DEAD END(中編)

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DEAD END(中編)  ◆ew5bR2RQj.



「な、なんてことです……これは……」
「どうかしましたか、翠星石さん?」
「た、大変です! 蒼星石は……蒼星石はッ!」
「落ち着いてください、翠星石さん」

驚愕のあまりしどろもどろになる翠星石を宥めたのは右京。
彼に窘められた翠星石は、自らが見た光景をゆっくりと整理し始める。

――――こ、ここは…………イ……だよ、…………! ……は……ってき……メだよ!
――――……なことよりも…………が……んだ、今すぐ……きゃ!

記憶の断片をパズルのように組み合わせ、そしてこの場で起きた出来事の全貌を理解した。

「蒼星石は――――」

ゆっくりと噛み砕くように、最低限の情報だけを二人に告げる。
信用してもらえるか不安であったが、彼らは最後まで真面目な表情で耳を傾けていた。

「そんなことが……だが決して有り得ない話ではありません」

右京は驚きを露わにしつつも、何処か納得したような表情を見せている。

「な、何故ですか?」
「……蒼星石さんの遺体に妙な痕跡が残ってました」

右京の代わりに答えのは、顔を悔恨の色に染めたL。

「1%……たった1%の可能性でした……もう少し、警戒していれば……」
「今すぐにでも伝えに行くですよ! じゃないと……」
「ええ、行きましょう翠星石さん!」

この恐ろしい事実を一刻も早く伝えなければ取り返しのつかない事態になる。
翠星石と右京は互いに頷き合い、女子トイレから立ち去ろうとする。

「……右京さん、翠星石さん、お願いできますか」
「な、何言ってるですか! お前も行くですよ!」

だが、Lだけはこの場に残ると告げた。

「私が行って、何か役に立ちますか?」
「え……?」
「私には翠星石さんのような特殊な力もなければ、カードデッキのような強力な支給品もありません
 なので、私が行ったところで足手纏いになるだけです
 それに私までここを出たら、警察署にかなみさんと城戸さんだけを残すことになります、それはまずいでしょう」

Lの言っていることは非常に合理的だ、合理的過ぎると言ってもいいだろう。
だからこそ、感情的になっている今の翠星石には納得できなかった。
去来していた虚無感は当に消え去り、今は燃え盛るような怒りに支配されている。

「右京さん、貴方にもできれば行かないでもらいたいです
 我々のようなただの人間が行ったところで、おそらく出来ることは何もありません」
「L!」

Lの何処までも冷徹な判断に、思わず激昂する翠星石。
右京はそれを黙ったまま見続け、彼女らの会話が完全に途切れた瞬間に口を開いた。

「心配していただけるのは嬉しいです
 しかし僕は一人の警察官として、目の前にある悪意を見過ごす気はありません」

ハッキリと目を見開き、凛とした声色でLに語りかける。
時間にして数秒、張り詰めた空気が静寂と共に押し寄せる。

「分かりました、ですが、必ず生きて帰ってきてください」
「ええ、もちろんです、それでは行きましょう、翠星石さん!」


   ☆ ☆ ☆


こなたは追い掛けられていた。
背後にいるのは上田次郎、桐山和雄、岩崎みなみの三人。
背丈の低いこなたにとって、長身である彼らに追い掛けられるのは少なからず恐怖だった。

(せっかく蒼星石から逃げ出したのにぃ~)

こなたが蒼星石から逃げ出した作戦は半ば運任せだった。
まず自分が排尿中であると見せかけるよう、配布されたペットボトルに穴を開けて少しずつ便器に零れ落ちるように設置。
蒼星石がそれに気を取られているうちに、トイレの壁の上を伝って隣の個室に移動。
そしてランタンを床に投げ、蒼星石の気を引き付ける。
その一瞬の隙を突き、扉の上から飛び蹴りを繰り出して気絶させたのだ。
トイレの壁の上の空間が広かったこと、自身の身体がそれを通り抜けられたこと、蒼星石の頭身が小さかったこと。
様々な要因が重なって、今回の作戦は成功したのだ。
そうしてやっと逃げ出したのに、何故かまた追われているのである。

「待ってください、先輩!」
「待てって言われて待つような人は何処にも居ないんだよ、みなみちゃん!」

蒼星石を出し抜いたことが露見して、探索隊を差し向けられることは分かっていた。
だが、見つかるのが早過ぎし、追い掛けてくる人数も多過ぎる。
まるで自分が何処に逃げるのか、最初から分かっていたような手際の良さだ。

「ひ~!」

クーガーに追い掛けられている時も述べたが、こなたは同学年の中でもトップクラスの速さだ。
しかし、追い掛けてくる三人も速かった。
みなみが俊足なのは知っていたが、他の二人も十分に速い。
上田も桐山もその長身故に歩幅が広く、見る見るうちに差が縮んでいく。
それにクーガーに追い掛けられている時に比べ、どことなく身体の調子が悪い。
女神の剣のような重りが無いにも関わらず、何故かあの時よりもスピードが出ない。

