小説 > 飛燕たちの慟哭1ー5

弾幕を潜り、反撃しながらながらアンドリューは二機のエミューを目視で確認していた。幸い敵には気づかれていないようだ。それにしてもミサイル接近のアラームがなりやまない。テウルギア時代ここまで内部がうるさかったかと一瞬考えるほどだ。二機が適度な位置について狙っているところで、銃口と敵機の間で被っている被っている仲間を退かせる

『ヒラー、 3数えたら左へ避けろ!』
『了解。 1、 2、 3……』

味方機が左へずれた瞬間気持ちの悪い金属音がふたつ響く。側面を撃たれた敵マゲイアはふたつの穴を左側面に空け、くの字によじれながらこちらを見つめるように動きを止める。ミサイル射出部が赤くなり始め小刻みに震えながら膨張を開始する。

『全員離れろっ!』

膨張した敵はホウセンカが弾けるように爆発した。破片が高速で散らばり機体下部に刺さりに来ているのが分かる。

『よし、 一機』
『やったな…………うわっ』

生き残っていた方の敵機も同じように爆発する。パイロットも脱出した痕跡もない。一同は唖然としながら光景を見守っていた。何が起こっているのかいまいち掴めなかったからだ。その光景を白夜の太陽がただ強く照らしていた

数日経ったある日、アンドリューは部隊に向かって歩いていた。入った部屋にはデスクがあり、山積みの報告書や始末書に埋もれるジンがいた。

「よぉ大丈夫か?」
「見ての通りですよぉ……」

半泣きで見つめるジンに「あんなアホをやらかすからだ」と笑い飛ばしてやる。それを見てジンは露骨にむくれっ面になり、エミヤがアンドリューを叱る。実にいつもの光景だった。

「それで、 分かったんですか? 敵のこと」
「まぁ、 な。 だが俺たちは末端なので詳しくは聞いていない」
「えー」

ジンがさらにむくれる。まだまだ子供で少年兵時代と何も変わってないなとアンドリューは心のなかで思う。
言えるはずがなかった。今回の襲撃は、ジンとエミヤの戦闘データをもとに企業が新しいレメゲトンを購入できるかどうかの大切な査定でテオーリアから試験的に送られてきた無人機だったこと、今回の戦いかたではその査定に即落ちしたことなんて口が裂けても言えるはずがなかった


最終更新:2018年05月15日 03:49