モリア アモニス小隊 9

モリア アモニス小隊 9

 ぼんやりとよこたわって、余韻の中に身を浸らせている。
 コルネリアは、もう何をするにしても、楽しくてたまらなかったふうで、果てたあとにも、すこしするとルキアニスをまさぐりはじめるくらいだった。けれどかわいいかわいいと何度も言われながら、胸を弄ばれるのは、すこし釈然としない気がした。だからルキアニスも彼女のかたち良い胸を責め立てたり、犯したりしたのだけれど。まあ、お返しされようにも、おなじことはできなかったわけで、それはそれで代わりの補いをつけてあげたのだけど。
 そうして入れ替わる間にも、コルネリアはルキアニスの弱くて、気持ちの良いところに、気づいてゆく聡さを見せていた。アスランを泣かせたコルネリア自身に、ルキアニスもやはり鳴かされて、ぼうっとしてる間にまた、いいように弄ばれもした。いまもまた、コルネリアの手指はルキアニスの胸をいじり、もてあそんでいる。
「・・・・・・なに」
 もうだいぶくたびれて、ことばで応じるのも億劫ではある。でもコルネリアはまだまだという感じだ。
「かわいいから」
 そう言いながら、先端を指でさすりって、呼び起こそうとしている。のしかかるようにして、口づけし、舌を這わせる。さらさらと落ちる彼女の長い髪が肌をくすぐる。そうされてるうちに、体のほうが勝手に応じはじめる。また背筋を、何かが這い登る。背を反らさせ、声が勝手に漏れる。胸が打ち初めて、もう感じるところのことしか浮かばない。彼女のもう一方の手が、ルキアニスの内股へと差し入れられる。開けばと促すように。抗う足の動きにあわせて撫でさすって、そこも戯れの一つだとしめしながら。
 もう捨て鉢になって、足を開いてしまって、好きなようにすれば、と思ったりもする。先にそうした。そうして、やはりコルネリアに鳴かされた。南方の古人は、入れ代わり立ち代わりに常人の相手をすると聞いたことがある。聞いた時は、そんなこと出来るのかと驚いたものだけれど、己が古人とまじわるときは、同じようなことをしている。常人のことはルキアニスは知らないけれど、古人ほど体はもたないのだそうで、だから、後床という言葉があるのだとも聞いた。すでに誰かに抱かれて乱れた古人を抱くのだという。古人としとねを共にすると常人とでは味わえない快楽があるのだと言われてるとも聞いた。それがどういうことなのかは、古人であるルキアニスにはよくわからない。
 でも、古人の娼婦を抱えれば、城が立つほどなのだと聞いたこともある。
 それだけじゃない。
 お金がたっぷりあれば、古人を己一人のために抱え込むことだってできる。そうして、己のために夜の・・・・・・・
 「・・・・・・っ」
 そしてぼんやりしていると、急くコルネリアにいきなり自身を触れられたりもする。疲れ果てているのに、それでも、ぞくっと背を登る快楽に揺り動かされる。何度も何度もコルネリアを受け入れて、少しの痛みが入り混じった、言いようのない感触。引き締めた内股のあいだに、コルネリアは指を差し入れて、ふたり互いの愛液に汚れて、今もまたぬめる襞へとさらに差し入れる。
 後床、なんて言葉を思い出したのがいけなかった。ルキアニスのどこかが、問うている。後床とはこういうことだろうか、と。何人にも・・・・・・
「・・・・・・」
 それでもこんな風に感じるのだろうか、と。いまもまた言葉にならない声だけが漏れる。
 声が漏れてしまい、内股を締める力も萎えて、気づけば足を開いて、指に犯されながら喘がされている。コルネリアのほっそりした指は、まだとろとろと濡れるルキアニス自身に入り込み、それから内襞を上にまさぐる。 ほんのひと月前まで騎士姫と言っていい凛々しさに包まれていた彼女が、いったいいつの間に手管を身につけたのか。
「・・・・・・」
 胸を舌で攻め立てていたコルネリアが、笑みの吐息を漏らす。濡れた肌が粟立つ。
「ねえ、指でもわかる。どうしてこんなふうにいやらしいの」
 応える言葉も出てこない。コルネリアの指は、ルキアニスの内襞をこねるようにかき乱して、その襞奥の弱いところを、こりこりと苛んでいる。言葉を紡ごうとしても、出てくるのは喘ぎ声ばかりだ。
「指だけなのに、こんなにからみついてきて」
 ささやき声が耳を犯してくる。
「あたしが、どんなに気持ちよかったのか、わかる」
「・・・・・・」
「さっきみたいに、締めてみて」
 具合よくいきむと、気持ち良いと言われたことがある。それを何度かしただけだ。コルネリアは、ねえ、といつもは出さないような艶っぽい声で促し、また指を動かす。ルキアニスの弱いところをこりこりと弄ぶ。もう言葉も出ない。ただ喘ぐばかりだ。コルネリアの指ばかりを感じる。
「玉、使ってあげる」