「わぁ!」

全速力で走ったせいか足が縺れるこなた。
身体のバランスを取ろうとするが叶わず、勢いよく転倒してしまう。
急いで立ち上がろうとするが、その時には既に三人の姿はすぐ傍にあった。

「ハァ……ハァ……やっと追い付いたぞ」

年齢には勝てなかったのか、上田は肩で息をしている。
他の二人も上田よりはマシであるが、やはり息は上がっていた。

「先輩……何で……何で……」

みなみが目尻に涙を溜めながら、ひどく悲しそうな瞳をこちらに向けてくる。

「何で……殺したんですか?」
「え……?」

言っていることが理解できなかった。

「とぼけないでください! 何で……何であんな酷いことを……」
「もしかしてかがみんのこと……バレてる?」
「え……まさか……かがみ先輩も殺したんですか?」

みなみの表情が驚愕に歪んでいく。

(あちゃ~、ミスったなぁ)

かがみのことを指摘されているのかと思ったが違ったようだ。
やぶ蛇とはまさにこのことだろう。

「稲田くんといい最近の学生は一体どうなっているんだ……全く……」

侮蔑と困惑の篭った視線を投げかけてくる上田。
かがみを殺したのは、あくまで全てを無かったことにするためだ。
最近のニュースでよく報道されているような、アニメやゲームの影響では決して無い。
それなのに一括りにされるのは、少なからずこなたの癇に障った。

「とりあえず戻ろう、泉くん」

上田に肩を掴まれる。

(やだよ、絶対)

もし警察署に戻ったら、Lが難癖をつけて拘束してくるに決まってる。
こんなところでゲームオーバーになんかなりたくない。
反撃をするならば、チャンスは今しかない。

「やだよ、絶対に逃げ切ってやるもんね!」

肩に置かれた上田の手首を掴み、思いっきり投げ飛ばそうとする。
彼女が習った合気道は、腕力や体格の差を逆に利用するような武術だ。
故にいくら巨体であっても、素人なら容易く投げ飛ばすことができる。

「無駄だ」

だが、それは素人に限った話だ。
上田は空手の達人であり、戦闘の経験も積んでいる。
投げ飛ばそうとしたところを、逆に抑えこまれてしまった。

「痛い、やめてよ!」
「スマない、だが二人も殺している君は何をするか分からないからな、抑えさせてもらう」

鈍痛を訴えるが、上田は聞く耳を持たない。
胡散臭くて冴えない男だと思っていたが、意外なところに伏兵がいたとこなたは臍を噛んだ。

「だ、だって、これはゲームなんだよ!」
「はぁ?」
「リセットボタンを貰えば、全てが元通りになるんだよ!?」
「君は一体なにを言っているんだ……」
「みなみちゃん! ゆーちゃんがこのまま死んじゃったままでいいの!? ねぇ!?」

必死に訴えかけるこなた。
どうやっても抜け出すことができないなら、もう泣き落としに賭けるしかない。
ゆたかの親友であるみなみがいるのだ、きっと上手くいくはずだ。

「ッ……!」
「耳を貸すなみなみちゃん、人を殺して上手くいくことなど決してない、そうして破滅した者たちを私は何人も見てきた」
「だ、だいたいさっきからみなみちゃんも上田さんもなに言ってるのさ!?
 リセットボタンを貰えば全てが無しになるのに! それに私が殺したのは――――」

「ッ!」

こなたが言葉を遮るように、桐山が不意に身体を翻す。
そして素早く腰の刀に手を当て、目にも留まらぬ程の速さで引き抜いた。

「ひっ!」

上田が悲鳴を上げたのと、銃声が轟いたのはほぼ同時だった。
だが銃弾が届くことはなく、桐山によって斬り落とされている。
銃声がした方向を見ると、そこには蛇皮の服を着た金髪の男が銃を構えていた。

「ははっ! 探したぜ」

桐山は二度遭遇していて、こなたは仮面越しに声を聞いていて、上田とみなみは情報交換の際に話を聞いていた男。
仮面ライダー王蛇に変身する危険人物・浅倉威がそこにいた。

「――――ッ!」

無言のまま地面を蹴り、浅倉に斬りかかろうとする桐山。
だが浅倉の背後に設置されたカーブミラーから、巨大な大蛇――――ベノスネーカーが現れてそれを牽制する。

「な、なんなんだね君は! こう見えても私はとっても偉い大学教授で、さらに――――」
「引っ込んでろ!」
「はい」

いつも通りの自己紹介を始めようとする上田だが、浅倉に罵声を浴びせられて竦んでしまう。

「みなみちゃん、下がっていよう」
「え、でも……」
「いいから、我々に出来るようなことなど何もない!」

桐山を盾にするように、上田はこそこそと後退していく。
何も出来ることがないのは事実だが、それでも即判断する辺りは流石は上田と言ったところだろうか。
気がつくと、既に十メートルほど後ろに下がっていた。

