。
※本編五十話、採石場に移動直前からの参戦となります。


 右京がデイパックから抜いたのは、きらびやかな装飾の施された長剣だった。
 その刀身は細く、過度な飾りも相まって斬る事に向かないのは明らかだ。
 しかし今の右京が必要としているものは、強度さえあれば棒でも良かったようだ。

 玲子の頭部から伸びた刃が迫るのを、右京は剣で叩き落とす。
 その刃が流動的な動きで再度右京を狙うも、上から下へと向かわせた剣を今度は振り上げる形にして払う。
「……チッ」
 会場内で刃の動きに制限がされているとは言え、玲子にとって右京の動きは予想外だった。
 玲子はシャナに絡め取られた刃を束ねて形状を歪め、逆にシャナの手ごとゲイボルグを掴む。
 そして小柄なシャナの身体と共に空中へと持ち上げ、玲子の後方――コンクリートの道路上へ叩きつけようとした。
 だがシャナは手をゲイボルグに固定された状態のまま、地面へ落ちる前に身体を捻らせて足から着地する。

 シャナが森の前から道路へ移動した事により、玲子が森に逃げ込む為の障害は右京だけとなった。
 右京は触手を一本相手にするのに手一杯の状態だ。
 玲子はシャナと右京の相手をしながら刃のうちの一つを森の方へ伸ばし、先を柔らかい手に変えて枝を掴む。
 玲子の身体はその手に引っ張られる形で宙へ浮いた。
「ここは退こう」
「お待ち下さい、田村さん!」
 右京の声を他所に、玲子は森の中へ溶け込んだ。

 右京に聞きたい事があると言っていたシャナは恐らく、すぐには追って来ない。 
 その間に玲子は触手で遠くの枝を掴み、その触手を縮める事で身体を移動させる。
 この方法なら足跡は残らないので、シャナに他の追跡能力さえなければ撒く事が出来るはずだ。
 寄生生物について知った右京を野放しにするのは不本意だったが、疲労した状態でこれ以上シャナを相手にする気はなかった。

――あなたは、何者ですか?

 玲子はこの殺し合いの中で、問いの答えに辿り着けるのだろうか。


【一日目 午前/D-4 山中】
【田村玲子@寄生獣
[装備]篠崎咲世子の肉体
[支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)、双眼鏡@現実、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、首輪×2(咲世子、劉鳳)
[状態]ダメージ(大)、疲労(大)、数カ所に切り傷
[思考・行動]
0:人間を、バトルロワイアルを観察する。
1:シャナから逃げる。
2:新たな疑問の答えを探す。
3:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。
4:泉新一を危険視。
5:腹が減れば食事をする。
6:着替えが欲しい。
※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。
※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。


 相手を話に引き込めるかどうか、これは賭けだった。
 もし会話の途中で襲われるような事があれば、右京は発砲を余儀なくされていただろう。
 銃を使ったところで何とかなる相手とも思えないが、銃は威嚇の道具として有用だから構えていただけだ。
 使わずに済むならそれに越した事はない。

 あの会話はシャナが人を積極的には殺していないと判断してのものだったが、少しでもシャナが気紛れを起こしていれば殺されていた。
 そして玲子の攻撃速度に制限が掛かり、人間でも目視出来る速さになっていたからこそ右京でも対処出来たのだ。
 これがなければ、やはり殺されていた。
 また光太郎から剣を譲り受けていなければ、銃の使用を躊躇っているうちに殺されていたかも知れない。
 つまり、右京が今も生存しているのは限りなく幸運な事だと言えるのだ。

 だが、目の前の脅威はまだ去っていない。
 右京はもう一人の危険人物に声を掛ける。

「一つ、よろしいでしょうか。
 『フレイムヘイズ』とは何でしょう?」
「《紅世の徒》による『世界の歪み』の発生を防ぐために、存在の乱獲者を狩り出して滅する使命を持つ者達の総称」
「……はい?」
 シャナは一息にそう言うが、右京でさえも初めて聞く言葉が並び困惑する。
 詳細を尋ねようとするも、それはシャナに遮られた。
「お前は『一つ』と言った。
 それより、赤い宝石が付いたペンダントを知らない?」
「申し訳ありませんが、心当たりはありませんねぇ。
 しかしシャナさん、あともう一つだけ。
 翠星石さんという参加者について、何か知りませんか?」
「知ってる」
――お前ら! …………翠星石を庇ってくれたんですか?
 新一達と一緒にいた騒がしい人形がそう言っていた。
 首輪解除にも役立ちそうになかったので殺そうとしたが、新一達に阻まれた。
 最後に見たのはB-2で、恐らく今も新一達と行動している。
 シャナからそこまで伝えられると、右京は激昂した。