 言うと、コルネリアの指がするりと引き抜かれる。それでもまだルキアニスは足を閉じられずにいた。だらしなく、足を開き、濡らし、指で弄ばれて、まだ息も荒く、そのままの姿で、琳の玉で弄ばれるのを待っている。わずかな魔力をそそぐことで、みずからぬめるようになり、ふるふると震える象牙色の玉。そのおしりには革紐がついていて、具合の良いところに引き戻せる。その紐をもって、ぶらぶらとぶら下げて見せながら、コルネリアはふたたびルキアニスへと顔を寄せる。長い髪がまだ濡れた胸にかかってくすぐる。
「ねえ、どこにあててほしい」
「・・・・・・いじわる」
 うん、とコルネリアは笑みで応じる。半ば開いた唇に口づけし、それからふるふると震える玉をそっと当てる。首筋に口づけして玉をあてる。ああもう我慢できない。それでもコルネリアはゆっくりと、胸の先端に口づけする。わざと焦らしながら、唇で攻め、舌で攻め、たっぷりと濡らす。
「!」
 声が出てしまう。震える玉を吊り下げて、触れるか触れぬかのところで、先端を責め立ててくる。それからコルネリアは肌に舌を這わせる。胸から、みぞおちへ、みぞおちからおへその上へ。ざらつく舌で舐め濡らせながら、汗ばむ肌を弄ぶ。そしておへそも。そうしながら張って反ったルキアニス自身には触れもせずに焦らすのだ。内股を優しく撫でさすり、口づけして、さらに玉を這わせる。
「だれも疑わない高名な騎士卿が、こんなに乱れるなんて」
 笑みを堪えられないというふうに、くすくすと声を漏らしながらコルネリアはささやく。
「玉でさみしさを紛らわせていたの」
「・・・・・・」
 それは、ずっと前からだ。
「一人では眠れなかったりしたでしょ」
「!」
 声が漏れる。玉がルキアニス自身へと押し当てられる。震えながらぬめる玉が、じわじわと押し割りながら、入ってくる。入ってくる。
「!」
 けれど、乱暴なまでに強く引き抜かれる。
「ほしい?」
 コルネリアの声がする。
「玉、それとも、あたし」
 体に覆いかぶさられる。落ちる長い髪が胸をくすぐる。豊かな彼女の胸の、張った先端が押し付けられる。耳元に吐息を吹きかけられる。耳たぶを唇で弄ばれる。
「言ってみて。それとも、あたしじゃなくていい?」
 コルネリアの言葉は続く。
 言ってみて、と。それとも、あたしじゃないほうがいい、とも。
「誰がいい」
 拗ねるような言葉が耳を犯す。
 その人だと思ってくれてもいいの。と。
 ねえ、とコルネリアは言う。
「だれでもよかった?」
 それでも、あたし、あなたとしたい、と。あたしじゃ、だめ?と。
「だれのものでも受け入れて、こんなふうに・・・・・・」
「・・・・・・・」
 ふい何かが目を覚ました。ルキアニスの中で。何かが起き上がる。くろぐろとした染みを胸の中に押し広げるようにしながら。
 それまでの、心地よさが凍りついてゆく。
「!」
 何が起きたのか、己でもわからなかった。
 でも、己の中で何かが弾けた。それ、はルキアニスを見た。それ自身より暗い双眸で。ルキアニスと同じかたちの顔で。
 体が勝手に動く。背を丸めて、両の足を引き寄せて。
「・・・・・・!」
 コルネリアの声がする。何を言ってるのか、わからない。
 ただ体は勝手に動いて、うちへうちへとこもってゆく。
 くらい。
 にげても、にげても追いかけてくる。
 おいついてくる。つきとばされて、転んで、ころがって、そして・・・・・・
「小隊長!」
 はっとして目を覚ました。
 どれくらいの刻が過ぎたのかわからない。数拍かもしれない。でもひどくさむい。己の肌を、己で抱え込む。
「よかった・・・・・・」
 コルネリアの肌の温かみが、寄り添い覆いかぶさってくる。その温かみに圧されて、冷たい何かは吸い込まれるように胸の奥底へ追いやられてゆく。でも消え去ったわけじゃない。それはわかる。
「急に叫ぶから、あたし、何か起きたのかと思って」
「だいじょうぶ」
 でも、唇を動かす気力も無い。 何拍か息をついて、ようやく言えた。
「だれでもよくないよ」
 え、とコルネリアは訝しげに応じる。
「なに」
「だれでも、とかじゃないの」
「わかってる」
 ぎゅっとコルネリアの腕に力がこもるのがわかる。
「ただ、ちょっと、嫉妬しただけ。そんなこと、少しも思ってない」
 思ってないから、と。
「やさしくして」
 そうつぶやくルキアニスに、コルネリアは言葉でなくうなずく。


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 大人じゃないです。

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最終更新:2022年04月20日 09:34