「先輩も……早く逃げて」

みなみは地面に伏したままのこなたに手を伸ばすが、彼女は呆けるように浅倉を眺めている。
それでも手を伸ばし続けるが、彼女は振り向きさえしない。
やがてベノスネーカーの眼光に射抜かれた彼女は、怯えるように上田がいる地点まで下がってしまった。

「デッキを出せ」
「……」

浅倉は懐からデッキを抜き、応えるように桐山もデッキを構える。
裂帛した空気が、周辺一帯を包み込む。

「待つです!」

その空気を切り裂くように現れたのは、警察署にいたはずの翠星石と右京だった。

「これで助かった!」

カードデッキ所持者の桐山に加え、警察官の右京と特殊能力を有する翠星石が加わった。
いくら浅倉といえど、これでは多勢に無勢だろう。
上田はそう考えていたのだが、駆けつけてきた二人の様子がどこかおかしいことに気付く。
彼らがが睨みつけているのは浅倉ではなく、何故か味方であるはずの桐山だった。

「お前だったんですね……」

桐山が背後を振り向く。


「お前が蒼星石を殺した本当の犯人だったんですね、桐山和雄ッ!」


翠星石が人差し指を突きつけながら叩きつけた言葉は、桐山が蒼星石を殺害した真犯人だと告発するものだった。
突風のように訪れた急展開に、他の者たちは驚愕を隠すことができない。
上田やみなみはあんぐりと口を開け、浅倉も訝しげに首を傾げている。
当の本人である桐山には、一切の表情の変化はない。

「何を言っているんだ、俺が蒼星石を殺すわけがない」
「嘘を吐くなです! 私はきちんと見たですよ!」
「殺していない」
「黙れです!」

冷静に反論する桐山と、感情的に言葉を返す翠星石。
しばし言葉の往復が続くが、一向に決着がつく様子はない。
まさに水掛け論といえるだろう。

「桐山くん、嘘をつくのはお止めなさい」

それを見兼ねてか、翠星石を制して右京が言葉を紡ぎ始める。

「既に僕達は証拠を見つけています、貴方が犯人である確固たる証拠を」
「証拠……?」
「ええ、僕とLさんが蒼星石さんの遺体を見た時、同時に一つの違和感を抱きました」

全ての人間の視線が集中する中、右京は自らの推理を語っていく。

「それは蒼星石さんの着衣が乱れていたことです
 詳しく調べてみると、彼女に衣服の左胸部に三つの弾痕があることにも気付きました
 しかし彼女の身体に銃創はない、そもそも左胸を撃たれたら即死です
 そしてこの二つの事実を照らし合わせた時、我々は同時に一つの仮説に辿り着いた」

溜め込むように息を呑み、鋭い視線を桐山へ向ける。

「蒼星石さんは防弾チョッキをつけていた」

桐山の空虚な視線と、右京の厳格な視線が交差する。

「ずっと一緒に居た貴方なら、それに気付いていてもおかしくない
 そして蒼星石さんの遺体に防弾チョッキが無かったということは、犯人が持ち去ったということです
 桐山さん、デイパックの中身を公開し、上着を脱いでください
 どちらかに防弾チョッキがあれば、それは動かぬ証拠になります」

整然とした口調で言い放つ右京。
情報交換の際に出歩いた者は桐山だけであり、警察署に集まった他の人間の線は消える。
こなたが犯人である可能性も存在するが、同じようにデイパックの中身と服の下を調べればいい。
右京に集中していた視線は、いつの間にか桐山へと移っている。
話題の渦中にいるにも関わらず、桐山は微動だにしない。
元から機械的な人間ではあったが、今の彼からは一種の不気味さすら感じられた。


   ☆ ☆ ☆


「いたたたた……」

こなたに蹴り飛ばされた蒼星石は数分間意識を失っていた。
辺りを見渡すが既にこなたの姿はなく、おまけにデイパックまで奪われている。
してやられた、と彼女は頭を抱えだした。

「え?」

そんな時、不意に来訪者が現れる。
彼女が長い間同行を続けてきた少年・桐山和雄だ。

「こ、ここは女子トイレだよ、和雄くん! 男の子は入ってきちゃダメだよ!」

まず最初に行ったのは、男子禁制の場に入ってきた桐山を嗜めることだった。
だが、今はそんなことをしてる場合ではないとすぐに気付く。

「そんなことよりもこなたちゃんが逃げたんだ、今すぐ追わなきゃ!」

そう言った瞬間、桐山の姿が掻き消える。
いや、掻き消えたと言った方が正しいだろう。
何故なら彼女がそれに気付いた時、既に桐山の姿は目の前にあったからだ。

「……ぁぁッ!」

顎の下辺りに異常なほどの熱を感じる。
何が起きたのか調べようとするが、思うように首が動かない。
目線だけを下に向けると、顎の下に一本の鉛筆が突き刺さっている。
鉛筆の根本を持っているのは、今までずっと一緒にいたはずの桐山だった。