「先程も……首輪の為に少女を殺害したとおっしゃいましたね。
 あなたはそんな事が、許されると思っているんですか!!!」
 シャナの機嫌を損ねれば、今度こそ殺されるかも知れない。
 しかし右京はこの場で黙っている事が出来なかった。
「お前は人間社会の中で警察に属しているから怒っているの?
 安心して。人間の生死なんて、人間が思ってるほど大した話じゃない」
「警察だからではありません!! 僕は――」
「うるさいうるさいうるさい。
 そういう話はもう聞き飽きた」
 言いながらシャナがデイパックから出した首輪を投げ、右京はそれを受け止めた。
「お前はそれなりに使えるみたいだから、預けるわ。
 怒るぐらいだったらその首輪、有効に使いなさい」
「シャナさん、」
 右京の言葉を最後まで聞かないまま、シャナは森へ姿を消した。
 森の中まで追う事は出来ないし、追ったところで右京にシャナを止める力はない。
 右京は拳を握り締めながら、その場に立ち尽くす。

 車に戻ると、助手席の陰に隠れていたみなみが顔を出した。
「右京さん……凄かったです……」
「凄くなどありませんよ。
 僕とした事が、危険人物を二人も取り逃してしまいました……」
 止める事も説得する事も出来なかった。
 今後もあの二人による被害者は出るかも知れない。
「ともあれ、シャナさんのお陰で翠星石さんの無事が確認出来ました。
 早い段階でLさん達と合流出来るよう、北へは向かわずにD-1から南下しましょう」
 右京は自身の無力さを痛感しながら、車を出す。

「……みなみさん、先程言い掛けた事でもありますが、これだけは申し上げておかなければなりません」
「……?」
「僕は、犯罪を許せません。
 どんな理由があろうと、どんな異常な状況下であろうと、誰であろうと、許せません」
「……」
「仇討ちなど考えてはいけませんよ。
 あなたはここで命を失った人達の為にも、精一杯生きなさい」
 みなみの返事はなかった。
 言葉が届いたかどうかは分からない。
 右京はふと亀山薫ならばどんな言葉を掛けるだろうかと考え、生前の彼の姿を思い出すのだった。



 光太郎と別れた寂しさの中で、みなみの心の内の痛みは膿むように酷くなっていた。
 元の世界に帰れたとしても、そこにはもう、元の生活はない。
 仇を討ちたい。
 ゆたかやみゆきがいる生活に戻れるなら、他の参加者を犠牲にする事だって――
 形のない漠然とした思いは少しずつ、輪郭を作り始めていた。

 そんな中でみなみは隠れながらこっそりと、右京とシャナ、玲子のやり取りを見ていた。
 一つ選ぶ言葉を間違える事さえ許されない緊張に満ちた会話、一瞬のうちに起きた攻防。
 どちらもとてもみなみが入って行ける世界ではなかった。
 仇を討つどころか、自力では生き残る事さえ絶望的なのだと思い知らされたのだ。
 今は右京に守られて、無事に警察署へ着いたら今度は光太郎に守られて、強い参加者の荷物としてしか生き残る術はない。

 それでも――みなみは諦められなかった。
(私にだって、力さえあれば……)
 誰にも守られる必要のない、他の参加者と戦えるだけの力が欲しい。
――優勝して最後に残った一人だけは元の世界に返してあげる。
――んーそうだね、何か願いも叶えてあげるよ。
(願いも……)

 右京の言葉はまだ、みなみに届いていない。


【一日目 午前/D-3 道路】
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]君島の車@スクライド
[支給品]支給品一式、S&W M10(6/6)、S&W M10の弾薬(24/24)@バトル・ロワイアル、ゼロの剣@コードギアス、首輪(魅音)
[状態]健康 悲しみと強い決意
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:亀山を殺害した人間とシャナ、玲子を逮捕する。
3:みなみに注意しながら同行する。
4:南西の島へ向かい、参加者を警察署へ集める。

岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式
[状態]健康、深い悲しみ
[思考・行動]
1:右京と共に行動。
2:ゆたかとみゆきの仇を取りたい、その為の力が欲しい。
3:Lに対する強い嫉妬。
4:他の知り合いが心配。
5:カズマと光太郎にもう一度会いたい。
6:V.V.の言葉も頭の片隅に留めておく。

【一日目 午前/D-3 山中】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[装備]:ゲイボルグ@真・女神転生if...、ビルテクター@仮面ライダーBLACK
[支給品]:基本支給品(水を一本消費)
[状態]:健康、力と運が上昇、極度のイライラ
[思考・行動]
1:コキュートスを探す。
2:危険人物には容赦しない。
3:役に立たない人物からは首輪を回収する。
4:首輪の解除ができそうな人間を探す。解除が無理なら殺し合いに乗る。
5:真司に対する苛立ち。彼が戦いを望まなくなった時に殺す。
6:玲子を追って首輪を回収する。


【角砂糖@デスノート】
 本編中にLが食べていた角砂糖。
 紙袋にたくさん入っている。

【炎の杖@ヴィオラートのアトリエ】
 片手で扱える、攻撃に炎属性を付与する杖。
 アイゼルの初期装備でもある。

【ゼロの剣】
 ゼロレクイエムの際、ゼロが皇帝ルルーシュを貫いた剣。


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099:たいせつなひと L 108:Waiting for the End of the Ground
南光太郎
杉下右京 119:杉下右京の正義
岩崎みなみ
083:真実を惑わせる鏡なんて割ればいい シャナ 113:惑いのフレイムヘイズ
096:仮面ライダー vs 寄生生物 田村玲子 106:少女が見た日本の原風景



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