「嘘だろぉ……まだ生きてんの……?」
「殆ど無傷とはねぇ……ははッ、駄菓子屋のアレだ。当たりを引いたらもう一本!って気分だなァ。
しかも、一番安いので当たったって感じ。一応儲けもんなんだろうけど、飛び上がって嬉しいかと言われるとねぇ……」
「なーんだ、最後は仲間外れかよぉ。つまんないなァ……」
遠くで鳴り響く閃光と爆音。何の気概も感情も宿らぬ乱丸の目には、その光景はもう
他人事でしかなかった。
あの場所に戻るには、これまでのような与えられた、
得た力ではなく、自らの手で
獲た力が間違いなく要るだろう。
けれど、そんな無駄な事はまっぴら御免だと。
「エリザベータちゃんもいらない子になっちゃったのかァ。ははッ、あんなに頑張ってたのに可哀想にねぇ……」
意識を失っている女を担ぎ上げる乱丸の顔には、いつものような、全てを嘲る笑みが浮かんでいた。
「傍観者になるのって気楽だぜぇ? 遠くから適当に眺めた上で、自分は傷つかないまま適当に文句言っておけばいいんだからさ。
勝っても負けても指差して嗤っておけば、万事するりとまかり通り……ってね。そういうのが、結局一番楽なわけで」
「努力病や成長中毒、そんな奴らに付き合うだけ損なんだって。
おいらたちは効率重視で楽して勝って、気楽に行こうよ。気楽にさァ。なーんにも背中に背負うことなく……羽のように身軽に、さ」
鵺乱丸は壊れない。希望も絶望も、共に空っぽである故に。
明日、いや一秒後死ぬと分かっていても世界を嗤える。嗤い飛ばせる。
自分自身の不幸さえ他人事のようにすり抜ける。
無責任さゆえの透明性は、皮肉な事に彼を絶望的な現状でも“傍観者”として再起させたのだった。
「ははッ……みーんな真面目に闘っちゃってまァ。そんなに勝ちたい? 生きたい? 強くなりたい?」
「でも、そう思っても皆死んじまうのにねェ。
かと思えば、おいらみたいなのが、何の因果かこーやって生き残っちゃってたりするからなァ……
ほんっと、意味なんか何も、何処にもないよねぇ……無駄……無駄……」
「それじゃまぁ、おいらと一緒に行こうかぁ。落第生同士、せいぜい仲良くしようじゃない」
そのまま二人の敗残者は戦火に背を向け、闇の深みを求めるように夜の彼方へと立ち去っていった。
- この乱丸の負の徹底っぷり好き。ここまで自分を放棄できるキャラは見たことなかったから印象的だった -- 名無しさん (2020-02-27 22:59:41)
- 無駄無駄無駄無駄ァ! -- 名無しさん (2020-05-27 01:06:48)
最終更新:2023年10月29日 22:44