(なん、で……)

桐山に刺されたのだと、潰えそうな意識の中で理解する。
声を出そうとするが、掠れた声しか出せない。
熱された鉛を呑み込んだような苦痛が、彼女の喉元を埋め尽くしていた。

「ぅ……ぁ……――――」

熱が激痛へと変わっていく中、蒼星石の意識は急激に重くなっていく。
意図を探ろうと桐山の目を覗き込むが、氷のように透明な目からは何も感じ取ることができない。
お返しとばかりに桐山は手に力を込め、鉛筆はより深くまで挿し込まれていく。
抵抗しようと桐山の腕を掴むが、まるで力が入らず押し返すことができない。
そしてついに鉛筆は喉を貫通し、彼女の意識はブチッと押し潰される。
ずっと一緒だったはずの桐山の心の中は、最期まで一片も理解することはなかった。

【蒼星石@ローゼンメイデン 死亡】


   ☆ ☆ ☆


「早くするですッ!」

痺れを切らしたのか、翠星石が行動の催促をする。
すると桐山は小さく溜め息を吐き、静かにその薄い唇を開く。

「その必要はない」


「俺が蒼星石を殺した」


今日の天気を告げるような何の変哲もない声で、桐山は自白した。

「な、何故君が……」

仲間だと思っていた人物の凶行に、上田とみなみは動揺を隠すことができない。
その傍で翠星石は拳をわなわなと震わせ、口端をぴくぴくと歪めている。

「なんで……なんで蒼星石を殺したですか! ずっと一緒に居たんじゃないんですか!?」

怒声を張り上げる翠星石。
最初に蒼星石の遺体を見た時は、怒りや悲しみよりも虚しさに支配されていた。
しかし桐山が犯人であることが判明した時、彼女は自らの腹の中であらゆる負の感情がぐつぐつと煮え滾っていることに気付いた。
桐山は仲間の蒼星石を惨殺し、あまつさえその犯行を別の人間に押し付けようとしたのだ。

「そういうルールだろ」

プチッと翠星石の中で糸が切れる。
それは怒りや悲しみといった負の感情が、殺意に変貌した瞬間であった。

「殺してやるですッ!」

右手を掲げ、帯状に連ねた薔薇の花弁を吹き飛ばす。
それは偶然だったのか、あるいは翠星石の殺意が桐山に勝ったのか。
縮地を会得したはずの桐山よりも速く、薔薇の花弁は彼の首に巻き付いていた。

「このまま死ぬです! 蒼星石が味わった苦しみを味わいながら死ぬです!」

拘束した桐山を上空へと持ち上げ、見せしめのように宙吊りにする。
桐山は両手で花弁を振り解こうとするが、蒼星石のローザミスティカでさらに力を増した花弁を解くことはできない。
このままでは、あと数分もしないうちに絞め殺されてしまうだろう。

「翠星石さん、やめてください」

彼女の烈火のような怒りに皆が気圧される中、右京が彼女の凶行を制止しようとする。

「嫌です! こいつはここで殺さないと駄目です!」

だが、殺意に支配されている翠星石が聞き入れるはずもなかった。
その顔を鬼のように歪め、右手の花弁に力を注ぎ続ける。
もがき続ける桐山の手が弱くなっていく。

「翠星石さんッ!!」
「黙るですッ!!」

顔を小刻みに震わせ、翠星石を止めようと叫ぶ右京。
涙を流しながら、右京の言葉を振り切る翠星石。
二人の絶叫が、昼空の下に響く。
言葉が通じないと判断したのか、ついに右京は行動に出た。

「な、何をするです! 離せです!」

勢いよく翠星石に飛び掛る右京。
全神経を桐山に集中させていた彼女は、避けることができずに抑え込まれてしまう。
体勢が崩れたことで拘束は緩み、桐山はカードデッキを取り出しながら脱出する。

「変身」

近場にあった民家の窓ガラスにデッキを翳し、桐山はオルタナティブ・ゼロへと変身した。

「この……ッ!」

右京に抑え込まれながらも翠星石は右腕を伸ばし、薔薇の尾を桐山の首に飛ばす。
だが、突如降り注いだ毒液によって、花弁は一瞬の内に溶解してしまった。

「茶番はその辺にしろ、そいつは俺の獲物だ」

傍に控えたベノスネーカーの咆哮と共に、今まで動かずにいた浅倉が行動を開始する。

「変身!」

背後のカーブミラーにデッキを掲げ、浅倉は腰に現れたバックルにそれを装填する。
鑑が割れるような音が響き、次の瞬間に浅倉の姿は仮面ライダー王蛇へと変わっていた。

「しまった……!」

右京は困惑したように声を上げる。
彼は情報交換の際に席を外していたため、浅倉がカードデッキの所持者であることを知らなかった。
さらに首を絞められていた桐山が、すぐに動いたのも予想外である。

