オーガー。全高50メートルを超す巨大機動兵器、というより、歩く要塞。
一般的には、テオーリアによる開発品であるとされている。
理由は単純で、最初のオーガーが現れて以降、テオーリアの外界とのコネクトがぷっつりと途切れたからだ。
このことから、オーガーとテオーリアには何かしらの関係があると見られているが、元々どんな企業も下手に近づけないような存在であったテオーリアを制圧するのは生半な事ではなく、さらには超高性能な迎撃レーザー・システムによって弾道ミサイル攻撃すら通さない。
テオーリアを直接叩くのは得策ではなかった。これによって各企業は、他の打開策が見付かるまでの間、オーガー対策に力を入れることになったのだが、それもまた相当な努力が必要なことであった。
オーガーの外見や装備は、出現する度変わる。足が2本の時があれば、3本、4本の時もある。腕があるときもあるし、代わりにドリルが付いていることもある。
だが、共通点はある。1つ、全身に配置された種々雑多で強力な攻撃力。2つ、下手な砲撃ではかすり傷一つ負わない堅牢な装甲。3つ、長距離ミサイルといった遠距離攻撃を封じる迎撃レーザー・システム。4つ、都市部への侵攻というただ一つの目的。
この化け物を倒すには、従来の兵器では非力で、脆弱だった。戦車や戦闘機はもちろん、マゲイアもその装甲を突破できず、火力でもって返り討ちにあった。
テウルギアも同様だった。軽量テウルギアでは装甲を抜くパワーがなく、やがて火砲に捉えられて破壊される。重量級テウルギアでは装甲を抜く前に踏み潰されたり、一斉射を食らって斃れる。
貴重なテウルギアを何十機も投入して、ようやく相打ちに持ち込めるかどうか。
そしてその戦術戦闘を避けようにも、長距離核ミサイルはレーザーによって到達前に消滅する。
テウルギアに戦術核を持たせて特攻する戦法も編み出されたが、頻度こそ少ないがオーガーは絶えず現れる。放射能汚染の観点から、核兵器による撃退も封じられた。
企業、いや人類全体が最後に採った手段は、オーガーに対抗する新兵器を作ることだった。
人類に仇なす化け物を倒すため、人類は怪物を作り出した。
それが企業版オーガーともいえる、テウルギア・ギガだった。
正面からオーガーの攻撃を無効化する防御力、オーガーの装甲を穿つパワー。あとは市街地に行かせないように押しとどめる図体。
これらを兼ね備えたテウルギア・ギガの誕生には、
三大企業のほぼ全ての企業が技術と資源を結集しなければならなかった。
まず建造ドッグにはシマザキが総力を挙げた。操縦システムであるテウルゴスコネクトにはGASとガリゾーンタフ。主動力源である原子力ジェネレータにはSSCN、その放射線対策には技仙。サブ動力源はヤルダバとカルタガリア。内部電子機器をRAT。装甲をテクノヒューマンとSVI。etc etc …
三大企業のプロフェッショナルたちが総力を挙げて誕生させたテウルギア・ギガ1号機「ファースト・コンタクター」は、オーガーと対決。見事粉砕に成功した。
そこから快進撃は始まる。如何なる手段かは不明だが、オーガーは各地に唐突に出現する。出現予測地点にあらかじめギガを配備しておき、現れたオーガーを迎撃する。
そしてギガがオーガーを抑えているうちに、如何にしてテオーリア内部に突入するかの手段が生み出される。という計画。
テオーリアへの切符は未だ発行するそぶりを見せないが、ギガは着実にオーガーを倒していった。
逆に強化されたオーガーがギガを倒す事態もあったが、技術が進歩して新型ギガが投入される。戦いは技術合戦の様相を呈してきたのであった。