「殺してやる、殺してやるです!」

一方で翠星石の殺意も未だ衰えず、このままでは乱戦になるのは必至。
人命が失われることを忌避している彼にとって、この展開は是が非でも避けたい状況であった。

「いや~、お兄さん凄いね~」

そんな緊迫した空気の中、呑気な声が流れる。


   ☆ ☆ ☆


「なんだお前は……!」

突然出てきた小柄な少女に、浅倉は困惑を隠せないようだった。

「泉さん! 危険です! 下がってください!」

右京が小柄な少女――――泉こなたに向かって叫ぶ。
だが彼女はその警告を聞き入れず、救世主を見つけたように目を輝かせながら近づいていく。

「いやね、お兄さん、すっごいカッコいいよ」

ウインクを飛ばし、右手で作った銃を撃つような仕草をするこなた。
それもそうだろう。
今の彼女にとって、浅倉はまさに救世主のような存在だった。
もしあのまま浅倉が現れなかったら、彼女は間違いなく警察署に連れ戻されていた。
蒼星石を殺した冤罪は晴れたかもしれないが、かがみを殺した件に関してはもう言い訳はできない。
殺人が露見してしまった以上、今度こそ留置所に入れられてしまうだろう。
そうしたら、事実上のゲームオーバーである。
どうにかしてこの場を切り抜ける方法を探っていた時、浅倉は颯爽と現れたのだ。
もはや警察署にいた人間全員敵であり、彼だけがLの息の掛かった人間ではない。
この場を抜け出すならば、彼に付いて行く以外にないのだ。

「泉くん下がれ!」
「先輩逃げて!」

上田やみなみにとって、彼は圧倒的な力を持つ殺人鬼。
だが彼女にとっては、白馬に乗った王子様のようなものだ。

(白馬じゃなくて大蛇だけどね)

彼が傍に従えている大蛇は、どう見ても地球上には存在しない種類だ。
まるでゲームに出てくるモンスターのようである。
だからこそ、その比類なき強さを信頼することができた。
才人とは比べ物にならない、あの後藤にも匹敵するかもしれない。
仲間に加えない理由がなかった。

「とりあえずさっきは助けてくれてありがとね」

そう、彼は窮地を救ってくれた。
だから仲間にならないわけがない、交渉は難しいかもしれないがきっと仲間になってくれる。
これはゲームなのだから、攻略法は必ず存在するのだ。

「それでお願いがあるんだけどさ、私と契約して仲間になってよ! なーんて……どうかな?」

洒落を交えながら、彼女は交渉を開始した。
他人と会話する時は、まず相手の目を見ることから始まる。
コミュニケーション障害を克服する第一歩もまずはここからだと、インターネットにも書いてあった。
それを実践するため、彼女は仮面に覆われた男の顔を見上げる。

「うるせぇ」

こなたの懇願を、浅倉は一言で一蹴する。
そして傍に控えていた大蛇に向かって、何かの指示を出す。

「え……?」

数秒後、大口を開けながら大蛇が襲い掛かってきた。

「先輩!」

遠くで見ていたみなみが叫ぶ。
油断しきっていた彼女に、大蛇を躱すことはできない。
次の瞬間には、既に彼女は呑み込まれていた。

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

消化するためなのか、こなたの身体に黄色の溶解液が注がれる。
陵桜学園の制服は紙のように蒸発し、その肌すらもジュウジュウと音を立てながら溶けていく。
あまりの激痛に、のたうち回りながら悲鳴を上げるこなた。
だがベノスネーカーはすぐに消化することはせず、舌で転がして彼女を嬲り始める。

「ぁ……ぁぁ……」

やがて悲鳴も途絶え、頃合いがよくなったところで、ベノスネーカーは咀嚼を始める。
ベノスネーカーの鋭い刃は、溶解されたこなたの身体を簡単に噛み砕く。
ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃと。
肉が削げ、神経が切れ、筋肉が裂け、骨が砕ける。
痛覚は未だ残っているが、声帯が潰れてしまったため悲鳴を出すことができない。
筋肉が裂けているため、のたうつことさえできなかった。

(あは、あははははははは……)

それでも、彼女は笑っていた。

(だって……ゲームだもん)

”今回”の死は免れないだろう。
だが、まだ一回目。
シューティングゲームで言えば、まだ残機をほとんど残している状態だ。
RPGや恋愛ゲームのようなセーブ制なのかもしれない。
目を背けるほど無残な死に方をしても、セーブデータをロードすればすぐにやり直すことができる。
セーブポイントは見つからなかったから、多分オートセーブなのだろう。
万が一セーブポイントを見落としてただけだったとしても、スタート画面からやり直すだけである。

(ちょっ……と……しんどいけど……ね……これ、死にゲーだったんだ……)

何度も繰り返し死ぬことで進んでいく難易度の高いゲーム。
ここで死んでしまうことを覚えたから、次はこうならないように気を付ければいい。

(痛い……痛いよぉ……でも……負けちゃダメだ……)

この痛みに耐えたら、次の瞬間には別の場所に戻っているはずだ。
だって――――

これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ

【泉こなた@らき☆すた 死亡】


   ☆ ☆ ☆


「いや……いやああぁぁ……」

敬愛する先輩の死を目撃し、みなみは思わず崩れ落ちる。
死体さえ残らない捕食という死に方は、昨日まで普通の生活を謳歌していた女子高生にはどうしようもない程に残酷過ぎた。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「なんてことを……!」

狂ったように笑う浅倉に対し、右京は怒りを顕にする。
目の前で人命を奪い、あまつさえその死を嘲笑う。
浅倉の蛮行は一人の警察官――――否、一人の人間として許せなかった。

「僕は貴方を絶対に許しません!」
「ほう、ならどうする」
「貴方を、逮捕しますッ!」

声を震わせながら宣言した右京を鼻で笑う浅倉。
仮面ライダーにとって、ただの人間などその辺を飛んでいる蚊と同じ存在。
少し叩くだけで、簡単にその命を奪うことができる。
故に、右京に対する興味は欠片も無かった。
今の浅倉が渇望するのは、目の前にいるオルタナティブ・ゼロただ一人。

「やれるもんならやってみろ!」

嬉々としながら、浅倉は叫んだ。


   ☆ ☆ ☆


警察署に待機することにしたLとかなみ。
彼らは情報交換をした会議室にいるが、会話は皆無と言ってよかった。
その特異な能力により人の感情を読むことのできる彼女は、機械のように冷静なLが苦手だったのである。
Lは非常に正義感の強い人間だが、正義を実行するためならあらゆる手段を問わない。
犯罪者を犠牲にすることで皆が助かる方法があったら、彼は容赦なく犯罪者を切り捨てるだろう。
倫理的な問題を語れるほど彼女は成熟していないが、それでも胸の内にモヤモヤとした物は残っていた。

(でも……)

Lよりも接するのが苦手な人間が、集まった十人の中に一人いた。
カズマよりもやや身長は高めの学生服を着た少年・桐山和雄。
何故か彼だけは、一切心を読むことができなかったのである。
ここに連れてこられてからアルターは弱まっていたが、それでも全く効果を発揮しないということはなかった。
一緒にいた蒼星石の心は読めたし、他の人たちの心も問題なく伝わってきた。
何故か桐山だけは、ハート・トゥ・ハーツが効かない。
いや、ハート・トゥ・ハーツを使っても何も読み取ることができなかった。

嫌な予感がする。
ハート・トゥ・ハーツが告げているのか、それとも女の勘か。
このまま何もしないでいたら、とんでもない事が起こりそうな気がするのだ。

「Lさん!」
「駄目です」

Lに訴えようとするが、言い切る前に一蹴されてしまう。

「私も行くと仰りたいのですよね、ならばハッキリと言わせてもらいます、怪我人の貴方では足手まといなんです」

包帯の巻かれた左腕を見て、かなみは思わず歯噛みする。
簡単な応急処置しかしていないため、未だに鈍痛が残っている左腕。
そもそも体調が万全だとしても、幼い彼女が戦闘で役に立つはずがない。

「ならLさんが!」
「私も駄目です
 私はカポエイラを習得していますが、それも仮面ライダーのような相手には歯が立ちません
 このバトルロワイアルは、一般人が戦って生き残れるようなものではないのです」

Lの言う事は正しい。
道中で出会ったシャドームーン等は、一般人が束になっても敵う相手ではないだろう。
だが、それでも、それを言い訳に逃げることはしたくなかった。
怪我人な上に何の力もない子供でも、必ずなにか出来ることがあるはずだ。

(できるできないの問題じゃなくて……やる)

カズマが胸に抱いていた信条。
彼があそこまで強かったのは、アルターのおかげではなく何事も諦めなかったからだ。
もしアルターのおかげなら、あらゆる力を持っていた無常矜侍に勝てなかったはずである。
最後まで立ち向かったからこそ、ロストグラウンドは陥落せずに済んだのだ。
君島も、シェリスも、橘も、あの劉鳳でさえ死んでしまった。
しかし彼らは、必ず何かをやり切って逝ったはずだ。

(……そうだ!)

考えに考え抜いた結果、たった一つだけ自分に残されていた仕事を見つける。
これは最善の策でもなんでもない、ただの他人任せかもしれない。
しかし、それでも自分に出来ることには変わりなかった。

「やっぱり、私行きます!」

Lに背を向け、かなみは会議室から走り去る。
彼の制止の声が聞こえるが、それでも彼女は止まらなかった。
胸の内に、大切な人の信念を抱き。
少女は、走る。


   ☆ ☆ ☆


「くっ……この!」

翠星石はベノスネーカーに薔薇の尾を放つが、毒液を吐かれて対処される。
続いて巨大な尾が振り回されるが、高く跳躍して回避。
その隙に右京が放った銃弾がベノスネーカーに命中するが、まるで効いていないといった様子だ。
突如として始まった戦闘は、早くも均衡状態に陥っていた。
浅倉と桐山が剣を交える中、翠星石と右京が協力してベノスネーカーを抑え込んでいる。
だが、協力といってもそれは非常にぎこちない。
先程の一件もあり、彼らはまともな連携を取れていないのだ。

「死ぬです! 桐山ッ!」

それだけではない。
先程から翠星石は、ベノスネーカーを掻い潜り桐山に攻撃を仕掛けている。
その分だけこちらの戦線は薄くなり、さらに単純な攻撃であるため容易く回避されてしまう。
そして右京の得意な剣術も猛獣相手では機能せず、人命が失われるのを嫌って射撃訓練もしていなかったため銃は真価を発揮しない。
圧倒的不利は否めなかった。

桐山の夢想政宗から繰り出す斬撃を、ベノサーベルで受け止める浅倉。
その隙に新たなカードを取り出そうとするが、桐山は蹴りを放つことでそれを妨害。
先程から桐山は接近戦を仕掛け、浅倉の新たなカードの装填を封じている。
王蛇が多彩なカードを所持していることを知っているため、それを阻害する戦法を取っているのだ。

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!!」

そんな膠着した状況を打ち破るかのように、戦場に新たなる参加者が姿を表す。

「あれは東條くんの!」

乱入者を見て叫ぶ上田。
戦場に現れたのは、白銀の皮膚を持つ二足歩行の虎・デストワイルダーだ。
東條を捕食したデストワイルダーは、無節操に会場を駆けずり回っていた。
そうしてしばらくする内に、その鼻に覚えのある臭いが届く。
かつて惨敗を喫し、屈辱を味わわされた男――――浅倉威の臭い。
それを確認したデストワイルダーは、本能に従って戦場へと向かっていた。
元主人の仇を取るなどではなく、ただ憂さ晴らしをするために。

「おぉ!」

デストワイルダーが振り下ろした爪が、浅倉の背負ったデイパックを引き裂く。
するとデイパックは破裂し、中身が周囲へと散乱する。
この一撃で体勢を崩した浅倉を、今度は逆の爪が襲いかかった。

「あああああぁぁぁッ!」

回避することができず押し倒される浅倉。
そのまま普段の要領で、デストワイルダーは彼を引き摺りはじめる。

「退け!」

右脚でデストワイルダーを腹を蹴り、爪の下から脱出する浅倉。
以前にも彼は同じシチュエーションを体験し、同じ方法で脱出していた。
それを学習していないのは、やはりデストワイルダーが野獣であるためだろうか。
デストワイルダーは再び腕を振り上げるが、彼がデッキから一枚のカードを取り出すとピタリと動きを止める。

「一匹死んだからちょうどいい、お前も飼い慣らしてやる」

浅倉が取り出したのは新たなる契約のカード。
これは次元のデイパックから回収し、本来は斎藤一に支給されていた代物。
獰猛な野獣でも契約の力には抗うことができず、やがて粒子となりカードの中に吸い込まれていった。

「ッ!」

それを確認してか否か、桐山が浅倉に追撃を仕掛けようと走る。
だが主人の窮地に駆けつけたベノスネーカーに阻まれ、失敗に終わってしまう。

「桐山ぁッ!」

そしてベノスネーカーが居なくなったため、翠星石は桐山に攻撃対象を変更する。
大量の花弁を吹雪のように飛ばし、桐山を全方位から覆い尽くす。
しかし桐山は一切の動揺を見せず、翠星石の元まで一直線に駆け出した。

「倒れろ! 倒れろです!」

夢想政宗を小刻みに動かして花弁を叩き落とし、桐山の走る前方にのみ空間が生まれる。
瀬田宗次郎から奪った天剣の才は、ただでさえ人外な力を持つ彼に更なる力を与えていた。
翠星石はありったけの力を込めるが、散らされてはまるで意味を成さない。
気がついた時には、桐山は彼女の目の前で刀を振りかぶっていた。

「翠星石さん!」

振り下ろされる斬撃を受け止めたのは、女神の剣を握り締める右京だった。
こなたから没収した女神の剣は、万が一に備えて門番を務めていた右京に回されていたのだ。

「剣を下ろしなさい!」

右京は腹の底から声を張り上げるが、桐山の反応はない。
代わりに左腕で裏拳を繰り出し、右京の身体を数メートル後方へと払い飛ばした。
女神の剣による身体強化も、ライダーの力には敵わなかったのだ。
右京が立ち上がってくる姿を桐山は傍目に捉えるが、意にも介さぬといった様子で再び翠星石に剣を向ける。

「シャアアァァァァッ!」

だが、その剣は今度も届かなかった。
一箇所にいた彼らをまとめて駆逐するため、ベノスネーカーが猛毒の溶解液を吐き出したのだ。
桐山は横に飛んでそれを回避、翠星石は花弁で盾を展開して防ぐ。


――――FINAL VENT――――


この会場で既に何度も鳴り響いた認証音が響く。
仮面ライダーの力を最大限の発揮する必殺技・ファイナルベント。
桐山の背後にある窓ガラスからデストワイルダーが飛び出し、強固な爪で桐山を背中から引き摺り倒す。
浅倉は両腕に巨大な手甲・デストクローを装着し、引き摺られてくる桐山を見据えながら腕を広げた。
これこそがデストワイルダーのファイナルベント――――クリスタルブレイク。
その威力は絶大であり、完全に決まった際の殺傷力は非常に高い。
途中で解除されやすい欠点があるが、浅倉は背後から仕掛けることでそれを防いでいた。
その証拠に桐山は一切抵抗できず、刻一刻と浅倉の元へと引き摺られていく。

「させません!」

それを妨害したのは、なんと右京であった。
女神の剣の柄を強く握りしめ、力任せにデストワイルダーの右腕に衝突させる。
強靭な皮膚に覆われた腕を切り落とすことはできないが、それでも引き摺る腕の力を僅かに緩めることには成功する。
その一瞬で桐山は転げながら脱出し、クリスタルブレイクは失敗に終わった。

「テメェッ!」

ギリッと奥歯を噛み締め、溢れんばかりの怒りを顕にする浅倉。
その様子は、新たな玩具を取り上げられた子供のようだ。

「貴方は……人の命を何とも思ってないのですかッ!?」

右京の顔はその怒りの大きさを示すように真っ赤に染まっている。
目の前にいるのは、人智を超えた力を身に付けた冷酷非道の連続殺人鬼。
浅倉が本気で右京を攻撃したら、おそらく数秒で片が付くだろう。
それでも右京は怯むことなく、果敢に立ち向かっていた。

「そういうもんなんだろ? バトルロワイアルってのは」
「黙りなさい! これ以上泉さんのような犠牲者を出すことは絶対に許しません!」
「ハハハハハハハ! なんだお前、あの女のこと気に入ってたのか?」
「ッ! 貴方は何処までも……」

真剣に語りかける右京に対し、浅倉は嘲るような態度を取る。
馬の耳に念仏とはまさにこのことだろう。
数多くの人物から人間ではないと称された男に、人間の常識や倫理観はまるで通用しない。
右京は目の前の男に言葉は通じないと悟るが、それでも諦めずに語り続ける。

「これ以上殺し合うのはやめなさい! 例え生き残ってもV.V.が我々を返す保証はありません!」

何故なら、言葉こそが暴力を憎んだ彼が持つ唯一の武器なのだから。

「……いい加減口を閉じろ」

浅倉はデストクローを装備した右腕を振り上げ、傍にある民家の外壁に叩きつける。
ドゴンという音ともに、木製の家の壁に大きな穴が空いた。

「バトルロワイアルに警察はいらない、死ね」

両腕を大きく広げ、威嚇するように駆け始める浅倉。
女神の剣の柄をしっかりと握りしめ、右京はその猛攻に備える。
説明書に記されていることが事実なら、この剣の装備者の身体能力は上昇しているはずだ。
ライダーと渡り合えるかは不明だが、それでも背を背けるわけにはいかなかった。

「あぁ……?」

だが、途中まで走ったところで不意に浅倉の足は止まる。
突然の出来事に困惑し、怪訝そうに顔を顰める右京。
仮面に覆われた浅倉の視線が、自分の背後に向けられていることに気付いたのはその少し後だった。

「右京さん、後ろ!」

遠くに隠れていたみなみが叫ぶ。
咄嗟に振り向くと、そこにあったのは――――

「ごふっ」

日本刀を右京に突き刺している、仮面ライダーオルタナティブ・ゼロ――――桐山和雄の姿だった。


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131:DEAD END(前編) 蒼星石 GAME OVER
泉こなた
上田次郎 131:DEAD END(後編)
由詑かなみ
桐山和雄
城戸真司
翠星石
岩崎みなみ
杉下右京
105:夢の終わり(後編) 浅倉威



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